朝鮮半島の核なき平和と繁栄へ、踏み出された歴史的な第一歩!! (その1)
-米・朝首脳会談の成果―
6月12日、シンガポールにおいてトランプ米国大統領と金正恩北朝鮮国務委員長が1953年6月の朝鮮戦争停戦後首脳同士で初めて握手し、会談した。そして同日午前9時過ぎから冒頭の写真撮影を含めて50分ほどの首脳だけの会談に次いで、両国の外相など関係要人を含めた拡大会議とワーキング・ランチの後、両国首脳により‘包括的な’共同声明に署名された。
1、両国首脳の強い決意を包括的に示した共同声明
共同声明において、トランプ大統領と金正恩国務委員長は、新たな米朝関係の確立と朝鮮半島における恒久的な平和体制の構築問題について、包括的かつ真摯な意見交換を行い、‘トランプ大統領は北朝鮮に安全保障を約束し、金委員長は朝鮮半島の完全な非核化への確固とした揺らぎのない決意(firm and unwavering commitment)を再確認し’、次の点を宣言した。
1)米朝両国は、平和と繁栄の願いに従って、新たな米朝関係の確立を決意。
2)両国は、朝鮮半島の持続的で安定した平和体制(peace regime)の構築に共に努力。
3)2018年4月27日の(南北首脳の)板門店宣言を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化(complete denuclearization)に取り組むことを決意。
4)両国は、戦争捕虜/行方不明兵士の遺体回収を決意。既に特定された遺体の即時帰還を含む。
トランプ大統領と金委員長は、史上初の米朝首脳会談が新たな未来に道を開いた画期的な出来事だと認識し、この共同声明の条項を完全かつ迅速に履行することを決意した。首脳会談の結果を実行に移すべく、今後はできるだけ早期に、ポンペオ米国務長官と同レベルの北朝鮮当局者が協議を行うことを決意した。
両首脳は、新たな米朝関係の発展、そして朝鮮半島と世界の平和と繁栄、安全保障の促進に向け協力する決意である。
2、具体性を欠く‘決意’は決意で終わるのか
トランプ大統領と金委員長は、‘新たな米朝関係の確立’、‘朝鮮半島の持続的で安定した平和体制(peace regime)の構築’、及び今回最も注目された‘朝鮮半島の完全な非核化(complete denuclearization)への取り組み’に決意を表明した。これに対し一部メデイア等には、‘具体性に欠ける’、‘また騙されるのではないか’など懐疑的なコメントが見られる。
しかしこれらの批評は、1994年以来の北朝鮮との核問題での数次の実務レベルでの交渉、積み上げが何故裏切られて来たのか、失敗の原因は何かを十分理解していないようだ。
交渉の相手である北朝鮮は、朝鮮戦争が‘停戦’になったものの、米・韓両国との敵対関係は継続しており、それを梃子として軍事優先、先軍主義の独裁体制を維持しており、金日成国家主席、金正日北朝鮮労働党総書記(国防委員長)、この後を受けた金正恩国務委員長も絶対的な権能、発言力を持つ最高指導者である。重要決定は、ほとんどトップ・ダウンの形をとる。独裁国家を相手にする場合、最高指導者と基本合意して置くことが最も早道であり、確実である。
1990年代のクリントン政権以降、米国等と北朝鮮との核問題での協議、交渉は、国務次官補など実務レベルでの交渉であり、合意であったが、ことごとく覆され、核兵器とミサイル開発のための時間と資金を与える結果となった。
しかし米国が、北朝鮮と首脳レベルで会談、交渉したことは今までなかったことだ。北朝鮮の絶大な権力を握る首脳の意志や決意を直接確認したのは今回が初めてであり、その意義は従来の‘積み上げ方式(ボトム・アップ)’とは比べ物にならない程大きい。
批判の一つとして、‘非核化’について‘完全、検証可能で不可逆的な非核化’通称‘CVID’に言及されていないことが指摘されているが、‘CVID’を含めるよう実務レベルで詰めていたら何年掛かっても合意に至っていない可能性がある。今回の共同宣言には、‛金委員長は朝鮮半島の完全な非核化への確固とした揺らぎのない決意’を再確認したとされており、その上で、‛この共同声明の条項を完全かつ迅速に履行することを決意し、首脳会談結果を実行に移すべく、できるだけ早期に、ポンペオ米国務長官と同レベルの北朝鮮当局者が協議を行うことを決意する‘とされている。北朝鮮において金正恩委員長より下部に指示が出され、それに基づいて詳細な協議、交渉が行われることが期待される。今後の米朝交渉においては、両国首脳の今回の合意が出発点であり、最終目標となる。そのプロセスが首脳レベルの決意に沿って開始される意義は大きい。北朝鮮との首脳レベルでの会談、決意の表明は歴史上初めてのことであり、この機会を逃すべきではなかろう。
北朝鮮の金国務委員長は、トランプ大統領との1対1の会談の冒頭、‘今回、足を引っ張って来た過去と偏見を乗り越えてここに来た’と述べ、また最終段階での共同声明に署名した後、‘ここまで準備してくれたトランプ大統領に感謝する’、‘世界は大きな変化を見ることになるだろう’と述べている。
3、米国、北朝鮮両国は相互に事実上の国家承認していた (その2に掲載)
4、北朝鮮にとっては今回が外交的、平和的解決の最後の機会か (その2に掲載)
(2018.6.14.)(All Rights Reserved.)
-米・朝首脳会談の成果―
6月12日、シンガポールにおいてトランプ米国大統領と金正恩北朝鮮国務委員長が1953年6月の朝鮮戦争停戦後首脳同士で初めて握手し、会談した。そして同日午前9時過ぎから冒頭の写真撮影を含めて50分ほどの首脳だけの会談に次いで、両国の外相など関係要人を含めた拡大会議とワーキング・ランチの後、両国首脳により‘包括的な’共同声明に署名された。
1、両国首脳の強い決意を包括的に示した共同声明
共同声明において、トランプ大統領と金正恩国務委員長は、新たな米朝関係の確立と朝鮮半島における恒久的な平和体制の構築問題について、包括的かつ真摯な意見交換を行い、‘トランプ大統領は北朝鮮に安全保障を約束し、金委員長は朝鮮半島の完全な非核化への確固とした揺らぎのない決意(firm and unwavering commitment)を再確認し’、次の点を宣言した。
1)米朝両国は、平和と繁栄の願いに従って、新たな米朝関係の確立を決意。
2)両国は、朝鮮半島の持続的で安定した平和体制(peace regime)の構築に共に努力。
3)2018年4月27日の(南北首脳の)板門店宣言を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化(complete denuclearization)に取り組むことを決意。
4)両国は、戦争捕虜/行方不明兵士の遺体回収を決意。既に特定された遺体の即時帰還を含む。
トランプ大統領と金委員長は、史上初の米朝首脳会談が新たな未来に道を開いた画期的な出来事だと認識し、この共同声明の条項を完全かつ迅速に履行することを決意した。首脳会談の結果を実行に移すべく、今後はできるだけ早期に、ポンペオ米国務長官と同レベルの北朝鮮当局者が協議を行うことを決意した。
両首脳は、新たな米朝関係の発展、そして朝鮮半島と世界の平和と繁栄、安全保障の促進に向け協力する決意である。
2、具体性を欠く‘決意’は決意で終わるのか
トランプ大統領と金委員長は、‘新たな米朝関係の確立’、‘朝鮮半島の持続的で安定した平和体制(peace regime)の構築’、及び今回最も注目された‘朝鮮半島の完全な非核化(complete denuclearization)への取り組み’に決意を表明した。これに対し一部メデイア等には、‘具体性に欠ける’、‘また騙されるのではないか’など懐疑的なコメントが見られる。
しかしこれらの批評は、1994年以来の北朝鮮との核問題での数次の実務レベルでの交渉、積み上げが何故裏切られて来たのか、失敗の原因は何かを十分理解していないようだ。
交渉の相手である北朝鮮は、朝鮮戦争が‘停戦’になったものの、米・韓両国との敵対関係は継続しており、それを梃子として軍事優先、先軍主義の独裁体制を維持しており、金日成国家主席、金正日北朝鮮労働党総書記(国防委員長)、この後を受けた金正恩国務委員長も絶対的な権能、発言力を持つ最高指導者である。重要決定は、ほとんどトップ・ダウンの形をとる。独裁国家を相手にする場合、最高指導者と基本合意して置くことが最も早道であり、確実である。
1990年代のクリントン政権以降、米国等と北朝鮮との核問題での協議、交渉は、国務次官補など実務レベルでの交渉であり、合意であったが、ことごとく覆され、核兵器とミサイル開発のための時間と資金を与える結果となった。
しかし米国が、北朝鮮と首脳レベルで会談、交渉したことは今までなかったことだ。北朝鮮の絶大な権力を握る首脳の意志や決意を直接確認したのは今回が初めてであり、その意義は従来の‘積み上げ方式(ボトム・アップ)’とは比べ物にならない程大きい。
批判の一つとして、‘非核化’について‘完全、検証可能で不可逆的な非核化’通称‘CVID’に言及されていないことが指摘されているが、‘CVID’を含めるよう実務レベルで詰めていたら何年掛かっても合意に至っていない可能性がある。今回の共同宣言には、‛金委員長は朝鮮半島の完全な非核化への確固とした揺らぎのない決意’を再確認したとされており、その上で、‛この共同声明の条項を完全かつ迅速に履行することを決意し、首脳会談結果を実行に移すべく、できるだけ早期に、ポンペオ米国務長官と同レベルの北朝鮮当局者が協議を行うことを決意する‘とされている。北朝鮮において金正恩委員長より下部に指示が出され、それに基づいて詳細な協議、交渉が行われることが期待される。今後の米朝交渉においては、両国首脳の今回の合意が出発点であり、最終目標となる。そのプロセスが首脳レベルの決意に沿って開始される意義は大きい。北朝鮮との首脳レベルでの会談、決意の表明は歴史上初めてのことであり、この機会を逃すべきではなかろう。
北朝鮮の金国務委員長は、トランプ大統領との1対1の会談の冒頭、‘今回、足を引っ張って来た過去と偏見を乗り越えてここに来た’と述べ、また最終段階での共同声明に署名した後、‘ここまで準備してくれたトランプ大統領に感謝する’、‘世界は大きな変化を見ることになるだろう’と述べている。
3、米国、北朝鮮両国は相互に事実上の国家承認していた (その2に掲載)
4、北朝鮮にとっては今回が外交的、平和的解決の最後の機会か (その2に掲載)
(2018.6.14.)(All Rights Reserved.)