プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◆ 東京ミッドタウン&秋山庄太郎写真美術館。

2007年11月19日 | ◆美しいもの。
サントリー美術館は東京ミッドタウンなる複合施設の中にある。
ほほー、今年出来た建物なのか。道理で新しいと思った。なかなかおしゃれな建物。

個人的には、おしゃれな建物はあまり評価をしたくないんだけれどね。
これは偏見かもしれないけど、建物として、かっこつけるだけならそんなに難しくないと思うから。
お金も存分にかけて、見た目を良くして…程度のことならハードルはかなり低いと言わざるを得ない。
今回歩いてみて、よくわかったのが見た目部分だけだったので、
声を大にして「いい!」とは言えないが、ただ見た目部分に関しては、実は気に入った。

ガレリアにかかる渡り廊下のサイドのパネルが。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:Tokyo_Midtown_GALLERIA.jpg
この写真にはあまり写ってないんだけれども、このデザインがいいなあと。微妙にアジアン。
緑に竹を使っているのも好きだし、建物の基本が木目調のデザインになっているのも落ち着けて好き。
色々な木目調の壁紙を多用していた。触ってみると貼っただけで、実は安っぽかったりもするのだが、
そこでわりと高級感を出しているのが良い。

かっこつけているだけの建物がイヤなのであって、同じ外見でも、低予算とか使い勝手とか、
どこかに工夫のある建物であるなら、積極的に評価したい。
でもよく知らないからなあ。一度ぐるりと散歩しただけでは使い勝手とかわからないし。
サントリー美術館部分は、狭い床面積を上手く使っていると思ったし、床とか壁の表情が
なかなかいいと思ったので、ここの使い勝手は良いのではなかろうか、と小声で言いたいけどね。


しかしこの中に入っているイッセイ・ミヤケ?の店ですが……。
あの蛇口デザインにはたまげた。この店で物は買えない。まあ、相手もわたしのような人間には
売ろうと思ってないであろうが。
店舗デザインじゃないよね、あれは。すでに現代アートの世界になっている。
店員はまだしも、あそこに客が入っていったら、絶対作品世界を壊す存在になる。
……心配なのは、客に二の足を踏ませる店でいいのかということだ。
売上的に、それでもいいの?三宅さん。


ミッドタウンの後ろが檜町公園になっている。ここが良かったねー。
午前中通りかかった時は、地元民らしき親子連れが適度な人数、土曜日の朝を楽しんでいてさー。
さわやかだった。こういうところが近所にあったらいいだろうなとしみじみ思った。

……外人さんの割合が高く、正直、それも印象を高める効果があったことは否定できない。
こういう時に思うんだけど、やはりわたしも西欧偏重主義にどっぷり浸かっているのだろうか。
ヨーロッパを愛するわたしだが、それは選択をした上での好みであり、無条件に西欧を有難がるのは
実に底の浅いことだと思っているのだが。
でも見た目で考えた場合、日本人家族だけがいる公園より、外国人も混じった公園の方が
スタイリッシュに感じる。しかもアジア系の外国人と白人系の外国人を考えた場合、
どうしても後者の方がスタイリッシュに感じる。
この感覚はどこから来ているのだろう。美醜の基準に、絶対性はないと思うのだけれども。


※※※※※※※※※※※※


美術館のはしごをする予定で根津美術館へ向かったら……改装の為、長期休業。
ううーむ。事前のリサーチが足りなかったか。
どうしようかな、こりゃ国立新美術館しかないかな、と後戻りをしかけたら、
そのそばに「秋山庄太郎写真美術館」という小さな建物があった。
時間的にちょうど良さそうだったので、とりあえず入って見る。

秋山庄太郎。実はそれほど好きな写真家でもないんだけどね。
この人は女優を撮りまくった人。それから余技として、花。
わたしは人物写真にはほとんど興味がないし、女優の写真は、写真としての良さはあまり感じない。
一度どこだかで秋山庄太郎の写真展を見たことがあるけど、それも、
「はー、この人は若かりし頃こんな顔かー」という視点で女優たちを見た。
記録写真という観点からすれば、なかなかリッパな写真ではある。

花ではバラを相当撮ったらしいのだが、このバラも、実に秋山庄太郎っぽいというか。
バラの記録写真。女優と全く同じ感じでバラを撮っている。
わたしは、自然風景の一部としての花の写真は大好きだが、こういう人工的に撮られた花は、どうも。
とにかく吹き付けた霧の量が多すぎる!不自然。
いかにスタジオが乾きやすく、花の生き生きした感じを出すためとはいっても、
限度を超えていると思うよ。
が、枠の中に花や花びらを並べて、押し花っぽく画面を作っている写真は、紛れもない人工なんだけど、
わりあいに好きだった。花を絵の具にして作った作品ですな。


この美術館での白眉はスタッフの人との交流だった。
3階に、飲み物を出してくれるいい感じのスペースがあって。そこには閲覧出来る
秋山庄太郎の写真集も設置してあり、わたしはかなり長い時間をかけてそれを眺めていた。
そのうち、そこにいたスタッフの人とお喋りが始まる。

昔、写真が好きで少しは撮っていたのだけれど、ここ数年は全く撮らなくなってしまった。
面倒くさいのも理由だし、デジカメにノレないというのも理由。
デジカメが嫌ならフィルムにこだわればいいんだけど、やはりデジカメの手軽さを知った後では
フィルムで撮るのもかったるい。と、いうような話をして。

そうしたら、非常に優しそうな風貌のその女性は、
「せっかく好きだったのに勿体ないですよ。ほら、ここにきれいなバラがあるから、撮ってみて」
そして、花瓶を窓際のテーブルに置いてくれる。
わたしがその時に持っていたのはコンパクトデジカメであって、正直これで撮っても……
と思うようなカメラではあったんだけど、ついついノセられてしまった。

バラを。10枚撮った。
5枚目くらいから、自分が段々入り込んで来たことに気づく。
すっかり忘れていたけど、写真にはこの没頭があった。
対象物の姿を息を止めて見つめて、ただその一瞬、姿を捉える。
その時には自分というものはどこにもいない。おそらく一発の弾丸を発射する時、
一本の矢を放つ時、必殺の気合で切りつける刀の一閃の時に似ている。

その没頭が快かった。最後の10枚目、非常に当たり前の一枚にはなったけれど――
最初に同じ構図で撮っても、この満足感は得られなかっただろうと思えるような、
落ち着いた一枚になった。

うーん。写真、再び始めるべきだろうか。





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