わたしは夏目漱石が好きだ――が、大きな声で言えるほど作品をそんなに読み込んではいない。
多分若い頃にある程度の作品は読んでいて、蔵書には10冊。
蔵書は最低一度は読んでいるから、「明暗」も一度は読んでいることになるが、
内容は全く忘れている。今回水村美苗の「続明暗」を読むにあたって再読した。
全体的には面白く読めた。だが「この話はこれこれこういう話である」と
いいにくい。
津田という男が主人公。彼は「それから」の代助と似た系譜――
この人の方は勤め人ではあるが高等遊民的に生きている。
財産家の父の送金を当てにし。父の縁故で地位のある人々の世話になり。
その縁でお延という女を嫁にしているが、本当はお延の前に愛した人がいた。
清子。清子は津田には不明な理由で突然津田から離れ、別の人と結婚してしまった。
お延は利口な女。ナチュラルに自己本位の夫との生活に疑問を感じている。
しかしお延自身も情愛細やかな性格というよりは、プライドと自意識が強い。
津田を愛していないわけではないけれど、それを凌駕するくらい
ナチュラルに自分のプライドによって動く。
この夫婦を中心にして、周りの人々も含めた心理が細かく描かれる。
こういうの、嫌いな人は全然嫌いだろうなーという細かさ。
しつこいというのとはちょっと違うが、裏の裏の裏くらいまでは書かないと
済まない――漱石の性格の執念深さ。感情的というよりは端から端まで
分析しないと済まない頭の働き。
考えが重箱の隅、重箱の隅へ転がって行って止まらない。
こんなことをしているから胃潰瘍で若死にしてしまうんだよ。
でも考えすぎないようにしようと自ら努めても、元々の性格はなかなか直らないね。
この小説は周知のごとく未完。
漫然と読む能力しかないわたしは、解説にテーマを教えてもらおうと読んでみた。
しかし解説で驚いた。中村草田男という人が書いているのだが、
ものすごく大層な言葉でほめそやしている。
わたしはそれに全く共感できなくて。そんなに大層なことが書いてありましたか?
中村は津田をくさしているけど、漱石がそう描いていると思う?
わたしはむしろ津田を漱石の投影と見るよ。もちろん作家が生み出す人物は
全て作者の分身だ。津田は現実の漱石ではなく、心の奥底に隠れた人格だと思う。
そこからAmazonのレビューを見ると、面白いことに気づく。
この本を読んでの感想がみんな違う。みんな全然別のところを見ている。
1冊の本を読んで、ここまでばらばらの感想も珍しいのではないか。
これは、多分この小説が未完であることが大きく関わっている。
結末がわからないだけに、前半の道のりを見て人は自分の思う物語を作る。
そしてそれを実際に書いたのが水村奈苗。「續明暗」。
「私小説」を読む前はまったく期待してなかったけど、今は期待している。
漱石の好きな作品は初期の作品。
「猫」「三四郎」「夢十夜」「倫敦塔」。これらは読み返す。
「それから」と「門」も数回は読んだかな。
おっさんのロマンティシズムが好きなんです。知識人の苦悩よりも。
多分若い頃にある程度の作品は読んでいて、蔵書には10冊。
蔵書は最低一度は読んでいるから、「明暗」も一度は読んでいることになるが、
内容は全く忘れている。今回水村美苗の「続明暗」を読むにあたって再読した。
全体的には面白く読めた。だが「この話はこれこれこういう話である」と
いいにくい。
津田という男が主人公。彼は「それから」の代助と似た系譜――
この人の方は勤め人ではあるが高等遊民的に生きている。
財産家の父の送金を当てにし。父の縁故で地位のある人々の世話になり。
その縁でお延という女を嫁にしているが、本当はお延の前に愛した人がいた。
清子。清子は津田には不明な理由で突然津田から離れ、別の人と結婚してしまった。
お延は利口な女。ナチュラルに自己本位の夫との生活に疑問を感じている。
しかしお延自身も情愛細やかな性格というよりは、プライドと自意識が強い。
津田を愛していないわけではないけれど、それを凌駕するくらい
ナチュラルに自分のプライドによって動く。
この夫婦を中心にして、周りの人々も含めた心理が細かく描かれる。
こういうの、嫌いな人は全然嫌いだろうなーという細かさ。
しつこいというのとはちょっと違うが、裏の裏の裏くらいまでは書かないと
済まない――漱石の性格の執念深さ。感情的というよりは端から端まで
分析しないと済まない頭の働き。
考えが重箱の隅、重箱の隅へ転がって行って止まらない。
こんなことをしているから胃潰瘍で若死にしてしまうんだよ。
でも考えすぎないようにしようと自ら努めても、元々の性格はなかなか直らないね。
この小説は周知のごとく未完。
漫然と読む能力しかないわたしは、解説にテーマを教えてもらおうと読んでみた。
しかし解説で驚いた。中村草田男という人が書いているのだが、
ものすごく大層な言葉でほめそやしている。
わたしはそれに全く共感できなくて。そんなに大層なことが書いてありましたか?
中村は津田をくさしているけど、漱石がそう描いていると思う?
わたしはむしろ津田を漱石の投影と見るよ。もちろん作家が生み出す人物は
全て作者の分身だ。津田は現実の漱石ではなく、心の奥底に隠れた人格だと思う。
そこからAmazonのレビューを見ると、面白いことに気づく。
この本を読んでの感想がみんな違う。みんな全然別のところを見ている。
1冊の本を読んで、ここまでばらばらの感想も珍しいのではないか。
これは、多分この小説が未完であることが大きく関わっている。
結末がわからないだけに、前半の道のりを見て人は自分の思う物語を作る。
そしてそれを実際に書いたのが水村奈苗。「續明暗」。
「私小説」を読む前はまったく期待してなかったけど、今は期待している。
漱石の好きな作品は初期の作品。
「猫」「三四郎」「夢十夜」「倫敦塔」。これらは読み返す。
「それから」と「門」も数回は読んだかな。
おっさんのロマンティシズムが好きなんです。知識人の苦悩よりも。
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