善の定期テストはいつでも背水の陣。
水際に追いつめられるまで、敵と向き合おうとしないのだから。
スマホ片手に、イヤホンして、後ろの敵に気づくことなくのんびり歩く善。
そして、ふと我に返ると、
目の前は海、背後には敵。
毎度毎度、水際の男。
只今お隣の部屋で、水際の善がいやいやながら、敵と向き合っている。
このままでいくと世界史まで手が回らないと思うのだが、どうしたものか。
明日はテスト二日目。
まだ記憶に新しい受験の頃が思い出される。
受験でものんびりしているうちに水際に来てしまった善。
最初の志望校に受かる自信がなくなり、
志願変更しようかどうしようか、と悩み始めた。
当日、ぎりぎりまで悩んで、やはり志願変更しようと学校に向かったら、
なんと受験票を忘れた善。
おかんの所に、善と志願変更に向かったおとんから電話がかかってきて、
「受験票を探して!志願変更に間に合わない!見つかったら走って!」
えー!!!なんてこった!
どうにか見つけて、駅まで走る。
向こうからおとんも走ってきた。
リレー日本代表のように、おとんにバトン、ではなく受験票を渡す。
おとんが走る。
そして・・・・・・・
間に合わず。
仕方なく最初の志望校を受けることとなった善。
どういうわけか受かった。
背水の陣となり、覚悟を決めた善が面接で、
「なぜフクロウの首は270度回るのか」
を熱く語ったことがよかったのか。
隣の部屋で戦う善の背中は広く、
いったいいつこんなに大きくなったんだろう。
頼りなさは赤ちゃんのころと何も変わらないけど、
身体はがっしり大きくなっちゃって。
隣の部屋をのぞいてみると、
水際の男は、戦ってさえいなかった。
頭を小突いてきた。
おかん