私の生まれ故郷・・・栃木県小山市・・・
といっても茨城県に来て30年位経ちますので
遠い昔です。小山市を流れる川が「思川」です。 よく泳ぎに行きました。
釣にも行きました。
鯉や鮎が釣りたいと思っていましたが 釣れたのは鮒やオイカワでした。
思えば、鯉を釣る名人級の人がいました。
「川は流れる」と言う曲がありますが、私はこの川を思い浮かべると
何故かこの曲が心に浮かんでくるのです。
両毛線を小山から栃木に向かう途中、思川を横切りますが、
ざっと45年前、この川の東側(小山方面)が小山遊園地の跡や
市の公園になっていました。
両毛線の鉄橋は思川を直角に横切るように架けてありました。
この鉄橋の丁度、その下の辺りが川の淵になっていました。
仲宗根美樹/川は流れる
何故か・・・山本有三の「路傍の石」のあの光景を思い出します。
返らぬ昔が懐(なつ)かしい。・・・
「・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・」
「おまえの気持ちを考えると、先生は大いに同情はするけれども、
しかし、無謀(むぼう)なことをやったものだな。・・・・・・」
「・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・」
「中学へ行けないくらいのことで、そんな考えを起こすやつがあるものか。そんなちっ
ぽけなことじゃけっして大きな人間にはなれはしないぞ。・・・・・・愛川、おまえは自分
の名前を考えたことがあるか。」
「・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・」
「ああ、自分の名まえはどういう意味を持っているのか、おまえは、わかっていないの
じゃないのかい。」
「・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・」
「おそらく吾一って名まえは、おとっつあんが庄吾だから、その庄吾の『吾』と、最初
にできた子どもなんで、『一』という字をつけたのだろうが、
しかし、先生の考えじゃ、ただ、それだけとは思えないんだがね。・・・・・・愛川。
『吾一』っていうのは、じつに、いい名まえなんだぞ。」
次野は熱心に語り続けた。
「おまえは作文にでも、習字にでも、自分の名まえだから書くんだって気もちで、
たいして考えもせずにただ、愛川吾一と書いているが、
名は体をあらわすというくらい大事なもので、
吾一というのは容易ならない名まえなんだよ。」
「・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・」
「おまえの名前は、おまえのおとっつぁんがつけたのか、
ほかの人がつけたのか知らないが、とにかく、
さっき言ったようないわれのほかに、もっと深い意味が含まれているのだ。
名まえをつけた人に、そこまでの考えがあったかどうか、
それは今せんさくする必要はない。
つけた人はどういう考えでつけたにしろ、そういう立派な名まえを
持っているものは、その名まえを、立派に生かしていくようでなくっては、
名まえに対して申しわけがないではないか。」
「・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・」
「吾一というのはね、われはひとりなり、われはこの世にひとりしかいない
という意味だ。世界に、なん億の人間がいるかもしれないが、
おまえというものは、いいかい、愛川。
愛川吾一というものは、世界じゅうに、たったひとりしかいないんだ。
どれだけ人間が集まっても、同じ顔の人は、ひとりもいないと同じように、
愛川吾一というものは、この広い世界に、たったひとりしかいないのだ。
そのたったひとりしかいないものが、汽車のやってくる鉄橋にぶらさがるなんて、
そんなむちゃなことをするってないじゃないか。」
「・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・」
「さいわいに、汽車のほうでとまってくれたから、よかったようなのものの、
もしあのまま進行したら、おまえはどうなっていた思う。
愛川吾一ってものは、もうこの世にはいなくなっていたのだぜ。」
「・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・」
「死んじまって中学校に行けるかい。おまえは中学へ行って立派な人になりたいと
思っているのだろう。それだのに、あんなバカなまねをやってどうするのだ。
よく世間では、この次生まれ変わってきた時には、なんて言うけれども、
人間は一度死んでしまったら、それっきりだ。
愛川吾一ってものがひとりしかないように、一生ってものも、一度しかないのだぜ。」
「・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・」
「おまえはまだ子どもだから、しかたがないと言えばしかたがないが、鉄橋に
ぶらさがるなんてことは、べつに勇ましいことでも、大胆なことでもないんだよ。
そんなのは匹夫の勇というものだ。」
・・・・・・「死ぬ事はなあ、愛川。おじいさんか、おばあさんに
まかせておけばいいのだ。人生は死ぬことじゃない。生きることだ。
これからのものは、何よりも生きなくてはならない。
自分自身を生かさなくってはいけない。
たったひとりしかない自分を、たった一度しかない一生を、ほんとうに
生かさなかったら、人間、生まれてきたかいがないじゃないか。」
「・・・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・」
「わかったか、愛川。先生は、おまえに見どころがあると思えばこそ、
こんなに言っているのだ。
おまえは自分の名にかけて、是非とも自分を生かさなくってはならない。
おまえってものは、世界じゅうにひとりしかないんだからな。
・・・・・・・・・・ いいか、このことばを忘れるんじゃないぞ。」
「・・・・・・・ ・・・・・ ・・・・・・」
国語の教科書に載っていた忘れてはならない垂訓です。
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