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◇ 千田嘉博「真田丸の謎 戦国時代を「城」で読み解く」

2024年10月19日 | ◇読んだ本の感想。

前に千田さんの本を読んだ時には、テレビで見るイメージとはかけ離れた
ガッチガチの文章で若干腰が引けた。
2冊目であるこれもガッチガチかと思ってちょっと怖々だった。
そしたらこっちは話し言葉で柔らかく、初心者向けでしたねー。
前のも新書だった気がするがなー。一体なんでそんなに書き方を変えたのか。
わからん。

本書では、
1.真田丸要害説
2.真田氏と城づくり
3.日本の城の歴史の(簡単な)概説
を書いている。だから「真田丸の謎」というタイトルに合致しているのは
第2章までだね。
しかしこの3つの内容はそれぞれ面白かったので不満はない。
むしろ順番的には3→2→1と進むべきではないかと疑問は持つけど。

1については、今まで真田丸は大阪城の馬出しとして作られたというのが定説だが、
実は独立した柵、要害として作られていたのではないかという話。
細かい検証は読んでも忘れたが、

馬出しというには大阪城との位置関係が離れすぎてる。
間になんか細かい地形があって直接的な連携がとりにくい。
馬出しならば本当はもっと西側にあるべきものだが、
東に寄せることで高い位置に建てて要害性を高めている。

こんな話だったように思う。けっこう納得できる話だった。
なんかうっすら真田丸には違和感を持ってて。
馬出しがそこまで防御性と攻撃性を持つか?と思っていた。むしろ要害の方が納得。

そして、真田幸村の――昨今真田信繁になっているが、幸村の方が馴染みがあるのよ――
当時の大阪方内での立ち位置は、そこまで重んじられてはいなかっただろうというのも納得。
父の昌幸の戦上手は知られていても、幸村自身の戦功はほぼゼロ。実績がない。
名も知られてない。

それに加えて、豊臣恩顧の武将ってわけでもないものねえ。
幸村が総大将になる選択肢はなかったんだ。ドラマとかで見てると、
「なぜ幸村に指揮をとらせなかったのか」と歯がゆく思うけれども。

2は特に思うことはなし。最近武田氏関連の本をなんぼか読んだので、
なるほどなるほどと思いながら読んだ。

3は北条・上杉・武田・今川、各大名の城づくりが面白かった。
やはり武田が滅びたのは必然だったのかもしれない。
城から具体的な統治の仕組みが読み取れるというのは面白いなあ。
ちなみに定説になっている「信玄が上洛途中に急死したので武田軍は途中で引き返した」
というのは千田さん的にナシ。であれば3万ぽっちの軍勢は少なすぎるとのこと。


読んでてなんかしみじみと思ったんだが。
家康が豊臣家を滅ぼしたのは、――権力欲を別としても必然だったんだなって。
狸親父が、秀吉に託された秀頼を死に追いやったのはエグイと思っていたけれど、
何の苦労もないおぼっちゃんの秀頼と、
苦労はしたけど全日本国という視点は持てない淀君と、
いくら有能でも生きてきた世界が狭く、官僚でしかない石田三成では
戦のない世を作るのはどう考えても無理だっただろう。

家康は、権力を求めたのも、その権力を子々孫々に伝えていきたいのも
たしかにあっただったろうけど、「厭離穢土欣求浄土」の理想を持っていたのは多分本当。
その理想を実現するためには、秀頼の存在は邪魔だ。

長い時間をかければ、もしかしたらうまく秀頼を一大名に格下げして、
家康が権力を握ることも出来たかもしれないが、
家康にはそれほど長い寿命は残されていなかった。



わたしはこのくらいの軽い読み物でお願いしたいですよ、千田さん。
千田さんの著作は今後も読んでいきたいと思う。
まあもう少し経ってから。
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