当ブログでは、急増している最近の病気として腎臓を取り上げました(環境ホルモン!part9最近の病気)が、その後、NHKスペシャル「人体」を視てびっくりした。心配していたことがあながち的外れでもなさそうだと思った。内容をまとめてみた。
1 尿を作る過程で血液の成分調整が行われている?メッセージ物質?
尿の量は1日に1リットル~2リットル位。しかし腎臓がこれだけの尿を作るために処理している全体の量はなんと180リットルにもなる。つまり、ほぼ1%が排出され、残りは再吸収される。
腎臓が尿を作り出すしくみと血液を管理する機能
直径0.2mmの玉のような「糸球体(しきゅうたい)」には血液が流れ込んでいる(腎動脈)が、内部にはフィルターの役目をする無数の穴が空いていて、赤血球以外の老廃物を濾し取っている。糸球体は一つの腎臓に100万個ある。
糸球体を抜けるとその先には「尿細管(にょうさいかん)」があり、絨毯のように細かな毛が生えた微絨毛(びじゅうもう)という所に入る。そして、微絨毛によってさらに細かく体に必要な成分を取り出し、血液に戻す(腎静脈)作業が行われている。不要なものは尿になって体の外に排出される。
この血液の成分調整作業は、全て自分の判断で行っているわけではなく、例えば、塩分については、心臓からの「疲れた」というメッセージを受け取り、取りすぎた時は塩分の再吸収を少なくして不要な塩分を尿に出す機能を持っている。腎臓は、他の臓器(甲状腺、副甲状腺、骨、脳、胃、腸、肝臓、肺)とも会話しながら絶妙に成分を調整した血液を戻すという機能を持っている。
腎臓に流れ込んでいる血液は、体全体の4分の1で、塩分・カルシウム・マグネシウム・カリウム・リン・水素イオン・尿酸などの成分調整を行い、正常値を保つように管理している。
例:カリウムの調節
カリウムは、多すぎると、知覚異常、意識障害、脱力、麻痺などがおきるようになる。不足した状態が進むと、重篤な不整脈、そして心停止など致命的な結果を招くことがある。
2 メッセージ物質は他にもある
「エポ(EPO)」
体の中の酸素が不足すると、腎臓が反応し他の臓器にメッセージ物質・エポを送る。「酸素が欲しい~!」⇒すると骨に到達し、酸素を運ぶ赤血球の増産が始まる。⇒体中の筋肉により多くの酸素が届く。
このように、赤血球の量の調節管理=酸素の調節も行っている。臓器同士のメッセージ物質を運ぶ回線は、全身の血管網10万kmに及ぶ。
「レニン」(注)・・・腎臓は、何と「血圧を上げよう。」というメッセージ物質を出している。
腎臓と血圧が深い関係にあるなんて!
番組では詳しい説明がなかったので調べてみた。
腎臓から分泌される「レニン」という酵素は、血圧を上げる作用をもつ「アンジオテンシンⅡ」というホルモンをつくるのに欠かせない物質で、これによって腎臓は、血液量減少や血圧低下という生命にかかわる状態に対応し血圧を一定に保つ手助けをしている。
しかし、腎臓のはたらきが悪くなると、余分な塩分と水分の排泄ができなくなって、血液量は増加し血圧が上がる。さらに、血圧が上がれば腎臓への負担が増え、ますます腎臓の機能が低下するといった悪循環となる。
注:腎臓の傍糸球体細胞で産生されたレニンは、肝臓由来の血中アンジオテンシノーゲンを分解してアンジオテンシンⅠに変換する。
アンジオテンシンⅠは、さらにアンジオテンシン変換酵素(ACE)によってアンジオテンシンⅡに変換される。ACEは肺血管に豊富に存在する。
アンジオテンシンⅡは、全身の血管平滑筋に存在するAT受容体に作用して血管を収縮させ、血圧を上げる働きがある。
さらにアンジオテンシンⅡは、副腎皮質に作用してアルドステロン分泌を促進する。アルドステロンは尿細管に作用してNa再吸収を促進し、その結果、有効循環血液量が増加して血圧が上昇する。
肝臓、肺、 副腎、腎臓、血管平滑筋が協調して、体内のNa量を維持して、血圧のバランスを保っていることが分かる!!!このようなメカニズムが分かってきたので、このシステムを抑制する薬剤が開発できたら、非常に強力な 降圧薬となるわけで、最初にACE阻害薬が開発され、その後アン ジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB) 、アルドステロン阻害薬が登場し、最近ではレニン阻害薬も登場している。最悪の高血圧には、レニンの放出を抑え血圧を下げようという手術もある。
3 長寿と関係がある「リン」という物質の調整をして人間の寿命をも左右する!
動物の寿命は、基本的に体の大きい動物ほど長生きだが、この原則に合わない動物は血液中の「リン(肉や豆類に含まれる大切な栄養素)」が少ないものほど長生きするようだ。しかし、少なすぎると「呼吸不全」「心不全」「骨軟化症」「くる病」などを発症し病気になりやすいそうだ。逆にリンが多いと血管の内側で石灰化が進み、老化が加速し、「骨粗鬆症」「動脈硬化」が進行する。
このリンは、骨が貯蔵庫として管理していて、骨からリンの量についてのメッセージを受けて腎臓が調節しており、腎臓の機能低下でリンの調整機能が低下すれば、老化が一気に進む。
4 多くの臓器と関係があるから腎臓の病気は怖い。
腎臓が弱ると他の臓器も弱る。他の臓器が弱ると腎臓も弱る。
例:心不全⇒流れてくる血液量が減り、血液を大量に必要とする腎臓がダメージを受ける。
急性腎障害が引き起こす可能性がある多臓器不全!
今医学の世界で重要なキーワードがある。心腎連関・肝腎連関・肺腎連関・脳腎連関・腸腎連関・骨腎連関。
海外では、他の臓器が原因で入院している患者の腎臓を手当てすれば、命が助かったケースが多い。他の臓器のための薬が腎臓を通るため、腎臓を傷めつけていたことが分かったらしい。そのため、直接、腎臓と関係のない病気も常に腎臓の状態を監視しながら治療する必要性が叫ばれているようだ。
大量の血液が流れる腎臓は、人体の中で最も多くの薬(化学物質)にさらされる臓器だ。複雑で精緻な仕組みで血液中の成分調整などを行っている腎臓は、ダメージを受けやすい。
本当に必要な薬以外は、安易に薬に頼らないことが必要だと思う。合成化学物質を腎臓がどのように判断し処理しているのか?ということも私には大いに興味があります。