【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
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消費税・インボイス制度(自らの立ち位置を確認)

2023-05-20 16:30:00 | 消費税
インボイスの登録(適格請求書発行事業者の登録)をした事業者は、今年10月から請求書に消費税額を明記するとともに登録番号を記載しなければなりません。また、仕入代金や諸経費の支払いをする際にはインボイス、つまり消費税額が明記され登録番号が記載された請求書や領収書を入手しなければなりません。

インボイス制度においては、販売やサービス提供に際してはインボイス(適格請求書)を発行しなければ消費税を受け取れません。また、税務署に申告をするにあたっては支払先が発行したインボイス(適格請求書)がなければ仕入税額控除ができません。

しかし、インボイスの登録をしている事業者の全てがここまでする必要はないのです。

◆原則課税の事業者

「簡易課税を選択できない」あるいは「簡易課税を選択していない」事業者は原則課税で消費税の申告をすることになります。簡易課税は基準期間(前々年)の課税売上高(消費税が課税される売上)が5000万円以下でなければ適用できません。また、簡易課税を適用するには申告とは別に所定の届けが必要です。

基準期間の課税売上高が1000万円以下の事業者は、原則課税や簡易課税の他いわゆる2割特例が認められます。

原則課税の事業者は、冒頭のインボイス制度の趣旨に則った事務処理をしなければなりません。それは大変です!自らが発行する請求書はともかくとして(登録番号を追記すれば済む)、仕入税額控除をするためには、個々の支払いについて請求書や領収書のインボイスとしての要件を確認しなければなりません。

◆簡易課税の事業者(売上5000万円以下の事業者)

簡易課税の事業者は仕入税額控除に関してのインボイスは不要です。なぜならば、簡易課税においては仕入税額控除の計算をインボイスではなく法定の「みなし仕入率」で行うからです。

簡易課税は基準期間(前々年)の課税売上高(消費税が課税される売上)が5000万円以下でなければ適用されません。また、簡易課税を適用するには事業年度(個人は暦年)開始の前日までに所定の届けが必要です(免税事業者がインボイス登録をした場合には登録年度中に届ければその年度から簡易課税が適用されます)。

◆2割特例の事業者(期間限定の特例)

2割特例は簡易課税よりももっと簡単です。年度中に受け取った消費税総額の2割を税務署に納めるという方式です。簡易課税のように申告書とは別に所定の届けは不要で、2割特例は申告の際に選択することができます。

2割特例が認められるのは基準期間の課税売上高が1000万円以下の事業者です。また、2割特例を適用できる期間は、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各年度です。

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★原則課税でない事業者は一安心(インボイス制度なんて大したことはない)?

自身が簡易課税や2割特例で申告できることを知って一安心している事業者は多いと思います。しかし、2割特例は上記のとおり期間限定です。簡易課税は年間売上高の関係で適用されなくなることもありますし、かなり以前から簡易課税は消費税制度上の欠陥として問題視されていることから廃止や適用事業者が縮小される可能性が大いにあります。

簡易課税や2割特例であるからといって安心するのはそこそこにしておき、インボイス制度導入を機に消費税とインボイス制度の趣旨を十分理解して、将来的にはいつでも原則課税に適応できるような体制を確立しておく必要があります。

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