母が亡くなってからしばらくは
母に優しく接して下さった人に逢うと私は声が出る前に涙が喉の奥から
出てきてしまうのでした
悲しくてやり切れない寂しさで
主人と近くのスーパーに買い物に行った時もそうでした
平素母に優しくして下さった店員さんから声をかけられると
もう駄目なのです
私は急いで人目のないコーナーを探して壁に向かって立つのです
人様からあの人は泣いていると見られたくなくて
でも今泣いてはいけないのだと自分に言い聞かせるのに
そんな時は却って涙は出てくるのです
その時は白いエプロンを買いに来ていたのです
買い物をして「済んだよ」と主人は私がいそうな場所を探してきて
言うのです
あの頃いつも主人は私と行動を共にしていました
深い悲しみに遭うと私のことを消え入りそうに見えたのかも
あの頃にはこんなこともありました
母はKさんという植木屋さんの仕事ぶりが好きで裏庭のことをよく相談していました
またKさんも高齢にもかかわらず何時も前向きで逆に励まされると平素よく話しておられました
母が亡くなって少し経ったある日の夕方kさんはいつもの植木屋さんのスタイルとは違って
ざっぱりとした服装に着かえで鉢植えの白い蘭の花を抱いて
深刻な表情で尋ねてこられました
「亡くなられたこと今日聞きました 急なことだったのですね」
仏前にお参り下さいました
Kさんの直ぐ後ろで私達夫婦が一緒にお参りしていました
Kさんは母の事を本当に寂しく思って下さっているのだと私にも感じる
ことができました
私が「生きて行かなければね」と言ったので
kさんは目を見開いて真剣な表情で真後ろに座っている私を見られました
もしかしたら私が死を選ぶとおもわれたのかも

お正月過ぎても葉牡丹は元気です