名前を見てちょうだい あまんきみこ
①えっちゃんは、お母さんに 赤い すてきな ぼうしを もらいました。
「うらを 見て ごらん。」
②そう 言われて、ぼうしの うらを 見ると、青い 糸で 名前が ししゅうして あります。
「う、め、だ、え、つ、こ。うふっ。ありがとう。」
③えっちゃんは、ぼうしを ぎゅうっと かぶりました。そして、さっそく、あそびに出かける ことに しました。
④さて、えっちゃんが 門を 出た とき、強い 風が ふいて きて、いきなり ぼうしを さらって いきました。
「こら、ぼうし、まてえ。」
⑤えっちゃんは 走りだしました。ぼうしは、りぼんを ひらひらさせながら、野原の方へ とんで いきます。
⑥えっちゃんが その 野原に 走って いくと、赤い ぼうしを ちょこんと かぶった きつねが 一ぴき、白い すすきを もって、ブーブーふいて いました。
「それ、あたしの ぼうしよ。」
⑦きつねの 頭を ゆびさして、えっちゃんが 言いました。すると、ふりむいた きつねは、すまして こたえました。
「ぼくのだよ。」
「あたしの 名前が 書いて あるわ。名前を 見て ちょうだい。」
⑧きつねは、しぶしぶ ぼうしを ぬいで、名前の ところを 見せました。
「ほうら、ぼくの 名前だよ。の、は、ら、こ、ん、き、ち。」
⑨なるほど、きつねの 言う とおり。ほんとうに そう 見えます。
「へんねえ。」
⑩えっちゃんが もう 一ど たしかめようと した とき、強い 風が ふいて きて、いきなり ぼうしを さらって いきました。
「こら、ぼうし、まてえ。」
⑪えっちゃんと きつねは 走りだしました。ぼうしは、リボンを ひらひらさせながら、こがね色の はたけの 方へ とんで いきます。
⑫えっちゃんたちが その はたけに 走って いくと、赤い ぼうしを ちょこんとかぶった 牛が 一ぴき、青い 空を まぶしそうに 見上げて いました。
「それ、あたしのよ。」
「ぼくのだよ。」
⑬牛の 頭を ゆびさして、えっちゃんと きつねが 言いました。すると、ふりむいた 牛は、すまして こたえました。
「わたしのですよ。」
⑭そこで、えっちゃんと きつねは、いっしょに 言いました。
「名前を 見て ちょうだい。」
⑮牛は、しぶしぶ ぼうしを ぬいで、名前の ところを 見せました。
「ほうら、わたしの 名前だよ。は、た、な、か、も、う、こ。」
⑯なるほど、牛の 言う とおり。ほんとうに そう 見えます。
「へんねえ。」
⑰えっちゃんと きつねが 顔を 見合わせた とき、強い 風が ふいて きて、また、ぼうしを さらって いきました。
「こら、ぼうし、まてえ。」
⑱えっちゃんと きつねと 牛は 走り出しました。ぼうしは リボンを ひらひらさせながら、七色の 林の 方へ とんでいきます。
⑲えっちゃんたちが、その 林に 入っていくと、木よりも 高い 大男が、どかんとすわって いました。そして、ぼうしを りょう手で もって、ふしぎそうに ながめて いました。
「それ、あたしのよ。」
「ぼくのだよ。」
「わたしのですよ。」
⑳えっちゃんと きつねと 牛は、いっしょに 言いました。
「名前を 見て ちょうだい。」
○21すると、大男は、えっちゃんたちを じろりと 見下ろしました。それから、あっという間に ぱくん。ぼうしを 口の 中に 入れました。そして、すまして こたえました。
「食べちゃったよ。だから 名前も 食べちゃった。」
○22大男は、したなめずりを して、じろり じろり 見下ろしながら、言いました。
「もっと なにか 食べたいなあ。」
○23牛が、後ずさりを しながら、ぶつぶつ つぶやきました。
「早く かえらなくっちゃ。いそがしくて、いそがしくて。」
○24牛は、くるりと むきを かえると、風のように 走って いってしまいました。すると、きつねも、後ずさりを しながら つぶやきました。
「早く 帰らなくっちゃね。いそがしくて、いそがしくて。」
○25きつねも、くるりと むきを かえると、風のように 走って いって しまいました。けれども、えっちゃんは、帰りませんでした。むねを はって、大男を きりりと見上げて 言いました。
「あたしは 帰らないわ。だって、あたしの ぼうしだもん。」
○26すると、えっちゃんの 体から 湯気が もうもうと 出て きました。そして、ぐわあんと 大きく なりました。
「食べるなら 食べなさい。あたし、おこって いるから、あついわよ。」
○27湯気を 立てた えっちゃんの 体が、また ぐわあんと 大きく なりました。そうして、大男と 同じ 大きさに なって しまいました。
○28えっちゃんは、たたみのような てのひらを まっすぐ のばして 言いました。
「あたしの ぼうしを かえしなさい。」
○29大男は、ぶるっと みぶるいを しました。ふるぶる ふるえながら、空気の もれる 風船のように、しぼんで、しぼんで、しぼんで、とうとう みえなく なって しまいました。
○30その あとに、ぽつんと 一つ、小さな 赤い もの。
「あっ、あたしの ぼうし。」
○31ひろって、名前を 見ました。
○32う、め、だ、え、つ、こ。青い ししゅう糸で、たしかに、そう 書いて あります。「ああ、よかった。」
○33ぼうしを 頭に のせると、あらら、えっちゃんは、元の 大きさに なって いました。
○34それから、えっちゃんは、あっこちゃんの うちに あそびに 行きました。
このお話の、おかしな所はどこだろう? たくさんおかしいところがありそうです。なかでも一番おかしいところはどこだろう? と考えてみます。
といっても、範囲が広いと絞れないので、分けて考えようと思います。
まず、一行開いているところがあるから、3つに分かれます。
①~③
④~○33
○34
それぞれに題名をつけます。
①~③ すてきなぼうしをもらった。
④~○33 さらわれたぼうしを取り戻した
○34 やっと遊びに行けた
一番おかしな所は、この中のどこだろう?
やはり「 さらわれたぼうしを取り戻した」の部分にありそうです。
「 さらわれたぼうしを取り戻した」も長いので、その中をいくつかに分けましょう。
ここは、登場人物で分けるといいかもしれません。
(ア) えっちゃんと、きつねの場面
(イ) えっちゃんと、きつねと、牛の場面
(ウ) えっちゃんと、きつねと、牛と、大男の場面
(エ) えっちゃんと、大男の場面
段落番号を適当に入れると
(ア) ④~⑩
(イ) ⑪~⑰
(ウ) ⑱~24
(エ) 25~33
でしょうか?
この中のどこがおかしいのでしょう??
(ア)と(イ)はよく似ています。繰り返しになっています。
違うところはどこでしょう?
・帽子の飛んでいった方向が、野原と黄金色の畑
・きつねはススキを持って吹いているが、牛は空を見上げている
・(ア)はえっちゃんだけ「あたしの」と言うが、(イ)は「あたしの」「ぼくの」になっている
・(ア)でえっちゃんはもう一度確かめようとします、(イ)はきつねと顔を見合わせます。
その他には大きな違いは見られません。
繰り返すとくどくなりすぎる部分を削ってあるぐらいです。
(ウ)も、その繰り返しのパターンになっているのですが、今度は大きな変化がいくつかあります。
(エ)に至っては、まったくその繰り返しのパターンではない話です。
そう考えると、(ウ)か(エ)に、「変だ」「おかしい」という大問題が入っていそうです。どっちに大問題があるのでしょう??
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