情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

現実の被害者の多くは警察の匿名発表に反対している!~毎日新聞調査

2006-01-25 18:18:18 | 匿名発表問題(警察→メディア)
毎日新聞が犯罪被害者に警察の匿名発表に対していかに考えるかを調査したことはすでにお伝えしましたが(ここ),その詳細をアップします。被害者の多くが情報が警察内部に止まることに対して,危惧の念を表明しています。なお,実際の紙面では,回答者は実名ですが,ここでは匿名としておきます。

■■引用開始■■

※Q1は「被害者名の発表を実名・匿名のいずれにするかの判断を警察に委ねることに賛成か反対か」
 Q2は「警察による被害者名の発表は原則として実名・匿名のいずれであるべきだと思うか」を尋ねた


①男性(56)
北海道で高校生の長女が前方不注意のワゴン車にはねられ、亡くなる
Q1 反対
Q2 実名
コメント
実名を発表して社会的、公的に扱うことで、被害者の尊厳を守るべきだ。交通死亡事故の場合、加害者側に偏った捜査が助長される懸念がある。判断は報道機関に任せた方がいい。ただし、匿名を望む被害者側の意向は尊重しなければならない。


②男性(56)
北海道で26歳の長男を交通事故で亡くす
Q1 反対
Q2 実名
コメント
判断をすべて警察に委ねれば、誤りを生む恐れがある。被害者が置き去りにされているから、こういう議論が起きるのではないか。報道による2次被害は恐ろしいが、警察は原則として実名で発表し、取材する側が被害者の立場に立った報道を考えて欲しい。


③女性(69)
札幌市で長女が殺害され、容疑者が指名手配中。12月19日で公訴時効
Q1 賛成
Q2 ケース・バイ・ケース
コメント
警察を信頼しているので、任せたらいいと思う。事件直後は被害者の名前を公表されることでマスコミの過熱報道が起き、遺族が嫌な目に遭うので実名は伏せて欲しい。遺族の意向を尊重して欲しい。


④男性(45)女性(42)夫妻
岩手県で酒気帯で居眠りの軽トラックにはねられ7歳の長女が死亡
Q1 反対
Q2 実名
コメント
被害者に決めさせるべきだ。なぜこんな事件が起きたか納得がいかず、黙っていたくない気持ちが強かった。名前が出て中傷の電話もあったが、マスコミ関係者が足を運び、大きく取り上げられた。


⑤男性(58)
茨城県で暴走族の脱会を申し出た15歳の二男がメンバーに暴行され、死亡
Q1 反対
Q2 実名
コメント
被害者の名前を実名で発表した方が事件解決のためになる。警察に判断を任せると匿名にされかねない。報道でも被害者を実名で掲載していいと思う。


⑥女性(39)
茨城県で高校1年の長女が市道脇で倒れているのが見つかり、後に死亡
Q1 反対
Q2 実名
コメント
警察に実名・匿名の判断をする権限はない。分かっていることを公表すべきだ。メディアにも隠さず報道してもらった方が人々の記憶に残り、事件の風化を防げる。事件解決のためメディアに協力してもらう面からも警察に判断の権限を握らせるべきではない。


⑦女性(49)
栃木県で19歳の長女が運転中、飲酒運転のトラックと衝突し、死亡
Q1 反対
Q2 実名
コメント
被害者が主体的に実名・匿名を選べるようにすべきだ。警察が、被害者に対して、情報を操作せずに実名・匿名それぞれのメリット、デメリットをきちんと説明できるか、混乱している被害者らが即時に判断できるかが課題だ。


⑧男性(55)
埼玉県・桶川ストーカー事件で大学生の長女が殺害される
Q1 反対
Q2 実名
コメント
匿名発表では、誰が被害者かさえわからないままうやむやにされてしまう。不祥事を起こしている権力そのものの警察に判断を委ねてしまうことは、民主国家への道を一歩も二歩も後退させる。被害者の意見を聞き、実名で報道するかどうかも含めて報道機関自身が考えるべきだ。


⑨女性(60)
千葉県で男女8人が死傷したひき逃げ事件で重傷を負った被害者
Q1 反対
Q2 実名
コメント
警察は、被害者が捜査状況の開示を求めても情報を抑える傾向にある。被害者も基本的に実名で報道すべきであり、警察は情報を提供した方がいい。被害者は一方的に被害に遭い、何も悪いことはしていない。報道を通じて知人に事件に巻き込まれたことや詳しい状況を伝えてもらえる。


⑩女性(58)  
東京の地下鉄サリン事件で駅の助役だった夫を殺害される
Q1 反対
Q2 実名
コメント
警察は地下鉄サリン事件が起きるまでオウム真理教を野放しにしていた。松本サリン事件では誤認捜査をしていた。警察に対する不満が出てきた時に頼りになるのは報道だと思う。メディアは被害者に配慮し、報道被害にならないよう説明責任を果たして欲しい。


⑪男性(60)
東京のJR池袋駅のホームで立教大生の長男が男に暴行され、死亡
Q1 反対
Q2 実名
コメント
遺族であっても本人の名前を匿名で発表するよう警察に求める権限があるとは思わない。警察に対して捜査権は与えても、被害者の氏名を匿名発表できる権限まで与えたものではない。報道の自由や真実の追究を妨げる結果になる。メディアの判断として被害者に配慮すべきだ。


⑫男性(49)
東京都内の交通事故で小学生だった8歳の息子を亡くす
Q1 反対
Q2 実名
コメント
息子などのケースでは、実名報道によって被害者の存在を認めてもらった。報道各社に任せ、問題があれば各メディアの第三者機関で話し合えばよい。「A君がどこそこで交通事故に遭いました」では訴求力が足りない。警察にもミスがある。メディアのチェックが働く必要がある。


⑬男性(60)  
甲府市で19歳の二女が誘拐され、殺害される
Q1 どちらとも言えず
Q2 一概に言えず
コメント
大事件が起きれば、遺族は大変な状況に見舞われる。発表を匿名にするかどうかで遺族が受ける傷にはほとんど変わりはない。むしろメディアスクラムをどう防ぐか、犯罪者をどう減らすかに専念すべきだ。判断を警察に委ねることを検討していること自体、的はずれの印象を受ける。


⑭男性(57)
甲府市で起きた放火殺人事件で75歳の母親が殺される
Q1 反対
Q2 実名
コメント
匿名発表をした場合、何かよくない理由があるのではと、せんさくするきっかけを与えてしまう。大事件では原則として被害者名は実名発表すべきだ。警察が判断する必要はないのでは。


⑮男性(55)
長野県の松本サリン事件の被害者。妻は現在も療養中
Q1 -
Q2 -
コメント
日本新聞協会などが実名発表が必要だと主張する理由も分かるが、混乱が起きないように警察が匿名で発表しようとする理由も分かり双方に一理ある。現状では、事件発生時は警察が被害者とメディアとの間に入らざるを得ないかもしれないが、互いに理解する努力が必要だ。


⑯女性(63)
松本サリン事件で23歳の二男を殺害される
Q1 反対
Q2 ケース・バイ・ケース
コメント
実名・匿名は警察が被害者や遺族に確認して欲しい。新聞の一読者と言う立場で言えば、匿名報道では実感がわかない面がある。息子にとってみても、実名で報道されることが生きていた証だともいえる。ただ、被害者の置かれている状況はケース・バイ・ケースだ。


⑰女性(52)
長野県などで起きた連続強盗殺人で母親が殺される。容疑者扱いされる
Q1 反対
Q2 実名
コメント
警察が本当に事実をもとにきちんとした仕事をするところであれば考えは変わるかもしれないが、今はそうは思えない。警察はマスコミを利用しているところがあり、都合のいいように動いている。


⑱女性(50)
大阪市立高校1年だった16歳の長男が他校の生徒に暴行され死亡
Q1 反対
Q2 実名
コメント
少年事件では加害者も被害者も匿名で発表されることが多く、事件そのものがうやむやになりかねない。匿名では社会の関心も高まらず、再発防止策も生まれない。被害者が誰で加害者が誰なのかなど警察は事実を淡々と発表して欲しい。報道の段階では匿名にするなどの配慮が必要だ。


⑲男性(43)
大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件で7歳の長女を殺害される
Q1 反対
Q2 実名
コメント
被害者も1人の人間として尊厳があり、名前はその象徴の一つ。匿名は、生きていた価値や意味さえも奪ってしまう。被害者が実名で報道されてもその尊厳が尊重される社会であるべきだ。警察・メディアを問わず、被害者・遺族の意思確認を原則として欲しい。


⑳男性(43)
大阪府内で7歳の長女を交通事故で亡くす
Q1 反対
Q2 実名
コメント
交通事故では、警察のずさんな捜査がたびたび問題になる。発表の判断を警察に全部委ねれば、警察の都合で匿名発表され、事実が隠されることにつながり、反対だ。被害者によっては実名で報道されたくないなど個々の事情もあるので、それは記者が被害者に確認すべきだ。


21 男性(63)
兵庫県のJR福知山線の脱線事故で、妻と妹を亡くす
Q1 反対
Q2 実名
コメント
実名発表がなければ、被害者が社会に存在したという事実が公になることはなくなり、社会的に抹殺されることにつながる。警察に被害者の社会性や尊厳を奪う権利はない。メディア側も、節度ある取材ができれば、実名発表でよい。


22 女性(51)
兵庫県で少年10人による集団暴行で15歳の長男が死亡
Q1 反対
Q2 実名
コメント
警察がすべての判断を担うことになれば、捜査ミスの隠ぺいやもみ消しの温床になってしまう可能性がある。マスコミは記事に実名を出す場合、遺族や被害者への声掛けを徹底して欲しい。遺族の中には、実名報道で息子や娘がこの世に生きていた証がほしいと思う人もいる。


23 男性(48)
神戸市でパート従業員だった妻が殺害される
Q1 反対
Q2 実名
コメント
権力側が判断すべき事項ではない。事実を粛々と報道する際は、実名で報道すべきだと思う。メディアの判断で実名・匿名を決めていい。すべての事件を警察側が判断して匿名化という流れになると、情報操作により「真相」が作り上げられてしまうという危機感を持つ。


24 女性(55)
奈良県で18歳の長男を交通事故で亡くす
Q1 反対
Q2 どちらとも言えず
コメント
警察に判断を委ねてしまうのは怖い。被害者との対話が必要ではないか。警察にはまず、被害者の希望を聞いてほしい。せめて、被害者や遺族に説明してから報道発表して欲しい。警察もメディアも、被害者との信頼関係を築くことが大事だ。


25 男性(29)
山口県光市で妻子を少年に殺される
Q1 賛成
Q2 実名
コメント
警察が直接被害者に確認し、承諾が得られた場合のみ実名発表にすればよい。報道機関は、判断を報道機関の自主性・自律性に任せるべきだというが、報道被害に対する責任にどう対処するかが明確でない。節度ある報道が実現すれば、警察発表を拒む被害者も減ってくると思う。

■■引用終了■■

匿名発表するべきだという考え方が少数にとどまっていることの意味をよく考える必要があると思います。

勝手に特ダネランキング2006年第3週(15日から21日)~今週は大事件で特ダネ激減

2006-01-25 04:09:33 | メディア(知るための手段のあり方)
ライブドア・ヒューザー関連で紙面が一杯…。わずかですが,早速ご紹介します。

第1位:「ヒューザー物件の管理業務 伊藤元長官の家族受注」(朝日16日朝刊一社トップ
【自民党衆院議員の伊藤公介・元国土庁長官の家族が経営する会社が、ヒューザー(東京都千代田区、小嶋進社長)の分譲マンション1棟の管理業務を受注していることがわかった。小嶋社長は朝日新聞の取材に対し仲介を認め、ヒューザーの社員が伊藤元長官の選挙運動を手伝うなどしていたとも説明した。両氏の関係は、耐震偽装問題をめぐる17日の衆院国土交通委員会での小嶋社長の証人喚問でも、焦点の一つとなるとみられる。】
※他社もきっちり,追及してほしい。


第2位:「別市有地にも組事務所」(朝日21日朝刊一社肩
【大阪市港区の市有地にある暴力団事務所を市が長年放置していた問題で、別の暴力団も近くの市有地に事務所を構えていることが大阪府警などの調べでわかった。市はこの事実を把握していたが、暴力団の会長と土地の賃貸借契約を結んでいることから排除は困難と判断し、会長に売却することを検討している。市の担当者は「財政難の折、借地人に買い取ってもらいたい」としており、市有地を暴力団に売却しようとしている市の姿勢に批判の声が上がっている。】
※東京の紙面では報道されていないようだが(見落とし?),18日の「大阪市有地に暴力団事務所 占有を20年放置」という特ダネの続報。続報のほうだけ東京では掲載されたよう…。

【番外】
「医療観察法の闇 偏見がつくる『野放し論』」(東京16日朝刊特報面
【「アブナイ人間は閉じこめておけ」。一昨年十一月の奈良に始まり、昨年暮れの広島、栃木と連鎖した女児殺害事件を受け、そんな社会防衛論が再び高まっている。そうした論調を反映した法律が昨年七月、施行された。心神喪失者医療観察法がそれだ。施行前「保安処分になりかねない」という反対派の懸念は情緒的な世論に押し流された。だが、施行後、こうした懸念は現実となりつつある。 (田原拓治)】
※世論に流されないでこういうことを取り上げるのはさすが東京。

「暗殺横行 政治マヒ 過激な論理で暴挙」(読売20日朝刊「検証・戦争責任」シリーズ)
【政府や政党,財閥に対する国民的憤まんを背景に生じた,テロに対する「許容」姿勢は,結果的に軍部独裁による戦争遂行体制を下支えしていくことになる】
※ナベツネの戦争反対路線は本気のようですにも見えます…。

「米投資会社、毎日新聞を提訴 1億ドル賠償求める」(朝日ほか)
【米投資会社「サーベラス・キャピタル・マネジメント」(本社・ニューヨーク)は19日、東京都内の土地取引をめぐる毎日新聞の記事が名誉棄損にあたるとして、1億ドル(約116億円)以上の賠償を求める訴訟をニューヨーク連邦地裁に起こした。AP通信が伝えた。】
※なぜ,米国で…。朝日の米国版を相手にしたのか?それとも米国でもネットなら見られるから?


「テレビ東京「ガイアの夜明け」で「過剰な演出」 BRC」(朝日ほか)
【「放送と人権等権利に関する委員会」(BRC、飽戸弘委員長)は17日、テレビ東京系で昨年6月に放送された「ガイアの夜明け~消える高齢者の財産」の一部で、過剰な演出などの放送倫理に反する内容があったとする見解をまとめた。 】
※詳しくはBPOで。