
始業式のあと、発達支援の研修会を行いました。(浜松市では、特別支援と呼ばずに発達支援と考えています)
本校は、発達支援は教育の基本だと考えています。特別支援というと、なにか一部の特殊なお子さんのための教育といった響きを感じます。一部の特別なお子さんのためだけに私たち教師が支援するのではありません。どのお子さんも、よくよく観察すれば、まだまだ発達の途中です。支援してあげなければならない部分があります。それをみとって、一人一人に合った教育をしていきたいと考えています。
そこで、2学期の始まる日、ちょうどスクールカウンセラーの辻本さんの勤務日ですので、午後たっぷり時間をとって、発達支援教育についての研修を行いました。
まずは、これまで各担任が記録してきた記録の中から事例を一つ選び、その事例について全員で情報を出し合いました。今の担任の話、前担任の話、小さい頃の話、両親からお聞きしている話、養護教諭の見方、出入りの教科での様子など、いろいろな方向から、事例が出されました。
この事例について、今まで以上にそれぞれが詳しい情報を共有することができました。その中で、このお子さんが、自己肯定観を持てずに苦しんでいる様子が浮かび上がってきました。
そこで、グループに分かれて、どうやって自己肯定観を育てていけるかについて考えました。
低学年部は、友達の気持ちが分からず、友達の気持ちを考えずに言ってしまう言葉が友達の反発を呼んだり、また他愛のない友達の言葉に過剰に反応していることが問題なのではないかと考えました。
そこで、例えば算数の2+3=5のように、一番簡単なところから、公式のようにして友達との付き合い方を教え、その行動パターンを増やしていってあげようと考えました。
腹が立ったとき「ばか」「死ね」と言うと、相手は怒ってしまう。
腹が立ったときは、「今の言葉がいやだった。」と言う。
腹が立ったときは、紙に自分の気持ちを書き連ねると気持ちが収まる。
お弁当を食べるときは、別に一緒にいたいと思わなくても、友達と同じ場所にいる。
など、できるだけ具体的に、インプットしてあげることが大事だと考えました。
これを、辻本さんは「マニュアルを教えてあげることは、とてもいいことです。」と評価してくださいました。
また、低学年ではもう一つ「できるだけ、いつも誰かがそばにいて、良い言動があったらすかさず褒めることで、どんな言動が周りのプラスの感情になるかを教えるとともに、自尊感情を高められる。」と考えました。
これも、辻本さんから「生まれつき、自尊感情の低い子はいないのです。繰り返し、マイナスの自尊感情を植え付けられる経験をしてきているのです。こうして、プラスの感情を感じる体験を積み重ねることで、それらを解消していける可能性があります。」と評価していただきました。
高学年は、役割を与えて、その役割がつとまるように徹底的に支援をしておき、実際にサポートをして本人が自力で成し遂げた充実感を味わわせることを考えました。
これも辻本さんから高い評価をいただきました。特に、先生や友達から与えられた役割を見事にこなすことは、本人の気持ちが良くなるだけでなく、周りからよい見方をされるきっかけになります。いつ、どんな言葉を言ったらいいのか、こんなときはどうするのか、状況を予想し、手を打つことは、大事な支援だと言うことです。
暴言に対する指導の項目では、辻本さんはこう教えてくださいました。暴言を吐くときには、本人は本当にそう思っているから、その言葉が出ます。その言葉を直させようと思っても、本人は納得しません。
それより大事なことは、その暴言を吐く前に、何があったかということです。それを記録していくことにより、このお子さんはどういうときに暴言を吐くのかが見えてきます。すると、あらかじめ、暴言を吐かないような支援をしておくことができます。というご指導をいただきました。
中学年の先生達も、腹が立ったときの具体的な支援について、また、子供同士が認め合うのはそれぞれの感情があり難しい面があるので、まず教師が関わりを持とうと考えました。とくに、このお子さんは、自分の興味のあることには夢中ですが、友達についてはあまり視野に入っていません。友達に褒められるより、先生から認められ、声を掛けられる方が効果がありそうです。
最後に辻本さんがまとめて話してくださいました。
生まれつき、自尊感情が低い子はいません。自尊感情が低いとすれば、それは育つ中で、不快な経験を多く積み、作られてきた感情なのです。
冗談で言われたことを、この子は冗談と思えずに本当に馬鹿にされたと思います。そして、怒りを爆発させます。すると、かえって皆から白い目で見られます。そんな、経験が積み重なって、だれも私を分かってくれないという感情が作られてきたのです。
Aの言葉の時に、Bと反応すると、Cの結果になるという公式が、このお子さんは読めないので、ついつい皆とうまく接することができず、その経験が今のこのお子さんの自尊感情の低さにつながっているのです。
ですから、逆に、学校で「快」の経験を多く積ませてあげるといいのです。
Aという行為をすると、Bという結果になり、Cみんなから褒められ認められ自分も嬉しいという経験をたくさん積むのです。そのためには、教師が先を見越して、良い結果になるように、アドバイスしたり、マニュアルを教えてあげるのはとても良い手だてです。
また、そのマニュアルを作る際には、このお子さんの記録をとっておくことが重要です。
このお子さんが「望ましい言動をした前後に何があったか。」「望ましくない言動を起こした前後に何があったか。」を記録するのです。すると、何がこのお子さんにとって「快」であり、何が「不快」かが見えてきます。
最後に、今日の話し合いで見えなかったことは、ご両親の思いです。ご両親がどのぐらい困っているかによって、また対策が違ってくるからです。
およそ、そのようなお話をいただきました。
このことは、この事例に限ったことではありません。どの子にも支援を考えておき、成功体験をさせ、「快」の感情を味わわせることの大切さを確認し合えたのです。
ところで、こんなに詳しく写真もあってわかりやすい酒井さんの研修報告ですが、光明小の皆さんは御覧になっているでしょうか。もし、見ていないとしたらほんとうにもったないことです。このブログをプリントアウトして配布し、研修したことを共有したいですね。余分なことを書いてしまってごめんね。