以前、彼の”利休にたずねよ”を読んで凄く面白かったので、いつも彼の著作には眼を向けている。安土桃山時代の絵師狩野永徳は信長や秀吉などの権力者に厚く用いられ多くの作品を残している。父の松栄を侮蔑し己の才能に溺れ長谷川等伯への嫉妬や羨望など、嫌な人間だと思った。渾身の力を振り絞って打ち込む芸術家は許されると言うその傲慢さが溢れ気分が悪いまま読み終えた。「絵は絵師の情念を観せて、魅せるものだと思う」と永徳は言うけれど父は「見る者の遊ぶ場所を作れ」と言う。等伯の絵は観ていて気持ちがゆるやかに楽しくなり絵の中に観る者の居場所がある。永徳は心のうちでは認めつつ最後まで等伯を排除し意地を通す。嫌な人間!今でもいますよね?こういう人…これが私の感想。