内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

このブログは、広い視野から内外諸問題を分析し、提言を試みます。
Policy Essayist

新型コロナウイルス克服には検査と医療体制の拡充・整備が基本(追補版)

2021-09-24 | Weblog

新型コロナウイルス克服には検査と医療体制の拡充・整備が基本(追補版)

<はじめに> 日本の新規感染者は、2021年8月12日現在、全国で約1万9千人、東京都は4,989人に拡大し、重症者も全国で1,400人強、東京都では218人と最多となっている。更に子供を含め家庭内感染拡大が懸念される自宅療養者が2万人を超え、加えて入院を待つ調整者が1万1千人強にも達している。死者こそ少ないが、重症化した患者は回復しても肺機能が元に戻ることはほとんどなく、息苦しい生涯を強いられ、また味覚障害等の後遺症も残る恐れがあり、軽く見ることは出来ない。

 政府与党、東京都、財界は、オリンピック開催をシンボリックな契機として経済社会活動の回復に舵を切ったが、急速な感染拡大により経済回復を更に遅らせる恐れが強い。

 政府は家庭療養を促す一方、尾身政府分科会会長は、東京の人流を7月前半に比し半減させるよう提案している。感染防止は個々人の健康と命のためであるので、自分自身の問題として協力すべきであろう。誰の健康でも、命でもない。自分自身の健康であり、命である。

 しかし当面の課題はそれだけでなく、(1)家庭内療養者をできる限り減らし、隔離、治療すること、(2)人流は、7月20日頃以降減っている。学校が夏休みに入ったからだ。学生達は、休みで規制の少ない地方や郷里、或いは遊び場に行き、東京を離れたいのは当然だ。緊急事態宣言の中で世界最大のスポーツの祭典オリンピックが行われているのだから、少しくらいは良いのだろうという心理を無意識に起こさせているのかもしれない。

 (1)家庭内療養者については、日本の一般的な住宅事情では、感染者を家庭内で隔離し、感染力の強い伝染病を適切に治療することは難しい。家庭から隔離し、最低限の治療を行える場所を作ることが不可欠だろう。

(2)人流については、お盆期間を含め学生などの地方への人流と就労者・サラリーマンの都市圏での人流をどの程度抑えられるかだ。また学校の再開を通常通りに行うのかなど、8月末以降の対応も必要と思われる。(2021.8.12.補足)

 

 現在世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス肺炎は、感染力と致死率が高く、発生から3ヶ月後の2020年4月には、世界の感染者総数は215万人超、死亡者は14万人超(4月17日現在)に達している。日本も、国内感染者9,297人、死亡者136人(同日現在)となっている。

更にインドのデルタ型など、感染力の強い変異種への対応が必要になっている。

 このような国際的伝染病(パンデミック)を克服するためには、基本的に2つの対応が必要だ。

 1つは、伝染病の罹患者(陽性者)を早期に特定した上、隔離し、治療することが基本であろう。

 第2は、伝染病が急速に広がり、罹患者が急増し、死者が増えることにより、社会活動、経済活動全般が停滞し、国民生活に大きな影響を与えるので、そのための救済、救援処置が必要となることである。

  1、   新型コロナウイルス肺炎の封じ込めに何が必要か

(1)早期発見と情報の迅速な伝達、共有

 新型コロナウイルス肺炎は、中国武漢市で発生が確認され伝染が拡大したが、武漢市を初めとする中国の対応と情報の内外への発信の遅れが、中国国内での対応ばかりではなく、世界への伝染拡大を招いたと言えよう。

 また国連の専門機関である世界保健機関(WHO)の世界的伝染病(パンデミック)とする宣言が遅かったと言えよう。

 今回のコロナウイルス肺炎は、「新型」であったので未知なことも多く、対応が遅れたとしても誰の責任でもなく、仕方が無いことと思われる。しかし中国の地方組織を含め、情報統制を行っていることが遅れの一因であり、遺憾であるが、中国が猛省し、今後発生源の特定や何故対応が遅れたかの検証、病原菌の特性などにつき、国連はじめ関係各国への迅速な情報や資料の提供を望みたい。

 (2)検査の充実と罹患者(陽性者)の特定、隔離、治療が対応の基本

 このような感染力の強い伝染病への対応については、速やかに罹患者を特定し、隔離、治療するのが基本中の基本であろう。

 今回の場合、新型であったため、検査キットの準備がなく、1月下旬の初期段階では1日800件程度しか検査できない状況であったので、武漢等への渡航経験者などを除き、検査は受けられず、‘自宅療養’の状態となったことは仕方なかったとしても、その後迅速に検査体制の拡充・整備、陽性者を症状を選別した上で隔離・治療体制の拡充、整備を優先的に進めるべきであった。そのために予備費などを含め予算を優先的に充てるべきであったと思われる。

 一部に、検査して陽性患者が増えると病院が受け入れられないようになり、イタリアなどのように「医療崩壊」を起こすとの意見があった。何もしなければそうであろう。検査を前提として、陽性者の症状に応じ、症状がないか軽微な者の隔離場所(第1次隔離)、重度でないが治療を要する患者(第2次隔離)、及び重度者(第3次隔離)などに分けて、収容場所を新・増設する。場所は、廃校となった学校や施設や場合により適当場所に簡易施設を建設するなど対応は出来るはずだ。また医療用マスク、防護着衣や人工呼吸器類を拡充・整備すると共に、検査キットやワクチン、治療薬等の開発を図る。そのために予算を優先的に使用すべきだ。

 医師、看護師等の人材については、まず医療従事者が感染しないよう配慮する一方、OBの再リクルート、研修医の動員や、必要に応じ医大生をボランテイアー・ベースで募り、緊急・危険手当を含め然るべく報酬を支給して手当てするなど、対応は可能であろう。予備費を当てると共に予算手当を優先的に行うべきであろう。

 現在のように、無症状の保菌者が自由に行動できる状態ではコロナウイルスの伝染を克服することは出来ない。コロナウイルス禍は長期に残存する可能性が高いが、将来、緊急事態宣言を解除、緩和する時には、無症状の保菌者への対応が必要となろう。そのためにも検査の充実は不可欠だ。

 2、経済社会活動、国民生活への影響をどう緩和、救済するか

 経済的被害については、個人にせよ企業・団体にせよ、誰もが被害者であるので、まずはそれぞれの経済的能力に従って耐え、対応し克服する努力が必要だろう。そのような個々の意識と努力がなければ克服は難しい。財源が限られている以上、政府や地方自治体が行えることには限度がある。

 公的な経済的支援を必要とするのは、職業が安定していない人や解雇される人であり、企業・団体では中小零細企業・団体や観光・飲食・娯楽・サービス業などの分野で、コロナウイルス禍で著しく影響、被害を受けるところが中心となろう。仕事を失った者に対しては、雇用保険によるセーフテイーネットがあるものの、その対象となっていない人々や地域、分野によって被害は一律ではない。重要なことは、経済・社会活動が制限、縮小され、生活が困窮し、被害を受けている人々に支援が迅速に届くような措置が望まれる。(2020.4.17.初稿、2021年8月12日補足)

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国勢調査2020、1票の格差解消に反映されるか! (再掲)

2021-09-24 | Weblog

国勢調査2020、1票の格差解消に反映されるか! (再掲)

 5年に1度の「国勢調査」が実施されている。特に2020年は10の倍数の年で、本格的な国政調査となっている。国勢調査は統計法に基づき実施される国の最も重要な調査とされ、60~70万人の調査員を雇い、多額の予算を割いて実施される。重要な国の調査であるから、その結果が行政や政治に有効に活用、反映されることが期待される。

  2016年2月、安倍晋三首相(当時)は衆院総務委員会において、衆議院議員選挙における「一票の格差」是正をめぐる質疑において、「県を越える大規模な定数是正は、10年ごとの国勢調査で行うべきだ。2015年の調査は簡易調査であって、5年後には大規模国勢調査の数字が出る。・・・」などとして、抜本的な格差是正を先送った経緯がある。

 1、国民の平等を形にするものとして、「一票の格差」是正が必要

2019年7月の参院選において、選挙区で最大3倍の「一票の格差」があったことに対し、弁護士など市民グループが全国14の裁判所に違憲として訴えていた。高松高裁は、10月16日、国民の平等を定めた憲法に違反するとして「違憲状態」と判決した。

「違憲状態」との表現は、事実上「違憲」の意味であることには変わりがない。高松高裁は、香川、愛媛、徳島・高知(合区)の3選挙区の選挙無効の訴えは棄却したが、無効とすると社会的な混乱を起こすことが懸念され、3権の一つである国会の権限を尊重し国会に対応を委ねたのであろう。しかし「違憲」は「違憲」である。裁判制度は、3権分立の中で独立の機能を持つので、本来であれば、違憲と判断するのであれば、違憲状態として対応を国会に委ねるのではなく、司法の立場から違憲は違憲とすべきであり、その上で国会の対応に委ねるべきなのであろう。

 いすれにしても、国会は3権の一つであり、同等の重みを有する司法(裁判所)の判断を厳正に受け止め、抜本的解決策を次の選挙までに出すべきであろう。これは国民の平等に立脚する基本的な権利である投票権に関するであり、基本的な政治制度であるので、衆・参両院ともに最優先事項として取り組むことが望まれる。

 国勢調査2020の調査結果が公正、適正に活用されることが望まれる。それは、与党だけの責任ではなく、野党各党の責任とも言えよう。また国勢調査は今後の日本の方向性を示す指標となるので、政府としても、その結果を内閣が一丸となって評価、共有し、就労制度、年金・医療などの福祉政策、地域行政制度、交通を含む町造、都市造りなど、行政各部の政策に反映して行くことが望ましい。

 2、国民の平等を前提とする民主主義、男女平等などが遅れている日本

 ところで、「平等」とは基本的には1対1の関係に近づけることが期待されるが、選挙区割り等の技術的な制約から若干の幅は仕方ないものの、原則として1.5倍以下で極力1.0に近い数値に収まるよう努力すべきだろう。1.9倍なら良い、1.6倍ならよいなど、恣意的に判断されるべきことではない。特定の選挙区が4捨5入で2倍以上の格差となることは平等概念に反すると言えよう。人口の多い地域の1票の重みが半人前になるようではもはや平等などとは言えない。また人口の少ない地方の有権者がいつまでも投票権において過度に保護される状態では、地方はいつまで経っても自立できないのではなかろうか。また議員の質を維持する上でも公正、公平な競争を確保することが望ましい。いずれにしても人口の少ない地域への若干の上乗せは残り、配慮されるが、地方の自立があってこそ発展があり、それを支援することによる効果も大きい。

  裁判所は、これまで選挙毎に争われてきている1票の格差問題で、衆議院では2倍以上、参議院では3倍以上(つい最近まで5倍以上)を違憲、違憲状態として来ているが、格差を原則1対1に近づけてこそ平等と言える。

 世界の政治民主化度 国別ランキング(出典:世銀2018年)では、世界204国・地域中で日本は41位、G-7(主要先進工業国)中最下位となっている。因みに、世界の「男女平等ランキング2020(2019年時点の数値)」では日本は121位で史上最低となっている。また2019年の労働生産性ランキングは、「経済大国」と言われながら世界187国・地域中で36位、世界の報道の自由2020では、世界187国・地域中で66位でしかない。

 世界でこのように見られていることは残念だが、戦後75年、視野を広げ、公正、公平な民主主義の構築に向けて一層の努力が必要なのだろう。(2020/10/1)

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施策に活かされるべき統計数値ー再掲

2021-09-24 | Weblog

施策に活かされるべき統計数値ー再掲

 5年に1度実施される国全体の人口動態(毎回10月1日現在)に関する「国勢調査」が実施される。本年は西暦年の末尾が0の年の年であり「大規模調査」とされる。国勢調査は統計法に基づき実施される国の最も重要な調査であり、円滑な実施が望まれるが、それが国政や地方行政を含む行政に適正に反映されなくては意味が無い。特に国のあり方や国民の重要な権利義務を決める国会の議員定数に公正、平等に反映するなど、統計が実質的に活用されることが期待されるところであり、本稿を再掲する。


 国土交通省は、2014年3月28日、日本の人口は2050年に約9,700 万人に減少すると共に、全国の60%以上の地域で人口が2010年と比較して半分以下になるという試算を発表した。また、居住地域の約60%について人口が半減し、無人地域は全土の約60%に広がるとしている。このような予測から、地方については「コンパクトシテイ」として集約する等としている。
 人口減に関連しては、民間有識者で構成する日本創成会議の人口減少問題検討分科会が、全国1,800市区町村の50%弱の896自治体で「20歳から39歳の女性人口」が2010年以降の30年間で50%以上減少するとの検討結果を公表した。そして2040年の人口が1万人を割る自治体が523、全体の30%弱は「消滅の可能性が高い都市」になるとしている。
 総務省統計局も、6月25日、2014年1月1日時点での人口調査を公表したが、全国1,748の市区町村の82%強の1,440の市区町村で前年より人口が減少したとしている。東京、名古屋、関西の3大都市圏が全体の約51%の人口を抱えており、都市圏への集中が明らかにされている。年齢別では2014年4月、65才以上の“高齢者”或いは‘老年人口’が歴史上始めて総人口の25%を越えた旨公表している。65才以上が3000万人超えとなる一方、生産労働人口(15~64才)は総人口の62%弱の7,836万人と過去最低を更新しており、今後この傾向が継続するものと予想される。
 1、 活かされて来なかった官民の統計数値
 少子高齢化は、1990年代初期から政府統計で明らかにされ、人口構成が欧州
型のつりがね型となることが指摘されていた。それが年金政策や医療福祉政策ばかりでなく、地方を含む日本の行政組織・制度や国会、地方議会のあり方や都市政策、地域社会政策等に十分に活かされなかったため、今日の問題となっている。年金など社会福祉予算の不足と共に、地方におけるシャッター街や限界集落の増加など、現象面での問題が先行している。農村部において、嫁の来ない村どころか、後継者がいない農家が出始めたのも90年代からである。
 何故日本で折角の統計数値が活かされないのだろうか。
 一つは、行政が縦割りで、省庁間だけでなく、各省庁内においても局部による縦割りで、統計数値が発表されるとそれで基本的には業務が完結してしまい易い体制になっているからであろう。
統計数値を施策との関係で総合的にチェックする統計ウオッチャー的部局が行政や議会に必要のようだし、民間の研究機関でも統計数値にもっと留意が必要のようだ。
 もう一つは、統計数値が尊重されず、政治的な配慮や裁量が重視される側面があることであろう。その顕著な例が国政選挙における1票の格差問題だ。本来、国勢調査は5年に1回であるが、西暦年の末尾が0の時は大規模調査行われるので、5年に1度か、少なくても大規模国勢調査後に、選挙区の区割りが調整されるべきであろう。
 有権者の1票の格差問題について、最高裁は衆議院について1972年の選挙から、また参議院については1992年の選挙から、違憲又は違憲状態との判決を出していた。しかし1票の格差が、衆議院で2倍以上、参議院では5倍以上で違憲又は違憲状態と判断されて来たため、国会での区割り調整は衆議院で2倍以下、参議院では5倍以下で微調整が繰り返されて来た。裁判所が、‘政治的な混乱’を避けるため選挙自体を無効としたことはこれまでなかったが、法の番人である裁判所が「平等」の概念を政治的な判断から非常にゆるい形で解釈して来ていることが数値に対する信頼性や判断を曖昧なものにして来ているのではなかろうか。地方から都市部への人口流出が続いている今日でも、衆院で2倍以下、参院では5倍以下で容認されている形だ。
 しかし「平等」の概念は本来1対1の関係を確保することであり、裁判所が
1票の格差が2倍以下、或いは5倍以下であれば「平等」と判断することは余りにも恣意的と言えよう。‘政治的な混乱’を避けるためということは戦後の混乱期から一定期間は必要であり、理解出来ないことではないが、3権が分立している中にあって司法が‘政治性’を配慮し、民主主義の根幹である有権者の「平等」を軽視する結果となっているように映る。その上憲法を含む法の番人である裁判所の平等性や数値に対するゆるさは、国民の数値に対する信頼性に大きな影響を与えていると言えよう。
 そして2012年12月に行われた衆議院選挙については、全国で16件の裁判が行われ、14件は格差が是正されないままで行われた選挙は違憲とされ、他2件も違憲状態とされた。特に広島高裁では選挙自体を無効とし、一定期間後に効力が発生するとし、立法府に是正の猶予を与えたが、岡山支部は猶予を与えることなく無効とした。
 だが裁判所の格差の目安は、未だに衆院で2倍以下、参院では5倍以下が踏襲されている。有権者の一票の格差が1対2でも、1対5でも「平等」と言いたいのだろうか。無論、区割り技術上、厳密に1対1にすることは困難であろうが、司法が立法府に勧告等するのであれば、1票の重みがなるべく1対1の関係に近くなるよう促すべきなのであろう。その目安は、例えば最大格差1.2倍程度であろう。そして司法の判断を尊重し、それに適正に対応することが政治の責任ではないのだろうか。また選挙管理委員会も選挙における平等性を確保する責任があるのであろう。一部に地方の声が届き難くなるなどの意見はあるが、これまで優遇されて来たために人口減への危機感や対応が遅れたとも言える。また都市人口と言っても、筆者を含め半数以上は地方出身であり、地方のことは都市でも大いに関心があるし、過度な大都市への人口集中は望ましくないと考えられるので、地方の活力が発揮され、地方の人口が増加すれば議席も増えるという好循環を作って行くことが望まれる。
 このような調整が国勢調査毎に行われていれば、急激な変化による不安定化を招くことなく対応出来たのであろう。一方、このような調整が一定期間毎に行われると、人口減少に直面する地方自治体は人口減に歯止めを掛け、人口増に繋がるよう、有効な対応策を真剣に検討せざるを得なくなるであろう。また地方自治体の統廃合についても時間を掛けて調整されるであろう。

 2、人口減を見据えた行財政モデルと統治機構の簡素化が必要
 少子化、人口の減少傾向により、現在の‘定年制’を前提とすると、将来的に労働力人口は減少し、国民の税負担能力は低下する一方、長寿化により年金受給者や受給期間が増える等、福祉関連の歳出は増加する。
 またこのような人口減は、全国一律に起こるのではなく、地方から人口が流出し、地方の人口減が起こる一方、首都圏等の大都市に人口が集中する傾向が民間の研究でも指摘されている。
 他方、経済については、グローバル化が進み、国内市場ではなく世界市場を目標として企業の大規模化、多国籍企業化が進む一方、裾野産業がそれを支えると共に、特異な技術や製品が世界市場に向かうなど、中小企業についても国際競争力が問われるものと見られる。
 このような変化の中で、2040年を一つの目標年として、中央及び地方の体制を次のように誘導して行くことが望まれる。なお、人口増について、出生率の増加や外国人労働力の受け入れなどが検討されているおり、それにより若干の効果はあろうが、日本人の人口減と長寿化は趨勢としては継続すると見られるので、それを前提とするべきであろう。
(1) 中央、地方行政組織、議会それぞれにおける適正な定員管理
人口減、労働力人口減が予測されている以上、行政組織を適正規模に調整し
て行くことが不可欠であろう。それを行っておけば、経済停滞期に行政組織で景気対策としての雇用増を行う余裕が出来ることになろう。そのためまず新規採用を着実に削減して行くことが望ましい。新卒者も減少していくのでその影響が緩和されよう。この場合、特殊法人や独立行政法人などの関連組織を含む。また、規制の原則撤廃や簡素化を進めることが望まれる。
 特に相対的に急速な人口減が予想されている市区町村については、新規採用の削減などの定員管理と共に、市区町村の統廃合を進め、持続可能な自治体規模としていく必要があろう。同様に選挙区についても定期的な整理・統合が必要となる。これを怠ると将来財政破綻となり住民は大きな被害を受けることになろう。
 なお全体の定員管理については、雇用機会の確保(ワークシェアリング)に重点を置き給与・報酬を抑える方法と、優先分野を明確にし、優先度の低い部局や効率の悪い部局やムダを削減すると共に、規制の撤廃を促進して定員を縮小する一方、給与・報酬など労働環境を改善する方法がある。将来的にはより豊かな家計、生活、即ち高所得、高消費の社会に導くことが望まれるので、後者の方法が望ましいが、中央は中央として、またそれぞれの自治体の規模や特性を踏まえ各自治体の選択に委ねられるものであろう。
 その上で、魅力あるコミュニテイ作りを進めることが望まれる。
(2) 公共施設、社会インフラの適正な管理と魅力あるコミュニテイ作り
 これまでの経済成長期、人口増を前提とした経済社会インフラ作りのための公共事業モデルは今後困難となるので、低位成長、人口減を前提とし、コミュニテイの生活インフラに重点を置いた公共事業モデルに転換して行く必要があろう。新たな公共施設や道路等は、当面の利便性を高めようが、その維持管理と修復等の後年度負担が掛かるので、人口減となる自治体にとっては将来住民への大きな負担となる可能性がある。従って、人口動態予測や適正な需要予測を実施し検討されなくてはならない。
 他方、自治体生活圏のコンパクト化については、居住の自由との関係や一部地域が原野化する一方、生活圏が縮小する恐れがある上、不動産価格が局部的に高騰し、移転費の問題等が生じるので、新たなコミュニテイ作りについて住民との協議を通じ理解と協力が不可欠であろう。同時に、折角スペースが空くことになるのに、生き苦しい狭隘なコミュニテイ作りは望ましくない。駅や公共施設はもとより、道路沿線のビルや商店などには駐車・駐輪場の設置を義務付けることなども検討することが望ましく、また移動ショップの普及なども考えられよう。
 機能的ではあるが、地域の特性を活かし、人を惹きつける魅力が有り、豊かさを感じられる特色あるコミュニテイとなるよう、グランド・デザインを作ることが望まれる。
 (3)65才以上の年長者への対応
 寿命が延び、総人口の25%以上となった65才以上の年長者を、従来通りの統計基準を当てはめて、15~64才を‘生産労働人口’とし、65才以上を労働市場から除外し、年金受給者として区分することが適当なのであろうか。
 2つ問題がある。長寿化により、年金給付総額が増加の一途を辿ることは明らかであり、そのままでは年金財源が不足するのは明らかだ。
 もう一つは、少数ではあるが65才以上でも、相当な報酬を受けて何らかの形で仕事を継続している者がいる。他方仕事、従って組織から離れて年金生活に入ると1年程度は良いが、多くの人は物足りなさや疎外感を持ち、時間の潰し方を探すことになる。平均的な寿命でも、14、5年そのような生活を強いられる。
無論それを望む者はそれで良いのだが、健康で仕事が出来る経験を持ちながら無為に過ごすことになり、また年金だけでは将来不安を感じている人も少なくないようだ。
 65才以上でも働くことを希望する者に雇用機会を開放することが望ましい。そのため画一的な定年制は廃止することが望ましい。但し、給与が年功序列的に上昇すれば賃金コストが高まるので、最も生活費が掛かる中間層の賃金を上げるために、基本給(役職手当は除く)については例えば、60才以上については直前給与の80%、65才以上では70%、70才以上で60%、75才以上で50%以下(いずれも健康保険付与)とするなどして、雇用機会を与えることが望まれる。同時に、年齢に応じた勤務形態とする。また年齢区分については、長期に固定化することは現状を反映しなくなる可能性があるので、可能であれば3年毎、少なくても5年毎に調整することが望ましい。
なお、年金については65才以上で例えば年額800万円以上の報酬を得ている者については年金給付を部分給付とし、1,200万円以上については凍結するなどの方策を検討して良いのではなかろうか。
(2014.12.9.2020.9.18.冒頭追加)(All Rights Reserved.)

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日・ロ平和条約締結への交渉加速を期待する (再掲)

2021-09-24 | Weblog

日・ロ平和条約締結への交渉加速を期待する (再掲)
                             2018年11月26日
 日・ロ平和条約締結に向け、シンガポールで開催されたASEAN関連首脳会議に際し、2018年11月14日、安倍首相はロシアのプーチン大統領と会談した。この会談は2016年に持たれた両首脳の日本での会談において、「新しいアプローチで問題を解決する」との方針の下で、北方4島での共同経済活動を促進することで合意したことを受けて行われたものである。
 日本外務省が公表した会談概要では、事務当局を含めた全体会合(45分)の他、通訳のみでの両首脳の個別会談(40分)が行われた。全体会合では、平和条約問題の他、2国間経済関係の促進、国際的な安全保障分野での協力、北朝鮮非核化問題など幅広い分野で意見交換が行われている。
 日・ロ平和条約締結問題については、全体会合においては、北方4島における共同経済活動の促進につき協議されると共に、日本側より元島民の問題について提起されたが、北方4島返還問題を含む平和条約締結問題については突っ込んだ話し合いは行われず、両首脳による個別会談で行われた。
 首脳間個別会談の後、安倍首相は記者団に対し、「1956年宣言を基礎として平和条約交渉を加速させる。そのことをプーチン大統領と合意した。」と述べ、これが公表された会談概要にも記載されている。1956年に調印された日・ソ共同宣言においては、外交関係を回復し、平和条約締結交渉を継続することとし,‘条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡しする’旨記されている。
 日本は従来、4島一括返還を主張し、領土問題解決が平和条約締結の前提条件としていた。しかし1956年の共同宣言から62年、歴代政権が交渉を重ねてきたものの見通しが立っていない今日、長年の膠着状態を打破するため平和条約締結に向け1956年の共同宣言を基礎として条約交渉を実質的且つ具体的に加速することを支持する。
 日本としては、老齢化する旧島民や地権者の精神的負担を軽減すると共に、急速に存在感を増す中国との関係においても海を隔てた隣国ロシアとの平和条約を締結することがタイムリーと言えよう。他方ロシアにとっては、強大化する中国との関係において、クリミア半島併合以来米・欧との関係が悪化し、制裁を科され、G8(主要先進8カ国)からも外され、孤立感を深めているので、政治的にも経済的にも日本との平和条約締結は望ましいものと言えよう。
 1、ロシアは北方領土返還により日本の信頼を回復出来る
 プーチン大統領は、今回の首脳会談後、‘同宣言には、ソ連が2つの島を引き渡す用意があるということだけ述べられ、それらがどのような根拠により、どちらの主権に基づくかなどは述べられていない。慎重な議論が必要だ’と述べたと伝えられている。しかしロシア側は、北方4島を奪取した経緯と旧島民のみならず日本国民にとっての北方領土返還の意味を理解すべきであろう。それは北方領土の権益等の経済的な価値などではなく、日本のロシアに対する信頼性回復の問題なのである。
 プーチン大統領は、日本の北方領土は‘戦争の結果得たものである’と述べていたところであり、日本の領土であることは認識していると思われる。従って、‘日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡しする’ということは、2島を日本の主権下に‘引き渡す’と言うことに他ならない。無論、ロシア、その前身であるソ連がこれらの島に投じた資金や現実にロシア人が生活をしているので、それらに対する代償については、プーチン大統領が示唆している通り‘議論が必要’であろう。
日本人にとっては、北方領土は‘経済的代償’以上の意味合いがある。
 日本は、第2次世界大戦前の1941年4月、ソ連と中立条約を締結している。しかしソ連は、中立条約の破棄通告もなく(1年前の事前通告が規定)、1945年8月8日、突如日本に対し宣戦布告し、北方4島を奪取、占領した。
 ソ連は日本との重要な国際約束を破ったのである。従って、ロシアが平和条約を締結しても、北方4島をどのような形であろうと日本に返還しないということは、ソ連、従ってそれを継承しているロシアは、国際約束を遵守しない、都合により一方的に破棄することがあるということを意味し、日本人は、また世界は‘ロシアは信頼できない’という認識を持つであろう。平和条約を締結しても、‘信用できないロシア’との貿易・投資が積極的に進められるとも思えない。
 プーチン大統領は、北方領土問題は‘経済的代償’の問題以上に‘信頼性’の問題であることを十分に理解すべきであろう。他方‘経済的代償’については、日本側は可能な限り知恵を出すべきであろう。

 2、北方領土問題につき1956年の共同宣言を越えられるかが鍵
 今後平和条約交渉が実質的に加速し、条約締結の段階に至っても、北方領土に
ついては歯舞、色丹の2島返還だけに終わると、1956年の日・ソ共同宣言以来の62年間に亘る歴代政権の交渉努力は何だったのかとの批判に晒される恐れがある。
 従って今後の最大の鍵は、残る択捉、国後2諸島の取り扱いとなろう。同時に、歯舞、色丹の2島が返還されることになれば、この両島の地権者の問題は解決するが、択捉、国後2諸島において‘共同経済活動’が継続するとしても、この両島の地権者の地権回復が問題となろう。
 (1)残る択捉、国後2諸島の取り扱い
 択捉、国後2諸島については、‘1956年日・ソ共同宣言’の外になるので、今回の交渉で結論を出すことは困難と予想され、何らかの形で継続協議となる可能性がある。そのような可能性があるとしても、歯舞、色丹2島の返還を前提とした条約締結交渉を支持する。
 しかし択捉、国後について一定の方向性を出すことが望まれる。例えば次のような選択肢が考えられる。
 イ)現状のまま‘共同経済活動’を継続し、帰属につき代償を含め協議する。
 ロ)領有権は日本側に引き渡すが、ロシア側に一部を実質上無償で無期限租借する。
 ハ)択捉、国後2諸島については、‘日・ロ自由貿易地域’(仮称)として日・ロ両国の共同管理 
  する、など。
 いずれにしても両国が、両国国民の理解と信頼が得られるよう知恵を出すことが不可欠であろう。

 3、地権者の権利を認め、帰還を認めるか、補償が支払われるべき
 ソ連による北方4島占領当時、島民は3,124世帯、17,291人ほど(独法北方領土問題対策協会資料)であり、その生活や権利は回復しない。両国による領有権問題は別として、日・ロ共同経済活動と並行して、或いはその一環として、それら島民が故郷に住む権利を回復すべきであろう。また住むことを希望しないものに対し補償がなされるべきであろう。国家の領土権問題は、国家と国家の間の問題であり、シビリアンである個人の地権、所有権は個人の土地・財産所有権の問題であるので、責任ある国家としてはそれを尊重する義務がある。国家間の戦争において、戦闘に関与していない一般市民の生まれ育った故郷に平穏に住む権利を奪うことは、今日の国際通念において人道上も、人権の上でも容認されて良いものではない。
 旧島民による墓参活動が進展しているが、ロシア側、或いはロシア人在住者が日本人の墓地や鳥居などの旧跡を破壊、撤去せず、維持していることは日本人のルーツ、心情を認識、理解しているものとして評価できる。プーチン大統領も、ロシア人の生活だけでなく、日本の旧島民の気持ちは十分に分かるであろう。
 日・ロ間には‘平和条約’こそないが、事実上の平和が維持されている今日、4島に住んでいた日本の旧島民及びその家族が故郷に住む権利、そして地権の回復か代替地の提供、或いは補償が早期に行われることが強く期待される。多くの家族が土地登記をしている。
(2018.11.26.)(Copy Rights Reserved.)

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膨らむ企業の内部留保、求められるコロナ禍での使い道

2021-09-24 | Weblog

 膨らむ企業の内部留保、求められるコロナ禍での使い道

 2021年9月1日に公表された法人企業統計(財務省)によると、企業の利益剰余金(内部留保、金融・保険業を除く)は、2020年度末時点で前年度に比べ2.%増の484兆円強となった。増加率は低下したものの、2012年度以来、9年連続で増加し、過去最高を更新している。

 利益剰余金は、総売上額から人件費や原材料費など必要経費を引き、株主への配当金や税金を差し引いたもので、企業が将来の設備投資や事務所拡大など自由に使える。業種により余剰金額は異なり、コロナ禍では、製造業やIT関連企業を中心として業績を伸ばした一方、観光関連業種や対面サービスを行う業種などは大幅減となっている。

 コロナ禍でも利益剰余金を積み上げられる企業が存在することは大変心強いところであり、その努力に敬意を払いたい。

 1、企業の利益剰余金(内部留保)の国民経済への還流が望まれる

 しかしコロナ禍で多くの企業が経営難にあえいでいる中で、日本の国民総生産(GNP)にほぼ匹敵する484兆円強もの利益剰余金を企業が抱え込んでいることが経済全体にとって適切か否かが問われる。

 一部に、内部留保積み上げはコロナ禍で設備投資を手控えたためとされるが、設備投資の手控えはそれだけで民間投資の減少、従ってそれだけ総生産(GNP)を引き下げる結果となっている。

 一定の内部留保は、将来の設備投資と安定した経営基盤を維持する上で必要である。しかし個人の貯蓄同様、好調な時期には積み上げ、停滞期には放出することが必要だろう。コロナ禍で経済停滞する現在、GNPの縮小に繋がる484兆円強にものぼる企業の内部留保のなるべく多くの額を国民経済に還流することが望まれる。

 基本的には平常時において、賃金や契約社員等への報酬、役員報酬、及び株式配当金への分配をもう少し引き上げる努力が望まれるが、今回のような緊急時においても、例えば、契約社員等の雇い止めを極力回避すると共に、報酬・賃金の引き上げ、株式配当の増加、社員研修の強化、研究開発の促進や関連下請け企業製品の価格引き上げなどの他、企業内での感染防止措置の拡充、授業員家庭支援など、企業にとっては負担となるが、内部留保を経済に還流し、経済全体の底上げ努力が望まれる。

 2、「異次元」の金融緩和は家計所得や消費増には繋がらなかった

 企業の内部留保は、阿倍自・公政権が2013年1月に発足し、「異次元」の金融緩和が開始された頃より顕著に増加している。「異次元」の金融緩和により、輸出産業や観光関連産業など一部の産業が業績を伸ばしたことを背景として、株価が上昇したため、多くの企業は株式評価益等が出たことにより、利益剰余金を積み上げて行ったと見られる。他方、このような局部的な産業の好調と内部留保の積み上げとは裏腹に、実質家計所得は減少しており、消費は低迷した。日銀は、「異次元」の金融緩和とマイナス金利を長期に継続しているが、産業への局部的効果はあるが、家計所得や個人消費の増加には繋がっていないことが明らかになった。金融政策依存の限界と言えよう。

 逆に、2008年9月のリーマンショック以来の切れ目のない恒常的な金融緩和策とゼロ金利政策が、2013年1月以来の「異次元」の更なる金融緩和とマイナス金利政策により更に助長され、金融緩和により恩恵を受ける分野とその恩恵がほとんど及ばない分野との間で著しい経済格差を生む結果となっている。

 それに追い打ちを掛けたのが、2020年1月以来の武漢発の新型コロナウイルスの国際的な感染拡大である。これが各国の航空・観光産業や飲食産業、娯楽産業とこれらを支える関連産業を直撃し、人の動きを制限し、経済社会活動を減速させた。その対策として、各国政府は、感染拡大を抑制するための検査やワクチンを含む医療体制の拡充をする一方、職や所得を失った人々などへの財政支出を拡大すると共に、無利子の融資を含む金融支援策を実施したことにより、金融緩和が加速し、経済社会の格差を更に拡大する結果となっている。

 米国のバイデン政権の下で、連邦準備理事会(FRB)が、雇用の維持促進とインフレ率を睨みながら、金利の引き上げを含め、金融緩和の抑制時期を検討しているのは、金融緩和策による副作用を除去し、金融正常化に道を開くためである。

 日本銀行も米国の金融正常化に向けての政策転換を参考にしつつ、金融緩和幅の縮小を通じた株価の沈静化を図っているようだが、それは経済の抑制に繋がる可能性がある。このような中で、企業がそれぞれの企業経営に資する形で内部留保を積極的に活用し、経済に還元することが望まれる。また政策当局としても、企業の巨額の内部留保を景気の局面に応じて誘導することが経済対策に繋がることに注目する必要があろう。(2021.9.6.)(All Rights Reserved.)

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TPP 11(環太平洋パートナーシップ協定)の6カ国による批准・発効を歓迎!(再掲) 

2021-09-24 | Weblog

TPP 11(環太平洋パートナーシップ協定)の6カ国による批准・発効を歓迎!(再掲) 

<はじめに>2021年9月16日、中国はTPPへの加盟を正式申請した。また台湾は、同月22日に加盟申請した。中国及び台湾の加盟申請により、双方につきそれぞれの市場、経済制度がTPP加盟条件に適合しているかなどが審査されることになるので、これを歓迎する。重要なことは、個別の産品毎の突き合わせ以前に、中国や台湾がそれぞれがTPP加盟各国が形成する地域的経済圏と同等レベルの自由経済市場や自由な経済活動が確保されているかを検討する必要がある。このような観点から、本稿を再掲する。(2021.9.24.補足))

 TPP11カ国は、米国の離脱公表の後協議を重ね、2017年11月9日、ベトナムで開催された経済貿易閣僚会議において、離脱を表明している米国に関連する条項を凍結(関連条項の実施先送り)する形で11カ国による新協定「TPP11」に大筋合意し、2018年10月31日、豪州が批准したことにより、既に批准しているメキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダを加え、6カ国で12月31日に発行する。11月中にも手続きを完了するベトナムが加われば7カ国となるところ、TPP 11の発効を歓迎する。
 1、消費者にとっては朗報、生産者も輸出のチャンス増加
 今後、参加11カ国の批准手続きがすべて終われば、米国抜きで人口5億人(EUと同規模)、世界の国内総生産(GDP)の13%(EU 22%)を占める経済圏となる。
 消費者にとっては、当面肉類や一部野菜・果物類などが豊富で安くなり、朗報だ。その上豪州やNZは季節が反対となるので、天候被害等の場合補完し合うことになり、野菜不足、酪農品不足などが補える。また農産品を含め、これら諸国への輸出も容易になり、生活効果、経済的効果が期待される。
 他方、これにより農業、酪農生産者への影響が考えられるが、関税等の引き下げは段階的に行われるので、当面の影響は限定的であろう。
 農協(JA)長野中央会は、食肉や酪農品を中心として同県の農林水産業への影響を約14億円としている。政府は全体として国産農産品の売り上げが約1,500億円減少すると試算としている。しかし一部では、外国の食肉については狂牛病などで品質上の問題があり、国内の産地銘柄への志向は維持されるとの見方もある。一般的に日本の農産品、酪農品は小規模生産のため相対的に価格は高くなるが、生産者や産地により特性があり、高品質のだめ、大規模生産の外国のものと比較して価格は高めだが、品質の高さから一定の需要層は確保できる。生産者にとっても努力次第では高級食材などの輸出のチャンスが増えることになろう。
 2、国内流通制度の簡素化による価格引き下げが不可欠
 国内農産品、酪農品の最大の問題は、価格であるが、食材の銘柄により差別化が図れる一方、生産者価格はそれ程高くなく、流通段階が複雑でコストが掛かり割高となっている。現在は、インターネットを利用した生産者よりの直接販売も可能となっているので、消費者直送も可能になっている。対応が迫られているのは流通システムの多様化と簡素化だ。
 特に農協(JA)制度は、戦後の農産物生産と消費市場への安定供給の上で重要な役割を果たしたが、工業化に伴う若年層の農村地域からの流出と食生活の変化により生産、消費ともに大きく変化しているので、日本の農業、酪農がグローバル化に柔軟に対応していけるよう、生産者の努力が消費者に直接届けられる自由且つ柔軟な流通システムとして行くことが望まれる。
 3、米国のTPP復帰と必要とされる中国経済の自由市場化
 TPPから離脱した米国の動向が注目される。米国は2国間交渉を重視し、北米自由貿易地域(NAFTA)についてもメキシコ、カナダと2国間の交渉を行い新たな枠組みを作った。NAFTA自体を否定をしたわけではない。TPPについても、米国は日本を含め2国間の交渉を求めて来ており、今後の動向が注目される。
 将来米国が何らかの形でTPPに復帰することが期待されるところであるが、いずれにしても開かれた自由貿易圏を目指すべきであり、環太平洋諸国の新規加入も期待される。中国については、単一国で13億超の市場を形成している上、‘中国の特色ある社会主義市場経済’を目指すことが2017年10月の全人代でも再確認され、基本的には為替管理を含め、国家管理経済、統制経済体制であり、私有財産制に基づく‘自由経済’、‘自由市場’とは体制が異なるので、TPPに参加する要件が整っていない。従って中国の国内経済体制が為替管理を含めて自由経済市場に移行するまで参加は困難であろうし、適当でもない。
 世界貿易機構(WTO)が、 社会主義経済である中国の参加をそのまま認めたことは時期尚早であり、これによりWTOの下での世界規模の自由化の流れが停滞したことに留意すべきであろう。中国については、WTO参加に経過措置を設け、一定の条件を付して置くべきであった。現在、米国が中国に条件を付ける形で通商折衝が行われているが、国際協調、グローバル化に流されて、中国のWTO参加に際し条件を付さなかった軽率さが遠因と考えられる。中国がWTOに加盟すれば、中国の自由市場化が促進されるとの期待感は外れたと言えよう。
 中国が、米国のトランプ大統領の下での通商政策を保護主義とし、‘自由貿易主義’を主張し、二国間や国際場裏で同様の主張を繰り返しているが、そうであれば中国の国内市場を米国やその他の先進工業諸国と同程度に自由化し、国家による統制や中央管理を撤廃する努力をさせるべきであろうし、各国がそれを中国求めて行くべきであろう。
 同時に、WTOのみならず、国際機関の政策的方向性や事務局の在り方を含む政策面での監視や指導を強化する必要があるようだ。現在世界が直面している最も深刻な課題は、地域紛争の長期化、恒久化と大量な難民問題であろう。戦後国連の下で進められて来た難民政策の下では、既存の難民キャンプが恒常化している上、自然増により世界の難民が増加し続けている上、紛争が解決されないまま先送られ、長期化、恒常化する中で新たな難民が生まれている。
 新たなアプローチが必要になっているのではないだろうか。(2018.11.4.)(All Rights Reserved.)

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台湾の独立実現に転換すべき時   (再掲)

2021-09-22 | Weblog

台湾の独立実現に転換すべき時   (再掲)


 1月末以来、中国武漢から世界に拡大したコロナウイルスは、既に680万人以上の感染者、40万人近くの死者を出し、世界レベルでの感染は未だに収まっていない。
 このような中、5月18日、世界保健機関(WHO)の年次総会を開かれ、焦点に1つであった非加盟の台湾のオブザーバー参加について、中国が「1つに中国」を主張して反対したため、見送りとなり、年内にも開かれる次回総会で協議されることになった。
 米国は、台湾のオブザーバー参加を支持する一方、WHOは中国寄りであり、改革を求めると共に、改革されなければ脱退も辞さないとした。
1、コロナウイルス問題は世界77億人の健康、存続に関する問題
コロナウイルス問題は、単に2,700万人の台湾の人々の健康、安全の問題ではなく、世界の77億人の健康、安全の問題であると共に、世界の健全な経済・社会・文化活動の回復、維持に影響する問題であり、いわば人類全体の健全な存続に関する問題である。
 武漢型コロナウイルスは、その発生源については別として、武漢から世界に拡散し、40万人を超える死者を出す拡散源となったことは確かである。習近平中国主席は、武漢を中心とする中国国内で感染が拡大したことを詫びたが、世界に対してはそのようなお詫びをしていない。確かに中国も新型コロナウイルスの被害者であるが、世界に拡散させた責任の一端はあり、世界に何らかの言葉があっても良いのではなかろうか。それどころか、世界が密接に協力してコロナウイルスを克服していかなくてはならない時期にWHO年次総会への台湾のオブザーバー参加を阻み、コロナウイルス克服へ向けての世界的努力から除外し、空白地帯を造っているに等しい。世界のどこかに空白地帯があれば、この問題の中・長期的な解決は難しい。
 2、台湾の独立を推進する時
 次のWHO総会でも、中国はかたくなに台湾が中国に帰属するとの原則を主張し、台湾の参加に反対するか、厳しい条件を課すであろう。台湾について中国が何かできるわけでもなく、台湾は国際的なコロナウイルス撲滅努力の外に置かれる。
 領土問題については、香港の問題がある。1997年6月に英国の99年間香港租借が終了し、50年間は香港の「高度の自治」が認められる1国2制度に移った。領土としては中国であり、香港での民主化運動の激化に対し、中国は香港に「国家安全法」を適用することを2020年5月の全人代で決めた。
米国等は香港の自由と民主主義を抑圧するものとして強く反発している。しかし中国は、香港は中国の一部であり、内政干渉として取り合う姿勢を示していない。中国は「領土」という原則は曲げないであろう。現在の国境を前提とする国家関係ではやむを得ないことだろう。そのことは香港を去った英国が一番よく知っている。
台湾については、戦後中華民国として中国共産党下の中華人民共和国とそれぞれが中国を代表するものとして対峙していたが、東西冷戦下の1971年に、アメリカ合衆国をはじめとする西側諸国と、ソビエト連邦(当時)をはじめとする東側諸国との間で政治的妥協が計られた結果、国際連合における「中国代表権」が中華人民共和国に移され、中華民国(台湾)は国連とその関連機関から脱退を余儀なくされ、「地域」として扱われてきた。
 台湾と外交関係を有する国も現在中南米、カリブ諸国を中心として15カ国に減少している。日本も外交関係を持っていない。
 台湾が国連を脱退して50年ほどになるが、中国は「1つの中国」を主張し、台湾をその1地域としている。台湾においては、台湾独立派と中国大陸派とが存在するが、自由と民主主義は根付いており、同じ中華系も多いが、高雄系などの台湾独自の人口も多いので、中国共産党とは相容れない社会経済体制となっている。双方とも、それぞれが中心となって中国統一を願っているようであり、それが双方国民の選択であれば良いが、差が縮まるどころか広がっている。
 これ以上待っても物事は動かないし、武漢型コロナウイルス問題など地球規模の問題への対応、健全な人類の存続を考えると、台湾を国連の外に置いておくことは望ましくない。今や東西冷戦はなくなっており、その時の東西両陣営の妥協の産物である中国の代表権問題はその役割を終えたと考えられるので、今や台湾の独立を推進すべき時代になっていると言えよう。台湾独立後、双方の国民が統一中国を希望するのであれば、それは双方の国民の選択に委ねれば良いことであろう。
(2020.6.8.All Rights Reserved.)

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アジア地域包括的経済連携(RCEP)、中国への条件付与が不可欠  (再掲)

2021-09-22 | Weblog

アジア地域包括的経済連携(RCEP)、中国への条件付与が不可欠  (再掲)

 2011年11月にASEAN諸国の提唱により協議が始まったアジア地域包括的経済連携(RCEP)は、2019年11月4日、バンコクで開催され首脳会議において、インドを除く15カ国が2020年中の協定署名に向けた手続きを進めることで合意した。
 アジア地域包括的経済連携(RCEP)は、ASEAN10カ国に加え、日本、韓国中国、インドとオーストラリア、ニュージランドの16カ国を対象として関税の自由化、サービス分野における規制緩和や投資障壁の撤廃を目的として協議が行われて来た。しかしインドは、中国の市場アクセスへの懸念につき対応されておらず、自国の農業・酪農、消費部門が影響を受けるとして参加を見送った。インドのモディ首相は、今回のRCEP合意について、関税の違いや貿易赤字、非関税障壁など、「インド国民の利益に照らし合わせ、肯定的な答えは得られなかった」との考えと伝えられている。
 中国、インドを含むRCEPが実現すれば、世界の人口の約半分に当たる34億人、世界のGDPの約3割の20兆ドル、世界の貿易総額の約3割10兆ドルを占めるメガ地域経済圏となる。
インドを除く15カ国は、インドの参加を期待しつつも、2020年中の15カ国での発足を模索しているが、基本的に次の問題が内在しており、慎重な対応が求められる。
 1、「社会主義市場経済」を標榜する中国との差は埋められるか
 中国は「社会主義市場経済」を標榜しており、自由主義市場経済と異なり、基本的に中央統制経済を維持している。従って石油ガス、銀行その他の戦略性や公共性のある多数の基幹産業が政府(国務院)か共産党管理下の「国有企業」であり、補助金を含め政府や党からの実質的な支援を受けている。政府や党が100%株式を所有する中央企業などのように、その下に中央企業が持ち株会社として管理監督する子会社が多数存在する。従って表面上‘株式会社’となっていても国が保有或いは統制している企業体が存在する。
 このように国家や共産党に補助金や直接管理で保護されている企業や産業が存在し、国内産業は保護、規制しつつ、海外市場や海外投資については自由貿易、多国間主義を求めるのは、衡平を著しく失する。このような企業、産業からの輸出については、輸入国側、投資受け入れ国が、輸出国側の補助金等の保護の度合いにより相応の関税を課す事を含め、一定の防護措置をとることを認めるべきであろう。そうでなければフェアーな競争とは言えない。スポーツに例えれば、筋肉増強剤を使用している選手と競争しているようなものだ。
 この観点からすると、米国による中国に対する関税措置や貿易交渉姿勢は‘保護主義’などではなく、公正な要請と言えよう。
 1990年代に入り急速に経済成長した中国は、2001年12月、世界貿易機関(WTO)に加入した。当時のおおよその見方は、13億人の巨大市場である中国貿易が自由化され、世界市場が拡大する一方、中国経済自体も国際経済秩序に組み込まれ、市場経済化を加速させるものと期待された。
その期待の一部は達成されたが、WTOへの加入により最も利益を得たのが中国であり、いわば独り勝ちの状況となっている。
 中国は、WTO加入に際し金融の自由化、諸法制の整備などの是正が求められ、若干の改善は見られている。しかし中国は、体制上『社会主義市場経済』を標榜しそれを堅持しているので、先進工業諸国が採用している‘自由主義経済’や‘市場経済’とは異なり、上記の通り、国営基幹産業を含め、基本的に国家統制経済であり、国家の統制や国家補助、国家管理が強い。また実体上、元の為替レートや株価への統制や管理も行われ得る体制となっている。中国は、米国の通商交渉姿勢について、国際会議や記者会見等において、‘米国は保護主義的であり、自由貿易を支持する’などとしているが、国内で中央統制経済を維持しつつ、世界では自由貿易とは身勝手と言える。ASEAN諸国も、当面は中国経済の恩恵を受けているが、RCEPが発足すると国内産業が圧迫され、不利益の方が際立つ可能性がある。現在、世界貿易機関(WTO)の改革が検討されているが、国家補助を受けている企業や産業が世界市場に参入する場合の条件、外国為替や株式市場への直接的国家介入の節度、技術や特許など知的財産の国際的保護などが課題と言えよう。
 中国は、国民総生産(GDP)において、既に米国に次ぐ世界第2位の経済大国となり、成長率が低下したと言っても年率6~7%の成長を維持し、2019年の世界経済成長率3.2%(OECD予測)の倍以上の成長率が予想されている。しかし中国は、国内で中央統制経済を維持する一方、世界での自由貿易を主張している。第2次世界戦争後の世界経済は、米国の経済力を軸とするものであり、70年代後半以降多極化の動きが見られるものの、基本的には米国経済が牽引力となって来た。しかしこのままでは、『社会主義市場経済』を採用している中国が、相対的に高い成長率を維持し続け、世界第1の経済大国となり、世界経済の中心となる可能性が高い。米国を中心とする国際経済秩序に、異質の経済体制を採る中国が加わり、単純化すれば、中国と米国という2つの経済圏による秩序に変容することになろう。
 トランプ政権はその変化を認識し、経済分野のみならず、‘安全保障と外交政策’上の脅威ともなるとして、目に見える短期的な利益を模索しつつも、中・長期の国際経済秩序を見据えて中国に対応し始めていると言えよう。日本を含め世界は、この流れを見逃してはならない。
 アジア地域の自由貿易地域となろうとしているRCEPを発足させるためには、本来であれば社会主義市場経済という特異な体制をとっている中国に対する参加条件を検討することが不可欠のようだ。中国を国際社会につなぎ止めて置くことは必要だが、WTOの過ちを繰り返してはならない。
 2、インド不参加のRCEPは‘閉ざされた地域グループ’を生む
インドのモディ首相は、RCEP合意について、関税の相違や貿易赤字、非関税障壁などへの対応において「肯定的な答えは得られなかった」とし、合意出来ないとの姿勢である。特に、中国の安価な製品のほか、オーストラリアやニュージランドからの安価な農産品などが国内産業を圧迫することを懸念している。
 中国への懸念は、補助金を含む産業保護という中央統制経済から発生することであるので、体制上の変化が無い限り、インドはRCEPに参加することはないであろう。RCEPがインド抜きで発足すると‘排他的な地域グループ’を生むこととなるので好ましくない。
 他方インドの参加を促すためには、中国の補助金その他の産業保護の状況に応じて関税や投資規制等と設けることを認めることとするか、それとも中国が自由主義市場経済への転換を図るかあろう。それ無くしてRCEPを発足させることは時期尚早と言えよう。(2019/12/23)

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国勢調査2020、1票の格差解消に反映されるか! (再掲)

2021-09-22 | Weblog

国勢調査2020、1票の格差解消に反映されるか! (再掲)

 5年に1度の「国勢調査」が実施されている。特に2020年は10の倍数の年で、本格的な国政調査となっている。国勢調査は統計法に基づき実施される国の最も重要な調査とされ、60~70万人の調査員を雇い、多額の予算を割いて実施される。重要な国の調査であるから、その結果が行政や政治に有効に活用、反映されることが期待される。

  2016年2月、安倍晋三首相(当時)は衆院総務委員会において、衆議院議員選挙における「一票の格差」是正をめぐる質疑において、「県を越える大規模な定数是正は、10年ごとの国勢調査で行うべきだ。2015年の調査は簡易調査であって、5年後には大規模国勢調査の数字が出る。・・・」などとして、抜本的な格差是正を先送った経緯がある。

 1、国民の平等を形にするものとして、「一票の格差」是正が必要

2019年7月の参院選において、選挙区で最大3倍の「一票の格差」があったことに対し、弁護士など市民グループが全国14の裁判所に違憲として訴えていた。高松高裁は、10月16日、国民の平等を定めた憲法に違反するとして「違憲状態」と判決した。

「違憲状態」との表現は、事実上「違憲」の意味であることには変わりがない。高松高裁は、香川、愛媛、徳島・高知(合区)の3選挙区の選挙無効の訴えは棄却したが、無効とすると社会的な混乱を起こすことが懸念され、3権の一つである国会の権限を尊重し国会に対応を委ねたのであろう。しかし「違憲」は「違憲」である。裁判制度は、3権分立の中で独立の機能を持つので、本来であれば、違憲と判断するのであれば、違憲状態として対応を国会に委ねるのではなく、司法の立場から違憲は違憲とすべきであり、その上で国会の対応に委ねるべきなのであろう。

 いすれにしても、国会は3権の一つであり、同等の重みを有する司法(裁判所)の判断を厳正に受け止め、抜本的解決策を次の選挙までに出すべきであろう。これは国民の平等に立脚する基本的な権利である投票権に関するであり、基本的な政治制度であるので、衆・参両院ともに最優先事項として取り組むことが望まれる。

 国勢調査2020の調査結果が公正、適正に活用されることが望まれる。それは、与党だけの責任ではなく、野党各党の責任とも言えよう。また国勢調査は今後の日本の方向性を示す指標となるので、政府としても、その結果を内閣が一丸となって評価、共有し、就労制度、年金・医療などの福祉政策、地域行政制度、交通を含む町造、都市造りなど、行政各部の政策に反映して行くことが望ましい。

 2、国民の平等を前提とする民主主義、男女平等などが遅れている日本

 ところで、「平等」とは基本的には1対1の関係に近づけることが期待されるが、選挙区割り等の技術的な制約から若干の幅は仕方ないものの、原則として1.5倍以下で極力1.0に近い数値に収まるよう努力すべきだろう。1.9倍なら良い、1.6倍ならよいなど、恣意的に判断されるべきことではない。特定の選挙区が4捨5入で2倍以上の格差となることは平等概念に反すると言えよう。人口の多い地域の1票の重みが半人前になるようではもはや平等などとは言えない。また人口の少ない地方の有権者がいつまでも投票権において過度に保護される状態では、地方はいつまで経っても自立できないのではなかろうか。また議員の質を維持する上でも公正、公平な競争を確保することが望ましい。いずれにしても人口の少ない地域への若干の上乗せは残り、配慮されるが、地方の自立があってこそ発展があり、それを支援することによる効果も大きい。

  裁判所は、これまで選挙毎に争われてきている1票の格差問題で、衆議院では2倍以上、参議院では3倍以上(つい最近まで5倍以上)を違憲、違憲状態として来ているが、格差を原則1対1に近づけてこそ平等と言える。

 世界の政治民主化度 国別ランキング(出典:世銀2018年)では、世界204国・地域中で日本は41位、G-7(主要先進工業国)中最下位となっている。因みに、世界の「男女平等ランキング2020(2019年時点の数値)」では日本は121位で史上最低となっている。また2019年の労働生産性ランキングは、「経済大国」と言われながら世界187国・地域中で36位、世界の報道の自由2020では、世界187国・地域中で66位でしかない。

 世界でこのように見られていることは残念だが、戦後75年、視野を広げ、公正、公平な民主主義の構築に向けて一層の努力が必要なのだろう。(2020/10/1)

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首都東京、生かされていない東日本大震災の教訓!

2021-09-22 | Weblog

首都東京、生かされていない東日本大震災の教訓!

 2021年3月11日、東日本大地震・津波災害から10年を迎えた。東京電力福島原発事故への対応を含め、政府関連予算は2020年度までの10年間で約38兆円にのぼり、また日本各地からの応援や寄付等を受け、地元の人々により懸命に復興活動がなされた結果、地区差があるものの、復興はかなりの進展を見せている。地元の方々や支援活動をされた各方面の方々のご苦労に心から感謝し、称えたい。またこの災害により、命を失った方15,899人、行方不明者2,528人となっており、心からのご冥福と行方不明者が1日も早く家族の元に返ることをお祈りしたい。

 復興は進んでいるものの、10年経っても42,685人が避難者にのぼり、当時の巨大地震と津波、そして福島原発の炉心メルトダウンなどの状況を振り返ると、改めてその被害の甚大さを痛感する。

 政府の関連行事やメデイアの報道は、どうしても追悼と被災地の復興活動の継続に焦点が当てられる。しかし大震災は、東日本だけでなく、関東でも首都直下地震や東海、近畿、四国地方では南海トラフ地震による被害が今後30年前後に発生する可能性が高いと伝えられている。日本列島を巻き込む大災害は、その他火山の噴火や異常気象による大洪水などの恐れがあるので、東日本の復興継続と共に、その他の地域、特に諸機能が集中し、人口密度の高い首都東京の震災への備えがこれで良いのかに注目しなくてはならない。

 1、教訓が未だ活かされていない首都東京

 東京を中心とする首都圏については、東日本大地震の教訓を受けて、道路・歩道の渋滞、帰宅難民などへの対策として、一時避難所や備蓄、耐震補強のほか、緊急対応のための道路規制、ハザード・マップの作成など、一定の対応が行われている。しかしこれらの措置は、多くの努力を要しているものの、東日本大地震規模の巨大災害にはほとんど無力とも予想される。

 東京には、1,300万の人々が生活し、近隣から数百万の人々が東京に往来している。また日本経済の中枢部門をはじめ、学校、文化・スポーツなど多くの民間機能が集中している。更に、国会、裁判所の中枢機能に加え、緊急時には東京都などと共にその対応に当たるべき全ての中央官庁が集中している。また国民統合の象徴として皇居があり、その安全を確保しなくてはならない。

 大災害が発生した際には、行政はこれら全ての安全を確保するために膨大な救援、救出活動を集中的、同時並行的にしなくてはならない。シュミレーションなどするまでもなく、とても手が回らないと予想される。何かを守り、何かを座視するしかない。相手は、「経験したことがない大災害」であるので、旧来の常識や既成概念では対応し切れないことを、福島原発事故を含む東日本大災害から学ぶべきであろう。

 政府による『東京一極集中解消』2020年目標は断念された。ある意味で東日本大地震の教訓の風化の象徴とも言えないだろうか。

 2、政府委員会が大規模災害に警鐘

 2014年、政府の地震調査委員会は首都直下地震が「今後30年で70%」との予測を公表している。その後この予測は繰り返し述べられる毎に発生確率は高くなっており、首都直下地震はもはや過去のものや遠い将来のものではなく、今生活している国民の生涯において起こりうる現実となっていることを示している。

 首都圏を中心としたマグニチュード7相当以上の過去の地震は、1703年の「元禄関東地震」(M8.28)と1923年の「関東大震災(大正関東地震)」(M7.9)を挟んで次のように発生している。

1703年12月   「元禄関東地震」(M8.28)

1855年11月 安政江戸地震      (M6.9)

1894年 6月 明治東京地震       (M7.0)

同年10月   東京湾付近の地震   (M6.7)

1895年 1 月茨城県南部の地震   (M7.2)

1921年12月茨城県南部の地震   (M7.0)

1922年 4月 浦賀水道付近の地震(M6.8)

1923年9月  「関東大震災」  (M7.9)

  関東地方は、東西に太平洋プレートとユーラシア・プレート、これを挟んで南北に北米大陸プレートとフィリピン海プレートがあり、元禄関東地震と関東大震災はフィリピン海プレートの境目の相模トラフで発生した大地震とされている。首都圏に関係する地震、津波の誘因としては、この他に東日本大震災に関係する日本海溝や東海地方から四国沖に伸びる南海トラフなどがある。

 関東、東海地方については火山爆発も注意を要する。

 3、政府組織・制度においてシンボリックな抜本的措置が必要

 民間組織・団体や東京都及び市区町村において、それぞれ対策を検討し備えることは不可欠であろう。それは誰のためでも無い、自分達や家族、関係者の安全、安寧のためだ。

 しかし東日本大震災レベルの直下地震等が首都圏で発生し、大型津波が発生すると、1995年1月の阪神・淡路地震を上回る被害、混乱が起こるものと予想されている。2011年3月の東日本大地震の際にも首都圏で震度6を超える揺れを経験したが、道路は車道、歩道共に渋滞し、公共交通は止まり、電話・携帯による通信は繋がらず、多数の帰宅難民が発生し、その状況は翌朝まで続いた。電気、ガス、水道などのライフラインが被害を受けていれば被害は更に拡大し、回復には更に時間を要することになる。

 最大の問題はライフラインの確保であるが、大災害に対応し、司令塔となるべき中央官庁の機能をどの程度確保出来るかである。物理的被害は予想もつかないが、災害が深夜や早朝、祝祭日に発生した場合、必要な人的資源の確保は困難で時間を要することになっても仕方が無いであろう。‘経験したことがない大災害’に遭遇し、‘経験したことがない混乱等’が起こったとしても、自然のなせること、誰も責めることは出来ない。それぞれの立場で被害に備え、耐え、命を守る努力が求められるであろう。それも相当期間に及ぶ可能性がある。

 (1)そうなると危険の分散を図ることが最も効果的となる。政府はこれまで幾度となく、東京一極集中を避けるため、中央省庁や大学の地方移転を試みてきたが、部分的な専門部局の分散に留まり、一極集中解消にはほど遠い。

 米国の他、ブラジルや豪州などのように、政治・行政機能を密集地域から切り離し、新たに政治・行政都市を造ることも考えられるが、日本にはそれにふさわしい安全な地域を確保することは難しそうだ。しかし1つの有効な選択肢ではある。

 もう1つの選択肢としては、日本独特の国民統合の象徴機能である皇居を宮内庁と共に京都など近畿地方に戻すことであろうか。天皇の象徴機能については憲法に明記され定着しており、皇居を移転しても機能自体に何ら影響しない一方、ご公務については憲法上国会の召集など10項目に限定されているので、移転は相対的に容易と見られる。更に、京都等に戻ることは歴史的に理解されやすく、また地方に新たな息吹をもたらし、地方活性化にも繋がる可能性がある。

 憲法上公務とされる10の業務については、現在では交通・運輸、通信が飛躍的に便利になっており、国会召集時など限られた折りに東京に行幸されることは可能であろう。宿泊が必要な場合には、年数回しか使用されていない迎賓館(赤坂離宮)に所要の宿泊施設をご用意するなど、対応は可能のようだ。また外国使節(各国大使等)の接受等については、京都の御所にて行うこととすれば、京都や近畿地方の歴史や文化等を外国使節に紹介する機会ともなろう。

 また考えたくはないが、もし将来首都圏がミサイル等で攻撃されると、政治・行政機能と象徴機能が同時に被害を受ける恐れがあるので、これを分離しておくことが安全保障上も意味があろう。

 無論どの選択肢にしても、現状を変更することには困難があろう。しかし、政府地震調査委員会が東京直下地震など経験したことがない大災害が現実に起こりうると考えているのであれば、これまでのような対応では不十分と見られるので、これまで実施されたこともないような措置を本気で検討、実施する必要があるのではないだろうか。

 (2)江戸城趾の活用方法については、城趾内の「江戸の自然」の保護を図りつつ、可能な範囲で復元を行い、歴史観光施設として整備し、また一部を国民の憩いの場として開放すると共に、大災害時や緊急時の避難場所となるよう整備するなどが考えられよう。特に江戸城趾には四方に門があるので、災害時、緊急時には門を開放し、四方から城趾内に避難が出来る。また緊急車両が災害時、緊急時に通行できるよう、城趾内の通路等を整備しておけば、渋滞が予想される一般道を通らずに迅速に移動できるなど、災害時、緊急時への活用も期待できる。

(2021.3.31. All Rights Reserved.)

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地球環境保護、日本の真価が問われる

2021-09-22 | Weblog

地球環境保護、日本の真価が問われる

‎ 10月26日開催された臨時国会において、菅義偉首相は就任後初めての所信表明を行い、「温室効果ガスの排出量を2050年までに全体としてゼロにする」との目標を表明した。 そして「グリーン社会の実現」を成長戦略の柱と位置付けた。‎

 「温室効果ガス排出量の2050年までの実質ゼロ」目標は、前政権当時の「50年までに80%削減」を一歩進めたもので、管政権の温室効果ガス削減の促進を期待したい。

 しかし、その目標は30年も先のものである上、EUな主要各国が2030年までの目標を設定しており、これに比して削減速度が遅い。

 1、温室効果ガス実質ゼロ目標に向け2030年、2040年の中間目標設定が必要

(1)不可欠な温室効果ガス削減と激甚化する気候変動への対応

‎ 地球温暖化により、北極圏の氷海や南極を覆う氷原・氷河、ヒマラヤやアルプスなどの氷河が融け、海温と共に大気温が上がり、大量の水蒸気を空中に巻き上げ、地球温暖化が進み、世界各地で今までにはないような荒々しい気候変動に見舞われている。 更にこのまま温暖化が進み臨界点に達すれば、止めることの出来ない極限的な激しい気候に見舞われる恐れがある。 これは理論でも学説でもなく、現実に体験している現実なのである。‎

 それを止めるためには、産業革命以来増え続けている温室効果ガスを削減し、地球温暖化を止めなくてはならない。

‎ 30年先は長すぎる。 加速努力が必要のようだ。 地球が壊れてからでは遅い。‎

 (2)具体的な中間目標設定とそれぞれの指針が不可欠

‎ 温暖化効果ガスについては、世界の主要国が2030年までの削減目標を設定している。 EUは40%削減(1990年比)、インド33~35%削減(GDP当たりのCo2排出、2005年比)、中国60~65%削減(同、2005年比)と具体的な目標を設定している。 特にEUは1990年比での削減目標であり、今日に比べて炭酸ガスなどの排出量の少ない時代との比較であり、問題意識の高さを示している。 中国についても目標達成を期待したい。‎

‎ これに対し日本は、これまで2030年までの削減目標を26%としており、その上2013年比と問題が深刻化し始めてからの基準で、基準年自体を甘くしており、2005年比では25.4%削減となる。 この目標も断念されている。 因みに、米国はオバマ政権時代に2025年までに26~28%削減(2005年比)として行政府の目標を設定しており、バイデン候補が新大統領となり民主党政権となれば、このラインで推進されるであろう。 またロシアは同年までに70~75%抑制(25~30%削減、1990年比)としている。‎

 日本は2050年までの実質ゼロが表明され、その実現に期待したいが、2030年、2040年の中間目標が具体的に示されると共に、どの分野でどのように進めるかの指針が示されることが期待される。

 2、福島原発解体処理による放射能汚染水の海洋放流は望ましくない

‎ 2011年3月に発生した東北大地震の津波により炉心融解を含む爆発事故を起こした福島原発の解体処理が長期化する中、放射能汚染水が貯水槽に大量に貯蔵され、限界を迎えていることから、その放出が検討されている。 放射能はほぼ取り除かれ、濃度の薄いトリウム残っているものの放射線レベルは低いので、海洋への放水が検討されている。 放射能は「飲んでも健康に影響はない」とされているが、福島の漁業関係者は風評被害などを懸念し、海洋投棄反対を表明している。‎

‎ これに対し行政当局は、賠償等を検討するなどとしているが、この問題は賠償や風評被害だけの問題ではない。 国際的信頼、国家としての信用の問題となろう。‎

‎ 日本は、国際環境グループに毎年のように「化石賞」を受けている。 発電等に石炭、石油などの化石燃料が使われているからだ。 失礼な話ではあるが、不名誉なことだ。 韓国が、福島産の野菜や魚類を放射能汚染の恐れありとの風評を流し続けたが、今回は国全体に関わることになる。‎

 もしこの放射線汚染水が処理をされ「飲んでも大丈夫」なレベルとなっているのであれば、日本国内で処理できるし、そうすべきであろう。

‎ 確かに海洋は広い。 だから海洋投棄も良いということにはならない。 領海内でも海は続いており外洋に広がる。 現在、海洋のプラステイックごみの問題が深刻化している。 世界中で投棄されてきたプラステイックごみは、毎年増えると共に、風化し微粒子化し世界の海洋を漂い、海底に蓄積し続けており、それを魚類が食べ、人間の口にも入るようになる。 十分希釈されたとしても放射線汚染水が放流され、これが世界で常態化する恐れもあり、その悪影響は計り知れない。‎

‎ 放射線汚染水の処分は、日本国内で行うことを前提として真剣に検討されるべきであろう。 例えば、国立公園内の人里離れた場所や硫黄島などの離島に貯水池を作り、適正に管理するなどを検討してはどうだろうか。 それが国家としての責任ではなかろうか。 (2020. 11. 4. )‎

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膨らむ企業の内部留保、求められるコロナ禍での使い道

2021-09-21 | Weblog

 膨らむ企業の内部留保、求められるコロナ禍での使い道

 2021年9月1日に公表された法人企業統計(財務省)によると、企業の利益剰余金(内部留保、金融・保険業を除く)は、2020年度末時点で前年度に比べ2.%増の484兆円強となった。増加率は低下したものの、2012年度以来、9年連続で増加し、過去最高を更新している。

 利益剰余金は、総売上額から人件費や原材料費など必要経費を引き、株主への配当金や税金を差し引いたもので、企業が将来の設備投資や事務所拡大など自由に使える。業種により余剰金額は異なり、コロナ禍では、製造業やIT関連企業を中心として業績を伸ばした一方、観光関連業種や対面サービスを行う業種などは大幅減となっている。

 コロナ禍でも利益剰余金を積み上げられる企業が存在することは大変心強いところであり、その努力に敬意を払いたい。

 1、企業の利益剰余金(内部留保)の国民経済への還流が望まれる

 しかしコロナ禍で多くの企業が経営難にあえいでいる中で、日本の国民総生産(GNP)にほぼ匹敵する484兆円強もの利益剰余金を企業が抱え込んでいることが経済全体にとって適切か否かが問われる。

 一部に、内部留保積み上げはコロナ禍で設備投資を手控えたためとされるが、設備投資の手控えはそれだけで民間投資の減少、従ってそれだけ総生産(GNP)を引き下げる結果となっている。

 一定の内部留保は、将来の設備投資と安定した経営基盤を維持する上で必要である。しかし個人の貯蓄同様、好調な時期には積み上げ、停滞期には放出することが必要だろう。コロナ禍で経済停滞する現在、GNPの縮小に繋がる484兆円強にものぼる企業の内部留保のなるべく多くの額を国民経済に還流することが望まれる。

 基本的には平常時において、賃金や契約社員等への報酬、役員報酬、及び株式配当金への分配をもう少し引き上げる努力が望まれるが、今回のような緊急時においても、例えば、契約社員等の雇い止めを極力回避すると共に、報酬・賃金の引き上げ、株式配当の増加、社員研修の強化、研究開発の促進や関連下請け企業製品の価格引き上げなどの他、企業内での感染防止措置の拡充、授業員家庭支援など、企業にとっては負担となるが、内部留保を経済に還流し、経済全体の底上げ努力が望まれる。

 2、「異次元」の金融緩和は家計所得や消費増には繋がらなかった

 企業の内部留保は、阿倍自・公政権が2013年1月に発足し、「異次元」の金融緩和が開始された頃より顕著に増加している。「異次元」の金融緩和により、輸出産業や観光関連産業など一部の産業が業績を伸ばしたことを背景として、株価が上昇したため、多くの企業は株式評価益等が出たことにより、利益剰余金を積み上げて行ったと見られる。他方、このような局部的な産業の好調と内部留保の積み上げとは裏腹に、実質家計所得は減少しており、消費は低迷した。日銀は、「異次元」の金融緩和とマイナス金利を長期に継続しているが、産業への局部的効果はあるが、家計所得や個人消費の増加には繋がっていないことが明らかになった。金融政策依存の限界と言えよう。

 逆に、2008年9月のリーマンショック以来の切れ目のない恒常的な金融緩和策とゼロ金利政策が、2013年1月以来の「異次元」の更なる金融緩和とマイナス金利政策により更に助長され、金融緩和により恩恵を受ける分野とその恩恵がほとんど及ばない分野との間で著しい経済格差を生む結果となっている。

 それに追い打ちを掛けたのが、2020年1月以来の武漢発の新型コロナウイルスの国際的な感染拡大である。これが各国の航空・観光産業や飲食産業、娯楽産業とこれらを支える関連産業を直撃し、人の動きを制限し、経済社会活動を減速させた。その対策として、各国政府は、感染拡大を抑制するための検査やワクチンを含む医療体制の拡充をする一方、職や所得を失った人々などへの財政支出を拡大すると共に、無利子の融資を含む金融支援策を実施したことにより、金融緩和が加速し、経済社会の格差を更に拡大する結果となっている。

 米国のバイデン政権の下で、連邦準備理事会(FRB)が、雇用の維持促進とインフレ率を睨みながら、金利の引き上げを含め、金融緩和の抑制時期を検討しているのは、金融緩和策による副作用を除去し、金融正常化に道を開くためである。

 日本銀行も米国の金融正常化に向けての政策転換を参考にしつつ、金融緩和幅の縮小を通じた株価の沈静化を図っているようだが、それは経済の抑制に繋がる可能性がある。このような中で、企業がそれぞれの企業経営に資する形で内部留保を積極的に活用し、経済に還元することが望まれる。また政策当局としても、企業の巨額の内部留保を景気の局面に応じて誘導することが経済対策に繋がることに注目する必要があろう。(2021.9.6.)(All Rights Reserved.)

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施策に活かされるべき統計数値ー再掲

2021-09-20 | Weblog

 

施策に活かされるべき統計数値ー再掲

 5年に1度実施される国全体の人口動態(毎回10月1日現在)に関する「国勢調査」が実施される。本年は西暦年の末尾が0の年の年であり「大規模調査」とされる。国勢調査は統計法に基づき実施される国の最も重要な調査であり、円滑な実施が望まれるが、それが国政や地方行政を含む行政に適正に反映されなくては意味が無い。特に国のあり方や国民の重要な権利義務を決める国会の議員定数に公正、平等に反映するなど、統計が実質的に活用されることが期待されるところであり、本稿を再掲する。


 国土交通省は、2014年3月28日、日本の人口は2050年に約9,700 万人に減少すると共に、全国の60%以上の地域で人口が2010年と比較して半分以下になるという試算を発表した。また、居住地域の約60%について人口が半減し、無人地域は全土の約60%に広がるとしている。このような予測から、地方については「コンパクトシテイ」として集約する等としている。
 人口減に関連しては、民間有識者で構成する日本創成会議の人口減少問題検討分科会が、全国1,800市区町村の50%弱の896自治体で「20歳から39歳の女性人口」が2010年以降の30年間で50%以上減少するとの検討結果を公表した。そして2040年の人口が1万人を割る自治体が523、全体の30%弱は「消滅の可能性が高い都市」になるとしている。
 総務省統計局も、6月25日、2014年1月1日時点での人口調査を公表したが、全国1,748の市区町村の82%強の1,440の市区町村で前年より人口が減少したとしている。東京、名古屋、関西の3大都市圏が全体の約51%の人口を抱えており、都市圏への集中が明らかにされている。年齢別では2014年4月、65才以上の“高齢者”或いは‘老年人口’が歴史上始めて総人口の25%を越えた旨公表している。65才以上が3000万人超えとなる一方、生産労働人口(15~64才)は総人口の62%弱の7,836万人と過去最低を更新しており、今後この傾向が継続するものと予想される。
 1、 活かされて来なかった官民の統計数値
 少子高齢化は、1990年代初期から政府統計で明らかにされ、人口構成が欧州
型のつりがね型となることが指摘されていた。それが年金政策や医療福祉政策ばかりでなく、地方を含む日本の行政組織・制度や国会、地方議会のあり方や都市政策、地域社会政策等に十分に活かされなかったため、今日の問題となっている。年金など社会福祉予算の不足と共に、地方におけるシャッター街や限界集落の増加など、現象面での問題が先行している。農村部において、嫁の来ない村どころか、後継者がいない農家が出始めたのも90年代からである。
 何故日本で折角の統計数値が活かされないのだろうか。
 一つは、行政が縦割りで、省庁間だけでなく、各省庁内においても局部による縦割りで、統計数値が発表されるとそれで基本的には業務が完結してしまい易い体制になっているからであろう。
統計数値を施策との関係で総合的にチェックする統計ウオッチャー的部局が行政や議会に必要のようだし、民間の研究機関でも統計数値にもっと留意が必要のようだ。
 もう一つは、統計数値が尊重されず、政治的な配慮や裁量が重視される側面があることであろう。その顕著な例が国政選挙における1票の格差問題だ。本来、国勢調査は5年に1回であるが、西暦年の末尾が0の時は大規模調査行われるので、5年に1度か、少なくても大規模国勢調査後に、選挙区の区割りが調整されるべきであろう。
 有権者の1票の格差問題について、最高裁は衆議院について1972年の選挙から、また参議院については1992年の選挙から、違憲又は違憲状態との判決を出していた。しかし1票の格差が、衆議院で2倍以上、参議院では5倍以上で違憲又は違憲状態と判断されて来たため、国会での区割り調整は衆議院で2倍以下、参議院では5倍以下で微調整が繰り返されて来た。裁判所が、‘政治的な混乱’を避けるため選挙自体を無効としたことはこれまでなかったが、法の番人である裁判所が「平等」の概念を政治的な判断から非常にゆるい形で解釈して来ていることが数値に対する信頼性や判断を曖昧なものにして来ているのではなかろうか。地方から都市部への人口流出が続いている今日でも、衆院で2倍以下、参院では5倍以下で容認されている形だ。
 しかし「平等」の概念は本来1対1の関係を確保することであり、裁判所が
1票の格差が2倍以下、或いは5倍以下であれば「平等」と判断することは余りにも恣意的と言えよう。‘政治的な混乱’を避けるためということは戦後の混乱期から一定期間は必要であり、理解出来ないことではないが、3権が分立している中にあって司法が‘政治性’を配慮し、民主主義の根幹である有権者の「平等」を軽視する結果となっているように映る。その上憲法を含む法の番人である裁判所の平等性や数値に対するゆるさは、国民の数値に対する信頼性に大きな影響を与えていると言えよう。
 そして2012年12月に行われた衆議院選挙については、全国で16件の裁判が行われ、14件は格差が是正されないままで行われた選挙は違憲とされ、他2件も違憲状態とされた。特に広島高裁では選挙自体を無効とし、一定期間後に効力が発生するとし、立法府に是正の猶予を与えたが、岡山支部は猶予を与えることなく無効とした。
 だが裁判所の格差の目安は、未だに衆院で2倍以下、参院では5倍以下が踏襲されている。有権者の一票の格差が1対2でも、1対5でも「平等」と言いたいのだろうか。無論、区割り技術上、厳密に1対1にすることは困難であろうが、司法が立法府に勧告等するのであれば、1票の重みがなるべく1対1の関係に近くなるよう促すべきなのであろう。その目安は、例えば最大格差1.2倍程度であろう。そして司法の判断を尊重し、それに適正に対応することが政治の責任ではないのだろうか。また選挙管理委員会も選挙における平等性を確保する責任があるのであろう。一部に地方の声が届き難くなるなどの意見はあるが、これまで優遇されて来たために人口減への危機感や対応が遅れたとも言える。また都市人口と言っても、筆者を含め半数以上は地方出身であり、地方のことは都市でも大いに関心があるし、過度な大都市への人口集中は望ましくないと考えられるので、地方の活力が発揮され、地方の人口が増加すれば議席も増えるという好循環を作って行くことが望まれる。
 このような調整が国勢調査毎に行われていれば、急激な変化による不安定化を招くことなく対応出来たのであろう。一方、このような調整が一定期間毎に行われると、人口減少に直面する地方自治体は人口減に歯止めを掛け、人口増に繋がるよう、有効な対応策を真剣に検討せざるを得なくなるであろう。また地方自治体の統廃合についても時間を掛けて調整されるであろう。

 2、人口減を見据えた行財政モデルと統治機構の簡素化が必要
 少子化、人口の減少傾向により、現在の‘定年制’を前提とすると、将来的に労働力人口は減少し、国民の税負担能力は低下する一方、長寿化により年金受給者や受給期間が増える等、福祉関連の歳出は増加する。
 またこのような人口減は、全国一律に起こるのではなく、地方から人口が流出し、地方の人口減が起こる一方、首都圏等の大都市に人口が集中する傾向が民間の研究でも指摘されている。
 他方、経済については、グローバル化が進み、国内市場ではなく世界市場を目標として企業の大規模化、多国籍企業化が進む一方、裾野産業がそれを支えると共に、特異な技術や製品が世界市場に向かうなど、中小企業についても国際競争力が問われるものと見られる。
 このような変化の中で、2040年を一つの目標年として、中央及び地方の体制を次のように誘導して行くことが望まれる。なお、人口増について、出生率の増加や外国人労働力の受け入れなどが検討されているおり、それにより若干の効果はあろうが、日本人の人口減と長寿化は趨勢としては継続すると見られるので、それを前提とするべきであろう。
(1) 中央、地方行政組織、議会それぞれにおける適正な定員管理
人口減、労働力人口減が予測されている以上、行政組織を適正規模に調整し
て行くことが不可欠であろう。それを行っておけば、経済停滞期に行政組織で景気対策としての雇用増を行う余裕が出来ることになろう。そのためまず新規採用を着実に削減して行くことが望ましい。新卒者も減少していくのでその影響が緩和されよう。この場合、特殊法人や独立行政法人などの関連組織を含む。また、規制の原則撤廃や簡素化を進めることが望まれる。
 特に相対的に急速な人口減が予想されている市区町村については、新規採用の削減などの定員管理と共に、市区町村の統廃合を進め、持続可能な自治体規模としていく必要があろう。同様に選挙区についても定期的な整理・統合が必要となる。これを怠ると将来財政破綻となり住民は大きな被害を受けることになろう。
 なお全体の定員管理については、雇用機会の確保(ワークシェアリング)に重点を置き給与・報酬を抑える方法と、優先分野を明確にし、優先度の低い部局や効率の悪い部局やムダを削減すると共に、規制の撤廃を促進して定員を縮小する一方、給与・報酬など労働環境を改善する方法がある。将来的にはより豊かな家計、生活、即ち高所得、高消費の社会に導くことが望まれるので、後者の方法が望ましいが、中央は中央として、またそれぞれの自治体の規模や特性を踏まえ各自治体の選択に委ねられるものであろう。
 その上で、魅力あるコミュニテイ作りを進めることが望まれる。
(2) 公共施設、社会インフラの適正な管理と魅力あるコミュニテイ作り
 これまでの経済成長期、人口増を前提とした経済社会インフラ作りのための公共事業モデルは今後困難となるので、低位成長、人口減を前提とし、コミュニテイの生活インフラに重点を置いた公共事業モデルに転換して行く必要があろう。新たな公共施設や道路等は、当面の利便性を高めようが、その維持管理と修復等の後年度負担が掛かるので、人口減となる自治体にとっては将来住民への大きな負担となる可能性がある。従って、人口動態予測や適正な需要予測を実施し検討されなくてはならない。
 他方、自治体生活圏のコンパクト化については、居住の自由との関係や一部地域が原野化する一方、生活圏が縮小する恐れがある上、不動産価格が局部的に高騰し、移転費の問題等が生じるので、新たなコミュニテイ作りについて住民との協議を通じ理解と協力が不可欠であろう。同時に、折角スペースが空くことになるのに、生き苦しい狭隘なコミュニテイ作りは望ましくない。駅や公共施設はもとより、道路沿線のビルや商店などには駐車・駐輪場の設置を義務付けることなども検討することが望ましく、また移動ショップの普及なども考えられよう。
 機能的ではあるが、地域の特性を活かし、人を惹きつける魅力が有り、豊かさを感じられる特色あるコミュニテイとなるよう、グランド・デザインを作ることが望まれる。
 (3)65才以上の年長者への対応
 寿命が延び、総人口の25%以上となった65才以上の年長者を、従来通りの統計基準を当てはめて、15~64才を‘生産労働人口’とし、65才以上を労働市場から除外し、年金受給者として区分することが適当なのであろうか。
 2つ問題がある。長寿化により、年金給付総額が増加の一途を辿ることは明らかであり、そのままでは年金財源が不足するのは明らかだ。
 もう一つは、少数ではあるが65才以上でも、相当な報酬を受けて何らかの形で仕事を継続している者がいる。他方仕事、従って組織から離れて年金生活に入ると1年程度は良いが、多くの人は物足りなさや疎外感を持ち、時間の潰し方を探すことになる。平均的な寿命でも、14、5年そのような生活を強いられる。
無論それを望む者はそれで良いのだが、健康で仕事が出来る経験を持ちながら無為に過ごすことになり、また年金だけでは将来不安を感じている人も少なくないようだ。
 65才以上でも働くことを希望する者に雇用機会を開放することが望ましい。そのため画一的な定年制は廃止することが望ましい。但し、給与が年功序列的に上昇すれば賃金コストが高まるので、最も生活費が掛かる中間層の賃金を上げるために、基本給(役職手当は除く)については例えば、60才以上については直前給与の80%、65才以上では70%、70才以上で60%、75才以上で50%以下(いずれも健康保険付与)とするなどして、雇用機会を与えることが望まれる。同時に、年齢に応じた勤務形態とする。また年齢区分については、長期に固定化することは現状を反映しなくなる可能性があるので、可能であれば3年毎、少なくても5年毎に調整することが望ましい。
なお、年金については65才以上で例えば年額800万円以上の報酬を得ている者については年金給付を部分給付とし、1,200万円以上については凍結するなどの方策を検討して良いのではなかろうか。
(2014.12.9.2020.9.18.冒頭追加)(All Rights Reserved.)

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国勢調査2020、1票の格差解消に反映されるか! (再掲)

2021-09-20 | Weblog

国勢調査2020、1票の格差解消に反映されるか! (再掲)

 5年に1度の「国勢調査」が実施されている。特に2020年は10の倍数の年で、本格的な国政調査となっている。国勢調査は統計法に基づき実施される国の最も重要な調査とされ、60~70万人の調査員を雇い、多額の予算を割いて実施される。重要な国の調査であるから、その結果が行政や政治に有効に活用、反映されることが期待される。

  2016年2月、安倍晋三首相(当時)は衆院総務委員会において、衆議院議員選挙における「一票の格差」是正をめぐる質疑において、「県を越える大規模な定数是正は、10年ごとの国勢調査で行うべきだ。2015年の調査は簡易調査であって、5年後には大規模国勢調査の数字が出る。・・・」などとして、抜本的な格差是正を先送った経緯がある。

 1、国民の平等を形にするものとして、「一票の格差」是正が必要

2019年7月の参院選において、選挙区で最大3倍の「一票の格差」があったことに対し、弁護士など市民グループが全国14の裁判所に違憲として訴えていた。高松高裁は、10月16日、国民の平等を定めた憲法に違反するとして「違憲状態」と判決した。

「違憲状態」との表現は、事実上「違憲」の意味であることには変わりがない。高松高裁は、香川、愛媛、徳島・高知(合区)の3選挙区の選挙無効の訴えは棄却したが、無効とすると社会的な混乱を起こすことが懸念され、3権の一つである国会の権限を尊重し国会に対応を委ねたのであろう。しかし「違憲」は「違憲」である。裁判制度は、3権分立の中で独立の機能を持つので、本来であれば、違憲と判断するのであれば、違憲状態として対応を国会に委ねるのではなく、司法の立場から違憲は違憲とすべきであり、その上で国会の対応に委ねるべきなのであろう。

 いすれにしても、国会は3権の一つであり、同等の重みを有する司法(裁判所)の判断を厳正に受け止め、抜本的解決策を次の選挙までに出すべきであろう。これは国民の平等に立脚する基本的な権利である投票権に関するであり、基本的な政治制度であるので、衆・参両院ともに最優先事項として取り組むことが望まれる。

 国勢調査2020の調査結果が公正、適正に活用されることが望まれる。それは、与党だけの責任ではなく、野党各党の責任とも言えよう。また国勢調査は今後の日本の方向性を示す指標となるので、政府としても、その結果を内閣が一丸となって評価、共有し、就労制度、年金・医療などの福祉政策、地域行政制度、交通を含む町造、都市造りなど、行政各部の政策に反映して行くことが望ましい。

 2、国民の平等を前提とする民主主義、男女平等などが遅れている日本

 ところで、「平等」とは基本的には1対1の関係に近づけることが期待されるが、選挙区割り等の技術的な制約から若干の幅は仕方ないものの、原則として1.5倍以下で極力1.0に近い数値に収まるよう努力すべきだろう。1.9倍なら良い、1.6倍ならよいなど、恣意的に判断されるべきことではない。特定の選挙区が4捨5入で2倍以上の格差となることは平等概念に反すると言えよう。人口の多い地域の1票の重みが半人前になるようではもはや平等などとは言えない。また人口の少ない地方の有権者がいつまでも投票権において過度に保護される状態では、地方はいつまで経っても自立できないのではなかろうか。また議員の質を維持する上でも公正、公平な競争を確保することが望ましい。いずれにしても人口の少ない地域への若干の上乗せは残り、配慮されるが、地方の自立があってこそ発展があり、それを支援することによる効果も大きい。

  裁判所は、これまで選挙毎に争われてきている1票の格差問題で、衆議院では2倍以上、参議院では3倍以上(つい最近まで5倍以上)を違憲、違憲状態として来ているが、格差を原則1対1に近づけてこそ平等と言える。

 世界の政治民主化度 国別ランキング(出典:世銀2018年)では、世界204国・地域中で日本は41位、G-7(主要先進工業国)中最下位となっている。因みに、世界の「男女平等ランキング2020(2019年時点の数値)」では日本は121位で史上最低となっている。また2019年の労働生産性ランキングは、「経済大国」と言われながら世界187国・地域中で36位、世界の報道の自由2020では、世界187国・地域中で66位でしかない。

 世界でこのように見られていることは残念だが、戦後75年、視野を広げ、公正、公平な民主主義の構築に向けて一層の努力が必要なのだろう。(2020/10/1)

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北朝鮮の挑発と和解の繰り返しで進む軍事開発 (その2)<再掲>

2021-09-20 | Weblog

北朝鮮の挑発と和解の繰り返しで進む軍事開発 (その2)<再掲>
―朝鮮労働党創建70周年に北朝鮮は世界に何を見せるのかー
8月10日、南北非武装地帯の韓国側付近で韓国軍兵士2人が敷設されていた地雷により負傷した。韓国側は、‘地雷は北朝鮮が最近埋めたものであることが確実’と発表し、南北朝鮮を分断する軍事境界線(通称38度線)を挟み、韓国と北朝鮮の軍事的緊張が再び高まった。北朝鮮側のこの種の挑発は、7月11日にも北朝鮮軍10人余が軍事境界線中央付近(江原道鉄)で韓国側に侵入する事件などが起こっている。
これに対し韓国側は、地雷敷設事件に謝罪を要求、北朝鮮がこれを厳しく非難し、地雷爆発事件は‘でっち上げた’として否定するなど、南北が非難の応酬を行った。
 韓国側は、対抗措置として2004年6月に南北で合意した‘批判宣伝合戦停止’を中断し、北に向けた大音量の拡声器による金正恩体制への批判等を8月22日から再開した。これに対し北朝鮮側は、拡声器が敷設されている方面に2発の砲弾を発射、韓国側もこれに応じ2発の砲弾を発射した。北朝鮮は‘準戦時状態’を布告(8月20日)していたが、韓国側は最高レベルの‘警戒態勢’を取って応じるなど、緊張が更に高まった。各紙、テレビでは南北間は一触即発で、局地的に不測の事態も起こりかねない等と報じた。
 しかし北朝鮮が一転して南北会談を呼びかけ、8月22日、板門店で南北代表(韓国側代表 金寛鎮(キム・グァンジン)大統領府国家安保室長、北朝鮮側黄炳瑞(ファン・ビョンソ)朝鮮人民軍総政治局長)が会談を開始し、数次の協議を重ねた後、8月25日、南北は相互の挑発中止で合意した。合意した内容は、北朝鮮側が地雷爆発により韓国軍兵士が重傷を負った事件に対し遺憾を表明する一方、韓国側は拡声器を使った宣伝放送を同日正午に中断することが中心となっている。その上で北朝鮮は‘準戦時状態’を解除すると共に、関係改善に向けてソウルか平壌で当局者会談を開催し、また朝鮮戦争などで生じた離散家族の再会に向けた実務者会議を開催することや、多様な分野での民間交流活性化などが合意されている。
これで南北間において多様な分野での民間交流が行われることになるとの印象を受けるが、この種の挑発と和解のプロセスはいわば年中行事となっている。
 1、 年中行事化した米韓合同軍事演習への北朝鮮の反発 (その1で掲載)
 2、 密かに進められる核とミサイル開発  
 8月の米韓合同演習を巡る北朝鮮の姿勢は、一見挑発から和解に転じたように映るが、その背後で核と長距離ミサイルの開発が着実に進められていることが北朝鮮の当局者の見解として明らかにされている。
 (1)ミサイル開発
 北朝鮮の国家宇宙開発局長官は、9月14日、朝鮮中央通信を通じ、‘朝鮮労働党創立70周年に際し’宇宙開発分野での成果について述べるとして、国家宇宙開発局は‘気象観測等のため、新たな地球探査衛星開発の最終段階にある’旨明らかにしている。そして世界は、中央委員会が決定する場所と時期に打ち上げられる‘先軍朝鮮の一連の衛星’を見ることになろうと締めくくっている。
 (2)核開発
 翌9月15日には同じく朝鮮中央通信が、北朝鮮の核開発について‘原子力研究院’の院長へのインタビューを伝え、その中で‘北朝鮮の核の対応は、米国の北朝鮮に対する敵視政策と核の脅威である’としている。そして既に明らかにされているように、‘経済建設と核戦力開発を同時並行的に進めるとの中央委の方針に沿って、寧辺にあるウラン濃縮施設や黒鉛減速炉を初めとして、すべての核関連施設は再整備或いは変更、再調整され、既に正常な稼働を開始した’ことを明らかにした。
 この方針は2013年4月に北朝鮮原子力総局により明確にされたとしているが、経済建設と共に、核戦力開発が進められていることが公言されており、核開発の既成事実化を狙ったものと思われる。
 9月3日に中国で‘抗日戦争勝利70年’の行事が開催され、天安門で中国の最新兵器を含む大軍事パレードが行われたが、10月10日の朝鮮労働党創立70周年の行事おいても、北朝鮮は‘核抑止を含め公にしていない最新の兵器’を含む軍事パレードを大々的に行うであろう。張り子の兵器などが含まれている可能性はあるが、野心に満ちたパレードとなろう。
 また上記の内容は‘朝鮮労働党創立70周年’と絡めて公表されていることから、その前後に、核爆発実験や長距離ミサイルの発射実験が行われる可能性がある。特に、‘新たな地球探査衛星開発の最終段階にある’としていることから、長距離ロケットの発射実験の可能性が高い。他方、‘気象観測’等のためのロケット開発であれば、韓国を含め多くの国が行っているので、国連安保理決議は決議として、北朝鮮には認めないと繰り返し言ってみても説得力に欠け、問題解決には結びついてはいないので、平和目的でのロケット開発について国際的な枠組みや機構が必要になって来ていると言えよう。
 3、朝鮮半島非核地帯の創設が緊要      (その3に掲載)
(2015.10.03.)(All Rights Reserved.)

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