情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

反戦落書き有罪判決とライブドア疑惑~擁護すべきは?

2006-01-21 13:01:31 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 風邪で寝込んでいる間に世の中はいろいろと大変なことになっていた…。まずは,ライブドアのことなんだけど,ニュースがまた,ひどいね,違法すれすれのことをしてきたことが咎められた…なんてコメントが多かった。違法すれすれではなく,違法だという容疑がかけられているんだから,そこを意識したコメントにしてもらわないとね。そんなコメントを流すから,ネットで検索したら,ホリエモンを応援するっていう人が結構目立つようなことになるのではないかなぁ。人1人死んでるんだよ。それに引き替え,トイレの落書きに対する最高裁判決について,落書きした人を応援するっていう人はネット上は異常に少ないよね…。

 もちろん,ライブドアの件は,被疑事実が事実として確定しているわけではないから,単純に両者を比較することはできない。しかし,仮に伝えられている事実が間違っていないとすれば,ライブドアが行った行為の方がトイレに落書きした人よりも桁違いに悪質だし,実損も桁違いに大きい。それなのに,ホリエモンを応援をする人はいてもトイレに落書きをした人を応援する人はほとんどいない。

 これって,なぜなんだろうか?

 ホリエモンは,既存のシステムに反逆したから?えっ,ただ金儲けのためには手段を選ばなかっただけでしょう?彼が何か新しいシステム,社会的に貢献するようなシステムを作り出したかねぇ?

 反戦の落書きをすることの方がよほど,反逆だと思うが,違うかねぇ。例えば,入社試験で,私の趣味は反戦運動ですって言える?言えないでしょう?今回のことが発覚する前であれば,入社試験でホリエモンに共感するっていうことは言えたでしょうね…。

 ということは,どっちが反逆的かは明らかだ…。

 今回の落書きの件,名古屋地裁昭和39年11月17日判決は「建物の美観ないし外観も建物の効用の一つであるが,美観ないし外観の汚損を建物の『損壊』と言いうるには,それにより職員または来客に著しい不快感を与え,そのため同建物内で本来の事務を執行することがほとんどできない程度に支障を来したことが必要である」と判断している。

 まことにもっともな判決であり,これにあてはめれば今回の反戦落書きは無罪となりそうだ。最高裁の裁判官は,爪のアカでも煎じて飲んだらどうか?

 何も落書きをしてもかまわないって言ってるんじゃない。(もちろん,本件を起訴するくらいなら,もっと下劣な落書きをした人を起訴してほしいもんだが…)

 建造物損壊(5年以下)でなくとも,軽犯罪法違反(みだりに他人の家屋その他の工作物を汚した,犯罪=拘留30日未満,科料=1万円未満)で処分することはできるのですから,それで十分だと言ってるんです。落書き書いて30日近くも拘束されるとしたら,それで刑罰としては十分でしょう!

落書きを消すのに費用がかかったというなら,損害賠償請求をすればいいのですしね…。

 迷惑な行為をした者に対しては,どんな罰を科してもいいっていうのはあまりにバランスを失した考え方ですよね。そう思いませんか?(興奮したら,また,くらくらしてきた…。帰って寝ます…)

 ちなみに,落書きに懲役5年以下という罰(罰金刑はないということです)がふさわしいと考える方,ぜひ,ナチス下の抵抗運動を映画化した「白バラの祈り」を見に行きませんか?