TPP 11(環太平洋パートナーシップ協定)の6カ国による批准・発効を歓迎!
TPP11カ国は、米国の離脱公表の後協議を重ね、2017年11月9日、ベトナムで開催された経済貿易閣僚会議において、離脱を表明している米国に関連する条項を凍結(関連条項の実施先送り)する形で11カ国による新協定「TPP11」に大筋合意し、2018年10月31日、豪州が批准したことにより、既に批准しているメキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダを加え、6カ国で12月31日に発行する。11月中にも手続きを完了するベトナムが加われば7カ国となるところ、TPP 11の発効を歓迎する。
1、消費者にとっては朗報、生産者も輸出のチャンス増加
今後、参加11カ国の批准手続きがすべて終われば、米国抜きで人口5億人(EUと同規模)、世界の国内総生産(GDP)の13%(EU 22%)を占める経済圏となる。
消費者にとっては、当面肉類や一部野菜・果物類などが豊富で安くなり、朗報だ。その上豪州やNZは季節が反対となるので、天候被害等の場合補完し合うことになり、野菜不足、酪農品不足などが補える。また農産品を含め、これら諸国への輸出も容易になり、生活効果、経済的効果が期待される。
他方、これにより農業、酪農生産者への影響が考えられるが、関税等の引き下げは段階的に行われるので、当面の影響は限定的であろう。
農協(JA)長野中央会は、食肉や酪農品を中心として同県の農林水産業への影響を約14億円としている。政府は全体として国産農産品の売り上げが約1,500億円減少すると試算としている。しかし一部では、外国の食肉については狂牛病などで品質上の問題があり、国内の産地銘柄への志向は維持されるとの見方もある。一般的に日本の農産品、酪農品は小規模生産のため相対的に価格は高くなるが、生産者や産地により特性があり、高品質のだめ、大規模生産の外国のものと比較して価格は高めだが、品質の高さから一定の需要層は確保できる。生産者にとっても努力次第では高級食材などの輸出のチャンスが増えることになろう。
2、国内流通制度の簡素化による価格引き下げが不可欠
国内農産品、酪農品の最大の問題は、価格であるが、食材の銘柄により差別化が図れる一方、生産者価格はそれ程高くなく、流通段階が複雑でコストが掛かり割高となっている。現在は、インターネットを利用した生産者よりの直接販売も可能となっているので、消費者直送も可能になっている。対応が迫られているのは流通システムの多様化と簡素化だ。
特に農協(JA)制度は、戦後の農産物生産と消費市場への安定供給の上で重要な役割を果たしたが、工業化に伴う若年層の農村地域からの流出と食生活の変化により生産、消費ともに大きく変化しているので、日本の農業、酪農がグローバル化に柔軟に対応していけるよう、生産者の努力が消費者に直接届けられる自由且つ柔軟な流通システムとして行くことが望まれる。
3、米国のTPP復帰と必要とされる中国経済の自由市場化
TPPから離脱した米国の動向が注目される。米国は2国間交渉を重視し、北米自由貿易地域(NAFTA)についてもメキシコ、カナダと2国間の交渉を行い新たな枠組みを作った。NAFTA自体を否定をしたわけではない。TPPについても、米国は日本を含め2国間の交渉を求めて来ており、今後の動向が注目される。
将来米国が何らかの形でTPPに復帰することが期待されるところであるが、いずれにしても開かれた自由貿易圏を目指すべきであり、環太平洋諸国の新規加入も期待される。中国については、単一国で13億超の市場を形成している上、‘中国の特色ある社会主義市場経済’を目指すことが2017年10月の全人代でも再確認され、基本的には為替管理を含め、国家管理経済、統制経済体制であり、私有財産制に基づく‘自由経済’、‘自由市場’とは体制が異なるので、TPPに参加する要件が整っていない。従って中国の国内経済体制が為替管理を含めて自由経済市場に移行するまで参加は困難であろうし、適当でもない。
世界貿易機構(WTO)が、 社会主義経済である中国の参加をそのまま認めたことは時期尚早であり、これによりWTOの下での世界規模の自由化の流れが停滞したことに留意すべきであろう。中国については、WTO参加に経過措置を設け、一定の条件を付して置くべきであった。現在、米国が中国に条件を付ける形で通商折衝が行われているが、国際協調、グローバル化に流されて、中国のWTO参加に際し条件を付さなかった軽率さが遠因と考えられる。中国がWTOに加盟すれば、中国の自由市場化が促進されるとの期待感は外れたと言えよう。
中国が、米国のトランプ大統領の下での通商政策を保護主義とし、‘自由貿易主義’を主張し、二国間や国際場裏で同様の主張を繰り返しているが、そうであれば中国の国内市場を米国やその他の先進工業諸国と同程度に自由化し、国家による統制や中央管理を撤廃する努力をさせるべきであろうし、各国がそれを中国求めて行くべきであろう。
同時に、WTOのみならず、国際機関の政策的方向性や事務局の在り方を含む政策面での監視や指導を強化する必要があるようだ。現在世界が直面している最も深刻な課題は、地域紛争の長期化、恒久化と大量な難民問題であろう。戦後国連の下で進められて来た難民政策の下では、既存の難民キャンプが恒常化している上、自然増により世界の難民が増加し続けている上、紛争が解決されないまま先送られ、長期化、恒常化する中で新たな難民が生まれている。
新たなアプローチが必要になっているのではないだろうか。(2018.11.4.)(All Rights Reserved.)
TPP11カ国は、米国の離脱公表の後協議を重ね、2017年11月9日、ベトナムで開催された経済貿易閣僚会議において、離脱を表明している米国に関連する条項を凍結(関連条項の実施先送り)する形で11カ国による新協定「TPP11」に大筋合意し、2018年10月31日、豪州が批准したことにより、既に批准しているメキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダを加え、6カ国で12月31日に発行する。11月中にも手続きを完了するベトナムが加われば7カ国となるところ、TPP 11の発効を歓迎する。
1、消費者にとっては朗報、生産者も輸出のチャンス増加
今後、参加11カ国の批准手続きがすべて終われば、米国抜きで人口5億人(EUと同規模)、世界の国内総生産(GDP)の13%(EU 22%)を占める経済圏となる。
消費者にとっては、当面肉類や一部野菜・果物類などが豊富で安くなり、朗報だ。その上豪州やNZは季節が反対となるので、天候被害等の場合補完し合うことになり、野菜不足、酪農品不足などが補える。また農産品を含め、これら諸国への輸出も容易になり、生活効果、経済的効果が期待される。
他方、これにより農業、酪農生産者への影響が考えられるが、関税等の引き下げは段階的に行われるので、当面の影響は限定的であろう。
農協(JA)長野中央会は、食肉や酪農品を中心として同県の農林水産業への影響を約14億円としている。政府は全体として国産農産品の売り上げが約1,500億円減少すると試算としている。しかし一部では、外国の食肉については狂牛病などで品質上の問題があり、国内の産地銘柄への志向は維持されるとの見方もある。一般的に日本の農産品、酪農品は小規模生産のため相対的に価格は高くなるが、生産者や産地により特性があり、高品質のだめ、大規模生産の外国のものと比較して価格は高めだが、品質の高さから一定の需要層は確保できる。生産者にとっても努力次第では高級食材などの輸出のチャンスが増えることになろう。
2、国内流通制度の簡素化による価格引き下げが不可欠
国内農産品、酪農品の最大の問題は、価格であるが、食材の銘柄により差別化が図れる一方、生産者価格はそれ程高くなく、流通段階が複雑でコストが掛かり割高となっている。現在は、インターネットを利用した生産者よりの直接販売も可能となっているので、消費者直送も可能になっている。対応が迫られているのは流通システムの多様化と簡素化だ。
特に農協(JA)制度は、戦後の農産物生産と消費市場への安定供給の上で重要な役割を果たしたが、工業化に伴う若年層の農村地域からの流出と食生活の変化により生産、消費ともに大きく変化しているので、日本の農業、酪農がグローバル化に柔軟に対応していけるよう、生産者の努力が消費者に直接届けられる自由且つ柔軟な流通システムとして行くことが望まれる。
3、米国のTPP復帰と必要とされる中国経済の自由市場化
TPPから離脱した米国の動向が注目される。米国は2国間交渉を重視し、北米自由貿易地域(NAFTA)についてもメキシコ、カナダと2国間の交渉を行い新たな枠組みを作った。NAFTA自体を否定をしたわけではない。TPPについても、米国は日本を含め2国間の交渉を求めて来ており、今後の動向が注目される。
将来米国が何らかの形でTPPに復帰することが期待されるところであるが、いずれにしても開かれた自由貿易圏を目指すべきであり、環太平洋諸国の新規加入も期待される。中国については、単一国で13億超の市場を形成している上、‘中国の特色ある社会主義市場経済’を目指すことが2017年10月の全人代でも再確認され、基本的には為替管理を含め、国家管理経済、統制経済体制であり、私有財産制に基づく‘自由経済’、‘自由市場’とは体制が異なるので、TPPに参加する要件が整っていない。従って中国の国内経済体制が為替管理を含めて自由経済市場に移行するまで参加は困難であろうし、適当でもない。
世界貿易機構(WTO)が、 社会主義経済である中国の参加をそのまま認めたことは時期尚早であり、これによりWTOの下での世界規模の自由化の流れが停滞したことに留意すべきであろう。中国については、WTO参加に経過措置を設け、一定の条件を付して置くべきであった。現在、米国が中国に条件を付ける形で通商折衝が行われているが、国際協調、グローバル化に流されて、中国のWTO参加に際し条件を付さなかった軽率さが遠因と考えられる。中国がWTOに加盟すれば、中国の自由市場化が促進されるとの期待感は外れたと言えよう。
中国が、米国のトランプ大統領の下での通商政策を保護主義とし、‘自由貿易主義’を主張し、二国間や国際場裏で同様の主張を繰り返しているが、そうであれば中国の国内市場を米国やその他の先進工業諸国と同程度に自由化し、国家による統制や中央管理を撤廃する努力をさせるべきであろうし、各国がそれを中国求めて行くべきであろう。
同時に、WTOのみならず、国際機関の政策的方向性や事務局の在り方を含む政策面での監視や指導を強化する必要があるようだ。現在世界が直面している最も深刻な課題は、地域紛争の長期化、恒久化と大量な難民問題であろう。戦後国連の下で進められて来た難民政策の下では、既存の難民キャンプが恒常化している上、自然増により世界の難民が増加し続けている上、紛争が解決されないまま先送られ、長期化、恒常化する中で新たな難民が生まれている。
新たなアプローチが必要になっているのではないだろうか。(2018.11.4.)(All Rights Reserved.)