超音波
この動画の
基本技術は以下の説明にある
高調波を利用しています
容器と制御の組み合わせにより
目的に合わせた利用技術に発展しています
このような展開が起きた理由は
下記のような説明資料により
実験・確認を途中でやめることなく
すすめられたことが最も大きいと感じています
その意味で
大変感謝しています
以下資料
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柘植俊一(つげ・しゅんいち=筑波大名誉教授、航空宇宙工学専攻)のエッセイより
昭和7年(1932年)4月1日生。
昭和29年東大工学部電気工学科卒業。
昭和34年大学院数物系研究科航空学専攻終了。
昭和35年防衛大助教授。
昭和44年NASAエイムス研究所上級研究員。
昭和54年筑波大学構造工学系教授。
(2003年06月21日 心筋こうそくのため死去 )
衝撃波のリーマン理論
「オートバイや自動車の排気管がある条件下でギーンといった金属音を出すことがある。いわゆるバリ音であるが、これの実体が実は衝撃派と化した音波である、という事実を明らかにしたのは日産自動車中央研究所のチームである。」
「周期的に吐き出されるエンジン排気が排気管の中を伝わるにつれ、正弦波がリーマンの理論に従って変型し、ある距離に達すると鋸の尖った刃が形成される。このことは、音響学でいうところの高次の(周波数の高い)音調波が作り出されることなのであるが、現実の排気管の中のこの波形のうつり変わりを実測した日産チームは、シンセサイザーを用いてこの測定波形を再現してみた。」
「その合成音を実際に聴いてみると衝撃波が形成される直前までは単なるノイズであるのが、その直後ではギーンという半金属音に変るのがはっきり認識される。人間の耳の鋭敏なこと、驚くばかりである。波形を目で見たのではその差異は全く明らかではないのである。」
そして、ついでに柘植は、耳の感度はオングストローム単位の大きさで振動させる微弱な振動でも人間の耳は感知するほどであると注意する。
「ついでながら人間の耳がどのくらい感度がよいか、という例をあげておくと、鼓膜をオングストロームの大きさで振動させる程度の微弱音響振動が、人間には聞こえることがわかっている。オングストロームとは、水素分子の大きさ程度である。まことに、人間は誰もが地獄耳というべきで、だから騒音問題というのが、いかにやっかいな代物かがわかるのである。」
次に、柘植は血圧測定の話に進む。血圧測定の時に医師や看護婦が、血圧計についているカフというものを腕に巻きつけ、耳に聴診器をして、その先をカフの下にいれる。そして、音を聴きながら、カフの圧力を下げていき、その時に音が聞こえては消えるところで、最高血圧、最低血圧を決める、という方法で血圧を測定する。これは皆さん良く知っていることだろう。この時の音を「コルトコフ音」というのである。
柘植によると、この原理の科学的な理由が分ったのは、ごく最近のことである。
「腕にカフを巻きつけ、締めつけた血管内の音(コルトコフ音)を聴診器で聴くだけで血圧が測れる、というのは診療技術の中でも最高の切れ味をもつアイデアだ、と私には思われるのであるが、実はこのコルトコフ音というものの正体がわかったのはごく最近のことで、これも衝撃波のなせるわざだ、とつきとめたのは当時まだ部屋住みの身であった清水優史博士(現東工大制御工学助教授)である。」
「血管内の血流も、排気管内の排気流も、ともに脈動流である点で同一である。その脈動流は音速で伝わるが、それが前者では血管の断面積の広いところでは早く、狭いところではおそく伝わるのである。そこで血管の中に狭窄部を作ってやると、急に小さくなった伝播速度のために、ちょうど赤信号でせきとめられた車の流れと同じで、そこに急勾配の質量体積部分--衝撃波--が生じる。それが排気管中ではバリ音となり、血管中ではコルトコフ音発生となる、というのが清水博士の推論で、これは、静水タンク(カフに対応する)中におかれたシリコンゴムチューブ(血管に対応する)に脈動流を送るという高校の物理実験レベルの簡単な装置による実験結果と見事というほかない一致を示すことで実証された。」
そこで、これらをまとめておくと、次のようになるだろう。
脈動流∥ 水流 | 血流 | 排気流 | 車の流れ
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脈動流∥ 水の音速 |血流の音速 |排気流の音速| 車の流れの速度
の音速∥ | | |(法定速度)
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外圧 ∥ 水タンク | カフ | 排気管の形| 信号、傾斜や幅
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場所 ∥ゴムチューブ| 血管 | 排気管 | 道路
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決めて∥ 断面積 | 断面積 | 断面積 | 道路幅
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音速 ∥ 断面積の広い(狭い) |道路幅の広い(狭い)
変化 ∥ ところで早い(遅い) |ところで早い(遅い)
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衝撃波∥ 衝撃音 |コルトコフ音| バリ音 | 交通渋滞
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最後に、柘植はこの一節をこう締めくくる。
「以上の二例は日本の基礎研究がヒタヒタと世界のトップレベルに迫る足音の響きのようなものである。前者は日本の民間企業の研究がこのような基礎研究にまで及んでいる、ということで成熟度をこれによって測ることができ、後者は、医療技術としてこうも古くからある問題(コルトコフの提起、1905年)に、どちらかというと後発の日本の基礎研究が、解決の糸口に先鞭をつけるまで追いついた、ということでともに喜ばしいことにちがいない。」
参考
柘植の「反秀才論」を読み解く 井口和基 著 有限会社太陽書房
反秀才論 (岩波現代文庫) 柘植 俊一 著 (2000/5)
流体の科学 上、中:柘植 俊一/著:日刊工業新聞社