情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

ハンセン病患者を救えなかった反省は本物か~弁護士会の刑事手続き改善への姿勢を問う

2009-10-07 16:19:53 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 午前中、ハンセン病の患者が収容されていた全生園(現多摩全生園)の国立ハンセン病資料館で、元患者の方の話を聞いた。完治させる薬が昭和24年に国内で使用されるようになったにもかかわらず、その後も隔離、断種(パイプカット)などが続けられた。その中で暮らした方の話は耳をふさぎたくなるようなつらいものだった。

 患者は早い時期から、隔離などの廃止を求める声を上げており、弁護士にもさまざまな形で働きかけがあったようだが、弁護士はそれらの声にこたえることが十分にできず、らい予防法廃止まで(もちろん、その後も悲惨な状況は続いたが)、明らかな人権侵害状況が続いた。
 その後、弁護士会は弁護士が十分な役割を果たすことができなかったことを反省し、ハンセン病への偏見をなくすための活動などを行っている。

 しかし、ハンセン病での反省は、ハンセン病あるいは特定の感染症への取り組みに向けられることで自己満足していて良いとは思えない。われわれ法律家は、日々の業務のなかで、刑事手続き上の人権侵害システムによって、苦しむ多くの方々の声に接している。取調べの可視化、捜査側証拠の弁護側への全面開示などは、ハンセン病に例えるならば、隔離政策から開放政策への脱却と同視できよう。被疑者・被告人という世間の偏見を受ける立場の人が、警察官に脅されたりして虚偽の自白をさせられたり、検察官が無罪を裏付けるような証拠を隠してしまうことによって、正当な権利を行使できない状況は、まさにハンセン病患者が置かれた状況に似ている。

 われわれ弁護士は、ハンセン病患者の啓発パンフレットをつくることと同時に、取調べの可視化や捜査側情報の弁護側のへの全面開示など国際スタンダードとなっている手続きを導入することに真剣に取り組まなければならないのではないか。
 いや、もっと、はっきり言えば、本当にハンセン病に対する取り組みが遅れてしまったことを反省しているならば、一日でも、いや一刻でも早く、取調べの可視化や捜査情報の弁護側への全面開示を実現することに取り組むはずだ。

 ハンセン病については、すべての弁護士がその実態を認識していなかったという言い訳ができる。
 しかし、刑事手続きが非民主的であり、それゆえ、無実の人に有罪判決が下されている実態についてはすべての弁護士が知っているはずだ。言い訳はできない。
 弁護士会が本気で政府に働きかければ(例えば、国選弁護ボイコットなど死に物狂いの方法)、政府も応じざるを得ない。そのこともみんな分かっていはずだ。

 ハンセン病に関する取り組みが遅れたことについて、弁護士会は反省の声明を発表した。 刑事手続きにおける人権侵害について、弁護士会はどう責任をとるつもりなのか?



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