雑居空間
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 暑い毎日が続く今日この頃、皆様、いかがお過ごしでしょうか。
 本当ならこの夏は、「夏の怪奇特集」と称してホラー系のゲームを遊ぼうかと思い、適当なゲームを幾つかピックアップしていたのですが、仕事がやたらに忙しくなって全然遊ぶ時間が取れませんでしたよ。なんとか昨日、今日と2日間の休日を確保しましたが、今月は果たしてあと何日休めることやら。
 そんなわけで、時間があまりにも足りなすぎるので「夏の怪奇特集」は来年実施することにして、今夏の予定は一旦リセット。代わりといっては何ですが、短時間でプレイできて今現在のプライオリティが高い、藤浪智之・作、佐々木亮・絵のゲームブック「バニラのお菓子配達便! 2 ~スイーツ女王と秘密のドレス~」をプレイしました。




きみは、天馬ばにら。小学五年生。『パティスリー・エイル』の「お菓子配達」担当だ。えっ、ライバルが登場? そして「スイーツクイーン・コンテスト」に出場することに!? さあ、お菓子の妖精デコといっしょに、「スイーツ&ドレス」を集めて、優勝を目指そう! 自分で考えたドレスとスイーツで、挑戦することもできるよ。読者のきみが選ぶと、ストーリーが変わる「きみが主人公」の物語、第二弾!


藤浪智之「バニラのお菓子配達便! 2 ~スイーツ女王と秘密のドレス~」(角川つばさ文庫)裏表紙より。




 本書には、プロローグとして超短編がひとつと、「ライバルはゴージャスお嬢様!?」、「めざせ! スイーツクイーン(前編)」、「めざせ! スイーツクイーン(後編)」という、3つのエピソードが収録されています。前作同様、各エピソードに趣向が凝らされていて、それぞれ異なったテイストのゲームとなっていますね。
 話の中心に居座るのは、ばにらと同じく小学五年生でありながら、『パティスリー・エイル』と同じ町に新規出店してきた『スィートクイーンダム 空野町支店』の店長・豪紗須メル。なぜかばにらにいろいろと絡んでくるメルとのライバルストーリーが、本書の軸になっています。
 新キャラの登場もありますが、前作に登場したキャラも大勢、っていうかほぼ全員出演しています。前作でのエピソードが選択に絡んでくるシーンも多いので、できるなら1巻からプレイした方が楽しめそうです。

 トランプを使った運命判定のシステムは前回同様ですが、1点だけ違うのは、フォーチュンカードの使い方ですね。本書では山札からトランプを引いて、そのスートの種類によって成功失敗を判定します。で、フォーチュンカードを得るという指示があれば、山札からカードを引いて、それを判定のときに代わりに使用することができます。
 前作では判定するときに、山札から引く代わりにフォーチュンカードを使用できるというだけだったので、例えばハートが必要なときにスペードのフォーチュンカードが何枚あっても役に立たちませんでした。しかし本書では、スートの異なるフォーチュンカードを使用することで、判定をもう1回やり直せるようになりました。無駄カードが発生しなくなりますので、プレイしてストレスを受けにくくなって良いのではないでしょうか。その分難易度は下がりますが、その調整は本編でいくらでもできますからね。 



 3つのエピソードのうち、特に面白いと思ったのは「めざせ! スイーツクイーン(前編)」ですね。スイーツクイーン・コンテストに出場するためのドレスとスイーツを考える、という話なのですが、ゲーム中に多くのドレスが登場するのに加え、読者が自分でオリジナルのドレスとスイーツをデザインすることができます(それ専用のデザインシートもあります)。
 自分が主人公になれるというのがゲームブックのウリではあるのですが、実際には与えられた選択肢からしか行動を選べないというのがシステム的な限界となっています。それだけにオリジナルのデザインを考えるというのは、より積極的にゲームの世界に関わることができる、面白い趣向だと思います。ドレスやスイーツの絵を描くとか、子供も喜びそうですしすね。

 逆にイマイチだったのは、「めざせ! スイーツクイーン(後編)」。前編の行動を受けてのスイーツクイーン・コンテスト本番なのですが、全体的に運命判定ばかりで、ちょっと運の要素が強過ぎるかなぁと思います。私もインチキなしの初プレイでは、最後の判定で失敗してベストエンドに辿り着けませんでした。失敗したのが自分の選択に所以しているのなら仕方ないですけど、カード運だとちょっとなんだかなぁという感じです。
 ただ、ゲーム的にはイマイチでしたけど、いろんな衣装が登場するファッションショー的な楽しさ、華やかさはありました。佐々木亮のかわいいイラストもてんこ盛りですよ。



 様々な困難に直面しながらも、周りの人に助けられながら、一生懸命頑張るばにら。その王道ストーリーに、スイーツとドレスという女の子が喜びそうなガジェットを乗せて、ゲームブックに仕立てる。全体的な印象としては、前作のイメージを踏襲した上でさらに新しいアイデアをつぎ込んできて、正統な進化を遂げていると思います。子供にも安心して薦められる、良作に仕上がっているのではないでしょうか。

 こうなると3巻以降の展開も(あるのかないのかわからないけど)期待してしまうのですが、気になるのはゲームブック的な部分でのネタ切れ感ですね。これまでは各巻、各話、それぞれに工夫を凝らして異なるテイストのゲームにしているのですが、今のパラグラフ数(100以下)ではそれにも限界があるんじゃないかなぁと思います。実際、「ライバルはゴージャスお嬢様!?」なんかは、前作のエピソード「天使と悪魔とチョコレート」と、ゲーム的な構造がかなり似通っていますしね。
 そういった問題を回避しようとすると、長編にしたり、難易度を上げたりする方向に向いがちになります。現に今回の前後編は、読者からの「もっと長くて、やりごたえのあるものを」という声によって生まれたものです(あとがきより)。ですが、それって80年代から90年代にかけてのゲームブックの進化をなぞるような形になるんですよね。
 まあ、本シリーズは子供が読むということを強く意識しているようですので、そういう極端な方向に進みすぎるということはないと思いますけどね。ともあれ、藤浪さんがこの難題にどういった答えを出すのか、次巻以降の展開に注目したいと思います。



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