地球温暖化ー融ける氷海、氷河と荒れる気候変動は止められるかー再掲
2015年3月14日から18日まで、第3回国連防災世界会議が仙台で開催された。東北大地震・大津波から5年目を迎えるこの時期に、大震災の経験と教訓をこの地から世界へ伝え、対応を考えることは大変意義があったと言えよう。他方、折しも南太平洋のバヌアツを大型サイクロン「パム」が襲い大きな被害を出していたが、根本的な原因の一つである荒れる気候変動、温暖化への対応については、途上国側は先進工業国の責任を強調し、国際的な対応を主張する先進工業国と対立し、抜本的な対応については平行線のままで終わった。しかしその間にも海水温は上がり、海流は変化し、地球の気候は悪化している。地殻変動は止められず、被害を防ぐしかないが、気候の劣化については世界が協力すれば止められる。気候の劣化に大きく影響する海や海流の温度や流れは、温度差に敏感な漁業資源にも影響する。何時までも平行線の議論をしている時ではなく、世界が具体的に行動する時期ではないのだろうか。世界のリーダーがこの問題に真剣に向き合うべき時のようだ。
国連の「気象変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第2作業部会は、横浜で地球温暖化の影響を検討し、2014年3月31日、報告書を取りまとめた。その中で「全ての大陸と海洋で、温暖化の重要な影響が観測されている」との認識の下で、“北極海の海氷や世界各地域における珊瑚礁は後戻り困難な影響を既に受けている”などとして生態系や人間社会への影響を指摘している。そして温暖化が進むリスクとして、世界的な気温の上昇、干ばつなどによる食糧生産の減少、大都市部での洪水、異常気象によるインフラ機能の停止などを盛り込んでいる。当コラムも、北極海の海氷の融解と縮小ブログでもこのような状況を2008年頃から指摘して来ているが、それが国際的に理解され始めたと言えよう。
日本の地球温暖化への取り組みについては、環境省は、日本の温室効果ガスの削減目標を2020年度までに2005年度比で3.8%減とする方針である。温室効果ガスの削減目標については、民主党政権が2020年度までに“1990年度比で25%削減”との目標を提示し、国連総会でも表明している。環境省の上記の目標は、基準年を2005年としているが、1990年度比で換算すると逆に約3%増となるとされており、後退感が否めない。政府当局は、‘原子力発電が再稼働されれば高い目標に修正する’としている趣であるが、果たして原子力発電頼みで良いのであろうか。
1、意見が分かれる地球温暖化の原因
温暖化の速度、原因などについては議論が分かれている。スイスを本拠とする民間団体「世界自然保護基金」(WWF)は、2013年から40年までに、北極圏の氷は夏期には全て消えるとの報告を出している。国連の「気候変動に関する政府間パネル」が出した07年の第4次評価報告書でも、“ヒマラヤの氷河は2035年までに解けてなくなる可能性が強い”と指摘している。同グループはゴア米元副大統領と共にノーベル賞を受賞したが、氷河学者からは300mもの厚さの氷河がそんなに早くは融けないとの疑問が呈され、同グループがそれを認めるなど、信憑性が疑われている。地球がミニ氷河期に入っているとの説もある。
2、荒れる世界の気候
どの説を取るかは別として、着実に進んでいる事実がある。北極海の氷原が夏期に融けて縮小していることだ。衛星写真でも、08年においては6月末頃までは陸地まで氷海で覆われていたが、8月20日頃前後から氷海は陸地を離れ、海路が開け、砕氷船を使用すれば年間5ヶ月内外は航行可能となる。その期間は毎年伸びている。8月中旬には2-3週間程度砕氷船無しでも航行可能のようだ。6、7年前には、氷海が最も小さくなる8月下旬でも氷海は陸まで張り出ていた。また南極大陸などでは氷原がとけ、南極海に流れ出し海洋の水位を上げている。
これは今起きている現実である。短期的には夏の一定期間航行が可能になり、商業航路や観光、北極圏開発のビジネスチャンスが広がる。
他方それは温暖化への警告でもある。北極の氷海縮小は、気流や海流による冷却効果を失わせ、地球温暖化を早め、海流や気流が激変し気候変動を激化させる恐れがある。氷海が融ければ白熊や微生物などの希少生物も死滅して行く。取り戻すことは出来ない。北極圏の環境悪化は、米、露など沿岸5か国のみの問題では無く、この地球の運命にも影響を与えている。
現在、日本はもとより世界各地で気流や海流の動きや温度がこれまでのパターンでは予測できない荒々しい動きを示しており、局地的な豪雨や突風・竜巻、日照りや干ばつ、豪雪や吹雪などにより従来の想定を越えた被害を出している。それが世界各地で今起こっている。地球環境は、近年経験したことがない局面に入っていると言えよう。
3、国際的な保護を必要とする北極圏と南極大陸
同時に忘れてはならないのは、反対側の南極大陸でも氷河、氷原が急速に融けているという事実だ。またヒマラヤやアルプス、キリマンジェロ等の氷河も融け、後退しているので、これらの相乗効果を考慮しなくてはならない。
北極圏も南極同様、人類の共通の資産と位置付け、大陸棚の領有権や「線引き」の凍結や北極圏の一定の範囲を世界遺産に指定するなど、国際的な保護が必要だ。
4、必要とされる政府レベルの対応と生活スタイルの転換
それ以上に、地球温暖化の進行や気候変動の激化を食い止め、地球環境を保護、改善する必要性に今一度目を向けることが緊要ではないだろうか。それはこの地球自体を人類共通の遺産として保全することを意味する。
地球環境は、政府に委ねておけば良いというものではなく、家庭や産業自体が工夫、努力しなくては改善できない。比喩的に言うと、家庭で使用する電球を10個から7個にすれば日常生活にそれほど不自由することなく節電できる。企業やオフィスビルなどについても同様で、節電を図ればコスト削減にもなり、企業利益にもプラスとなる。レジ袋や必要以上の過剰な食物などを少なくして行けば生産に要するエネルギーの節約となる。また日本が環境技術先進国と言うのであれば、自然エネルギーの組織的な開発、活用や節エネ技術の更なる開発などで温室効果ガスの削減にそれぞれの立場から努力、貢献することが出来るのではないだろうか。またそのような努力から、地球環境にもプラスとなる生活スタイルやビジネスチャンスが生まれることが期待される。
しかし、政府や産業レベルでの対応は不可欠であろう。経済成長についても、温室効果ガスの減少を目標とし、再生可能エネルギーに重点を当てた成長モデルを構築する事が望まれる。原子力発電については、段階的に廃止することを明確にすると共に、再稼働に関しては、施設の安全性を確保する一方、各種の膨大な原子力廃棄物の最終的な処理方法を確立することがまず必要であろう。
また途上国援助においても、従来型の重厚長大なインフラ開発・整備ではなく、再生可能エネルギーを使用するなど、温室効果ガスの排出が少ない経済社会の構築を目標とする開発モデルや政府開発援助(ODA)モデルとして行くことが望まれる。
現在中国が、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立に向けて準備している。それが途上国における従来型の長大重工型、大量のエネルギー消費型のインフラ建設に投資されていくとすると地球環境の悪化に繋がることになるので、温室効果ガスの減少につながる環境改善インフラへの投資促進となることが望ましい。中国自体も、これまでのような高成長、高エネルギー消費の経済成長を継続すれば、いずれ住めない大陸となる恐れもある。
(2014.3.31./15.4.3.改定)(All Rights Reserved.)
社会保障と税の一体改革に欠ける視点 (改定版、総合編)<再掲>
<はじめに>
2013年1月、野田民主党政権が打ち出した社会保障と税の一体改革を政権交代を受けて引き継いだ形の安倍自・公政権は、消費税10%への引き上げを実施したものの、社会保障改革につ社会保障の財源を目的税的に消費税に特化しつつ、その余剰を社会保障以外の歳出財源に振り替える一方、年金の支給年齢の引き上げや介護委保険料の引き上げを図りつつ国民年金から天引きし、また支給基準自体の引き下げを図るなど、社会保障費の圧縮を行う結果となっている。これは、社会保障費の圧縮を図りつつ社会保障以外の歳出財源を捻出するとの観点からは評価されるのであろうが、消費増税は行われても社会保障自体は改善するどころか、国民年金は圧縮され介護保険料など国民の実質負担は高くなるという結果を招いている。消費増税により期待された社会保障を通じる所得の再配分が適正に行われていないことを意味する。
子育て支援の拡充や出産費の保険適用なども社会保障の対象分野であるが、10%への消費増税により社会保障がどのように改善されたかを点検すると共に、社会保障と税の一体改革においていわば冷や食を食べさせられて来た社会保障の改善を図ることが必要になって来ているようだ。このような観点から本稿を再掲する。(2023/04/26追記)
野田政権は、社会保障と税の一体改革大綱の素案を取りまとめるため、2011年12月12日、関係5閣僚会議で社会保障分野の検討を開始した。これに先立ち厚生労働省は社会保障改革案の中間報告を公表した。
中間報告は、年金、医療・介護、及び子育て分野まで網羅しており、受給資格期限の10年への短縮、低所得層に対し年金加算、国民健康保険料や介護保険料の軽減(給付増要因となる)など、低所得層、パート、主婦などに一定の配慮をしているが、高所得者の年金減額、70-74歳の窓口負担引き上げ、外来患者への1回100円の負担上乗せ(料金収入増要因となる)など、収入を図る一方給付水準を下げ、利用者に負担を掛ける内容となっている。他方、年金支給開始年齢の引き上げ、デフレ下での年金給付額調整(給付水準引き下げ)、厚生年金保険料上限の引き上げなどについては法案提出を先送るとしている。
一方消費税増税を中心とする税制改革については、年末の12月29日、民主党税調と一体改革調査会の合同会議を野田首相出席の下で開催し、消費税を「2014年4月に8%、15年10月に10%」に引き上げることなどを決定した。
そしてこれら一連の検討を経て野田内閣は、2月17日、消費税増税を軸とした社会保障と税の一体改革大綱を決定した。
同一体改革大綱は、1月に政府・与党が決定した素案とほぼ同様の内容で、消費税増税を含むものであり、社会保障制度自体の改革については現行制度を前提とした若干の手直し程度となっている。基本的な制度として、破綻状態の国民年金の改革には一切言及がない。一方厚生年金と共済年金の統合を検討するとしているものの、厚労相はそれは時間の掛かることであり、且つ“消費税増税には関係しない”と説明しており、そうであるなら何故わざわざ異なる給与体系・労働条件の厚生と共済を統合しなくてはならないのか疑問が残る。
増税方針の決定は一つの政治的リーダーシップの発揮として評価されるところであり、その責任はいずれ国会で審議され、最終的には選挙において問われ、国民の審判に委ねられることになろう。だが増税案が示されても、年金制度などの社会保障制度改革について実質的な方針が示されなければ「一体改革」にはならない。しかしそのベースとなる大綱において低所得層、パート、主婦などに一定の配慮をしており評価されるものの、基本的に次の諸点が欠けている。
1、欠けるコスト削減の側面
昨年末の民主党合同会議においての上記の増税方針を決定した際、09年8月の総選挙で約束したマニフェストを重視するグループよりの意見を踏まえて、議員定数の削減と公務員給与の引き下げの実施や景気が好転していない場合の増税凍結などを了承し、公務員給与の引き下げについては4月より平均7.8%の削減(2年間)ているが、年金や医療等の社会保障制度を実施・管理するためのコストなどには触れられていない。今回採択された国家公務員給与の引き下げについても2年間の削減であるので、いわば福島原発事故に伴う賠償や被災地の復旧・復興のための当面の財源を確保するための財源と見られるところであり、年金や医療など、中・長期に必要なコスト削減にはならない。
拠出を前提とする国民年金、厚生年金、共済年金は、拠出者が6割内外に激減している国民年金を中心として破綻状態にあり、少子(拠出負担者)の漸減と高齢化・長寿化(受給者)の漸増という今後の傾向を考慮すると、現行体制では年金勘定の赤字は更に悪化することが予想される。
制度が破綻状態にあり赤字がより深刻化すると予想される場合に、まず行われるべきことは抜本的なコスト削減であり、制度のスリム化であろう。企業であれ、どのような組織、制度であれコストの観念が無くては事業は成り立たず、将来は無いと言って良い。
景気停滞期に雇用を維持するというワーク・シェアリングの観点からすると、年金事務分野等での給与ベース自体を実質的に引き下げ、抑制しつつ、職務に励んでいる職員には気の毒ではあるが、自主的な希望退職を促しつつ可能な範囲で優先度の低い部局等の人員を削減して行くことであろう。それが困難であれば実質的な人員整理を3年程度の期間掛けて実施するのも止むを得ない。東北地方出身の職員については、被災地の行政事務、復興事業支援などを希望する者を募り、人材の活用、斡旋を図ることなども可能であろう。多くの企業は数年前よりワーク・シェアリングを実施している。それも一つの社会貢献であり、社会的な責任を果たしていると言える。 その他一般管理費、事務費、交通・通信費等の諸費用を抜本的に節減するとの姿勢が望まれる。一度に実施困難であれば、3年間程度で段階的、継続的に行えば良い。それは制度を存続させるための組織の長の責任であり、また政権与党及び野党を含む国会の責任であろう。
また年金事務の制度的な簡素化が不可欠である。年金事務については、日本年金機構を頂点として、全国の都道府県及び市町村に9ブロックの本部と地区毎に年金事務所が多数設置されている。これらの事務所、施設を全て廃止、売却し、都道府県、市町村に事務を集約するなどの改善が望まれる。国民健康保険事務や国民年金、旅券の交付なども地方公共団体に移管されているので可能であろう。年金は健康保険と同様に地域住民に密着した業務であるので、地方公共団体の業務サービスに適している。公的年金の積立金を管理・運用している年金積立金管理運用独立行政法人についても、民間の投資・金融・保険会社にコンソーシアムを形成させるなどして何らかの形で管理運用を民間専門機関に委託できないかなどを検討することが望まれる。
因みに、中央官庁は設置法があり縦割りとなっていることから、ハローワークや労働基準局の他、財務局や法務局、河川・道路地方整備局事務所など、多くの省庁が全国に独自の事務所、施設を持っているが、公的債務が1,000兆円を超える状況であり、大幅な財政赤字が継続している今日、各省庁が全国に事務所、施設を抱えている余裕はない。地方自治促進の意味からもこれらの業務、事務を原則地方公共団体に移管し、中央官庁は調整業務のみを行うなど制度の抜本的な簡素化、集約を図ることが時の流れと言えよう。国や地方公共団体が数多くの国・公有地や施設を抱えていることは、多額の人件費、管理費が掛かり財政を圧迫している上、民間移管すれば得られる固定資産税等の機会を放棄していることになるので2重にコストを掛けている。国家レベルでの財政赤字である今日、国・公有地や施設を抜本的に廃止・売却し、民間での活用を図ることが望ましい。それにより地方経済も活性化されることが期待される。ほとんどの地方公共団体の公有地や施設についても同じようなことが言える。
日本の戦後の行・財政モデルは、各種の制度、社会インフラ等が未整備で、地方公共団体も整っていない状況で高成長期に築かれて来たものであるが、今後少子、高齢化・長寿化により、税の負担者が減り、社会保障関係支出が増加することは避けられないので、未来を見据えた簡素で効率的な行・財政モデルを構築して行く必要もあろう。
事業的には、年金給付額を引下げたり、給付年齢を引き上げることにより支出を減らすことも可能である。しかしそれは年金事業の本来的な目的である年金給付サービスを低下させることになり、年金への信頼性を著しく失わせる結果となるので、行うとしても最後の手段とも言える。最初に抜本的なコスト削減を行うことが不可欠であろう。
2、最大の欠陥である国民年金など、見えない抜本改革
国民、厚生、共済各年金とも拠出形であり、厚生、共済両年金の一本化が検討されているが、最大の欠陥は国民年金にある。国民年金にのみ加入している者の2011年4―7月の納付率は55.0%だが、失業等で納付免除者を加えると納付率は更に低くなる。納付していない者が半数近くいるので、受給者層が増加の一途であることを考慮すると、国民年金(基礎年金)制度は持続不可能な状況になっている。他方生活保護者は208万人以上に達しているが、国民年金の給付額は平均5.3万円であるのに対し、東京都の生活保護支給額は30代単身で13万円以上、60代後半単身でも8万円強で、家族構成などで加算されることになっているため、国民年金の方が掛け金を支払っていながら受給額は少ないので、納付意欲を失わせる形となっている。
現在、厚生年金と共済年金の一本化や国民年金(基礎年金)との統合などが検討されているが、まず最大の欠陥を抱えている国民年金の在り方を検討することが先決であろう。国民年金の納付率を上げると共に、不加入者をどう解消して行くかが検討されなくてはならない。国民年金も拠出制であり、本来的には拠出していない者には給付も無いことになる。基本的には受益者負担と自己責任の原則に則らざるを得ない。また生活保護支給額に対し、国民年金給付額が逆差別されている状況も是正する必要があろう。
社会保障改革案では、基本的には中間報告に沿って低所得者への加算や高所得者の年金減額など、現行制度に基づいた微調整、手直にしか過ぎず、国民年金の抜本改革には触れていない。拠出型の国民年金は拠出者に対して継続するとしても、いずれの年金にも拠出していない者をどの程度、どのように救済するかについては、納税や拠出努力をしている者との公平性や生活保護との関係を含め、基礎年金をどのように制度設計するかが問われていると言えよう。
また国民、厚生、共済の3つの年金制度があり、分り難いとの評もあり、その面は否定できないが、3つとも雇用形態や所得水準、賃金体系などが異なるので一本化には複雑な調整が必要になるばかりか、一本化すれば年金問題が解決するというものでもない。統合することによりそれぞれの問題点が見え難くなり、或いは共倒れする恐れがある。国民、厚生、共済の3年金制度とも料率納付を前提としているので、原則として拠出者には入会時の条件になるべく近い水準で給付することが期待される。それなくしては年金の信頼性は維持出来ない。問題は、拠出型3年金の適正な給付を確保すると共に、いずれの年金についても受給資格が無い者をどう救済し、財源をどう確保して行くかである。しかし努力しなくても救済される、努力しても報われないというような意識が生まれ、国民の間にモラルハザードを引き起こすようなことは健全で活力ある社会発展を図る上で避けなくてはならないのであろう。
3、社会保障に関する新たな制度設計と消費税増税
上記のような観点からすると、抜本的なコスト削減を行わず、また国民年金を中心とする年金制度の本質的な改革を行わないままで消費税などの増税を実施すれば、制度上の不備、赤字体質を残したままコスト高で非効率な年金制度を引きずることになり、問題を残す可能性が高い。拠出制を残すのであれば、受益者負担と自己責任という基本的な基準に沿って、抜本的なコスト削減を図った後、高額所得者への給付の留保や定年制の引き上げに連動した給付年齢の引き上げなどを実施する方が分り易い。その上で全国民を対象とした税による最低限の基礎年金の導入を検討すべきであろう。その際拠出型の年金については、基礎年金に相当する部分について給付額を削減すると共に、料率も引下げるなどの調整が望ましい。また生活保護制度については、適用を基礎年金受給年齢までとするなどの調整が必要であろう。
医療費や介護費についても、赤字であり制度存続が困難であれば、受益者負担の原則に沿って窓口料金を引き上げるなど、個人負担を若干引き上げることも止むを得ないのであろう。介護保険については、年金受給者も支払う義務があり年金給付額から差し引かれ、実質的な年金給付額の減額に当たるので、年金以外の他の所得がない者に対しては免除するなどの配慮をすると共に、健康保険料や窓口負担を全体として引き上げることも止むを得ない。しかしその前提は、抜本的なコスト削減の実施であろう。
福祉は、高所得者が負担し生活困窮者や低所得者などを救済するとの考え方があるが、社会保障は所得に応じてではあるが国民全体として負担し、貧富の差なく適用されるべきものであり、低所得者が一切負担や努力をする義務がないというものでもない。受益者負担と自己責任の基準に沿って低所得者も応分の負担はすべきものであろう。それなくしては負担しなくても救済される、努力する者が損をするというモラルハザードを起す可能性がある。消費増税に際し、逆進性を緩和するため低所得者には税の還付をするとの案があるが、制度が複雑になり事務を肥大化させると共に、低所得者は所得税等も小額か支払ってないかであるので、更に消費税の一部も還付を受けると一市民、一社会人としての租税負担義務を免除されることになり、過剰な保護になる恐れがある。そうであれば低所得層に対し、所得税・住民税の課税所得水準の引き上げや税率の引き下げを行うと共に、最低賃金を引き上げるなど、所得面での救済を行う方が望ましい。
制度設計の基本的な基準、軸が何であるかも問われている。(2012.3.2.)(All Rights Reserved.)
首都東京、生かされていない東日本大震災の教訓! (再掲)
2021年3月11日、東日本大地震・津波災害から10年を迎えた。東京電力福島原発事故への対応を含め、政府関連予算は2020年度までの10年間で約38兆円にのぼり、また日本各地からの応援や寄付等を受け、地元の人々により懸命に復興活動がなされた結果、地区差があるものの、復興はかなりの進展を見せている。地元の方々や支援活動をされた各方面の方々のご苦労に心から感謝し、称えたい。またこの災害により、命を失った方15,899人、行方不明者2,528人となっており、心からのご冥福と行方不明者が1日も早く家族の元に返ることをお祈りしたい。
復興は進んでいるものの、10年経っても42,685人が避難者にのぼり、当時の巨大地震と津波、そして福島原発の炉心メルトダウンなどの状況を振り返ると、改めてその被害の甚大さを痛感する。
政府の関連行事やメデイアの報道は、どうしても追悼と被災地の復興活動の継続に焦点が当てられる。しかし大震災は、東日本だけでなく、関東でも首都直下地震や東海、近畿、四国地方では南海トラフ地震による被害が今後30年前後に発生する可能性が高いと伝えられている。日本列島を巻き込む大災害は、その他火山の噴火や異常気象による大洪水などの恐れがあるので、東日本の復興継続と共に、その他の地域、特に諸機能が集中し、人口密度の高い首都東京の震災への備えがこれで良いのかに注目しなくてはならない。
1、教訓が未だ活かされていない首都東京
東京を中心とする首都圏については、東日本大地震の教訓を受けて、道路・歩道の渋滞、帰宅難民などへの対策として、一時避難所や備蓄、耐震補強のほか、緊急対応のための道路規制、ハザード・マップの作成など、一定の対応が行われている。しかしこれらの措置は、多くの努力を要しているものの、東日本大地震規模の巨大災害にはほとんど無力とも予想される。
東京には、1,300万の人々が生活し、近隣から数百万の人々が東京に往来している。また日本経済の中枢部門をはじめ、学校、文化・スポーツなど多くの民間機能が集中している。更に、国会、裁判所の中枢機能に加え、緊急時には東京都などと共にその対応に当たるべき全ての中央官庁が集中している。また国民統合の象徴として皇居があり、その安全を確保しなくてはならない。
大災害が発生した際には、行政はこれら全ての安全を確保するために膨大な救援、救出活動を集中的、同時並行的にしなくてはならない。シュミレーションなどするまでもなく、とても手が回らないと予想される。何かを守り、何かを座視するしかない。相手は、「経験したことがない大災害」であるので、旧来の常識や既成概念では対応し切れないことを、福島原発事故を含む東日本大災害から学ぶべきであろう。
政府による『東京一極集中解消』2020年目標は断念された。ある意味で東日本大地震の教訓の風化の象徴とも言えないだろうか。
2、政府委員会が大規模災害に警鐘
2014年、政府の地震調査委員会は首都直下地震が「今後30年で70%」との予測を公表している。その後この予測は繰り返し述べられる毎に発生確率は高くなっており、首都直下地震はもはや過去のものや遠い将来のものではなく、今生活している国民の生涯において起こりうる現実となっていることを示している。
首都圏を中心としたマグニチュード7相当以上の過去の地震は、1703年の「元禄関東地震」(M8.28)と1923年の「関東大震災(大正関東地震)」(M7.9)を挟んで次のように発生している。
1703年12月 「元禄関東地震」(M8.28)
1855年11月 安政江戸地震 (M6.9)
1894年 6月 明治東京地震 (M7.0)
同年10月 東京湾付近の地震 (M6.7)
1895年 1 月茨城県南部の地震 (M7.2)
1921年12月茨城県南部の地震 (M7.0)
1922年4月浦賀水道付近の地震(M6.8)
1923年9月 「関東大震災」 (M7.9)
関東地方は、東西に太平洋プレートとユーラシア・プレート、これを挟んで南北に北米大陸プレートとフィリピン海プレートがあり、元禄関東地震と関東大震災はフィリピン海プレートの境目の相模トラフで発生した大地震とされている。首都圏に関係する地震、津波の誘因としては、この他に東日本大震災に関係する日本海溝や東海地方から四国沖に伸びる南海トラフなどがある。
関東、東海地方については火山爆発も注意を要する。
3、政府組織・制度においてシンボリックな抜本的措置が必要
民間組織・団体や東京都及び市区町村において、それぞれ対策を検討し備えることは不可欠であろう。それは誰のためでも無い、自分達や家族、関係者の安全、安寧のためだ。
しかし東日本大震災レベルの直下地震等が首都圏で発生し、大型津波が発生すると、1995年1月の阪神・淡路地震を上回る被害、混乱が起こるものと予想されている。2011年3月の東日本大地震の際にも首都圏で震度6を超える揺れを経験したが、道路は車道、歩道共に渋滞し、公共交通は止まり、電話・携帯による通信は繋がらず、多数の帰宅難民が発生し、その状況は翌朝まで続いた。電気、ガス、水道などのライフラインが被害を受けていれば被害は更に拡大し、回復には更に時間を要することになる。
最大の問題はライフラインの確保であるが、大災害に対応し、司令塔となるべき中央官庁の機能をどの程度確保出来るかである。物理的被害は予想もつかないが、災害が深夜や早朝、祝祭日に発生した場合、必要な人的資源の確保は困難で時間を要することになっても仕方が無いであろう。‘経験したことがない大災害’に遭遇し、‘経験したことがない混乱等’が起こったとしても、自然のなせること、誰も責めることは出来ない。それぞれの立場で被害に備え、耐え、命を守る努力が求められるであろう。それも相当期間に及ぶ可能性がある。
(1)そうなると危険の分散を図ることが最も効果的となる。政府はこれまで幾度となく、東京一極集中を避けるため、中央省庁や大学の地方移転を試みてきたが、部分的な専門部局の分散に留まり、一極集中解消にはほど遠い。
米国の他、ブラジルや豪州などのように、政治・行政機能を密集地域から切り離し、新たに政治・行政都市を造ることも考えられるが、日本にはそれにふさわしい安全な地域を確保することは難しそうだ。しかし1つの有効な選択肢ではある。
それは、日本独特の国民統合の象徴機能である皇居を宮内庁と共に京都など近畿地方に戻すことであろうか。天皇の象徴機能については憲法に明記され定着しており、皇居を移転しても機能自体に何ら影響しない一方、ご公務については憲法上国会の召集など10項目に限定されているので、移転は相対的に容易と見られる。更に、京都等に戻ることは歴史的に理解されやすく、また地方に新たな息吹をもたらし、地方活性化にも繋がる可能性がある。
憲法上公務とされる10の業務については、現在では交通・運輸、通信が飛躍的に便利になっており、国会召集時など限られた折りに東京に行幸されることは可能であろう。宿泊が必要な場合には、年数回しか使用されていない迎賓館(赤坂離宮)に所要の宿泊施設をご用意するなど、対応は可能のようだ。また外国使節(各国大使等)の接受等については、京都の御所にて行うこととすれば、京都や近畿地方の歴史や文化等を外国使節に紹介する機会ともなろう。
また考えたくはないが、もし将来首都圏がミサイル等で攻撃されると、政治・行政機能と象徴機能が同時に被害を受ける恐れがあるので、これを分離しておくことが安全保障上も意味があろう。
無論どの選択肢にしても、現状を変更することには困難があろう。しかし、政府地震調査委員会が東京直下地震など経験したことがない大災害が現実に起こりうると考えているのであれば、これまでのような対応では不十分と見られるので、これまで実施されたこともないような措置を本気で検討、実施する必要があるのではないだろうか。
(2)江戸城趾の活用方法については、城趾内の「江戸の自然」の保護を図りつつ、可能な範囲で復元を行い、歴史観光施設として整備し、また一部を国民の憩いの場として開放すると共に、大災害時や緊急時の避難場所となるよう整備するなどが考えられよう。特に江戸城趾には四方に門があるので、災害時、緊急時には門を開放し、四方から城趾内に避難が出来る。また緊急車両が災害時、緊急時に通行できるよう、城趾内の通路等を整備しておけば、渋滞が予想される一般道を通らずに迅速に移動できるなど、災害時、緊急時への活用も期待できる。(2021.3.31. All Rights Reserved.)
(はじめに)JR東海は2024年3月29日、リニア新幹線の品川―名古屋間について、2027年の開業を断念する方針を明らかにた。最難関工区とされる南アルプストンネル(全長25キロ)のうち、静岡県内での工事を同県が認めず着工できていないためだ。同工区の工事は約10年掛かるとされているので、開業は早くても2034年以降に大幅に遅れる。
静岡県との協議は既に数年間行われてきており、同県が合意しても少なくても更に10年遅れ、そのための膨大なコストが漫然と掛かる上、大衆交通の利便性が進まないことになるので、社会的コストは計り知れない。現在案では、大井川の下にトンネルを通す方式だが、沿線及び下流の水資源の確保や環境への悪影響が懸念され、それを回避するための上流に人造湖を建設し水を大井川戻す工事も莫大な費用が掛かり、更に今後の急速な気候激変を考慮すると効果と安全性などに疑問が尽きない。
何故、計画を速やかに変更し、大井川の横断については空中トンネルとしないのか。何事も日本では1度決めると是正できないことが多い。それは官民とも同様の要だ。
このような観点から本稿を再掲する。(追補:2024年3月30日)
リニアモーターカー(リニア新幹線)、越すに越されぬ大井川!
― 大井川陸上(空中)トンネル化を提案する ― (再掲)
超伝導リニアモーターを利用したリニア中央新幹線は当初東京―名古屋間の2027年開業を目指して建設が開始された。東京―名古屋間40分の夢の超特急だ。
しかし大井川の地下に通すトンネルが水の流れに影響し、静岡県の下流への水資源を枯渇させ、流域の農業や生態系等の環境に大きな影響が出るのではないかと懸念され、同県知事が着工を了承していない。各種の環境影響調査、協議等が行われているものの、大井川トンネルの着工が出来ないままとなっている。2029年以降の開業についても見通せず、総事業費は約10.5兆円に増加するとされている。正に、越すに越されぬ大井川だ。
大井川の下にトンネルを通すことにより流れ出す大量の水を川に戻すなどの案が検討されている。しかしそれには莫大な費用と時間が掛る上、それにより下流での従来の水量が確保出来るかは明らかでない。更に将来予想出来ない豪雨に見舞われた場合、水還流設備は対応出来るのか、またトンネル自体が絶え得るかが懸念される。悪化する気候変動の中で自然の力を見くびることは出来ない。
そこで大井川の工区だけ陸上トンネル(大井川空中トンネル仮称)とすることを提案したい。恐らく景観の問題等で反対はあるだろうが、景観になじむデザインにするなどにより解決出来るだろう。例えば、トンネルの一部を硬質ガラスでリニア新幹線の通過を可視化すれば、撮り鉄ファンにとっては格好のスポットとなろう。乗客も一瞬の外の景色にほっとするだろう。トンネルの上部に遊歩道を築いて観光化することも考えられる。本件は経済社会問題として検討されるべきであろう。
大井川工区の陸上トンネル化を行い、リニア新幹線の早期開業を期待したい。
(2023.1.9.) (Copy Rights Reserved.)
Ukraine in between two camps with different values, Russia and NATO (Posting anew)
Russian President V. Putin declared the annexation of 4 Provinces in Ukraine, namely Donetsk, Luhansk (the full areas), and Kherson and Zaporizhzhia (in full or the areas held by its troops), after signing the Annexation agreements with four pro-Russian Provincial leaders on 30th September, 2022, and the agreements were ratified by the Russian Federal Assembly in early October.
Three days earlier, the referendums on joining Russia were carried out in the four provinces and approved with over 90% majority except for Kherson which marked 80% level approval.
President V. Zelenskyy of Ukraine quickly denounced the referendums carried out in four Provinces as invalid and illegal, and also the Russian move to annex them based on the results such referendums.
In response, Ukraine formally requested an accelerated accession to NATO on 30th September,2022.
The U.N. General Assembly adopted Resolution condemning Russian Annexation of four eastern Ukraine regions under the title of “Territorial integrity of Ukraine: defending the principles of the Charter of the United Nations” on 12th October, with 143 countries in favor, 5 countries against (Belarus, North Korea, Nicaragua, Russian Federation, Syria). 35 countries abstained.
Ukrainian President Zelenskyy repeatedly expressed his pledge to retake all of the Ukrainian territory held by Russia, while expressing his intention not to negotiate with Russian President Putin in person.
This indicates that the war is likely to drag on into the winter.
- A need to cope with another War, Covid19 and worldwide Inflation
Against the backdrop of the regional war in Ukraine, the World has been fighting against three-year long Covid19 and a high inflation as many industrialized countries now seek an exit from the inflated economy temporally sustained by the massive government spendings and lending. On top of it, the United States and other NATO countries initiated wide-ranging sanctions against Russia, which are adversely affecting the World economy, resulting in acute energy shortage and rapid price-hike and other restrictions on business transactions with Russia. As the war in Ukraine is dragging into the winter, many European people, not to mention Ukrainians themselves will suffer from coldness caused by the energy shortage, in particular natural gas and oil while fighting against Covid19 and flu. It is feared tens of thousands people might die during the freezing winter. The death toll might be more than the total death toll in Ukraine. Unfortunately, the corona virus pandemic seems to recure again in many parts of the World.
While the Russian invasion in Ukraine should be strongly condemned and Russia should bear the consequences, it is indispensable to avoid such fatal hardship in Europe and elsewhere in the World because of severe shortage of energy and food. The NATO initiated sanctions against Russia does more harm to Europe and the World now. Even during the Cold War era, NATO initiated to set up the Coordinating Committee for Multilateral Export Controls(COCOM )in 1949 until 1994 restricting trade with the Soviet Union only on weapons and other sensitive goods. Japan and Australia joined the regime. It was replaced in July,1996, by the Wassenaar Arrangement on Export Controls for Conventional Arms and Dual-Use Goods and Technologies with 42 participating states including many former Warsaw Pact countries. It is designed to promote transparency and greater responsibility in transferring conventional arms and dual-use goods and technologies to non-member countries.
Now the wide-ranging sanctions including the restriction on SWIFT, which facilitates quick financial transactions among financial institutions throughout the World, affects Europe and the entire World as side effects. The Sanctions against Russia should be limited to weapons and sensitive goods. The Wassenaar Agreement should be expanded largely such as the scope of products to be applied ranging from relevant weapons, dual use goods and technologies to IT related goods, communication tools, outer-space goods, rare metals, and related intellectual properties, and so on. Such an expanded Agreement may be also applicable to China and North Korea.
Against the background of the war in Ukraine, the World now needs to cope with the 3-year long Pandemic and steep inflation as a backlash of massive government spendings and lending operations to sustain economic slowdown elsewhere in the World, while supporting Ukraine with weapons and others. People in the World, especially in Europe and Japan, feel an acute shortage of gasoline, natural gas and wheat as well as job opportunities due to 3-year long economic stagnation, and are suffering from a steep price hike in daily necessities with persistent constraints and restrictions on daily activities. The prolonging war in Ukraine has been added to the above global war since February,2022, thus aggravating the economic and social activities in most parts of the World. Already the pandemic alone took over 6.6 million lives in the World, which is far more than the death toll in Ukraine. And if the sanctions including the SWIFT restrictions are maintained into the winter as the war in Ukraine prolongs, it is feared that tens of thousands, or millions lives in Europe may die from freezing cold weather because of electricity shortage.
We should put more emphasis on the global war against Covid19 and severe inflation which affect adversely the daily life in the entire World, while providing Ukraine weapons and other human supports.
- Territorial issue and Peace settlement in Ukraine
There is no justification for the Russian invasion in Ukraine. At the same time, we should give fair evaluation of the historical and geopolitical background of Ukraine and Russia.
(1) Historically, Ukraine used to be one of the core members of the Soviet Union after Russia. After the fall of the Soviet Union, Ukraine belonged to CIS (Commonwealth of Independent States), and kept distance from Russia after 2014 as the democracy movements advanced there and it is leaning toward EU and NATO, especially in the central and western provinces. However, Russian-speaking people and influence remain there, in particular, in the eastern provinces. Russia still has a big stake there although nuclear weapons were taken away.
(2) Geopolitically, Ukraine is situated in between Russia and expanded EU and NATO. NATO is composed of 30 countries now including most of the former Warsaw Pact countries. Now Sweden and Finland, which has been keeping neutrality, are in the process of joining NATO. In a sense, it is situated in between two camps with different basic values, namely in between democracy and authoritarian regime. The Warsaw Pact Organization was disbanded after the collapse of the Soviet Union and the democratization of most of East European countries. While the East- West Cold War was over, NATO not only continues to exist but also expands eastward from 16 member countries to 30 countries assimilating most of the former Warsaw Pact countries. That has been causing a security concern on the part of Russia, especially in the mind of President Putin backed by nationalist philosophers and nostalgy for the Soviet empire.
As a whole, for Ukraine, it is a matter of security and existence, and for Russia, it is a matter of security and rivalry with NATO and EU over basic values and governing system. Geographically, both Ukraine and Russia cannot move from that setting. NATO as well as Ukraine and Russia should respect each other such a geographical and historical setting.
(3) The Minsk Truce Agreement of 2014 between Ukraine and Russia expired on 21st January,2022, failing to solve an autonomous issue of two self-proclaimed rebel republics of Donetsk and Luhansk which had been denying the Kyiv’s control. And Russia recognized the independence of the two self-proclaimed republics of Donetsk and Luhansk. After the Russian invasion in Ukraine in February,2022, and the subsequent war in east and south-east regions in Ukraine, the Kremlin-backed so-called ‘Referendums’ on joining Russia were carried out in four provinces, namely southern Kherson region and part of Zaporizhzhia in addition to adjacent eastern Donetsk and Luhansk in September ,2022. Three days after the approval in the referendums in all four provinces with over 90% approval votes except for below 90% in Kherson, on 30th September,2022, those four provincial leaders signed respective Treaties with Russian President Putin to join Russia. Ukrainian President V. Zelenskyy repeatedly expressed the unacceptance of such referendums and his intention to recover all the Ukrainian territories held by Russia. It is also denied by NATO countries. It is questionable especially in the case of Kherson and Zaporizhzhia whether they have legitimate authority to sign any treaty with Russia, while Donetsk and Luhansk, which maintained a certain degree of independence from central Ukraine since 2014, may have had such power as an Independent Republic.
3.Exert more Wisdom than Weapons for Ukraine
During the eight-year long Truce Agreement, it was designed to settle the autonomy issue of the two eastern provinces. But such efforts failed, and President Zelensky, instead, openly expressed his intention to become a member of NATO.
For Russian, the constant east-bound expansion of NATO has been seen as a threat. President V. Putin expressed his view at a press conference in April,2008, on the occasion of the NATO summit that “any attempt to expand NATO to the Russian borders would be seen as a direct threat”. At that time, NATO had already expanded its membership from 16 to 26 after the Soviet Union, therefore the East-West Cold War, was over. Now it is embracing 30 countries with the U.S. military bases and the THAAD missiles in Romania.
(1) No justification for the Russian aggression in Ukraine
Russian invasion in Ukraine cannot be tolerated and should be condemned.
Every sovereign country has the right to defend itself against any aggression.
In support of such Ukraine’s efforts to defend itself, many NATO member countries including the U.S. and others have been sending weapons after weapons together with other civil support upon request from Ukraine.
Such a support is necessary. But we should exert more wisdom than weapons. Wisdom to stop the armed conflicts and the bloodshed. And wisdom to realize a peaceful settlement in Ukraine. Further military support, in particular, sophisticated longer-range missiles and other weapons from the NATO countries to Ukraine seems to lower a threshold for a war in Europe, or, at the worst, a nuclear war in Europe. Also a wide-ranging sanctions against Russia would adversely affect the World economy sooner or later like a boomerang.
(2) Needed recognition of the Co-Existence in the face of the differences in basic values and governing systems in the World
At a time of apparent differences in basic values and governing systems in the World seen in such cases as the Russian invasion in Ukraine and the trade issue with China, we need a practical philosophy governing the World now.
There are basically 3 alternatives. Namely, 1) defeat the opponent, completely, if possible, 2) accept the domination by the opponent, or 3) co-existence with different values and governing systems.
The first two alternatives will not be accepted by the other side. The World is divided in these two cases, and a fear of a war lingers. If the World is to be one globe, therefore, Co-Exis tence seems to be the only realistic alternative.
Democracy is based on human equality, acceptance of diverse values and belief, and pluralism. And given the present nation-to-nation relations which are based on the territorial sovereignty with its own basic values and governing systems, Co-Existence is the realistic philosophy governing the present international relations, if a democratic method is to be applied in handling international affairs as well.
And sometime in the future, the World of Co-Prosperity may be realized.
By such a time, and if the differences between countries or groups of countries in basic values and governing systems continue to damage or erode national interests and national security of one country (or group of countries), each country or a group of countries may have to set some regulations on relevant fields such as trade, entry permit, financial transactions and intellectual properties to fill such a gap, while trying to maintain freer exchanges among countries and a globalization movement. In trade, for example, it is indispensable to equalize the level of freeness between some domestic market economy and the internationally recognized free market economy to retain a fair trade and competition. It is a process to realize a free and fair trade between non-free market economies and freer market economies. (2023.1.4.)
社会保障と税の一体改革に欠ける視点 (改定版、総合編)<再掲>
<はじめに>
2013年1月、野田民主党政権が打ち出した社会保障と税の一体改革を政権交代を受けて引き継いだ形の安倍自・公政権は、消費税10%への引き上げを実施したものの、社会保障改革につ社会保障の財源を目的税的に消費税に特化しつつ、その余剰を社会保障以外の歳出財源に振り替える一方、年金の支給年齢の引き上げや介護委保険料の引き上げを図りつつ国民年金から天引きし、また支給基準自体の引き下げを図るなど、社会保障費の圧縮を行う結果となっている。これは、社会保障費の圧縮を図りつつ社会保障以外の歳出財源を捻出するとの観点からは評価されるのであろうが、消費増税は行われても社会保障自体は改善するどころか、国民年金は圧縮され介護保険料など国民の実質負担は高くなるという結果を招いている。消費増税により期待された社会保障を通じる所得の再配分が適正に行われていないことを意味する。
子育て支援の拡充や出産費の保険適用なども社会保障の対象分野であるが、10%への消費増税により社会保障がどのように改善されたかを点検すると共に、社会保障と税の一体改革においていわば冷や食を食べさせられて来た社会保障の改善を図ることが必要になって来ているようだ。このような観点から本稿を再掲する。(2023/04/26追記)
野田政権は、社会保障と税の一体改革大綱の素案を取りまとめるため、2011年12月12日、関係5閣僚会議で社会保障分野の検討を開始した。これに先立ち厚生労働省は社会保障改革案の中間報告を公表した。
中間報告は、年金、医療・介護、及び子育て分野まで網羅しており、受給資格期限の10年への短縮、低所得層に対し年金加算、国民健康保険料や介護保険料の軽減(給付増要因となる)など、低所得層、パート、主婦などに一定の配慮をしているが、高所得者の年金減額、70-74歳の窓口負担引き上げ、外来患者への1回100円の負担上乗せ(料金収入増要因となる)など、収入を図る一方給付水準を下げ、利用者に負担を掛ける内容となっている。他方、年金支給開始年齢の引き上げ、デフレ下での年金給付額調整(給付水準引き下げ)、厚生年金保険料上限の引き上げなどについては法案提出を先送るとしている。
一方消費税増税を中心とする税制改革については、年末の12月29日、民主党税調と一体改革調査会の合同会議を野田首相出席の下で開催し、消費税を「2014年4月に8%、15年10月に10%」に引き上げることなどを決定した。
そしてこれら一連の検討を経て野田内閣は、2月17日、消費税増税を軸とした社会保障と税の一体改革大綱を決定した。
同一体改革大綱は、1月に政府・与党が決定した素案とほぼ同様の内容で、消費税増税を含むものであり、社会保障制度自体の改革については現行制度を前提とした若干の手直し程度となっている。基本的な制度として、破綻状態の国民年金の改革には一切言及がない。一方厚生年金と共済年金の統合を検討するとしているものの、厚労相はそれは時間の掛かることであり、且つ“消費税増税には関係しない”と説明しており、そうであるなら何故わざわざ異なる給与体系・労働条件の厚生と共済を統合しなくてはならないのか疑問が残る。
増税方針の決定は一つの政治的リーダーシップの発揮として評価されるところであり、その責任はいずれ国会で審議され、最終的には選挙において問われ、国民の審判に委ねられることになろう。だが増税案が示されても、年金制度などの社会保障制度改革について実質的な方針が示されなければ「一体改革」にはならない。しかしそのベースとなる大綱において低所得層、パート、主婦などに一定の配慮をしており評価されるものの、基本的に次の諸点が欠けている。
1、欠けるコスト削減の側面
昨年末の民主党合同会議においての上記の増税方針を決定した際、09年8月の総選挙で約束したマニフェストを重視するグループよりの意見を踏まえて、議員定数の削減と公務員給与の引き下げの実施や景気が好転していない場合の増税凍結などを了承し、公務員給与の引き下げについては4月より平均7.8%の削減(2年間)ているが、年金や医療等の社会保障制度を実施・管理するためのコストなどには触れられていない。今回採択された国家公務員給与の引き下げについても2年間の削減であるので、いわば福島原発事故に伴う賠償や被災地の復旧・復興のための当面の財源を確保するための財源と見られるところであり、年金や医療など、中・長期に必要なコスト削減にはならない。
拠出を前提とする国民年金、厚生年金、共済年金は、拠出者が6割内外に激減している国民年金を中心として破綻状態にあり、少子(拠出負担者)の漸減と高齢化・長寿化(受給者)の漸増という今後の傾向を考慮すると、現行体制では年金勘定の赤字は更に悪化することが予想される。
制度が破綻状態にあり赤字がより深刻化すると予想される場合に、まず行われるべきことは抜本的なコスト削減であり、制度のスリム化であろう。企業であれ、どのような組織、制度であれコストの観念が無くては事業は成り立たず、将来は無いと言って良い。
景気停滞期に雇用を維持するというワーク・シェアリングの観点からすると、年金事務分野等での給与ベース自体を実質的に引き下げ、抑制しつつ、職務に励んでいる職員には気の毒ではあるが、自主的な希望退職を促しつつ可能な範囲で優先度の低い部局等の人員を削減して行くことであろう。それが困難であれば実質的な人員整理を3年程度の期間掛けて実施するのも止むを得ない。東北地方出身の職員については、被災地の行政事務、復興事業支援などを希望する者を募り、人材の活用、斡旋を図ることなども可能であろう。多くの企業は数年前よりワーク・シェアリングを実施している。それも一つの社会貢献であり、社会的な責任を果たしていると言える。 その他一般管理費、事務費、交通・通信費等の諸費用を抜本的に節減するとの姿勢が望まれる。一度に実施困難であれば、3年間程度で段階的、継続的に行えば良い。それは制度を存続させるための組織の長の責任であり、また政権与党及び野党を含む国会の責任であろう。
また年金事務の制度的な簡素化が不可欠である。年金事務については、日本年金機構を頂点として、全国の都道府県及び市町村に9ブロックの本部と地区毎に年金事務所が多数設置されている。これらの事務所、施設を全て廃止、売却し、都道府県、市町村に事務を集約するなどの改善が望まれる。国民健康保険事務や国民年金、旅券の交付なども地方公共団体に移管されているので可能であろう。年金は健康保険と同様に地域住民に密着した業務であるので、地方公共団体の業務サービスに適している。公的年金の積立金を管理・運用している年金積立金管理運用独立行政法人についても、民間の投資・金融・保険会社にコンソーシアムを形成させるなどして何らかの形で管理運用を民間専門機関に委託できないかなどを検討することが望まれる。
因みに、中央官庁は設置法があり縦割りとなっていることから、ハローワークや労働基準局の他、財務局や法務局、河川・道路地方整備局事務所など、多くの省庁が全国に独自の事務所、施設を持っているが、公的債務が1,000兆円を超える状況であり、大幅な財政赤字が継続している今日、各省庁が全国に事務所、施設を抱えている余裕はない。地方自治促進の意味からもこれらの業務、事務を原則地方公共団体に移管し、中央官庁は調整業務のみを行うなど制度の抜本的な簡素化、集約を図ることが時の流れと言えよう。国や地方公共団体が数多くの国・公有地や施設を抱えていることは、多額の人件費、管理費が掛かり財政を圧迫している上、民間移管すれば得られる固定資産税等の機会を放棄していることになるので2重にコストを掛けている。国家レベルでの財政赤字である今日、国・公有地や施設を抜本的に廃止・売却し、民間での活用を図ることが望ましい。それにより地方経済も活性化されることが期待される。ほとんどの地方公共団体の公有地や施設についても同じようなことが言える。
日本の戦後の行・財政モデルは、各種の制度、社会インフラ等が未整備で、地方公共団体も整っていない状況で高成長期に築かれて来たものであるが、今後少子、高齢化・長寿化により、税の負担者が減り、社会保障関係支出が増加することは避けられないので、未来を見据えた簡素で効率的な行・財政モデルを構築して行く必要もあろう。
事業的には、年金給付額を引下げたり、給付年齢を引き上げることにより支出を減らすことも可能である。しかしそれは年金事業の本来的な目的である年金給付サービスを低下させることになり、年金への信頼性を著しく失わせる結果となるので、行うとしても最後の手段とも言える。最初に抜本的なコスト削減を行うことが不可欠であろう。
2、最大の欠陥である国民年金など、見えない抜本改革
国民、厚生、共済各年金とも拠出形であり、厚生、共済両年金の一本化が検討されているが、最大の欠陥は国民年金にある。国民年金にのみ加入している者の2011年4―7月の納付率は55.0%だが、失業等で納付免除者を加えると納付率は更に低くなる。納付していない者が半数近くいるので、受給者層が増加の一途であることを考慮すると、国民年金(基礎年金)制度は持続不可能な状況になっている。他方生活保護者は208万人以上に達しているが、国民年金の給付額は平均5.3万円であるのに対し、東京都の生活保護支給額は30代単身で13万円以上、60代後半単身でも8万円強で、家族構成などで加算されることになっているため、国民年金の方が掛け金を支払っていながら受給額は少ないので、納付意欲を失わせる形となっている。
現在、厚生年金と共済年金の一本化や国民年金(基礎年金)との統合などが検討されているが、まず最大の欠陥を抱えている国民年金の在り方を検討することが先決であろう。国民年金の納付率を上げると共に、不加入者をどう解消して行くかが検討されなくてはならない。国民年金も拠出制であり、本来的には拠出していない者には給付も無いことになる。基本的には受益者負担と自己責任の原則に則らざるを得ない。また生活保護支給額に対し、国民年金給付額が逆差別されている状況も是正する必要があろう。
社会保障改革案では、基本的には中間報告に沿って低所得者への加算や高所得者の年金減額など、現行制度に基づいた微調整、手直にしか過ぎず、国民年金の抜本改革には触れていない。拠出型の国民年金は拠出者に対して継続するとしても、いずれの年金にも拠出していない者をどの程度、どのように救済するかについては、納税や拠出努力をしている者との公平性や生活保護との関係を含め、基礎年金をどのように制度設計するかが問われていると言えよう。
また国民、厚生、共済の3つの年金制度があり、分り難いとの評もあり、その面は否定できないが、3つとも雇用形態や所得水準、賃金体系などが異なるので一本化には複雑な調整が必要になるばかりか、一本化すれば年金問題が解決するというものでもない。統合することによりそれぞれの問題点が見え難くなり、或いは共倒れする恐れがある。国民、厚生、共済の3年金制度とも料率納付を前提としているので、原則として拠出者には入会時の条件になるべく近い水準で給付することが期待される。それなくしては年金の信頼性は維持出来ない。問題は、拠出型3年金の適正な給付を確保すると共に、いずれの年金についても受給資格が無い者をどう救済し、財源をどう確保して行くかである。しかし努力しなくても救済される、努力しても報われないというような意識が生まれ、国民の間にモラルハザードを引き起こすようなことは健全で活力ある社会発展を図る上で避けなくてはならないのであろう。
3、社会保障に関する新たな制度設計と消費税増税
上記のような観点からすると、抜本的なコスト削減を行わず、また国民年金を中心とする年金制度の本質的な改革を行わないままで消費税などの増税を実施すれば、制度上の不備、赤字体質を残したままコスト高で非効率な年金制度を引きずることになり、問題を残す可能性が高い。拠出制を残すのであれば、受益者負担と自己責任という基本的な基準に沿って、抜本的なコスト削減を図った後、高額所得者への給付の留保や定年制の引き上げに連動した給付年齢の引き上げなどを実施する方が分り易い。その上で全国民を対象とした税による最低限の基礎年金の導入を検討すべきであろう。その際拠出型の年金については、基礎年金に相当する部分について給付額を削減すると共に、料率も引下げるなどの調整が望ましい。また生活保護制度については、適用を基礎年金受給年齢までとするなどの調整が必要であろう。
医療費や介護費についても、赤字であり制度存続が困難であれば、受益者負担の原則に沿って窓口料金を引き上げるなど、個人負担を若干引き上げることも止むを得ないのであろう。介護保険については、年金受給者も支払う義務があり年金給付額から差し引かれ、実質的な年金給付額の減額に当たるので、年金以外の他の所得がない者に対しては免除するなどの配慮をすると共に、健康保険料や窓口負担を全体として引き上げることも止むを得ない。しかしその前提は、抜本的なコスト削減の実施であろう。
福祉は、高所得者が負担し生活困窮者や低所得者などを救済するとの考え方があるが、社会保障は所得に応じてではあるが国民全体として負担し、貧富の差なく適用されるべきものであり、低所得者が一切負担や努力をする義務がないというものでもない。受益者負担と自己責任の基準に沿って低所得者も応分の負担はすべきものであろう。それなくしては負担しなくても救済される、努力する者が損をするというモラルハザードを起す可能性がある。消費増税に際し、逆進性を緩和するため低所得者には税の還付をするとの案があるが、制度が複雑になり事務を肥大化させると共に、低所得者は所得税等も小額か支払ってないかであるので、更に消費税の一部も還付を受けると一市民、一社会人としての租税負担義務を免除されることになり、過剰な保護になる恐れがある。そうであれば低所得層に対し、所得税・住民税の課税所得水準の引き上げや税率の引き下げを行うと共に、最低賃金を引き上げるなど、所得面での救済を行う方が望ましい。
制度設計の基本的な基準、軸が何であるかも問われている。(2012.3.2.)(All Rights Reserved.)
地球温暖化ー融ける氷海、氷河と荒れる気候変動は止められるかー再掲
2015年3月14日から18日まで、第3回国連防災世界会議が仙台で開催された。東北大地震・大津波から5年目を迎えるこの時期に、大震災の経験と教訓をこの地から世界へ伝え、対応を考えることは大変意義があったと言えよう。他方、折しも南太平洋のバヌアツを大型サイクロン「パム」が襲い大きな被害を出していたが、根本的な原因の一つである荒れる気候変動、温暖化への対応については、途上国側は先進工業国の責任を強調し、国際的な対応を主張する先進工業国と対立し、抜本的な対応については平行線のままで終わった。しかしその間にも海水温は上がり、海流は変化し、地球の気候は悪化している。地殻変動は止められず、被害を防ぐしかないが、気候の劣化については世界が協力すれば止められる。気候の劣化に大きく影響する海や海流の温度や流れは、温度差に敏感な漁業資源にも影響する。何時までも平行線の議論をしている時ではなく、世界が具体的に行動する時期ではないのだろうか。世界のリーダーがこの問題に真剣に向き合うべき時のようだ。
国連の「気象変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第2作業部会は、横浜で地球温暖化の影響を検討し、2014年3月31日、報告書を取りまとめた。その中で「全ての大陸と海洋で、温暖化の重要な影響が観測されている」との認識の下で、“北極海の海氷や世界各地域における珊瑚礁は後戻り困難な影響を既に受けている”などとして生態系や人間社会への影響を指摘している。そして温暖化が進むリスクとして、世界的な気温の上昇、干ばつなどによる食糧生産の減少、大都市部での洪水、異常気象によるインフラ機能の停止などを盛り込んでいる。当コラムも、北極海の海氷の融解と縮小ブログでもこのような状況を2008年頃から指摘して来ているが、それが国際的に理解され始めたと言えよう。
日本の地球温暖化への取り組みについては、環境省は、日本の温室効果ガスの削減目標を2020年度までに2005年度比で3.8%減とする方針である。温室効果ガスの削減目標については、民主党政権が2020年度までに“1990年度比で25%削減”との目標を提示し、国連総会でも表明している。環境省の上記の目標は、基準年を2005年としているが、1990年度比で換算すると逆に約3%増となるとされており、後退感が否めない。政府当局は、‘原子力発電が再稼働されれば高い目標に修正する’としている趣であるが、果たして原子力発電頼みで良いのであろうか。
1、意見が分かれる地球温暖化の原因
温暖化の速度、原因などについては議論が分かれている。スイスを本拠とする民間団体「世界自然保護基金」(WWF)は、2013年から40年までに、北極圏の氷は夏期には全て消えるとの報告を出している。国連の「気候変動に関する政府間パネル」が出した07年の第4次評価報告書でも、“ヒマラヤの氷河は2035年までに解けてなくなる可能性が強い”と指摘している。同グループはゴア米元副大統領と共にノーベル賞を受賞したが、氷河学者からは300mもの厚さの氷河がそんなに早くは融けないとの疑問が呈され、同グループがそれを認めるなど、信憑性が疑われている。地球がミニ氷河期に入っているとの説もある。
2、荒れる世界の気候
どの説を取るかは別として、着実に進んでいる事実がある。北極海の氷原が夏期に融けて縮小していることだ。衛星写真でも、08年においては6月末頃までは陸地まで氷海で覆われていたが、8月20日頃前後から氷海は陸地を離れ、海路が開け、砕氷船を使用すれば年間5ヶ月内外は航行可能となる。その期間は毎年伸びている。8月中旬には2-3週間程度砕氷船無しでも航行可能のようだ。6、7年前には、氷海が最も小さくなる8月下旬でも氷海は陸まで張り出ていた。また南極大陸などでは氷原がとけ、南極海に流れ出し海洋の水位を上げている。
これは今起きている現実である。短期的には夏の一定期間航行が可能になり、商業航路や観光、北極圏開発のビジネスチャンスが広がる。
他方それは温暖化への警告でもある。北極の氷海縮小は、気流や海流による冷却効果を失わせ、地球温暖化を早め、海流や気流が激変し気候変動を激化させる恐れがある。氷海が融ければ白熊や微生物などの希少生物も死滅して行く。取り戻すことは出来ない。北極圏の環境悪化は、米、露など沿岸5か国のみの問題では無く、この地球の運命にも影響を与えている。
現在、日本はもとより世界各地で気流や海流の動きや温度がこれまでのパターンでは予測できない荒々しい動きを示しており、局地的な豪雨や突風・竜巻、日照りや干ばつ、豪雪や吹雪などにより従来の想定を越えた被害を出している。それが世界各地で今起こっている。地球環境は、近年経験したことがない局面に入っていると言えよう。
3、国際的な保護を必要とする北極圏と南極大陸
同時に忘れてはならないのは、反対側の南極大陸でも氷河、氷原が急速に融けているという事実だ。またヒマラヤやアルプス、キリマンジェロ等の氷河も融け、後退しているので、これらの相乗効果を考慮しなくてはならない。
北極圏も南極同様、人類の共通の資産と位置付け、大陸棚の領有権や「線引き」の凍結や北極圏の一定の範囲を世界遺産に指定するなど、国際的な保護が必要だ。
4、必要とされる政府レベルの対応と生活スタイルの転換
それ以上に、地球温暖化の進行や気候変動の激化を食い止め、地球環境を保護、改善する必要性に今一度目を向けることが緊要ではないだろうか。それはこの地球自体を人類共通の遺産として保全することを意味する。
地球環境は、政府に委ねておけば良いというものではなく、家庭や産業自体が工夫、努力しなくては改善できない。比喩的に言うと、家庭で使用する電球を10個から7個にすれば日常生活にそれほど不自由することなく節電できる。企業やオフィスビルなどについても同様で、節電を図ればコスト削減にもなり、企業利益にもプラスとなる。レジ袋や必要以上の過剰な食物などを少なくして行けば生産に要するエネルギーの節約となる。また日本が環境技術先進国と言うのであれば、自然エネルギーの組織的な開発、活用や節エネ技術の更なる開発などで温室効果ガスの削減にそれぞれの立場から努力、貢献することが出来るのではないだろうか。またそのような努力から、地球環境にもプラスとなる生活スタイルやビジネスチャンスが生まれることが期待される。
しかし、政府や産業レベルでの対応は不可欠であろう。経済成長についても、温室効果ガスの減少を目標とし、再生可能エネルギーに重点を当てた成長モデルを構築する事が望まれる。原子力発電については、段階的に廃止することを明確にすると共に、再稼働に関しては、施設の安全性を確保する一方、各種の膨大な原子力廃棄物の最終的な処理方法を確立することがまず必要であろう。
また途上国援助においても、従来型の重厚長大なインフラ開発・整備ではなく、再生可能エネルギーを使用するなど、温室効果ガスの排出が少ない経済社会の構築を目標とする開発モデルや政府開発援助(ODA)モデルとして行くことが望まれる。
現在中国が、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立に向けて準備している。それが途上国における従来型の長大重工型、大量のエネルギー消費型のインフラ建設に投資されていくとすると地球環境の悪化に繋がることになるので、温室効果ガスの減少につながる環境改善インフラへの投資促進となることが望ましい。中国自体も、これまでのような高成長、高エネルギー消費の経済成長を継続すれば、いずれ住めない大陸となる恐れもある。
(2014.3.31./15.4.3.改定)(All Rights Reserved.)
北朝鮮(DPRK)は2022年に入り、1月5日(日本時間)に巡航ミサイルの発射実験を皮切りに、同月11日弾道ミサイル(極超音速ミサイルと公表)、14日弾道ミサイル、25日巡航ミサイル、及び27日短距離弾道ミサイルの発射(各2発)を行った。更に30日、中距離ミサイルとみられる発射実験(1発)を行い、ミサイル発射実験・訓練の実施をエスカレートさせている。30日の中距離ミサイルの発射実験は、2017年11月以来のものである。
いずれも東方向に発射され日本の排他的経済水域(EEZ)の外側(公海上乃至北朝鮮、ロシア沖の水域)に落下したものと見られている。日本への直接の影響を避け、また長距離弾道ミサイルではなく、短・中距離ミサイルの発射実験であり、一定の抑制的配慮をしているものと見られる。従って日本については、それをわきまえた対応が望ましい。
しかし今回の一連のミサイル発射は「発射実験」と言うよりは「実戦配備」を前提とした周到な「ミサイル発射訓練」とも言えるものもあり、朝鮮半島を中心とする北東アジアの安全保障情勢に現実的な影響を与え、緊張を煽ると共に、国連安全保障理事会の累次の決議に反するものであるので、自制を求めたい。
1、北朝鮮は「朝鮮戦争終結宣言」を望んでいない?!
(1)膠着状態の北朝鮮の非核化交渉
北朝鮮の非核化については、米国のトランプ前大統領の下で劇的な進展が期待された。しかし、2019年2月27、28日にハノイで行われた米朝首脳会談において、米国側は核施設の廃棄・査察と大陸間弾道ミサイル(ICBM)などミサイルの撤去を求め、朝鮮戦争の終結を視野に入れた全面的解決を意図していた。これに対し北朝鮮側は、一部核施設の廃棄の見返りとして国連安保理決議による経済制裁の解除、特に民生用、民需用物資への制裁解除((安保理決議2270号、2375号など5決議関連)を求め、段階的な対応を期待していた。しかし両者間の溝は埋まらず、「取り引き無し」(‘ノーデイール’)で終わり、休戦状態の終了、朝鮮戦争終結の期待も遠のき、非核化交渉は膠着状態となった。
(2)北朝鮮は休戦状態にある朝鮮戦争の終結を望んでいない!?
2021年1月に発足したバイデン政権は、「前提条件無しの会合」を呼びかけているが、北朝鮮側は応じていない。
このような中で、韓国の文 在寅(ムン・ジェイン)大統領は2021年9月の国連総会において、北朝鮮、米国、中国に対し韓国と共に「戦争終結宣言」に向けて措置をとることを呼びかけた。同大統領は、2022年5月の大統領任期満了までに南北間の平和プロセスの再活性化と“実質的進展”を希望するとした。
これを受けて韓国と米国の外交当局が宣言案につき協議し、2021年12月11、12日に英国で開催されたG7外相・開発相会議に際し、鄭義溶(チョン・ウィヨン)韓国外交部長官とブリンケン国務長官との間で「朝鮮戦争終結に関する宣言案」に原則として合意した。
本来、朝鮮戦争終結のためには、相互に敵対行為を行わないこと、境界の確定と経過措置としての緩衝地帯の設置、国連監視団駐留、北朝鮮の核兵器・ミサイルの撤去と駐留米軍の撤退、相互査察、南北交流の条件など詳細な取り決めが必要になる。しかし今回米・韓両国で原則合意された宣言案は、未だに休戦状態にある南・北間の敵対関係を終了させ、正式に朝鮮戦争を終結させ、和平のための対話を図るというシンボリックな宣言と見られる。
この文韓国大統領の呼びかけに北朝鮮は応じておらず、「宣言案」起草作業にも参加していない。北朝鮮の金与正国務委員(キム・ヨジョン、金正恩総書記の妹)は、9月に韓国大統領の「戦争終結宣言」提案を受けて、「前提条件が整えば、対面で会い、重要な“戦争終結”を宣言することも可能だろう。そうでなければ、“戦争終結宣言”は紙切れに過ぎない。」と論評している。
他方バイデン政権は、「前提条件を付さず、何処でも何時でも北朝鮮と会う用意がある。」旨繰り返し述べており、北朝鮮側にもその趣旨は届いているであろう。一般的には、「前提条件無しの対話」はオープンな呼びかけとして好意的に受け止められる。しかし「前提条件」が現在の、と言うよりトランプ大統領時代のハノイでの「取り引き無し」以来の米・朝関係のキーワードである。北朝鮮は、経済制裁の一部解除、特に石油を含む民生用物資への制裁解除が交渉継続の「前提条件」としている。米国が「前提条件」を付さず外交的対話に応じると表明しても、取引には応じないとの意図と受け取られてしまう。
北京で2022年2月に開催されているオリンピックには、北朝鮮は参加しないことを中国側に正式に伝えている(2022年1月7日)。いずれにしても北朝鮮は、2021年7月から9月に開催された東京オリンピック・パラリンピックに参加しなかったため、国際オリンピック委員会(IOC)により北朝鮮オリンピック委員会の資格が1年間停止する懲戒措置(2021年9月)が課されているので、今回の北京冬期オリンピックにはいずれにしても参加出来ない。北朝鮮が中国側に不参加の正式通報したのは、中国側の面子を潰すことなく金正恩総書記を含む代表団がオリンピック期間中に訪中しないことを示唆するためであったのであろう。同時に、これにより北京における南北首脳会談の機会は消え、「戦争終結宣言」も拒否されたものと見られる。
米・韓によりまとめられた「戦争終結宣言」は、シンボリックな宣言であっても、朝鮮半島の和平と非核化の出発点として重要な宣言と言えよう。現在の「休戦状態」が継続する限り、敵対関係は継続し、相互に挑発や核兵器やミサイル開発を含む軍拡競争は続けられることになろう。北朝鮮にとっては、「休戦状態」の継続は軍部を含む政権にとって国内引き締め、団結を維持するための都合の良い状態と言える。「戦争終結宣言」は敵対関係から和平に転換する契機となると共に、それが無ければ何時までも敵対関係に呪縛されたままになる恐れがある。
1月に入ってからの一連のミサイル発射実験・訓練は「戦争終結宣言」を当面望んでいないとのサインと受け取れる。核、ミサイルの排除を巡る北朝鮮との関係は、新たな局面に入っていると理解すべきなのであろう。交渉再開への門戸を開き、外交努力を継続する一方、国連の場で経済制裁の強化、拡大し、それに向けての国際世論の醸成と支持国の一層の拡大努力が必要となっているのではないだろうか。また韓国には戦域高度防衛ミサイル(THAAD)が配備されているが(2017年)、圧倒的な防衛網の整備が急務と言えよう。
2、北朝鮮労働党にとって「特別に重要な年」に誇示したい軍事力
北朝鮮は、2022年には、2月16日に故金正日(キム・ジョンイル)総書記の生誕80年、そして4月15日に故金日成(キム・イルソン)主席の生誕110年を迎え、「革命的大慶事の年」として輝かせるとしている。
この「大慶事」に際し、今日の北朝鮮の基礎を築いた祖先の意志を継ぎ、国力を増進させたことを内外に誇示するため、長・中距離弾道ミサイルや短距離戦術兵器を含む軍事パレードを行うと見られる。1月の一連のミサイル発射実験・訓練はその前哨戦と言えそうだ。
3、慣例となっている米韓合同軍事訓練への北の恒例の激しい反発
米韓合同軍事訓練は、毎年春と夏に行われるのが慣例になっており、米国が未だに指揮権を持っているので軍事的には必要であろう。2019年6月30日にトランプ米大統領(当時)が板門店を訪問し、軍事境界線を挟んで北朝鮮の金正恩委員長と握手し、挨拶を交わし、北朝鮮の非核化を巡る米・朝交渉への期待感が高まって以降は、平和ムード造りのため米韓合同軍事訓練は中止或いは抑制された形で実施され、また北朝鮮は核爆発実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験が中断するなど、相互に行動を抑制していた。
米韓合同軍事訓練は2021年には3月と8月に実施されているが、2022年3月に実施することで米韓安保協議(SCM)において合意されており、‘演習日程に変更はない’とされている。
北朝鮮は従来より、米韓合同軍事訓練が実施される毎に激しい批判を繰り返しており、国内的にも、TVや労働党機関紙その他で米国、及び韓国による北朝鮮侵略の準備であり、北朝鮮はそのような攻撃があれば南を焦土とするなどとして、過剰とも思える激しい反応をして来ている。
北朝鮮にとっては、隣接する韓国で米韓合同軍事訓練が行われることは、米韓両国の敵対的姿勢として国民に訴え、戦争ムードを演出し、国内引き締めのために格好の材料になっている。恐らく今回も同様の反応をするものと予想される。
北朝鮮のミサイル等の発射実験や訓練は、米韓合同軍事訓練への対抗として実施するという口実を北朝鮮側に与えているとも言える。米韓軍事訓練については、米国が未だに指揮権を有しているので必要であろうが、頻度や期間を縮小することや、机上訓練や訓練場所を北朝鮮から可能な限り遠い場所で行うなど、刺激しない形で実施することも現実的な選択肢となろう。
(2022.2.11.) (Copy Rights Reserved.)
給与増で国内消費増を図る経済モデルへの転換が急務
1、賃金上昇は歓迎も物価高騰で減殺
2023年7月に時給ベースの最低賃金が41円引き挙げられ、平均1002円となったことを歓迎する。反面、31年振りの4.2%レベルの引上げであり、31年もの長期に亘り最低賃金が抑えられて来たことを意味する。その上消費者物価が2020年比で総合5.2%増の高騰を示し、2013年以来の日銀のインフ目標2%を大きく上回る形となるので、実質賃金はマイナスとなる。
春闘による正規社員を中心とする賃上げ率も平均3.58%で、30年振りで歓迎されるが、反面賃金は30年以上低迷していたことを示すものである。その上政府・日銀が2013年以来容認して来た物価高騰で帳消しとなり、実質所得は2023年もマイナスとなることが予想される。
2、給与増で個人消費・需要増を図る経済モデルへの転換が必要
これは経済界が、高度経済成長期以来一貫して国民総生産(GDP)の6割前後を占める個人消費とそれを裏付ける給与増を二の次とし、外需(輸出)と政府支出の増加を優先して来たためと言えよう。外国為替も円安誘導が基調となって来たが、円安も輸出やインバウンドの海外観光客の増加にはプラスとなる一方、輸入価格の上昇により国内消費を抑制し、またドル・ベースの所得を引き下げ、所得の国際比較において順位を更に引き下げる結果となっている。
外需(輸出)と政府支出の増加に重点を置いて経済成長を図るという従来型の経済モデルは高度成長期以来経済を牽引して来たが、賃金の抑制と1,220兆円という国内総生産の2倍を上回る公的債務の増加を招き、政府支出も伸びきった状態になっている。
給与増は言うまでも無く企業、特に中小企業の利益を圧迫し経営側にとって悩ましい問題であるが、国内需要を支える給与増は今後の安定的経営に必要であるので、経済界全体として給与増(役員報酬を含む)により個人消費の増加を図ることの重要性を理解し、経済モデルの転換を図って行くことが不可欠となっている。
中小、零細企業の中には大手企業等の下請けとなっているものも少なくないが、大手企業は国内需要の底上げを図るため、中小、零細企業の賃上げの相当分を価格に反映することを容認することが望まれる。また政府は、中小、零細企業の賃上げを促進するため賃金改善調整金(仮称)を給付するなど、賃金増を促進する予算措置を講じることも不可欠であろう。
世界経済も不透明性を増すと共に、成長を牽引する国も多くを期待出来ない時期にあるので、給与増により個人消費・需要増を図る経済モデルへの転換が急務である。(2023.8.8.Copy Rights Reserved.)
社会保障と税の一体改革に欠ける視点 (改定版、総合編)<再掲>
<はじめに>
2013年1月、野田民主党政権が打ち出した社会保障と税の一体改革を政権交代を受けて引き継いだ形の安倍自・公政権は、消費税10%への引き上げを実施したものの、社会保障改革につ社会保障の財源を目的税的に消費税に特化しつつ、その余剰を社会保障以外の歳出財源に振り替える一方、年金の支給年齢の引き上げや介護委保険料の引き上げを図りつつ国民年金から天引きし、また支給基準自体の引き下げを図るなど、社会保障費の圧縮を行う結果となっている。これは、社会保障費の圧縮を図りつつ社会保障以外の歳出財源を捻出するとの観点からは評価されるのであろうが、消費増税は行われても社会保障自体は改善するどころか、国民年金は圧縮され介護保険料など国民の実質負担は高くなるという結果を招いている。消費増税により期待された社会保障を通じる所得の再配分が適正に行われていないことを意味する。
子育て支援の拡充や出産費の保険適用なども社会保障の対象分野であるが、10%への消費増税により社会保障がどのように改善されたかを点検すると共に、社会保障と税の一体改革においていわば冷や食を食べさせられて来た社会保障の改善を図ることが必要になって来ているようだ。このような観点から本稿を再掲する。(2023/04/26追記)
野田政権は、社会保障と税の一体改革大綱の素案を取りまとめるため、2011年12月12日、関係5閣僚会議で社会保障分野の検討を開始した。これに先立ち厚生労働省は社会保障改革案の中間報告を公表した。
中間報告は、年金、医療・介護、及び子育て分野まで網羅しており、受給資格期限の10年への短縮、低所得層に対し年金加算、国民健康保険料や介護保険料の軽減(給付増要因となる)など、低所得層、パート、主婦などに一定の配慮をしているが、高所得者の年金減額、70-74歳の窓口負担引き上げ、外来患者への1回100円の負担上乗せ(料金収入増要因となる)など、収入を図る一方給付水準を下げ、利用者に負担を掛ける内容となっている。他方、年金支給開始年齢の引き上げ、デフレ下での年金給付額調整(給付水準引き下げ)、厚生年金保険料上限の引き上げなどについては法案提出を先送るとしている。
一方消費税増税を中心とする税制改革については、年末の12月29日、民主党税調と一体改革調査会の合同会議を野田首相出席の下で開催し、消費税を「2014年4月に8%、15年10月に10%」に引き上げることなどを決定した。
そしてこれら一連の検討を経て野田内閣は、2月17日、消費税増税を軸とした社会保障と税の一体改革大綱を決定した。
同一体改革大綱は、1月に政府・与党が決定した素案とほぼ同様の内容で、消費税増税を含むものであり、社会保障制度自体の改革については現行制度を前提とした若干の手直し程度となっている。基本的な制度として、破綻状態の国民年金の改革には一切言及がない。一方厚生年金と共済年金の統合を検討するとしているものの、厚労相はそれは時間の掛かることであり、且つ“消費税増税には関係しない”と説明しており、そうであるなら何故わざわざ異なる給与体系・労働条件の厚生と共済を統合しなくてはならないのか疑問が残る。
増税方針の決定は一つの政治的リーダーシップの発揮として評価されるところであり、その責任はいずれ国会で審議され、最終的には選挙において問われ、国民の審判に委ねられることになろう。だが増税案が示されても、年金制度などの社会保障制度改革について実質的な方針が示されなければ「一体改革」にはならない。しかしそのベースとなる大綱において低所得層、パート、主婦などに一定の配慮をしており評価されるものの、基本的に次の諸点が欠けている。
1、欠けるコスト削減の側面
昨年末の民主党合同会議においての上記の増税方針を決定した際、09年8月の総選挙で約束したマニフェストを重視するグループよりの意見を踏まえて、議員定数の削減と公務員給与の引き下げの実施や景気が好転していない場合の増税凍結などを了承し、公務員給与の引き下げについては4月より平均7.8%の削減(2年間)ているが、年金や医療等の社会保障制度を実施・管理するためのコストなどには触れられていない。今回採択された国家公務員給与の引き下げについても2年間の削減であるので、いわば福島原発事故に伴う賠償や被災地の復旧・復興のための当面の財源を確保するための財源と見られるところであり、年金や医療など、中・長期に必要なコスト削減にはならない。
拠出を前提とする国民年金、厚生年金、共済年金は、拠出者が6割内外に激減している国民年金を中心として破綻状態にあり、少子(拠出負担者)の漸減と高齢化・長寿化(受給者)の漸増という今後の傾向を考慮すると、現行体制では年金勘定の赤字は更に悪化することが予想される。
制度が破綻状態にあり赤字がより深刻化すると予想される場合に、まず行われるべきことは抜本的なコスト削減であり、制度のスリム化であろう。企業であれ、どのような組織、制度であれコストの観念が無くては事業は成り立たず、将来は無いと言って良い。
景気停滞期に雇用を維持するというワーク・シェアリングの観点からすると、年金事務分野等での給与ベース自体を実質的に引き下げ、抑制しつつ、職務に励んでいる職員には気の毒ではあるが、自主的な希望退職を促しつつ可能な範囲で優先度の低い部局等の人員を削減して行くことであろう。それが困難であれば実質的な人員整理を3年程度の期間掛けて実施するのも止むを得ない。東北地方出身の職員については、被災地の行政事務、復興事業支援などを希望する者を募り、人材の活用、斡旋を図ることなども可能であろう。多くの企業は数年前よりワーク・シェアリングを実施している。それも一つの社会貢献であり、社会的な責任を果たしていると言える。 その他一般管理費、事務費、交通・通信費等の諸費用を抜本的に節減するとの姿勢が望まれる。一度に実施困難であれば、3年間程度で段階的、継続的に行えば良い。それは制度を存続させるための組織の長の責任であり、また政権与党及び野党を含む国会の責任であろう。
また年金事務の制度的な簡素化が不可欠である。年金事務については、日本年金機構を頂点として、全国の都道府県及び市町村に9ブロックの本部と地区毎に年金事務所が多数設置されている。これらの事務所、施設を全て廃止、売却し、都道府県、市町村に事務を集約するなどの改善が望まれる。国民健康保険事務や国民年金、旅券の交付なども地方公共団体に移管されているので可能であろう。年金は健康保険と同様に地域住民に密着した業務であるので、地方公共団体の業務サービスに適している。公的年金の積立金を管理・運用している年金積立金管理運用独立行政法人についても、民間の投資・金融・保険会社にコンソーシアムを形成させるなどして何らかの形で管理運用を民間専門機関に委託できないかなどを検討することが望まれる。
因みに、中央官庁は設置法があり縦割りとなっていることから、ハローワークや労働基準局の他、財務局や法務局、河川・道路地方整備局事務所など、多くの省庁が全国に独自の事務所、施設を持っているが、公的債務が1,000兆円を超える状況であり、大幅な財政赤字が継続している今日、各省庁が全国に事務所、施設を抱えている余裕はない。地方自治促進の意味からもこれらの業務、事務を原則地方公共団体に移管し、中央官庁は調整業務のみを行うなど制度の抜本的な簡素化、集約を図ることが時の流れと言えよう。国や地方公共団体が数多くの国・公有地や施設を抱えていることは、多額の人件費、管理費が掛かり財政を圧迫している上、民間移管すれば得られる固定資産税等の機会を放棄していることになるので2重にコストを掛けている。国家レベルでの財政赤字である今日、国・公有地や施設を抜本的に廃止・売却し、民間での活用を図ることが望ましい。それにより地方経済も活性化されることが期待される。ほとんどの地方公共団体の公有地や施設についても同じようなことが言える。
日本の戦後の行・財政モデルは、各種の制度、社会インフラ等が未整備で、地方公共団体も整っていない状況で高成長期に築かれて来たものであるが、今後少子、高齢化・長寿化により、税の負担者が減り、社会保障関係支出が増加することは避けられないので、未来を見据えた簡素で効率的な行・財政モデルを構築して行く必要もあろう。
事業的には、年金給付額を引下げたり、給付年齢を引き上げることにより支出を減らすことも可能である。しかしそれは年金事業の本来的な目的である年金給付サービスを低下させることになり、年金への信頼性を著しく失わせる結果となるので、行うとしても最後の手段とも言える。最初に抜本的なコスト削減を行うことが不可欠であろう。
2、最大の欠陥である国民年金など、見えない抜本改革
国民、厚生、共済各年金とも拠出形であり、厚生、共済両年金の一本化が検討されているが、最大の欠陥は国民年金にある。国民年金にのみ加入している者の2011年4―7月の納付率は55.0%だが、失業等で納付免除者を加えると納付率は更に低くなる。納付していない者が半数近くいるので、受給者層が増加の一途であることを考慮すると、国民年金(基礎年金)制度は持続不可能な状況になっている。他方生活保護者は208万人以上に達しているが、国民年金の給付額は平均5.3万円であるのに対し、東京都の生活保護支給額は30代単身で13万円以上、60代後半単身でも8万円強で、家族構成などで加算されることになっているため、国民年金の方が掛け金を支払っていながら受給額は少ないので、納付意欲を失わせる形となっている。
現在、厚生年金と共済年金の一本化や国民年金(基礎年金)との統合などが検討されているが、まず最大の欠陥を抱えている国民年金の在り方を検討することが先決であろう。国民年金の納付率を上げると共に、不加入者をどう解消して行くかが検討されなくてはならない。国民年金も拠出制であり、本来的には拠出していない者には給付も無いことになる。基本的には受益者負担と自己責任の原則に則らざるを得ない。また生活保護支給額に対し、国民年金給付額が逆差別されている状況も是正する必要があろう。
社会保障改革案では、基本的には中間報告に沿って低所得者への加算や高所得者の年金減額など、現行制度に基づいた微調整、手直にしか過ぎず、国民年金の抜本改革には触れていない。拠出型の国民年金は拠出者に対して継続するとしても、いずれの年金にも拠出していない者をどの程度、どのように救済するかについては、納税や拠出努力をしている者との公平性や生活保護との関係を含め、基礎年金をどのように制度設計するかが問われていると言えよう。
また国民、厚生、共済の3つの年金制度があり、分り難いとの評もあり、その面は否定できないが、3つとも雇用形態や所得水準、賃金体系などが異なるので一本化には複雑な調整が必要になるばかりか、一本化すれば年金問題が解決するというものでもない。統合することによりそれぞれの問題点が見え難くなり、或いは共倒れする恐れがある。国民、厚生、共済の3年金制度とも料率納付を前提としているので、原則として拠出者には入会時の条件になるべく近い水準で給付することが期待される。それなくしては年金の信頼性は維持出来ない。問題は、拠出型3年金の適正な給付を確保すると共に、いずれの年金についても受給資格が無い者をどう救済し、財源をどう確保して行くかである。しかし努力しなくても救済される、努力しても報われないというような意識が生まれ、国民の間にモラルハザードを引き起こすようなことは健全で活力ある社会発展を図る上で避けなくてはならないのであろう。
3、社会保障に関する新たな制度設計と消費税増税
上記のような観点からすると、抜本的なコスト削減を行わず、また国民年金を中心とする年金制度の本質的な改革を行わないままで消費税などの増税を実施すれば、制度上の不備、赤字体質を残したままコスト高で非効率な年金制度を引きずることになり、問題を残す可能性が高い。拠出制を残すのであれば、受益者負担と自己責任という基本的な基準に沿って、抜本的なコスト削減を図った後、高額所得者への給付の留保や定年制の引き上げに連動した給付年齢の引き上げなどを実施する方が分り易い。その上で全国民を対象とした税による最低限の基礎年金の導入を検討すべきであろう。その際拠出型の年金については、基礎年金に相当する部分について給付額を削減すると共に、料率も引下げるなどの調整が望ましい。また生活保護制度については、適用を基礎年金受給年齢までとするなどの調整が必要であろう。
医療費や介護費についても、赤字であり制度存続が困難であれば、受益者負担の原則に沿って窓口料金を引き上げるなど、個人負担を若干引き上げることも止むを得ないのであろう。介護保険については、年金受給者も支払う義務があり年金給付額から差し引かれ、実質的な年金給付額の減額に当たるので、年金以外の他の所得がない者に対しては免除するなどの配慮をすると共に、健康保険料や窓口負担を全体として引き上げることも止むを得ない。しかしその前提は、抜本的なコスト削減の実施であろう。
福祉は、高所得者が負担し生活困窮者や低所得者などを救済するとの考え方があるが、社会保障は所得に応じてではあるが国民全体として負担し、貧富の差なく適用されるべきものであり、低所得者が一切負担や努力をする義務がないというものでもない。受益者負担と自己責任の基準に沿って低所得者も応分の負担はすべきものであろう。それなくしては負担しなくても救済される、努力する者が損をするというモラルハザードを起す可能性がある。消費増税に際し、逆進性を緩和するため低所得者には税の還付をするとの案があるが、制度が複雑になり事務を肥大化させると共に、低所得者は所得税等も小額か支払ってないかであるので、更に消費税の一部も還付を受けると一市民、一社会人としての租税負担義務を免除されることになり、過剰な保護になる恐れがある。そうであれば低所得層に対し、所得税・住民税の課税所得水準の引き上げや税率の引き下げを行うと共に、最低賃金を引き上げるなど、所得面での救済を行う方が望ましい。
制度設計の基本的な基準、軸が何であるかも問われている。(2012.3.2.)(All Rights Reserved.)
首都東京、生かされていない東日本大震災の教訓! (再掲)
2021年3月11日、東日本大地震・津波災害から10年を迎えた。東京電力福島原発事故への対応を含め、政府関連予算は2020年度までの10年間で約38兆円にのぼり、また日本各地からの応援や寄付等を受け、地元の人々により懸命に復興活動がなされた結果、地区差があるものの、復興はかなりの進展を見せている。地元の方々や支援活動をされた各方面の方々のご苦労に心から感謝し、称えたい。またこの災害により、命を失った方15,899人、行方不明者2,528人となっており、心からのご冥福と行方不明者が1日も早く家族の元に返ることをお祈りしたい。
復興は進んでいるものの、10年経っても42,685人が避難者にのぼり、当時の巨大地震と津波、そして福島原発の炉心メルトダウンなどの状況を振り返ると、改めてその被害の甚大さを痛感する。
政府の関連行事やメデイアの報道は、どうしても追悼と被災地の復興活動の継続に焦点が当てられる。しかし大震災は、東日本だけでなく、関東でも首都直下地震や東海、近畿、四国地方では南海トラフ地震による被害が今後30年前後に発生する可能性が高いと伝えられている。日本列島を巻き込む大災害は、その他火山の噴火や異常気象による大洪水などの恐れがあるので、東日本の復興継続と共に、その他の地域、特に諸機能が集中し、人口密度の高い首都東京の震災への備えがこれで良いのかに注目しなくてはならない。
1、教訓が未だ活かされていない首都東京
東京を中心とする首都圏については、東日本大地震の教訓を受けて、道路・歩道の渋滞、帰宅難民などへの対策として、一時避難所や備蓄、耐震補強のほか、緊急対応のための道路規制、ハザード・マップの作成など、一定の対応が行われている。しかしこれらの措置は、多くの努力を要しているものの、東日本大地震規模の巨大災害にはほとんど無力とも予想される。
東京には、1,300万の人々が生活し、近隣から数百万の人々が東京に往来している。また日本経済の中枢部門をはじめ、学校、文化・スポーツなど多くの民間機能が集中している。更に、国会、裁判所の中枢機能に加え、緊急時には東京都などと共にその対応に当たるべき全ての中央官庁が集中している。また国民統合の象徴として皇居があり、その安全を確保しなくてはならない。
大災害が発生した際には、行政はこれら全ての安全を確保するために膨大な救援、救出活動を集中的、同時並行的にしなくてはならない。シュミレーションなどするまでもなく、とても手が回らないと予想される。何かを守り、何かを座視するしかない。相手は、「経験したことがない大災害」であるので、旧来の常識や既成概念では対応し切れないことを、福島原発事故を含む東日本大災害から学ぶべきであろう。
政府による『東京一極集中解消』2020年目標は断念された。ある意味で東日本大地震の教訓の風化の象徴とも言えないだろうか。
2、政府委員会が大規模災害に警鐘
2014年、政府の地震調査委員会は首都直下地震が「今後30年で70%」との予測を公表している。その後この予測は繰り返し述べられる毎に発生確率は高くなっており、首都直下地震はもはや過去のものや遠い将来のものではなく、今生活している国民の生涯において起こりうる現実となっていることを示している。
首都圏を中心としたマグニチュード7相当以上の過去の地震は、1703年の「元禄関東地震」(M8.28)と1923年の「関東大震災(大正関東地震)」(M7.9)を挟んで次のように発生している。
1703年12月 「元禄関東地震」(M8.28)
1855年11月 安政江戸地震 (M6.9)
1894年 6月 明治東京地震 (M7.0)
同年10月 東京湾付近の地震 (M6.7)
1895年 1 月茨城県南部の地震 (M7.2)
1921年12月茨城県南部の地震 (M7.0)
1922年4月浦賀水道付近の地震(M6.8)
1923年9月 「関東大震災」 (M7.9)
関東地方は、東西に太平洋プレートとユーラシア・プレート、これを挟んで南北に北米大陸プレートとフィリピン海プレートがあり、元禄関東地震と関東大震災はフィリピン海プレートの境目の相模トラフで発生した大地震とされている。首都圏に関係する地震、津波の誘因としては、この他に東日本大震災に関係する日本海溝や東海地方から四国沖に伸びる南海トラフなどがある。
関東、東海地方については火山爆発も注意を要する。
3、政府組織・制度においてシンボリックな抜本的措置が必要
民間組織・団体や東京都及び市区町村において、それぞれ対策を検討し備えることは不可欠であろう。それは誰のためでも無い、自分達や家族、関係者の安全、安寧のためだ。
しかし東日本大震災レベルの直下地震等が首都圏で発生し、大型津波が発生すると、1995年1月の阪神・淡路地震を上回る被害、混乱が起こるものと予想されている。2011年3月の東日本大地震の際にも首都圏で震度6を超える揺れを経験したが、道路は車道、歩道共に渋滞し、公共交通は止まり、電話・携帯による通信は繋がらず、多数の帰宅難民が発生し、その状況は翌朝まで続いた。電気、ガス、水道などのライフラインが被害を受けていれば被害は更に拡大し、回復には更に時間を要することになる。
最大の問題はライフラインの確保であるが、大災害に対応し、司令塔となるべき中央官庁の機能をどの程度確保出来るかである。物理的被害は予想もつかないが、災害が深夜や早朝、祝祭日に発生した場合、必要な人的資源の確保は困難で時間を要することになっても仕方が無いであろう。‘経験したことがない大災害’に遭遇し、‘経験したことがない混乱等’が起こったとしても、自然のなせること、誰も責めることは出来ない。それぞれの立場で被害に備え、耐え、命を守る努力が求められるであろう。それも相当期間に及ぶ可能性がある。
(1)そうなると危険の分散を図ることが最も効果的となる。政府はこれまで幾度となく、東京一極集中を避けるため、中央省庁や大学の地方移転を試みてきたが、部分的な専門部局の分散に留まり、一極集中解消にはほど遠い。
米国の他、ブラジルや豪州などのように、政治・行政機能を密集地域から切り離し、新たに政治・行政都市を造ることも考えられるが、日本にはそれにふさわしい安全な地域を確保することは難しそうだ。しかし1つの有効な選択肢ではある。
それは、日本独特の国民統合の象徴機能である皇居を宮内庁と共に京都など近畿地方に戻すことであろうか。天皇の象徴機能については憲法に明記され定着しており、皇居を移転しても機能自体に何ら影響しない一方、ご公務については憲法上国会の召集など10項目に限定されているので、移転は相対的に容易と見られる。更に、京都等に戻ることは歴史的に理解されやすく、また地方に新たな息吹をもたらし、地方活性化にも繋がる可能性がある。
憲法上公務とされる10の業務については、現在では交通・運輸、通信が飛躍的に便利になっており、国会召集時など限られた折りに東京に行幸されることは可能であろう。宿泊が必要な場合には、年数回しか使用されていない迎賓館(赤坂離宮)に所要の宿泊施設をご用意するなど、対応は可能のようだ。また外国使節(各国大使等)の接受等については、京都の御所にて行うこととすれば、京都や近畿地方の歴史や文化等を外国使節に紹介する機会ともなろう。
また考えたくはないが、もし将来首都圏がミサイル等で攻撃されると、政治・行政機能と象徴機能が同時に被害を受ける恐れがあるので、これを分離しておくことが安全保障上も意味があろう。
無論どの選択肢にしても、現状を変更することには困難があろう。しかし、政府地震調査委員会が東京直下地震など経験したことがない大災害が現実に起こりうると考えているのであれば、これまでのような対応では不十分と見られるので、これまで実施されたこともないような措置を本気で検討、実施する必要があるのではないだろうか。
(2)江戸城趾の活用方法については、城趾内の「江戸の自然」の保護を図りつつ、可能な範囲で復元を行い、歴史観光施設として整備し、また一部を国民の憩いの場として開放すると共に、大災害時や緊急時の避難場所となるよう整備するなどが考えられよう。特に江戸城趾には四方に門があるので、災害時、緊急時には門を開放し、四方から城趾内に避難が出来る。また緊急車両が災害時、緊急時に通行できるよう、城趾内の通路等を整備しておけば、渋滞が予想される一般道を通らずに迅速に移動できるなど、災害時、緊急時への活用も期待できる。(2021.3.31. All Rights Reserved.)
竹島問題を大所高所から解決すべき時 (総合編)(再掲)
韓国の李明博大統領は、8月10日、ヘリコプターで竹島(韓国名独島)に上陸し視察した。竹島は島根県に属するが、李承晩・大韓民国(韓国)大統領が、1952年1月18日、「海洋主権」を宣言し、周辺海域に「漁船立ち入り禁止線」、通称「李承晩ライン」を設定し、同島は韓国の支配下にあると一方的に宣言して以来、日韓間の喉もとの小骨となっている。
今回の李明博韓国大統領の竹島上陸は日韓関係にとって信頼関係を損ねる極めて深刻な行為であり、日本としても重大な決意を持って竹島問題の解決に努めるべきであろう。
1、日韓の古くからの接点、竹島(独島)の歴史
同島は、東西2つの岩礁島からなっており、日比谷公園と同程度の面積しかなく、また定住出来るような環境にはないが、1905年1月28日、日本政府は、閣議で「竹島」と命名し、「島根県隠岐島司」の所管とした。日本が、韓国(大韓帝国)を併合(1910年8月)した5年以上も前のことであり、日本の植民地支配や慰安婦問題などとは関係がない。
同島を巡る日韓両国の交流は、両国の沿岸漁民を中心として江戸時代初期頃からあり、この頃より周辺海域での接触、紛争が活発になって来たとの記録が残っている。また1849年、フランスの捕鯨船Liancourt号が同島を発見し、リアンクール島と名付け、その後日本では、「りゃんこ島」とか「リアンクール岩」とも呼ばれたことがあるようで、同島(岩礁)を巡る両国の交流の歴史にも混同がありそうだ。因みに、米国国務省がホーム・ページで公表している各国別地図では、日韓双方に、Liancourt Rocks(リアンコート岩礁)の名称で記載している。
同島が両国の古来からの接触の「最外延点」であるという歴史的背景を踏まえ、同島問題の解決を真剣に模索すべき時期に来たと言えよう。
2、「日韓新時代」は竹島(独島)問題の早期解決が鍵
竹島の帰属問題は、日本政府としては1954年、1962年に国際司法裁判所に付託することを韓国側に提案し来ているが、韓国政府が同意していないため実現していない。
今回についても韓国政府は、国際司法裁判所への付託を拒否する姿勢が伝えられている一方、これを受けて日本政府は、経済的影響を考慮し対応を慎重に検討するとしている。しかし韓国大統領の竹島上陸は、日韓両国政府の信頼関係を著しく損なう行動であるので、この行動が日韓関係に影響を与えないはずがない。竹島は日本の領土であるのでしっかりと主張し、短期的に両国関係に影響することがあるとしても、毅然としてあらゆる措置、対策を取るべきであろう。言葉や標語だけの外交や、問題先送りにより事態の改善をもたらすことはないことが、李大統領の今回の同島訪問で明らかになった。影響を恐れて従来のような事なかれ外交を繰り返すことは、韓国側に日本は従来通り何も出来ない、何もしないとの誤ったメッセージを送り、現状を事実上容認することになる恐れが強い。従来の措置を超える明確且つ具体的な措置を検討、実施すべきであろう。
領土の保全は、国家、国民の存立の基礎であり、安全保障、防衛の基本的な役割である。従って、韓国政府が竹島を巡る領有権問題で日本の利益を害する行動を継続するのであれば、日韓間の防衛協力については実務的な情報交換や信頼醸成措置程度に止める一方、日本自身の領土保全、安全保障に重点をシフトするなど、防衛政策の転換を真剣に検討すべきであろう。
他方、日韓両国は近年において経済の相互依存関係を強め、また民間レベルの文化・芸能交流などが深まっているので、このような民間レベルの日韓交流に影響を与えないよう留意しつつ、国際司法裁判所への付託を含め、首脳レベルでの協議を打診し、常に本件協議への門戸を開放しておく一方、一般的な首脳レベルでの交流を停止する。また日韓経済連携協議の凍結や金融・資本、高度技術分野などでの政府レベルの交流、協力を抑制するなど、竹島問題の解決に向けて明確なメッセージを送り続けるべきであろう。
但し2国間関係は相互の努力で発展するものであるので、日本だけではなく、韓国の官民もこの問題が民間レベルの交流に影響を与えないよう努力することを期待したい。この関連で、日韓間の議員交流を超党派での交流を含めもっと頻繁に行うことが望ましい。
この問題の解決なくして「日韓新時代」は実体が伴わない標語に過ぎない。
3、模索すべき大所高所からの解決策
米国国務省公開文書「1964年から68年米国の外交関係29編」に基づけば、同島の「日韓共同所有案」について、1965年5月17日、訪米した朴大統領(当時)に対し、ラスク米国務長官が、解決に向けての方策として提案したが、朴大統領は「あるまじきこと」として固辞した旨伝えられている。またその後、米国は韓国に対し同島問題を議題として韓日外相会談を提案したが、同大統領の受け入れるところにはならなかったとされている。
共同所有案にしても、共同管理・分割領有にしても、両国国内の世論等もあり困難が伴うと予想されるが、日韓関係は当時とは異なっている。日韓両国は、1965年6月22日に日韓基本条約を締結し、国交を正常化すると共に、戦後請求権問題も経済協力等の形で処理し、基本的な友好関係の枠組みもそれなりに確立しており、市民レベルの交流も盛り上がりを見せている。今後日韓関係が健全に発展するか、阻害されるかが、竹島問題解決への両国首脳のリーダーシップと大所高所からの英断に掛かっていると言えよう。(2012.08.14.)
(Copy Right Reserved.)(不許無断転載・引用)
北朝鮮は休戦状態の朝鮮戦争終結宣言を望まず? (再掲)
北朝鮮(DPRK)は2022年に入り、1月5日(日本時間)に巡航ミサイルの発射実験を皮切りに、同月11日弾道ミサイル(極超音速ミサイルと公表)、14日弾道ミサイル、25日巡航ミサイル、及び27日短距離弾道ミサイルの発射(各2発)を行った。更に30日、中距離ミサイルとみられる発射実験(1発)を行い、ミサイル発射実験・訓練の実施をエスカレートさせている。30日の中距離ミサイルの発射実験は、2017年11月以来のものである。
いずれも東方向に発射され日本の排他的経済水域(EEZ)の外側(公海上乃至北朝鮮、ロシア沖の水域)に落下したものと見られている。日本への直接の影響を避け、また長距離弾道ミサイルではなく、短・中距離ミサイルの発射実験であり、一定の抑制的配慮をしているものと見られる。従って日本については、それをわきまえた対応が望ましい。
しかし今回の一連のミサイル発射は「発射実験」と言うよりは「実戦配備」を前提とした周到な「ミサイル発射訓練」とも言えるものもあり、朝鮮半島を中心とする北東アジアの安全保障情勢に現実的な影響を与え、緊張を煽ると共に、国連安全保障理事会の累次の決議に反するものであるので、自制を求めたい。
1、北朝鮮は「朝鮮戦争終結宣言」を望んでいない?!
(1)膠着状態の北朝鮮の非核化交渉
北朝鮮の非核化については、米国のトランプ前大統領の下で劇的な進展が期待された。しかし、2019年2月27、28日にハノイで行われた米朝首脳会談において、米国側は核施設の廃棄・査察と大陸間弾道ミサイル(ICBM)などミサイルの撤去を求め、朝鮮戦争の終結を視野に入れた全面的解決を意図していた。これに対し北朝鮮側は、一部核施設の廃棄の見返りとして国連安保理決議による経済制裁の解除、特に民生用、民需用物資への制裁解除((安保理決議2270号、2375号など5決議関連)を求め、段階的な対応を期待していた。しかし両者間の溝は埋まらず、「取り引き無し」(‘ノーデイール’)で終わり、休戦状態の終了、朝鮮戦争終結の期待も遠のき、非核化交渉は膠着状態となった。
(2)北朝鮮は休戦状態にある朝鮮戦争の終結を望んでいない!?
2021年1月に発足したバイデン政権は、「前提条件無しの会合」を呼びかけているが、北朝鮮側は応じていない。
このような中で、韓国の文 在寅(ムン・ジェイン)大統領は2021年9月の国連総会において、北朝鮮、米国、中国に対し韓国と共に「戦争終結宣言」に向けて措置をとることを呼びかけた。同大統領は、2022年5月の大統領任期満了までに南北間の平和プロセスの再活性化と“実質的進展”を希望するとした。
これを受けて韓国と米国の外交当局が宣言案につき協議し、2021年12月11、12日に英国で開催されたG7外相・開発相会議に際し、鄭義溶(チョン・ウィヨン)韓国外交部長官とブリンケン国務長官との間で「朝鮮戦争終結に関する宣言案」に原則として合意した。
本来、朝鮮戦争終結のためには、相互に敵対行為を行わないこと、境界の確定と経過措置としての緩衝地帯の設置、国連監視団駐留、北朝鮮の核兵器・ミサイルの撤去と駐留米軍の撤退、相互査察、南北交流の条件など詳細な取り決めが必要になる。しかし今回米・韓両国で原則合意された宣言案は、未だに休戦状態にある南・北間の敵対関係を終了させ、正式に朝鮮戦争を終結させ、和平のための対話を図るというシンボリックな宣言と見られる。
この文韓国大統領の呼びかけに北朝鮮は応じておらず、「宣言案」起草作業にも参加していない。北朝鮮の金与正国務委員(キム・ヨジョン、金正恩総書記の妹)は、9月に韓国大統領の「戦争終結宣言」提案を受けて、「前提条件が整えば、対面で会い、重要な“戦争終結”を宣言することも可能だろう。そうでなければ、“戦争終結宣言”は紙切れに過ぎない。」と論評している。
他方バイデン政権は、「前提条件を付さず、何処でも何時でも北朝鮮と会う用意がある。」旨繰り返し述べており、北朝鮮側にもその趣旨は届いているであろう。一般的には、「前提条件無しの対話」はオープンな呼びかけとして好意的に受け止められる。しかし「前提条件」が現在の、と言うよりトランプ大統領時代のハノイでの「取り引き無し」以来の米・朝関係のキーワードである。北朝鮮は、経済制裁の一部解除、特に石油を含む民生用物資への制裁解除が交渉継続の「前提条件」としている。米国が「前提条件」を付さず外交的対話に応じると表明しても、取引には応じないとの意図と受け取られてしまう。
北京で2022年2月に開催されているオリンピックには、北朝鮮は参加しないことを中国側に正式に伝えている(2022年1月7日)。いずれにしても北朝鮮は、2021年7月から9月に開催された東京オリンピック・パラリンピックに参加しなかったため、国際オリンピック委員会(IOC)により北朝鮮オリンピック委員会の資格が1年間停止する懲戒措置(2021年9月)が課されているので、今回の北京冬期オリンピックにはいずれにしても参加出来ない。北朝鮮が中国側に不参加の正式通報したのは、中国側の面子を潰すことなく金正恩総書記を含む代表団がオリンピック期間中に訪中しないことを示唆するためであったのであろう。同時に、これにより北京における南北首脳会談の機会は消え、「戦争終結宣言」も拒否されたものと見られる。
米・韓によりまとめられた「戦争終結宣言」は、シンボリックな宣言であっても、朝鮮半島の和平と非核化の出発点として重要な宣言と言えよう。現在の「休戦状態」が継続する限り、敵対関係は継続し、相互に挑発や核兵器やミサイル開発を含む軍拡競争は続けられることになろう。北朝鮮にとっては、「休戦状態」の継続は軍部を含む政権にとって国内引き締め、団結を維持するための都合の良い状態と言える。「戦争終結宣言」は敵対関係から和平に転換する契機となると共に、それが無ければ何時までも敵対関係に呪縛されたままになる恐れがある。
1月に入ってからの一連のミサイル発射実験・訓練は「戦争終結宣言」を当面望んでいないとのサインと受け取れる。核、ミサイルの排除を巡る北朝鮮との関係は、新たな局面に入っていると理解すべきなのであろう。交渉再開への門戸を開き、外交努力を継続する一方、国連の場で経済制裁の強化、拡大し、それに向けての国際世論の醸成と支持国の一層の拡大努力が必要となっているのではないだろうか。また韓国には戦域高度防衛ミサイル(THAAD)が配備されているが(2017年)、圧倒的な防衛網の整備が急務と言えよう。
2、北朝鮮労働党にとって「特別に重要な年」に誇示したい軍事力
北朝鮮は、2022年には、2月16日に故金正日(キム・ジョンイル)総書記の生誕80年、そして4月15日に故金日成(キム・イルソン)主席の生誕110年を迎え、「革命的大慶事の年」として輝かせるとしている。
この「大慶事」に際し、今日の北朝鮮の基礎を築いた祖先の意志を継ぎ、国力を増進させたことを内外に誇示するため、長・中距離弾道ミサイルや短距離戦術兵器を含む軍事パレードを行うと見られる。1月の一連のミサイル発射実験・訓練はその前哨戦と言えそうだ。
3、慣例となっている米韓合同軍事訓練への北の恒例の激しい反発
米韓合同軍事訓練は、毎年春と夏に行われるのが慣例になっており、米国が未だに指揮権を持っているので軍事的には必要であろう。2019年6月30日にトランプ米大統領(当時)が板門店を訪問し、軍事境界線を挟んで北朝鮮の金正恩委員長と握手し、挨拶を交わし、北朝鮮の非核化を巡る米・朝交渉への期待感が高まって以降は、平和ムード造りのため米韓合同軍事訓練は中止或いは抑制された形で実施され、また北朝鮮は核爆発実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験が中断するなど、相互に行動を抑制していた。
米韓合同軍事訓練は2021年には3月と8月に実施されているが、2022年3月に実施することで米韓安保協議(SCM)において合意されており、‘演習日程に変更はない’とされている。
北朝鮮は従来より、米韓合同軍事訓練が実施される毎に激しい批判を繰り返しており、国内的にも、TVや労働党機関紙その他で米国、及び韓国による北朝鮮侵略の準備であり、北朝鮮はそのような攻撃があれば南を焦土とするなどとして、過剰とも思える激しい反応をして来ている。
北朝鮮にとっては、隣接する韓国で米韓合同軍事訓練が行われることは、米韓両国の敵対的姿勢として国民に訴え、戦争ムードを演出し、国内引き締めのために格好の材料になっている。恐らく今回も同様の反応をするものと予想される。
北朝鮮のミサイル等の発射実験や訓練は、米韓合同軍事訓練への対抗として実施するという口実を北朝鮮側に与えているとも言える。米韓軍事訓練については、米国が未だに指揮権を有しているので必要であろうが、頻度や期間を縮小することや、机上訓練や訓練場所を北朝鮮から可能な限り遠い場所で行うなど、刺激しない形で実施することも現実的な選択肢となろう。
(2022.2.11.) (Copy Rights Reserved.)
Ukraine in between two camps with different values, Russia and NATO (Posting anew)
Russian President V. Putin declared the annexation of 4 Provinces in Ukraine, namely Donetsk, Luhansk (the full areas), and Kherson and Zaporizhzhia (in full or the areas held by its troops), after signing the Annexation agreements with four pro-Russian Provincial leaders on 30th September, 2022, and the agreements were ratified by the Russian Federal Assembly in early October.
Three days earlier, the referendums on joining Russia were carried out in the four provinces and approved with over 90% majority except for Kherson which marked 80% level approval.
President V. Zelenskyy of Ukraine quickly denounced the referendums carried out in four Provinces as invalid and illegal, and also the Russian move to annex them based on the results such referendums.
In response, Ukraine formally requested an accelerated accession to NATO on 30th September,2022.
The U.N. General Assembly adopted Resolution condemning Russian Annexation of four eastern Ukraine regions under the title of “Territorial integrity of Ukraine: defending the principles of the Charter of the United Nations” on 12th October, with 143 countries in favor, 5 countries against (Belarus, North Korea, Nicaragua, Russian Federation, Syria). 35 countries abstained.
Ukrainian President Zelenskyy repeatedly expressed his pledge to retake all of the Ukrainian territory held by Russia, while expressing his intention not to negotiate with Russian President Putin in person.
This indicates that the war is likely to drag on into the winter.
- A need to cope with another War, Covid19 and worldwide Inflation
Against the backdrop of the regional war in Ukraine, the World has been fighting against three-year long Covid19 and a high inflation as many industrialized countries now seek an exit from the inflated economy temporally sustained by the massive government spendings and lending. On top of it, the United States and other NATO countries initiated wide-ranging sanctions against Russia, which are adversely affecting the World economy, resulting in acute energy shortage and rapid price-hike and other restrictions on business transactions with Russia. As the war in Ukraine is dragging into the winter, many European people, not to mention Ukrainians themselves will suffer from coldness caused by the energy shortage, in particular natural gas and oil while fighting against Covid19 and flu. It is feared tens of thousands people might die during the freezing winter. The death toll might be more than the total death toll in Ukraine. Unfortunately, the corona virus pandemic seems to recure again in many parts of the World.
While the Russian invasion in Ukraine should be strongly condemned and Russia should bear the consequences, it is indispensable to avoid such fatal hardship in Europe and elsewhere in the World because of severe shortage of energy and food. The NATO initiated sanctions against Russia does more harm to Europe and the World now. Even during the Cold War era, NATO initiated to set up the Coordinating Committee for Multilateral Export Controls(COCOM )in 1949 until 1994 restricting trade with the Soviet Union only on weapons and other sensitive goods. Japan and Australia joined the regime. It was replaced in July,1996, by the Wassenaar Arrangement on Export Controls for Conventional Arms and Dual-Use Goods and Technologies with 42 participating states including many former Warsaw Pact countries. It is designed to promote transparency and greater responsibility in transferring conventional arms and dual-use goods and technologies to non-member countries.
Now the wide-ranging sanctions including the restriction on SWIFT, which facilitates quick financial transactions among financial institutions throughout the World, affects Europe and the entire World as side effects. The Sanctions against Russia should be limited to weapons and sensitive goods. The Wassenaar Agreement should be expanded largely such as the scope of products to be applied ranging from relevant weapons, dual use goods and technologies to IT related goods, communication tools, outer-space goods, rare metals, and related intellectual properties, and so on. Such an expanded Agreement may be also applicable to China and North Korea.
Against the background of the war in Ukraine, the World now needs to cope with the 3-year long Pandemic and steep inflation as a backlash of massive government spendings and lending operations to sustain economic slowdown elsewhere in the World, while supporting Ukraine with weapons and others. People in the World, especially in Europe and Japan, feel an acute shortage of gasoline, natural gas and wheat as well as job opportunities due to 3-year long economic stagnation, and are suffering from a steep price hike in daily necessities with persistent constraints and restrictions on daily activities. The prolonging war in Ukraine has been added to the above global war since February,2022, thus aggravating the economic and social activities in most parts of the World. Already the pandemic alone took over 6.6 million lives in the World, which is far more than the death toll in Ukraine. And if the sanctions including the SWIFT restrictions are maintained into the winter as the war in Ukraine prolongs, it is feared that tens of thousands, or millions lives in Europe may die from freezing cold weather because of electricity shortage.
We should put more emphasis on the global war against Covid19 and severe inflation which affect adversely the daily life in the entire World, while providing Ukraine weapons and other human supports.
- Territorial issue and Peace settlement in Ukraine
There is no justification for the Russian invasion in Ukraine. At the same time, we should give fair evaluation of the historical and geopolitical background of Ukraine and Russia.
(1) Historically, Ukraine used to be one of the core members of the Soviet Union after Russia. After the fall of the Soviet Union, Ukraine belonged to CIS (Commonwealth of Independent States), and kept distance from Russia after 2014 as the democracy movements advanced there and it is leaning toward EU and NATO, especially in the central and western provinces. However, Russian-speaking people and influence remain there, in particular, in the eastern provinces. Russia still has a big stake there although nuclear weapons were taken away.
(2) Geopolitically, Ukraine is situated in between Russia and expanded EU and NATO. NATO is composed of 30 countries now including most of the former Warsaw Pact countries. Now Sweden and Finland, which has been keeping neutrality, are in the process of joining NATO. In a sense, it is situated in between two camps with different basic values, namely in between democracy and authoritarian regime. The Warsaw Pact Organization was disbanded after the collapse of the Soviet Union and the democratization of most of East European countries. While the East- West Cold War was over, NATO not only continues to exist but also expands eastward from 16 member countries to 30 countries assimilating most of the former Warsaw Pact countries. That has been causing a security concern on the part of Russia, especially in the mind of President Putin backed by nationalist philosophers and nostalgy for the Soviet empire.
As a whole, for Ukraine, it is a matter of security and existence, and for Russia, it is a matter of security and rivalry with NATO and EU over basic values and governing system. Geographically, both Ukraine and Russia cannot move from that setting. NATO as well as Ukraine and Russia should respect each other such a geographical and historical setting.
(3) The Minsk Truce Agreement of 2014 between Ukraine and Russia expired on 21st January,2022, failing to solve an autonomous issue of two self-proclaimed rebel republics of Donetsk and Luhansk which had been denying the Kyiv’s control. And Russia recognized the independence of the two self-proclaimed republics of Donetsk and Luhansk. After the Russian invasion in Ukraine in February,2022, and the subsequent war in east and south-east regions in Ukraine, the Kremlin-backed so-called ‘Referendums’ on joining Russia were carried out in four provinces, namely southern Kherson region and part of Zaporizhzhia in addition to adjacent eastern Donetsk and Luhansk in September ,2022. Three days after the approval in the referendums in all four provinces with over 90% approval votes except for below 90% in Kherson, on 30th September,2022, those four provincial leaders signed respective Treaties with Russian President Putin to join Russia. Ukrainian President V. Zelenskyy repeatedly expressed the unacceptance of such referendums and his intention to recover all the Ukrainian territories held by Russia. It is also denied by NATO countries. It is questionable especially in the case of Kherson and Zaporizhzhia whether they have legitimate authority to sign any treaty with Russia, while Donetsk and Luhansk, which maintained a certain degree of independence from central Ukraine since 2014, may have had such power as an Independent Republic.
3.Exert more Wisdom than Weapons for Ukraine
During the eight-year long Truce Agreement, it was designed to settle the autonomy issue of the two eastern provinces. But such efforts failed, and President Zelensky, instead, openly expressed his intention to become a member of NATO.
For Russian, the constant east-bound expansion of NATO has been seen as a threat. President V. Putin expressed his view at a press conference in April,2008, on the occasion of the NATO summit that “any attempt to expand NATO to the Russian borders would be seen as a direct threat”. At that time, NATO had already expanded its membership from 16 to 26 after the Soviet Union, therefore the East-West Cold War, was over. Now it is embracing 30 countries with the U.S. military bases and the THAAD missiles in Romania.
(1) No justification for the Russian aggression in Ukraine
Russian invasion in Ukraine cannot be tolerated and should be condemned.
Every sovereign country has the right to defend itself against any aggression.
In support of such Ukraine’s efforts to defend itself, many NATO member countries including the U.S. and others have been sending weapons after weapons together with other civil support upon request from Ukraine.
Such a support is necessary. But we should exert more wisdom than weapons. Wisdom to stop the armed conflicts and the bloodshed. And wisdom to realize a peaceful settlement in Ukraine. Further military support, in particular, sophisticated longer-range missiles and other weapons from the NATO countries to Ukraine seems to lower a threshold for a war in Europe, or, at the worst, a nuclear war in Europe. Also a wide-ranging sanctions against Russia would adversely affect the World economy sooner or later like a boomerang.
(2) Needed recognition of the Co-Existence in the face of the differences in basic values and governing systems in the World
At a time of apparent differences in basic values and governing systems in the World seen in such cases as the Russian invasion in Ukraine and the trade issue with China, we need a practical philosophy governing the World now.
There are basically 3 alternatives. Namely, 1) defeat the opponent, completely, if possible, 2) accept the domination by the opponent, or 3) co-existence with different values and governing systems.
The first two alternatives will not be accepted by the other side. The World is divided in these two cases, and a fear of a war lingers. If the World is to be one globe, therefore, Co-Exis tence seems to be the only realistic alternative.
Democracy is based on human equality, acceptance of diverse values and belief, and pluralism. And given the present nation-to-nation relations which are based on the territorial sovereignty with its own basic values and governing systems, Co-Existence is the realistic philosophy governing the present international relations, if a democratic method is to be applied in handling international affairs as well.
And sometime in the future, the World of Co-Prosperity may be realized.
By such a time, and if the differences between countries or groups of countries in basic values and governing systems continue to damage or erode national interests and national security of one country (or group of countries), each country or a group of countries may have to set some regulations on relevant fields such as trade, entry permit, financial transactions and intellectual properties to fill such a gap, while trying to maintain freer exchanges among countries and a globalization movement. In trade, for example, it is indispensable to equalize the level of freeness between some domestic market economy and the internationally recognized free market economy to retain a fair trade and competition. It is a process to realize a free and fair trade between non-free market economies and freer market economies. (2023.1.4.)
(はじめに)JR東海は2024年3月29日、リニア新幹線の品川―名古屋間について、2027年の開業を断念する方針を明らかにた。最難関工区とされる南アルプストンネル(全長25キロ)のうち、静岡県内での工事を同県が認めず着工できていないためだ。同工区の工事は約10年掛かるとされているので、開業は早くても2034年以降に大幅に遅れる。
静岡県との協議は既に数年間行われてきており、同県が合意しても少なくても更に10年遅れ、そのための膨大なコストが漫然と掛かる上、大衆交通の利便性が進まないことになるので、社会的コストは計り知れない。現在案では、大井川の下にトンネルを通す方式だが、沿線及び下流の水資源の確保や環境への悪影響が懸念され、それを回避するための上流に人造湖を建設し水を大井川戻す工事も莫大な費用が掛かり、更に今後の急速な気候激変を考慮すると効果と安全性などに疑問が尽きない。
何故、計画を速やかに変更し、大井川の横断については空中トンネルとしないのか。何事も日本では1度決めると是正できないことが多い。それは官民とも同様の要だ。
このような観点から本稿を再掲する。(追補:2024年3月30日)
リニアモーターカー(リニア新幹線)、越すに越されぬ大井川!
― 大井川陸上(空中)トンネル化を提案する ― (再掲)
超伝導リニアモーターを利用したリニア中央新幹線は当初東京―名古屋間の2027年開業を目指して建設が開始された。東京―名古屋間40分の夢の超特急だ。
しかし大井川の地下に通すトンネルが水の流れに影響し、静岡県の下流への水資源を枯渇させ、流域の農業や生態系等の環境に大きな影響が出るのではないかと懸念され、同県知事が着工を了承していない。各種の環境影響調査、協議等が行われているものの、大井川トンネルの着工が出来ないままとなっている。2029年以降の開業についても見通せず、総事業費は約10.5兆円に増加するとされている。正に、越すに越されぬ大井川だ。
大井川の下にトンネルを通すことにより流れ出す大量の水を川に戻すなどの案が検討されている。しかしそれには莫大な費用と時間が掛る上、それにより下流での従来の水量が確保出来るかは明らかでない。更に将来予想出来ない豪雨に見舞われた場合、水還流設備は対応出来るのか、またトンネル自体が絶え得るかが懸念される。悪化する気候変動の中で自然の力を見くびることは出来ない。
そこで大井川の工区だけ陸上トンネル(大井川空中トンネル仮称)とすることを提案したい。恐らく景観の問題等で反対はあるだろうが、景観になじむデザインにするなどにより解決出来るだろう。例えば、トンネルの一部を硬質ガラスでリニア新幹線の通過を可視化すれば、撮り鉄ファンにとっては格好のスポットとなろう。乗客も一瞬の外の景色にほっとするだろう。トンネルの上部に遊歩道を築いて観光化することも考えられる。本件は経済社会問題として検討されるべきであろう。
大井川工区の陸上トンネル化を行い、リニア新幹線の早期開業を期待したい。
(2023.1.9.) (Copy Rights Reserved.)