情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

広告代理店改革を!~情報流通構造改革の一つとして

2006-07-15 23:44:28 | メディア(知るための手段のあり方)
ここのところ,メディアのふがいなさを感じさせる事件が多発し,書いている当人が落ち込んでしまった。ぼうっと,日本メディアの構造的な問題点を考えてみた。問題点は,①新聞と放送など異種メディアのクロスオーナーシップの問題,②新聞が宅配制度に頼っているため,再販制度維持のために与党に頼ってしまいがちであるという問題,③放送行政が完全に政治に支配されているという問題,④大学などで記者教育をする体制がないこと,などなど,多様な面にわたっている。

しかし,つらつら考えているうちに,財布を握っているのは誰かなという点に改めて思い至った。これは,広告主だが,実際には,電通など巨大代理店だ。日本の広告代理店は一業種から複数の企業の広告を請け負っている点で海外の広告代理店とはまったく構造が異なっている。日本では,例えば,Aビール会社とBビール会社の広告を一度に請け負うことができるのだが,それでは,Bのためにできつつあった広告のアイデアをより契約料の高いAのために使ってしまうということやAのために考案したがお蔵入りしたもの(将来的にはAのために使うことがありうるもの)をBのために使うことがあるかも知れないということになる。

こういうことは弁護士業界では考えられない。利益が相反する場合には,受任することができないのだ。

なぜ,日本でこのような広告代理店事情となったのか,それは,欧米の広告会社の創立は、広告主の代理として出発し、日本の広告会社は、媒体社とりわけ新聞社、雑誌社の代理としてスタートしたからだという(広告月報2003年2月号)。

だからこそ,「利益相反」という概念がなく,海外では当然のこととされる一業種一社制が採用されてないのだという。確かに,メディアの広告受付業代理店であれば,同じ業種から複数の会社の広告を受け付けるのも当然だ。

このシステムが採られていることによって,電通の影響力が大きくなっている。そして,その影響力が大きくなった電通を通して伝えられる広告主の意向に,メディアは逆らえなくなる…。それだけではなく,電通が政策キャンペーン,企業の地元対策,選挙キャンペーンなどをした場合,メディアはそのキャンペーンを批判的に報道することができなくなる…。

さきほど,「メディアの広告受付業代理店であれば,同じ業種から複数の会社の広告を受け付けるのも当然だ」と書いたが,その場合,そういう受付業代理店が,複数のメディアの代理店をするというのはやはり変な話ではないか?広告受付のノウハウを他社と共有することになるのだから…。

う~ん,なぜ,日本で,一業種一社制が採用されてないのか,それは結局は,現代日本社会の根本的な問題(「長いものには巻かれろ」)に深く絡んでいるのかもしれない。

いずれにせよ,一業種一社制がないことが,日本のメディアにとって不幸なことであることは間違いないようだ…。



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