エッセイ 広島旅行 2017.3.10 課題【直線・曲線】
市民講座が終わり、何人かで里山散策のサークルを立ち上げた。
五年程経った頃は人数も少なくなったが、みんなの気心もわかり、気軽なコースを選び、寄り道などを楽しんでいた。
その中の一人、Mさんがご主人の転勤で故郷の広島に帰った。
残ったメンバーは毎回Mさんのことを話題にした。
「広島に押しかけよう」という事になりMさんに連絡をすると歓迎という返事をもらった。
行くメンバーは男性のOさんと女性三人、四人の旅行になった。
Mさんとは半年ぶりだが、いつもと同じ、にこやかに迎えてくれた。
一日目は山口県の岩国、錦帯橋や宇野千代の生家などを巡った。
次の朝、Mさんは車で迎えに来てくれた。
そこから安芸の宮島へ。
大きな鳥居を目の端に厳島神社の拝殿を歩く。
隣の宝物館では、平家一門の繁栄を祈り奉納された平家納経などを見、そこからその奥にある紅葉谷を散策した。
いつもはこれくらいで終りになるが、Mさん「宮島に来たら弥山(みせん)に登らなきゃ、千年以上燃え続けている『聖火消えずの火』がある」と誘う。
男性のOさんが早速賛成した。
山に登ることは考えていなかったが、道草大好きな三人も気楽について行くことにした。
初めは、五人が同じ足並みで登っていたが、OさんとMさんがどんどん先に行き、私達三人が遅れだした。
大きな石の段差と滑りやすい山道に、小柄なWさんが音を上げた。
「足が上がらない」、「早すぎる」と。
先に行くOさんとMさんが、坂道の曲がり角に立って見降ろしている。
やっと追いつくと、休む間もなく登り始める、その繰り返しがずーと続いた。
「又、追いつくと登っちゃうよ」
「Mさんはずるいよ、スニーカーを履いてる」
「革靴は滑りやすい」
「手にはバックがあって、片方の手が使えない」
思わぬ山登りに、普段は不満を言わないSさんも笑顔が消えた。
広島旅行の思い出は、ぶつぶつ言いながら登った弥山(みせん)の事が、いつも話題になって面白い。
先生の講評・・・ 対比が良い。
前者の「消えた笑顔・・・」
後者の「面白い」が照応して、会の雰囲気が伝わる。
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