●うがいは水で十分!
うがいで重要なことは、ウイルスを殺すことではなく、
洗い流すこと。18歳から65歳までの387人を対象に実施した
京都大学による二重盲比較試験(※1)によれば、うがい薬(ヨード液)
とただの水による予防効果は、水で40%、うがい薬で12%。
どちらも効果はありますが、ただの水のほうが効果的だったという
結果が出ています。
また、日本で水によるうがいによって得られる経済効果
(風邪になった場合にかかる医療費や仕事を休むことに
よって失われる賃金などの総額)は、年間1人当たり
3万1800ドルとの試算もあります(※2)。
とはいえ、インフルエンザや風邪の予防にうがいを推奨するのは日本
くらいのもの。この安価で効果的な習慣を世界にも紹介したいですね!
●かかってからのうがい薬は逆効果
イソジンなど市販のうがい薬の主成分であるヨードは、
外科手術で手洗いに用いるほど効果の高い消毒薬ですが、
特に風邪やインフルエンザにかかってからのヨード液によるうがいは、
傷に塩をもみ込むようなもの。炎症を起こした粘膜を刺激し、
かえって症状を悪化させます。同じ理由で、病院でもヨード液
による喉の消毒治療はやらなくなりました。
私が産業医を務める企業ではトイレからうがい薬を撤去し、
代わりに使い捨ての紙コップを置くことにしました。
●最大の感染源は自分の手
人は気づかないうちに、驚くほど頻繁(ひんぱん)
に手で顔を触わっています。特にパソコンを触る人は顔を
触る頻度が高く、5分に1回から3回、一日換算では
200回から600回も触るという報告もあります。
最大の感染ルートは一般に、空気中に浮遊するウイルスを
吸い込むことと考えられていますが、咳やくしゃみの飛沫
(ひまつ)が空気中を浮遊している時間は非常に短く
(風流や湿度などによります)、手を通じての感染の頻度のほうが
高いという専門家もいます。
アメリカでは新兵の90%が、最初の数ヵ月間でなんらかの
呼吸器感染症にかかるそうですが、予防対策として紫外線照射
(直射日光に当たるのと同じ効果)、消毒薬散布など様々な
方法を試みたところ、一番効果があったのは手洗いだったそうです。
「一日に最低5回手洗いする」という指示で、呼吸器疾患で受診する
新兵の数は半減したといいます。
●薬用ソープの「薬用」成分は意味なし
手洗いの基本は、うがいと同じで洗い流すこと。爪の先や指と指の間
まで15秒ほどずつこすってウイルスをしっかり落とすことが重要です。
「薬用」と聞くと消毒効果を期待しますが、
いわゆる薬用ソープの主成分トリクロサンは、
細菌には有効でもウイルスは殺せません。
インフルエンザも風邪の原因微生物の9割も細菌ではなくウイルスです。
また、固形のせっけんではウイルスが長時間生き続け、逆に感染源
となることもあります。薬用であるなしにかかわらず固形せっけんよりも
ハンドソープのほうが安全でしょう。
●裏返しマスクに注意!
マスクには予防効果はないという専門家もいますが、
目の前の人がした咳やくしゃみをそのまま吸い込んでしまうのを防ぎ、
ウイルスがついた手で自分の鼻や口に触れにくくするなど一定の効果はあります。
そして、意外と間違いが多いのがマスクのつけ方。
いろんなタイプのマスクが売られていますが、
表面のプリーツ(蛇腹の折り目)が下向きになるようにつけるの
が正解です。逆につけると、プリーツの間にウイルスや細菌が
たまりやすくなるので要注意です。
●マスクは使い捨てる!
ところで、通勤の行きで使ったマスクを帰りにも…と、
ちょっと使っただけのマスクはまた使いたくなりますね。
でも、マスクは「使い捨て」が原則。使ったマスクの表面
にはウイルスや細菌がついており、外すときにも手に
ウイルスが付着する可能性があるので、手洗いは
「マスクを外してから」が鉄則です。
また、ウイルスは髪の毛やマスクに覆われていなかった
部分の顔にも付着するので、髪をタオルで拭き、
手だけではなく顔も洗うのも効果的です。
ただし、マスクも日本や大気汚染の激しいアジア諸国で
のみ広く受け入れられている習慣です。マスク姿が目立つ
冬の日本に来て「毒ガステロ? パンデミック(世界流行)
!?」と驚く外国人も多いとか。
●ワクチンを打ってもかかる?
「ワクチンを打ったらインフルエンザになった」
と訴える人がいますが、インフルエンザワクチンにインフルエンザ
ウイルスは含まれていないので、ワクチンでインフルエンザに
なることは絶対にありません。
もちろん、ワクチンの効果は100%ではありません。
しかし、感染の確率を下げ、かかった場合も重症化を防ぎます。
一度打てば半年から一年は効果がありますが、抗体が上がるのに接種から3、
4週間はかかるので、シーズン前の12月中旬までに打つのが原則です。
●ワクチンの中身は5月に決まっている!
ちなみに、ワクチンに含まれるウイルス株は重症化しやすい
A型2種類とおなかの症状が強いB型1種類の計3種類。
その年、ワクチンに入れるウイルス株は、世界での流行傾向に
応じて毎年5月には専門家の意見をもとに決定し、
10月末頃には医療機関に供給できるよう夏前から製造が開始されます。
意外に早いでしょ?
だそうです。