今さら、と言われそうだがやっと開いた。若い時は何か恐くて手に取れなかった。夜陰に乗じ、霧にまぎれて人々が何処ともなく連れ去られ消え去った歴史的事実、原題「心理学者、強制収容所を体験する」は到底言語では言い表す事の出来ない悲惨な収容所生活。身包み剥がされ(体中の毛も)今や裸の身体以外何も所有していないが、心理学者は好奇心と内なる解析で人間には”何でも可能だ”と言うことを知り、もはや何も残されていなくても心の奥底で愛する人の面影に思いをこらせば、ほんの一時にせよ至福の境地になれると言う。自由を奪われ特異な環境の下で、”いかに振舞うかと言う人間としての最後の自由”だけは誰にも奪えない…と勇気付けられる解析が心に深く沁みた。如何なる境地に陥っても尊厳を持って生きていきたいとあらためて強く思う。そして二度とこの様な悲劇を繰り返してはならない。ポーランドは文化的にも魅力のある地ですが、当然アウシュビッツを見なければならない事を考えると卑怯かもしれないが、訪れる勇気が私にはない。