磯田道史著「武士の家計簿」新潮新書を読んだ。日本社会経済史が専門の著者が神田の古書店で「金沢藩士猪山家文書」を見つけ、この中に天保13年から明治12年まで、約37年間の加賀百万石の算盤係一家の”武士の家計簿”を見い出した。猪山家は当時、俸禄の割りに交際費がかさみ、(江戸時代の武士は親戚同士の付き合いが濃密だった)多額の借財を抱え家計がまわらなくなった。借金整理のため所持品を売却する。書物や衣類、食器の中にはやかんなどもあり、そのリストが細密に記されている。子供の成長の祝いには赤飯と大鯛が付き物。家計簿には「絵鯛」とあるそうです。絵に描いた鯛で済ませたのでしょう。温かい家族の様子が伺えます。俸禄支給日には家族全員にお小遣いも分配され、女性もしっかり貰っているそうです。江戸時代の武家女性が自立した財産権を持っていたと言うのです。主人が「妻より借り入れ」という記述もみられ、夫婦であっても別会計…現代と変わらない営み、何かほほ笑ましい。この話が映画化されたのです。映画も観たいと思う。