少子化社会における市街地高層高密度団地の活用に関する研究
定行まり子,小池孝子,井本佐保里
日本建築学会計画系論文集 第632号,2033-2039,2008年10月
1.背景と目的
1960年代後半から70年代にかけて,都市部では工場の移転に伴う跡地を利用して高層高密度団地が次々と建設された,都市再生機構によれば,1965年以降に建設した団地は建て替えを行わず,順次リニューアルを進めていく方針である.少子高齢化が予想される高層高密度団地を対象に,店舗や地域施設・オープンスペースの転用の履歴を追跡し,これらの共用空間が建設当初から現在までに,団地や地域の中でどのような役割を果たし,特に子供の住環境という観点から市街地高層高密度団地の存在意義,今後の役割を問いたい.
2.調査概要
調査対象となった団地の図面を収集し,住宅管理センターへの聞き取り調査及び現地に赴き,共用空間の機能変化,施設の用途変化を観察,子供の施設利用の観察を調査し,記録した.また施設利用者及び施設長へのヒアリング,アンケート調査を実施.さらに団地ごとの人口変化を知るために統計局に保管されているデータを収集し,分析した.
3.団地共用空間転用の変遷
団地は少子高齢化が急速に進む中でも,子ども施設への転用が建設当初から現在に至るまで目的や対象者を変えながらも常に繰り返されて,子ども施設は団地内に絶えず設置され続け,そしてそのほとんどが存続していることが明らかになった.
4.団地内における子ども施設の特徴
4-1子ども施設の利用者は,徐々に団地内から団地外住民へ変化してきており,少子化の進行が著しい団地においても,団地内住居者から地域住民へと対象を変化させながら運営され続けていることが明らかになった.
4-2団地内には豊かな屋外広場が確保されており,子ども施設は公園や施設周辺のオープンスペース等を活用して保育を行っていることが判明し,市街地では得にくいこれらの広場や子ども施設が存在することで,団地の地域の子どもの居場所として有効に機能していることが確認された.
4-3団地自治会等との連携によりイベントは常に子どもで賑い,施設に通うことをきっかけに休日も団地に遊びに来る子どもも多く,子ども施設の存在が団地に賑いをもたらしていることが確認された.
5.まとめ
子ども施設は団地活性化において重要な存在で,地域の活性化にとっても非常に有効である.施設間や自治会との連帯を強めるといった配慮も重要である.
6.感想
子ども施設と地域との関係について,詳しく調べてみたいと思った.
横井 玲伊
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