じつを言うと、松山は初めての訪問ではありません。もう十数年前になりますが、まだぴちぴちの学生だった頃に日本土木学会の学会発表をおこなうために、松山大学へ来たことがあります。しかし当時は学会発表の準備に追われ、観光する余裕は皆無でした。もちろん温泉も入らなかったし、瀬戸内の海の幸を楽しむことすらできませんでした。前回訪れた際にできなかったことを、今回の旅でやってしまおうとカタく胸に誓ったのでした。
そのうちの一つが路面電車。私が住む大阪にも天王寺から市内を縦断し、堺市は松林で有名だった浜寺公園までを走っているため、それほど目新しいものではなかったのですが、一日のうち、八往復だけ運行している車両があります。「ぼっちゃん列車」と呼ばれ、この列車に乗るためだけにこの地を訪れるほど、いろんな人に愛され続けている列車です。小説「坊っちゃん」にも度々登場し、松山の情景を色付ける素晴らしい素材の一つです。
この坊っちゃん列車には偶然に学生時分に訪れたときに出会いました。当時は松山に坊っちゃん列車はおろか、路面電車が走っていることすら知らずに松山へ行ったものですから、その威風堂々とした風貌に非常に脅かされてしまいました。
道後温泉に到着後、はやる気持ちを抑え切符を購入するため道後温泉駅の構内へと向かいます。時刻は四時を少々まわったところ。うまくプラットホームで再会をはたせた彼と写真を一枚。
あれ…こんなに小さかったっけ…。
乗り込んだ箱の中はほのかに木が香り、半ばまでしか開かない上開きの木窓からは少し肌寒い春の風が入ってくる。十五分程度の道程でしたが、ごとごとと揺られるうちに学生時分に戻ったような不思議な思いでした。
(つづく)
そのうちの一つが路面電車。私が住む大阪にも天王寺から市内を縦断し、堺市は松林で有名だった浜寺公園までを走っているため、それほど目新しいものではなかったのですが、一日のうち、八往復だけ運行している車両があります。「ぼっちゃん列車」と呼ばれ、この列車に乗るためだけにこの地を訪れるほど、いろんな人に愛され続けている列車です。小説「坊っちゃん」にも度々登場し、松山の情景を色付ける素晴らしい素材の一つです。
この坊っちゃん列車には偶然に学生時分に訪れたときに出会いました。当時は松山に坊っちゃん列車はおろか、路面電車が走っていることすら知らずに松山へ行ったものですから、その威風堂々とした風貌に非常に脅かされてしまいました。
道後温泉に到着後、はやる気持ちを抑え切符を購入するため道後温泉駅の構内へと向かいます。時刻は四時を少々まわったところ。うまくプラットホームで再会をはたせた彼と写真を一枚。
あれ…こんなに小さかったっけ…。
乗り込んだ箱の中はほのかに木が香り、半ばまでしか開かない上開きの木窓からは少し肌寒い春の風が入ってくる。十五分程度の道程でしたが、ごとごとと揺られるうちに学生時分に戻ったような不思議な思いでした。
(つづく)