地図ヨミWORLD〜世界の豆知識〜

世界にはたくさんの国や地域があり、それぞれ逸話が隠れています。そんな豆知識を持っていると地図を読むのも楽しくなるはず。

赤道直下の明るい北朝鮮ーシンガポール

2022-11-16 01:27:33 | 旅行

さて、前回の記事ではシンガポールがマレーシアから追い出されて

1963年に独立するところまでをご紹介しました。

 

こうして都市国家として独立したシンガポールですが、

21世紀になった現在、東南アジアで最も所得の高い国に成長し、

都市としても東京や香港と並びアジアを代表する世界都市といえます。

一方で普通選挙が行われているものの実質的には一党独裁制ともいえる政治体制や

死刑を含めた厳しい刑罰を伴う法制度が導入されており

その様相は「明るい北朝鮮」とも言われています。

 

今回はシンガポールのそんな側面に注目してみようと思います。

 

 

シンガポールの国土は719㎢で、日本ではよく淡路島ほどといわれており、

その狭い土地に580万人余の人々が生活しています。

淡路島の人口が12万人ほどなのでいかに都市化が進んでいる地域かがわかります。

このシンガポールの都市化を強力に推し進めたのが「開発独裁」というシステムでした。

 

開発独裁とは、経済発展のためには政治的安定が必要であるという理論から

国民の政治参加を制限することをいいます。

シンガポールの場合は投票は義務制であり普通選挙が導入されているものの、

与党である人民行動党に非常に有利な選挙システムとなっています。

例えばシンガポールでは現在小選挙区制とグループ選挙区制が並列されていますが、

インフラ整備などは与党である人民行動党の支持率が高い地域から優先されます。

そのため人民行動党の支持率が低い選挙区はインフラ整備が後回しにされてしまい、

なかなか公共設備の更新などが行われなくなってしまいます。

逆に言えば人民行動党に投票さえしていれば政府からの支援が行われ、

シンガポールという国の中継貿易の恩恵にあずかることが出来るということ。

なので自分たちに大きな不利益がない以上、豊かな暮らしを続けていくために

人々は文句を言わずに人民行動党に投票し続けることになるのです。

 

またグループ選挙区制というのは日本でいう中選挙区のようなイメージですが、

得票数が高い順に当選していくのではなく、最も得票数を集めた政党が

その選挙区の定数分を総取りする「Winner Takes All」制度。

そのため与党はこの選挙区を与党が常に勝てるように再編することで

ほかの政党を排除することもできちゃうんです(ゲリマンダーってやつですね)。

 

一方で国民の一定の信頼に基づいての普通選挙と開発独裁の共存であり、

政治腐敗は日本を超えアジアで最も少ない国とされています。

こうしたことからシンガポールは「明るい北朝鮮」とも呼ばれているのです。

 

しかし近年では実質的な一党独裁制や与党の移民政策への反発から

野党が徐々に議席を増やしてきており、

2020年には初めて人民労働党以外の野党が10議席を上回りました。

長年シンガポールを支えてきた開発独裁性も節目を迎えているのかもしれません。

 

 

さて、現在のシンガポール経済を支えているのは金融や貿易、

重工業と中心とした工業が中心となっていますが、

同時にバンコクと並び東南アジアを代表する観光都市のひとつでもあります。

 

そんなシンガポールの象徴といえばマーライオンでしょう。

1972年の建設当時からシンガポールを代表する観光地となっていましたが、

しばらくすると口から水を出すポンプが故障して水を吐かなくなり、

また新しい橋が架けられたことから正面から像を見ることができなくなってしまいました。

 

そのためマーライオンといっても白い像がただ川沿いに建っているだけの状況で、

ブリュッセルの小便小僧、コペンハーゲンの人魚姫の像とともに

「世界三大がっかり観光名所」に数えられるほどでした。

しかし2000年以降マーライオン・ピアという海側に移転されたほか、

ポンプが修理され口から水が出るようになり、

また桟橋が設置され前方から至近距離でマーライオンを見れるようになったため

再び人気の観光地として息を吹き返しています。

 

なおこのマーライオンは都心部に近いマーライオン公園にありますが、

それ以外にも本体の像の背後や政府観光局の前など複数の場所に設置されており、

中でもセントーサ島にあったマーライオンタワーは高さ37mと巨大なもの。

中にも入ることが出来、エレベーターで頭上まで登ることも可能した。

かつては目からレーザービームを発するという近未来兵器のような仕様もありましたが、

現在はセントーサ島の再開発で解体されています。

 

ではここでシンガポールを代表する企業としてシンガポール航空をご紹介しましょう。

シンガポールは中世期から海上交通の要衝であったことは先述の通りですが、

現在では空の便においても航空便のハブ都市となっています。

シンガポールはオセアニア、中東、東アジア、アフリカ、ヨーロッパなど

旧世界のいずれもアクセスが可能な立地であり、

シンガポール航空はシンガポール本国への航空需要のほか

特にヨーロッパとオセアニアをつなぐカンガルールートの需要を取り込んできました。

日本路線にも東京をはじめ多くの路線に就航しており、

日本とシンガポールを行き来する人たちのほかシンガポールで乗り継いで

東南アジア各地やオセアニア、インド、アフリカなどへ行く人々にも多く利用されています。

また成田空港からはシンガポール線を延長してロサンゼルスまで就航しており、

日本人にとっても馴染みの深い外資系航空会社のひとつです。

 

シンガポール航空は最新鋭の機材の更新に積極的であることにも知られており、

特に総二階建で話題となった巨人機、エアバスのA380型機のローンチカスタマーともなりました。

シンガポール航空は成田線にA380を投入していましたね。

また機内サービスのレベルが高いことでも知られており、

女性CAの着るサロンケバヤもシンガポール航空の名物のひとつとなっています。

 

現在東南アジアの金融センター及び観光の中心地として高い航空需要があり、

世界中から様々な民族が集まる土地を象徴する企業のひとつとなっています。

今となっては東京を上回る所得を誇るシンガポール。

美しい街並みと様々な文化が合わさった国を楽しんでみたいですね。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿