「一緒に電気管理事務所をやらないか?仕事はある。2人でやれば具合が悪くなってももう一人がフォローできる。子供を連れて旅行だって行ける。別に嫌ならいい。他の人を探すから!」そういう電話が来た。まだ会社に勤めていた。
しかし、会社はブラックで今では考えらえないような勤務をしていた。
「もし、突然自営がいやなら自分の社員にするから、住宅ローンも大丈夫だろう。」
その一言で決心し会社に辞表を出した。
当時の住宅金融公庫と厚生年金機構から資金を借りていたのだが、ボーナス払いがあった。ボーナスの時期は40万くらい返済しなければならない。だから、ボーナスありで雇われで電気の世界に入った。結果的にボーナスなんて1回ももらえなかった。仕事を増やしたらその分歩合として給料を上げていくから。という約束も守られることなく、会社をつくりその会社の名前だけ社長に担ぎ上げられしかし給料は変わらず、ボーナスは無く住宅ローンに苦しんだ。しかも、仕事をドンドン増やして二人分いっぱいになってしまったから、忙しくて休みなんか無い。80件以上の客先を毎月点検し、しょっちゅう緊急呼び出しされ、心身共に限界が来ていた。労基法の適用にならないように社長にしてしまうのだ。
健康保険も年金も自前となったので、家計は苦しく、仕事は無茶苦茶忙しく、頭がおかしくなってきた。だって2人分のお客を全部やらされたのだから。自分で自分が考えていることがおかしいと感じるようになった。
「俺はまだ電気管理から給料はもらってない。」とよく俺に言っていたが、自分の母親を青色専従者にして母親名義の口座に数十万毎月振り込んでいるのを知っていた。俺は栃木に住んでいるのだが、長野市(3時間半かかる)まで仕事に行ってきて、夜9時頃群馬県高崎市から呼び出されたり(1時間以上かかる)、多摩市(5時間かかった)まで行ってきて、帰ったら埼玉の狭山市(3時間かかる)から呼び出されたり、1時間かかる埼玉の本庄市から夜中に消防隊から非常用発電機の非常ベルが鳴りっぱなしで、近所から火事じゃないかと通報があったからすぐ来てくれと夜中の12時ころ呼び出されたり、これはさすがに少しお客さんからお金が欲しいと言ったら、お客さんからのお金は全部取られておれには1円ももらえなかった。自分時間外出動費として欲しかったのに。子供を連れてディズニーランドに行ったら呼び出されて、糸は切れた。
そう、メンタルの糸が完全に切れた。おかしなことを考えることはより一層激しくなり、「もう死んでしまおう。」と思ったとき、「俺は病気じゃないか?」と気が付いた。そして病院へ行った。今も通院している。
色々あって別れて独り立ちしたが、病気は悪化の一途をたどり人生はめちゃくちゃになってしまった。
もう取り戻せない。貴重な時期を犠牲にされてしまった。
もちろん、選んだ俺が悪かったのだろうが、俺は人を疑うことをしらなかった。そんな目にあわされると思わなかった。
今、目の前に現れたら殺してしまうかも知れない。
冷静でいる自信は全くない。
それは、人生を捻じ曲げられた経験のある人にしかわからない。
通帳も印鑑も取り上げられ、自分の契約してきたお客さんの売り上げも全部吸い上げられた。しかし、怒り狂って怒鳴りちらしたら、やっと給料を少し上げてもらっただけだ。
代わりに緊急出動なんかしてくれない。それが一番苦しかった。休日呼び出しなんか金輪際行ってくれなかった。埼玉県の狭山市のお客さんから、クリスマスの日の夕方呼び出されて、小学生の子供をおいて出動もした。
いったい、人の苦しみをどう思っていたんだろう。金を稼いでくるロボットだとでも思っていたのか。ATMだと思っていたのか。俺の人格、家庭、身体のことなんか考えていなかった。金のために、人の人生を犠牲にしても何も感じないらしい。今は、うまくやっているようだが、時々「足元すくってやろうか」
なんて考えることもある。完全に狂った人生で、俺も狂った。
そして、俺は病院に行き一気に転げ落ちていった。
人の人生をぶち壊した人って、どんな生活してるんだろう。
何とも思ってないだろうな。謝られたことも1度もなかった。人に嘘をついておいて。しかも、病気にまでなってしまうような嘘を言っておいて。
事務の女性の方が、通帳と印鑑を俺に内緒で渡してくれたので、一人でやって行けるようになった。
人を恨んでの人生なんて不幸な人生だ。俺はそれを歩んでいる。
しかし、どうしても許すことは出来ない。恨みを消すことが出来ない。
壊れたメンタルを直して欲しい。
もう、自力ではどうにもならない。何もかも。
でも、1人でやっている。やって行かなくてはならないから。
まだ死ねねえんだ。