人間の建設
人間の建設 小林秀雄・岡潔(新潮社)1965年
「数学は知性の世界だけに存在しうるものではない、
何を入れなければ成り立たぬかというと、
感情を入れなければ成り立たぬ。数学の体系に矛盾がないというためには、
まず知的に矛盾がないということを証明し、しかしそれだけでは足りない、
銘々の数学者がみなその結果に満足できるという感情的な同意を表示しなければ、数学とはいえない
ということがはじめてわかったのです。
じっさい考えてみれば、矛盾がないというのは感情の満足ですね。
矛盾がないというのは、矛盾がないと感ずることですね。感情なのです。
そしてその感情に満足を与えるためには、
知性がどんなにこの二つの仮定には矛盾がないのだと
説いて聞かしたって無力なんです。
ともかく知性や意志は、感情を説得させる力がない。
ところが、人間というものは感情が納得しなければ、
ほんとうには納得しないという存在らしいのです」
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工学には実験・製品・改良による説得が可能に見えますが
実際には、現場の感情を納得させるものが必要だと感じています
本当に「改良する、良くなる」という情熱のようなものかもしれません
動画:奈良公園