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支流からの眺め

サル駆除とコロナ騒動、ポリコレと同根か

 武漢ウイルス感染症(WARS)とは一見関係ないが、小田原市のサル駆除を取り上げる。野生のサルが狂暴化し、農作物やミカンを食い荒らし、人間(特に子供)を威嚇し、住宅侵入を繰り返している。この被害は40年以上続き、この半年でも4000件近い被害が出ていることから、6月24日に全19頭の駆除が決まった。しかし、この方針に全国から抗議や非難の電話が鳴りやまず、市役所は仕事にならないと聞く。ワイドショーでは、お決まりの「可哀そう、命を大切に」という話に仕立てられている。恐ろしくnaïve (ナイーヴ:お人よし、世間知らず)である。

  生物は全て他の生物を日常的に殺している。弱肉強食は自然界の鉄則である。現生人類はその生物界の序列の頂点にあり、太古より自然の動物を捕獲して食してきた。魚や貝の魚介類はまだしも、森にすむ動物も殺してきた。今ではそのはより体系的に行われている。即ち、計画的に繁殖させ、商品価値である味を高め、おもむろに殺し解体して売り出している。日ごろ口にする四足動物(牛、豚、羊、馬)の肉や加工品も、こうして「生産」されている。のどかにみえる牧場も、殺すための飼育施設である。命の大切さという点では、これらの動物と自然界の動物とは同格のはずである。

 食う以外の目的でも生物を殺している。特に危害を与える生物は、常に駆逐の対象となってきた。病原菌はもとより、嫌われ者のハエやゴキブリ、布団に潜むノミやシラミ、血を吸うカや刺すハチ、毒をもつ虫やヘビもそうである。より大型の動物の多くも、人に危害を与える危険性から駆逐の対象となり、生活の場を追われて絶滅に瀕している。ヒトと類縁のネアンデルタール人も全滅させられた。快楽を目的とした狩猟で動物を撃ち殺すこともされている。人間に最も忠実な動物である犬でさえ、野犬や余剰(売れ残った)個体は処分されている。

 これだけ多くの殺生に関与しておきながら市職員に非難を浴びせる、その自己正当感はどこからくるのか。昼にはサルが可哀そうと訴える人が、夕食では血の滴る神戸牛のステーキを堪能する、そこに自己矛盾はないのか。ここに共産主義的なpolitical correctness(ポリコレ:弱者を守る過剰な政治運動)の臭いを感じる。

 この自己矛盾を無視した自己正当感に基づく正論が、WARSに関して極端な経済封鎖を生んでいるのではないか。誤解してほしくないが、経済活動を戻すためならWARSで死者が出てもいいと言うのではない。人命は貴重であることは論を待たない。しかし、生きていれば何かを殺すことになる、何かの犠牲で社会も個人も成り立っている、全ての人が経済活動の恩恵に与っているのである。そのことに思いを致さずに、WARSの死者が1人でも出たら許さないという人命絶対主義には違和感がある。思考の怠慢、自省の不足、視野の偏向である。

 人の死を問題とするなら、WARSに起因した経済的理由の自殺者、医学的理由以外の堕胎手術で消される胎児、犯罪や事故の被害者はどうか。過去には、肌の色や文化が異なるというだけで、「駆逐」や快楽殺人の対象とされた民族もある。現代においても、幸い日本にはないが、戦闘行為によって世界各地で人命が失われている。大陸の奥地では、刑務所や収容所内で拷問死が発生している。これには国連も認知・対応しているが、日本は共同非難に名を連ねることすら躊躇っている。サルが可哀そうというなら、この日本政府の弱腰にこそ抗議の電話をすべきではないか。

 なお、サルの被害は単に作物の損失では済まない。精魂込めた作物を踏みにじられるという精神的な損傷も大きいだろう。更に、身体的な生命への危険も高い。遭ってみると分かるが、野生猿の威嚇は震え上がるほど恐ろしい。あの運動能力で牙や爪を向いて襲って来られれば、子供なら命を奪われかねない。大人でも、武器を持たず素手で戦えば大けがを負わされるだろう。人が世界を支配する限り、人に危害を与える生物は殺される、逆に言えば、その気概がなければ殺される側になる。これが現実である。

 もちろん、駆除は避けたいことである。日本人の死生観・自然観からは、自然動物の殺処分に抵抗感が強いのも分かる。しかし、嬉々としてサルを殺して食する連中もいるのである。凶暴なサルも殺せないような人間は、自分が食われる破目となる。



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