タカ派イメージの安倍氏
国際社会が、26日発足した第2次安倍政権に求めるのは日本経済の復活だ。 安倍氏には「タカ派」とのイメージが先行するだけに、2国間関係が悪化した中韓などは、外交政策も注視している。
【ワシントン=中島健太郎】米政府は、安倍新政権に対し、民主党政権時代から積み残しとなっている懸案解決への取り組みを期待している。中でも、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を望んでいる。
在日米大使館のカート・トン首席公使は18日にワシントンで行われた討論会で「決めるのは日本だが、TPP参加は明らかに日本の国益に沿う。日米の経済関係を強化する機会になる」と述べ、早期の参加決断を促した。
沖縄県の尖閣諸島をめぐる問題で対立する日中関係では、安倍政権に現実的な対応を求める声が強い。
マサチューセッツ工科大のリチャード・サミュエルズ教授(政治学)は「2006年の就任直後に中国を訪問したように、現実主義者の安倍氏に米国は期待している。尖閣問題は日中双方の誤算で対立が激化する可能性があり、米政府は現状の大きな変化を望んでいない」と分析した。
(2012年12月26日23時24分 読売新聞)
自公連立合意:TPP、日米関係考慮し反対色薄める
毎日新聞 2012年12月25日 21時26分(最終更新 12月26日 00時44分)
環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉参加について、自民、公明両党は衆院選では慎重姿勢を取っていた。一方、25日の自公連立政権合意は「国益にかなう最善の道を求める」と、推進、慎重のどちらともとれる表現を選んだ。安倍晋三総裁は日米同盟強化を重視しており、来年1月の実現を目指す日米首脳会談をにらみ、反対論を薄めたとみられる。
◇両党公約を「軌道修正」
政権公約で自民党はTPPについて「聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対」と明記。公明党も「国会で十分審議できる環境をつくるべきだ」として、国会内に調査会か特別委員会を設置することを求め、賛否を明確に示していなかった。
自公協議では、最終盤に自民党が「最善の道」との表現を提示して折り合った。自民党幹部は「首相訪米を念頭に置いた」と解説。日米首脳会談ではTPPが主要議題の一つとなる見通しで、オバマ大統領に対し、前向きな意欲を示せなければ日米関係に影響しかねない。そのため、新政権としてできる限りフリーハンドで会談に臨めるよう、両党の公約を事実上、軌道修正した。
交渉参加表明のカギを握るのが、事前協議でどれだけ米国から関税面などで譲歩を引き出せるか。国内で反発の強い農業界の理解を得られない限り、農業団体の支持を意識し、衆院選で「TPP絶対反対」を唱えていた自民党議員が賛成に回らないためだ。
◇「例外」認定は困難
だが、TPPは関税撤廃が原則。高関税率で守られているコメ、麦、砂糖、乳製品などをすべて関税撤廃の例外とするよう認めさせるのは極めて難しい。農水省は関税撤廃や引き下げを受け入れた場合、農家の所得を補償する「直接支払い」を行う見通し。TPP交渉参加に向けた関係各国との協議とともに、大規模な農業支援対策など、国内調整も急務となる。
このため同省内では「新政権が重要品目で関税を守ることができるならTPP参加という選択肢もあるが、現実的ではない。来夏の参院選までの参加表明は難しいのではないか」(幹部)という見方も出ている。【福岡静哉、横田愛、川口雅浩】
日本は“貿易”立国ではない
オバマ大統領に前向きな意欲を示すため自公両党のTPPに関する公約を軌道修正した。TPPは日本が参加して得られるメリットは極めて限られている。害悪をもたらすデメリットの方が大きい。日本がTPPに参加してもアジアの成長を取り込めない。
民主党政権がTPP参加に意欲を示した時の試算では、貿易額の増加は10年間で2兆7千億円であった。毎年、米国に提供している“思いやり予算”が約2千億円であるから、儲けはただで米国にくれてやるようなものである。経済的にはる経団連等TPP参加を訴えている企業はメリットがあるであろうが、他の企業は“おこぼれ”にどれほど与るのか。参加国のGDPを見れば日米FTAのようなものである。
TPPに関係する国の貿易依存度(総務省統計局のホームページから、2010年の数値)は、大きい順に
輸出はシンガポール157.7%、 マレーシア83.5%、 タイ61.1%、 チリ33.9%、メキシコ28.7%、 カナダ24.5%、 ニュージーランド23%、 オーストラリア17.2%、 日本14.1%、 米国8.7%である。
輸入はシンガポール139.4%、 マレーシア69.1%、 タイ57.8%、 メキシコ29%、 チリ28.5%、 カナダ24.8%、 ニュージーランド22.6%、 米国13.4%、 日本12.7%である。
2011年以降の数値は掲載されていないが、極端な変動はないであろう。ちなみに米韓FTAを締結した韓国の輸出は46%、輸入は41.9%である。最近では、シンガポールの貿易依存度はGDPの200%を超えているともいわれている。
輸出入とも日本の貿易依存度はTPP参加各国に比べて著しく低い。この数字から見れば日本は“貿易”立国というよりは、内需の国と見るのが妥当である。最近は欧米経済の不振、日中対立や中国経済の減速等で輸出が低迷している。TPP交渉参加を急ぐよりも、ますは経済再生で内需拡大に取り組むことが重要のようだ。
「TPPは論外」である理由は
① 参加は合理的でない
経済圏を大きくすればするほど競争力のある大企業は生き残り、弱小企業は市場から淘汰される。日本の経済規模であれば2つか3つの企業で市場を支配できるといわれているので、格差社会が到来する。輸出で増える額は年3000億円に満たない。TPPへ加入すれば少しはマシであるが、ISD条項があるので米国企業が日本を支配する可能性がある。このため主権喪失という“大やけど”が待っている。
② 手続き上の壁がある
参加した時点でルールが決まっている。参加するためには加盟各国の同意を取り付けた上、米国議会の承認を得なければならない。このため交渉に参加する時点ではルールが決まっている。日本の国益に叶うルール作りは実質的に不可能である。しかも交渉文書は発効の4年後でないと公開されない。
③ 参加を表明した菅政権の意図が不純である
鳩山政権の普天間移設問題の挫折と尖閣諸島事件の対応の失敗で米国の信頼を失った菅政権が米国の歓心を呼ぶためオバマ再選に寄与する形で“第3の開国”としてTPP参加を表明した。動機は政権維持のためで国益を考えたものとはいえない、不純なものだ。
④ 社会を崩壊させる
郵政民営化、医療崩壊、国民健康保険制度の崩壊、遺伝子を組み込んだ農産物の流入など、これらは今までも一つ一つが日米間の問題であった。企業が国に損害賠償を求める裁判制度などは主権喪失をもたらし、日本を守る術を失う。
日米同盟というが、同盟は米国の戦略に無批判的に振り回される関係ではない
日本の経済において貿易は大きな比重を占めているが、経済規模が大きいのでTPP参加の他の国と同列視するような貿易立国とは言えない。経済規模が大きい内需の国である。日本人はお人好しで脅せばいうことを聞く卑屈な体質を持っている。だから他国から馬鹿にされカモにされる。尖閣諸島に対する中国の挑発行動然り、米国の対日外交然りである。誠意示せば相手が理解してくれるなどと思い込むから騙されるのだ。日本人どうしであればそれで良いが、米中などの外国にはそれは通じない。軍事力が大きいからひるんだと舐められている。
米中の気質は似ている。国益のためなら手段を選ばず、徹底的に追求する。両国の経済的結びつきと巨大化する軍事力及び米中の経済規模の推移を考えれば、長い将来には米中不可侵条約締結の可能性もありうる・・・・・現状はそのような関係にある・・・・・と考えておく必要がある。それだけではない。米中両国が結託して日本を支配する・・・・分割統治というか共同で統治というか・・・・・・こともありうると考えておかねばならない。 日米同盟というが、同盟とは本来は平等な関係を言う。それぞれ言い分があってから妥協点を見つける。現在の日米同盟はあまりにも異常である。世界の先進国でこれほど異常な関係の国はない。完全に一方の国の戦略を機軸に、世界の動向に関係なく、もう一方の国がただ付いていくだけの関係が続いている。
日米同盟の”深化”の実態を、文字通り真の”同盟”に進化させることが、安倍政権の目指すものではないか。このような観点からもTPP参加の是非を考える必要がある。
TPP参加という ”第三の開国”は主権喪失をもたらす危険性がある。2013年はTPP交渉参加反対の年としたほうがよい。
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