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25/1/23木11:18日本の漁業が「自滅」に向かっていく根本原因 資源管理制度の不備が原因で魚はもっと高額に…

2025-01-23 11:17:26 | 米国株

日本の漁業が「自滅」に向かっていく根本原因資源管理制度の不備が原因で魚はもっと高額に…片野 歩様記事抜粋2025/01/23 7:00

サケ、スルメイカ、シシャモ、ハタハタをはじめ、魚が獲れないという報道を耳にしない年はありません。全国主要漁港の上位10港における水揚げ数量の合計は前年比9%減となっており、2024年度の水揚げ量は、同じ形で統計を取り始めた1956年以来の過去最低数量をさらに下回る見通しです。しかも恐るべきことに、過去最低記録の更新は毎年続いてしまっています。

世界の水産物生産量(漁業+養殖)の日本の順位は、2022年時点で12位まで下がり続けています。1970年代から80年代の約20年にわたって世界1位を長年維持してきたかつての姿はありません。一方で、対照的に世界全体の水産物生産量は、毎年過去最高を更新し続けています。

魚の価格がさらに高くなっていく

こうした状況は、すでにわれわれが日常食べている魚の供給や価格にも大きく影響しています。輸入に関しては、世界全体の需要量が人口増加とともにタイトになることが確実です。このため、自国の水産資源管理の制度を持続可能なものに早急に変えていかねばなりませんが、すでに多くの魚種で危険水域に達しています。SDGs14(海の豊かさを守ろう)の目標からどんどん離れています。

このままでは国内漁獲量が減少して供給量が減り、まず魚の価格がさらに高くなります。そして、これまで価値が低いとされてきた小さな魚でも価格が高くなっていきます。サヨリのように細いサンマが高い値段で販売されていけば魚離れも起きてきます。ただしその原因は、輸入水産物が国際需要の増加による価格上昇とは状況が異なり、わが国の場合は資源管理制度の不備がもたらす自滅です。

政府は魚の資源を回復すべく漁業法改正をはじめとする改革を進めようとしています。本来なら国を挙げて応援すべきなのですが、「魚が減った本当の理由」に関する誤った情報が社会に蔓延しているのが実情です。

このため、本来は科学的根拠に基づく資源管理が実施されれば、最も恩恵を受けるはずの漁業者の方々が反対してしまう事態が起きています。まるで大本営発表のような社会をミスリードする情報を改めていくことが急務です。そのための一助として筆者は発信を続けています。

魚が減ったことを景気に例えると

魚が減り続けている今の状態を企業にたとえるなら、「業績が悪いのは景気が悪いから」と主張しているのとほぼ同じです。もちろん企業業績に景気が影響するのは確かです。しかしながら景気が悪くても、環境の変化に対応して改革して生き残りをかけて必死に努力する。これが生き残っていく企業ではないでしょうか。

景気が悪いという外部要因のせいにする。しかし周りを見渡せば、同じ環境下で好成績を出している企業がたくさんあることを考えると、経営陣の責任が追及されます。ビジネスの世界では当たり前のことで、世界全体では水産業は「成長産業」です。ただし、その前提となるのは資源がサステナブルになっていることです。

景気が悪い(例:海水温の上昇や外国の影響など)という同じ環境下であっても、好成績を維持している企業(例:魚の資源が減っておらず、漁獲量も維持している国々)がたくさんあるのです。1企業(日本)だけでなく、北欧・北米・オセアニアをはじめ他国と比較すると、その問題点がはっきり出ます。

ところが日本では、世界中の水産業の状況を客観的に見ずに、近隣だけのとても狭い範囲であれこれ責任転嫁したり、自画自賛したりしてしまう傾向があります。外国の成功例を「日本は事情が違う」と言って受け入れないのでは、間違った処方箋で薬を飲んでいるのと同じで良くなるはずがありません。しかしそれが、残念ながら全国で魚が獲れなくなっているわが国の実態なのです。

「自主管理」という今までのやり方でよいという耳触りがいい言葉の代償は、全国で魚が獲れなくなって起きている地域社会の崩壊です。しかし漁業者の方々も何かおかしいことに気づき始めました。

それ本当に増えていますか?

ある地域や県でサケが獲れた、スルメイカが豊漁だった、などと報道されることがあります。全国では漁獲量が大きく減っていても、地域によって今年は獲れたという事例があります。個々の事象は事実としても、ミクロではなく、マクロで判断することがとても重要です。

同じ魚種でもがA県で豊漁でもB県では不漁といったケースがあります。これは同じ資源の回遊経路による影響にすぎないことが多いので、あくまでも同じ資源の全体量で考えないと誤解が起きてしまいます。

また漁獲量が激減してしまっているのに、翌年に漁獲量が増加するとその数量に対して「前年比何割増」とか「何倍」と報道されることがあります。これも数字自体は合っていても、実質的な量はまだまだ少ない場合がほとんどです。「豊漁」「大漁」といった言葉の響きはいいかもしれません。しかしながら根本的に、資源管理制度の不備で何もよくなっていないケースばかりです。

昨年(2024年)はサンマの漁獲量が年間約4万トンとなり、前年比58%増と報じられましたがつい10年ほど前かそれ以前の20~30万トンという漁獲量に比べればたいしたことはなく、大漁にはほぼ遠いのです。マスコミも少しずつ、過去に比べて解説するケースが出てきています。そのためにも、本質的なことが理解されるまで、繰り返し発信し続けます。

ギラギラと銀色に光るタチウオは、かつて東シナ海などで大漁に漁獲され、韓国・中国などでも人気の魚です。近年、三陸などで漁獲量が増えているといった報道もあります。確かに増えてはいます。下のグラフをご覧ください。まず右のグラフです。緑の折れ線グラフの宮城県はすごい伸びに見えます。しかしその数量はたったの500トンに過ぎません。

(出所)海洋環境の変化に対応した漁業の在り方に対する検討会

次に左のグラフの赤丸の部分をご覧ください。右のグラフだけでは増えているように見えますが、全体からすると大した数量ではないのです。

さらに下のグラフをご覧ください。上の左のグラフは2003年(H15)からですが、この時期(H15~H19)の1.4~1.8万トンといった数量は、多い数量に見えます。

しかしながら、1950年代からの下のグラフの数量と比べると、ピーク時の1968年の6.8万トンの4分の1程度にすぎないのです。しかも、直近の2023年の全国のタチウオの漁獲量は、5400トンに激減しています。増えたといわれている三陸の分を足してもピークの10分の1以下です。これをもって海水温上昇でタチウオの漁獲量が増えたと言えるのでしょうか。

タチウオには資源管理のための漁獲枠がありません。獲れればお金になるため、漁業者はたくさん獲ろうとします。漁業が仕事なので当たり前です。獲れなくなると、ひものような細いタチウオまで獲ってしまいます。そして最後はほとんどいなくなります。こうした事態は他魚種でも同様ですが、漁業者ではなく、資源管理制度に問題があるのです。

科学的根拠に基づく資源管理が行われていない漁業の末路は同じです。獲りすぎで魚がいなくなってから、海水温上昇や外国などに責任転嫁しても何も解決にならないのです。

どんな魚種が減っているのか

最後に水産資源管理の記事を書いていると、以下のような疑問が寄せられるので回答しておきます。

・どの魚種が減っているのでしょうか?
(回答)上の表でご覧いただくとわかります。10年前(2022/2012)に比べるとほぼ全魚種減っており全滅状態です。マイワシとホタテガイくらいですが、増えている魚種を探すこと自体が困難です。またマイワシは変動が激しいので、過去のデータから数年経つと大きく減り始めます。その時はさらに大変なことになりますが、そう遠くない未来です。

・漁業者が減ったからでは?
(回答)誤りです。実際には資源管理制度の不備で資源量が減り、漁獲量が減って漁業者が減るという悪循環です。漁業者が減って漁獲量が減るという理屈は、沿岸漁業の極々限られた地域ではあるかもしれません。ただし、その数量は全体の漁獲量からすれば、ゼロに近いことでしょう。資源量が同じであれば、減った分は残った漁業者が漁獲できます。資源管理制度が機能しているノルウェーでは漁業者が減っても漁獲量は減少していません。あくまでも漁獲量の増減は、資源量次第なのです。

・消費量が減ったから漁獲量が減っているのでは?
(回答)誤りです。もし価格が高くなって消費が減ったという理由の場合は、資源量が減って漁獲量が減り、その結果で価格が高くなったからではないでしょうか。逆においしい魚が安定した価格で供給されていれば、消費量は減らないのではないでしょうか。どこに問題があるのか? それは水産資源管理制度の不備にあります。

海水温上昇や外国が悪いについてはとても多くのコメントをいただいています。「地球温暖化 科学者が言いたがらない日本の魚の真実」で説明しているように、影響がないとは言いませんが、誤解がとても多いのが現状です。



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