つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
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エッセイ民謡(3)

2019-12-11 11:11:22 | エッセイ

エッセイ 民謡(3) 2019/9/13  課題【自由課題

教室は商店街の年配の人が多かった。
商店街と言うとざっくばらんの話し方を想像するが、お互いに敬語を使い、馴れ馴れしい感じはしなかった。住宅街からの人もいたから、高円寺という土地柄なのかもしれない。
私は若いと言うだけでよく声をかけてもらった。
先生からは年配の人には頼みにくい小さなお使い、例えば舞台に上がる時など、お茶が欲しい、バックを持ってきて等。
当たり前だが頼まれると嬉しかった。
喫茶店に入った時も傍に座るように手招きし話の輪に入れてくれた。
新入りの私でも、何か役に立つことができる、居場所があると感じた。
商店街でも古くからある古本屋のOさんがいた。
余り笑わない人で、二人きりになった時などは苦手だった。
いつもきちんと唄い駄目出しは少なかった。
私は何度も間違い、言われた所ができない。
体の力が抜けて「フッ」と笑ってしまうが、そんな照れ笑いを見たことがなかった。
帰り道、他の人と別れて二人きりになった。
歩きながら、熱心に私の話を聞いてくれた。
何か不安なことを言ったのかどうか覚えていないが、お店の前に来ても話は続いた。
それからは帰り道で沢山のおしゃべりをした。
お蔭で年上の人と話す時の緊張が少し。薄らいた。
黒い髪をきっちりと纏め、笑った時、奥の金歯が覘くOさんを思い出す。
何の唄が十八番だったのだろう。
教室の唄では毎回汗をかいていたのを気の毒に思ったのか、先生から三味線を習わないかと言われた。
思ってもみない事だった。
暫く考えたが、他の舞台で三味線を弾く若い人を見ていたから、悪くはないかと思った。
 三味線は高そう、買うのを躊躇していたら兄弟子が「ピンキリだよ、撥だって最初は木でいいんだよ」と教えてくれた。
貯金もそんなに無かったから、キリの方でも痛い出費だった。

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