お好み夜話-Ver2

たくろうのブーツ

入院中も自宅でも夜の10時か11時ごろにはコテっと寝てしまうのだが、ほとんど毎日午前3時というと目覚めてしまう。


4時まで寝ていられればマシな方で、下手すると2時にバッチリ目が覚めてしまって、本を読もうが映画を観ようがパソコンを立ち上げようが全く眠くならず、かといってガサゴソ動き回るのも躊躇われ、悶々としながら5時まではなるべく静かにしているのだが。


頭の中では仕事のことやメニューのこと、家のことや体の具合など様々なことが渦巻き、ますます覚醒していく中で、そういや「寅さん」の帽子はどうしたっけ?とか、キングギドラのビジュアルブックが欲しいとか、泡盛もずいぶん飲んでないなぁとか、どうでもいいことが次々と浮かぶ。


そうしたひとつに「たくろうのブーツ」はまだあったろうか?というのが俄然気になって、まだ外は暗いのに靴箱の中を漁って無いことを、捨ててしまったことを思い出した。


197412月、今から48年前、発売と同時に買った「よしだたくろう」(当時はひらがな、ね)の名盤LP「今はまだ人生を語らず」のジャケット写真で


「たくろう」が履いていたブーツ。


これに一目惚れして、探しまわってアメ横で同じようなブーツを見つけて買った。


あの頃は多くの野郎どもが「たくろう」の影響を受けて、ある者は音楽を志し、またある者は髪を伸ばし服装を真似たりしたものだ。


「たくろう」のブーツは靴底を修理しながら長いこと履いた。


履かなくなってからもずっと靴箱の中で保管していたのだが、形崩れして内側がボロボロになってしまってとうとう捨ててしまったのだ。


それを思い出して、久々にLPを引っ張り出してみた。


だがレコードプレーヤーはとうにないし、CDは絶版になってしまったし、また聴きたいなぁ「ペニーレインでバーボンを」。


そう思って調べてみると、かつて発売されていたCD2万円近い値がついているし、カセットテープも1万円近い高値だ。


「つんぼさじき」という一つの歌詞がイカンと発売禁止となったというのが通説だが、オヤジ的には、


「気持ちの悪い政治家どもが 勝手なことを言い合って」


の一節が、本当に気持ちの悪いどこかの政治屋の逆鱗に触れたのじゃないか、なんて思ったりしている。


だって、48年も経った今でも「気持ちの悪い政治家どもは勝手なことを言い合って」いるのだから。


そのうちレコードプレーヤーを入手して、もう一度「ペニーレインでバーボンを」を聴いてみたいと思った。


「たくろう」のブーツはもう履くこともないけれど。


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