写真屋はどこへ

デジタル時代の写真屋の居場所について考える・・・

ニッカといふカメラ

2008年06月01日 | カメラ


 便利なデジタルカメラばかり使っていると、『写真の撮り方』を忘れてしまいそうな気がして、仕事以外では全手動の、不便なフィルムカメラに面倒くさいリバーサルフィルムを入れて撮ることを努めてしている。何十年と使ってきたリバーサルだが露出を勘で決めるのはいまだ難しく、露出計に頼らなければならないが、カメラについたものではなく単独露出計を使用した方がこの目的にはより不便でよい。それには旧いカメラが向いている。
 先日、きれいなニッカが手に入った。昭和20年代の日本で作られたライカのコピー。当時の日本は、多くの業種で多くの企業がヨーロッパの商品をコピーして作り、それをアメリカに売ることで生計をたてていた。このカメラもその一つで、特許はもう切れていたとはいえ、こんなまるごとコピーにクレームがつかなかったのはドイツも敗戦国だったからだろうか。手に取ってみるととても良い作りで50年以上を経過したいまでも実に美しい。コピー品であるというようなうしろめたさやためらいは製品から少しも感じられない。むしろ、ライカになぞ負けないぞって胸を張っているように思える。当時のキャノンのカメラも実はライカコピーだったのだが、キャノンのは形状を少し変えているところになにか迷いのようなものが見える。まあ、その迷いが現在のキャノンを育てたと言えなくもない。
 ニッカを使ってみる。シャッターを切るまでにひとつひとつ手順を踏まなければならず面倒だが、大型カメラの手順からみればずっと簡単で、ライカが革命的な製品であったことを実感させる。現代のデジタルカメラになれた体にはこれくらいの面倒さがとても心地よい。