1982年の新聞記事です。
「にんげんをかえせ」は原爆記録映画をつくろうと10フィート運動を展開している「子どもたちに世界に!被爆の記録を贈る会」(松浦総三代表)がつくった16フィルム。広島、長崎の原爆記録フィルムを一人10フィートずつ買い取ろうという運動のひとつの結晶ともいえる。
元の記事のコピー(画像)は字がつぶれて読みにくいので、文章を転載します。
子どもたちの真摯な感想に、心打たれます。
「にんげんをかえせ」は原爆記録映画をつくろうと10フィート運動を展開している「子どもたちに世界に!被爆の記録を贈る会」(松浦総三代表)がつくった16フィルム。広島、長崎の原爆記録フィルムを一人10フィートずつ買い取ろうという運動のひとつの結晶ともいえる。
この映画をみた同中の中野見夫教諭(43)は「すでに戦争とか、原爆が、自分たちとは関係ないフィクションと思っているいまの中学生にも見せたい。真実を知らせたい」と決意。核禁止署名愛知県センターを通じてフィルムを自費購入。ニ年生201人に、国語の授業で上映して見せた。
上映してみると、女優の大竹しのぶさんがナレーターとして「どうぞ終わりまで、目をそらさないでください」と断っているにもかかわらず、ボロボロになった皮膚、黒焦げになっている死体の山がスクリーンに大写しになると、下を向いたり、すすり泣く生徒が相次いだという。
SFアニメや雑誌で戦争が美化され、むしろ「戦争を面白がる」傾向にあると言われる中学生だが、ショックが大きかったのか、感想文の任意提出を求めたところ、約70人が「先生、読んで」と差し出し、この中の21人に作品を選んで文集にまとめた。
《あの「にんげんをかえせ」を見て、私はもう絶対、戦争なんかやらないようにしたいと思いました。広島の原爆のことを書いたマンガの本「はだしのゲン」を思い出しました。あの絵でさえ気持ち悪いと思った私でしたが、がんばって映画のスクリーンから目をそらしませんでした。とてもつらく、苦しいひとときでした。私は泣きたくなりました》=小島知穂子さん(12)の作品「もう二度と」
《「ピカドン」。あなたはなんだと思っていますか。僕は「悪魔の手」だと思っています。人々の幸福を一瞬の間に、うばってしまう恐ろしい核兵器です。おとなも子供も、男も女も、みんな死の灰をかぶり、熱線で身体を焼かれたこの人たちに残っているのは、遅かれ早かれおとずれる確実の死だけなのです。この映画を見る前、ぼくは原子爆弾が、とてもこわいものだと知っていました。今、映画を見て、あの短い時間のフィルムに写しだされていたものは、と考えると、身震いが止まりません。こんな恐ろしいでき事を二度と起こさないように、世界各地にある核兵器を、この地上からすべて消滅させなければいけないと思いました》=小林利明君(12)の作品「ピカドン」
「文集」父母にも大きな反響
ガリ版刷りの文集は、ニ年生全員に配られ、父母らにも読まれて反響を呼んでいるが、中野教諭は「こんな感想文を書いて来て、私のほうが感動している。真実を生徒に伝えることが、どんなに大切かを教えられたし、子供たちのヒューマンな目に打たれた」と話している。