「6時間待ち」を500円でスキップ 飲食店でも「ファストパス」が広がる納得の理由<ITmedia ビジネスオンライン様抜粋記事追加で料金を払えば、長蛇の行列に並ばず入場できる特別なパスがユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)や東京ディズニーランド、東京ディズニーシーのようなテーマパークだけでなく、飲食店にまで広がってきている。飲食店向けのサービスは、レストランの予約・検索サービスや顧客管理システムを展開するテーブルチェック(東京都中央区)が、2月9日に提供を開始した。 【画像】最大6時間待ちの店内と人気の高級ラーメン(全2枚)
「最大6時間待ち」の行列を500円でスキップ
テーブルチェックのサービスを導入したラーメン店「銀座 八五」は水道橋の人気店「中華そば 勝本」がプロデュースした店で、コンソメスープを彷彿(ほうふつ)とさせる、金色のスープが特徴のシンプルな中華そばを提供する。1杯1200円~と強気な価格設定ながら、旧京都全日空ホテル(現ANAクラウンプラザホテル京都)総料理長でフレンチシェフ出身である松村康史氏の高い調理技術で、ミシュランガイド東京において2022~23年版の2年連続で“一つ星”を獲得している。 同店は海外からの人気も高く、席数もわずか6席と少ないことから、これまで「最大6時間待ち」といわれる長蛇の行列が常態化していた。外国人観光客は滅多に日本へやってこない人も多く、行列に並ぶ時間を短縮できれば、もう1~2カ所、例えば築地場外市場や浅草、東京タワーにも足を運べるだろう。つまり、限られた時間を効率的に使えるのなら、多少高い金額を払って並ぶ時間を短縮して良いというニーズがあった。銀座 八五がテーブルチェック・ファストパスを導入した背景には、このような事情があった。銀座 八五を経営する、Food Operation Japan(東京都千代田区)の広報担当者によると、テーブルチェック・ファストパスを使える時間帯は午後に限っているという。現状は、1週間に30の枠があり、毎週土曜日の午前9時に受け付けを開始すると2~3分で枠が埋まってしまう状況にある。テーブルチェック・ファストパスの料金は500円だが、この程度の料金を追加しても行列をスキップしたい人が絶えないということだ。
ラーメンに付きまとう「1000円の壁」
テーブルチェックの広報によれば「テーブルチェック・ファストパスは元々予約を取っていないようなカジュアルな業態を想定しており、6つのラーメン店でスタートした。その後に1店増えて、現在は7店で実施している。基本料金は390円で、500円は最も高額で銀座 八五の1店のみ」とのこと。 年内300店の導入を目指しており、カフェやおにぎり店、ベーカリーなど、長い行列をさばき切れずに近隣住民から通行の妨げになると苦情が出たり、警察が出動していたりするような店にとっては朗報だ。とある行列店の店主からは「1日に提供できる数が決まっているので、行列が長くても売り上げが多くなるわけではない」と聞いたこともあり、生産性の向上につながる。 2月9日、テーブルチェック・ファストパスのサービス開始に伴う記者会見の席上で、テーブルチェックの谷口優社長は次のように語った。 「訪日外国人が日本に最も期待しているのは食事。特にラーメンの人気が高い。ところがラーメンには『1000円の壁』があるといわれている。原材料費・光熱費・人件費が上がっているのに、顧客離れや世間の批判を恐れて値上げができず、廃業するラーメン店が過去最多というデータも出ている。このままでは日本の強みであるラーメンの担い手が減っていく。テーブルチェック・ファストパスが1000円のネガティブな壁を乗り越える一助になればという思いだ」 実際に銀座 八五もかつては1000円の壁を超えられていなかった。銀座 八五をプロデュースした中華そば 勝本は、22年3月に負債総額14億5000万円を抱えて一度倒産している。当時、銀座 八五の「味玉中華そば」は、950円だったと記憶する。コロナ禍による顧客減が原因とされるが、常に行列ができているイメージもあったので、あまりにも意外だった。元々良心的な価格に設定しており、薄利で運営していたのではないかと思われる。その後、Food Operation Japanの傘下で再建され、系列4店ともに、行列店となった。
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