園児の関係構築と共存する遊び集合についての考察
~園児の社会性獲得と空間との相互関係に関する研究 その1~
佐藤将之、高橋鷹志
日本建築学会計画系論文集 第562号,151-156,2002年12月
1) 研究背景・目的
子ども達は種々の人間集団の中で社会性を獲得していく。そして近年、生活の中での遊び場の減少社会進出する女性の増加など、社会や教育の変化により、保育施設は、一段と重要性を増してきている。子どもの遊び環境に関する研究もこういった社会的な変化を捉えた上で、新たな環境の視点を加えていく必要がある。
ここで本研究では、自他が接点を持つ遊び場面に着目し、一人から集合まで、遊びが発展していく中で生まれる関係、つまり、社会的環境における関係を分析することで、園児の社会性獲得と物理的環境の相互関係について考察することを目的とした。
2) 調査概要
3歳児から5歳児までを調査対象年齢とし、保育室・遊戯室・園庭という3つの主な場所に関して、空間構成を異にする、3幼稚園、6保育園、1幼稚舎で調査を実施することとした。
調査方法は基本的に、ビデオを用いた参与観察だが、特に①集合へと関わっていく園児、②集合から離脱する園児に注目して調査を行った。
3) まとめ
遊び集合は、園児たちが、人(社会的環境)が通る場所、建築的仕掛け(物理的環境)を始めとした、空間の要素を選択することで、形成され、そしてそれらの集合(社会的環境)自体が要素となり、さらに集合が発生していた。
本編で園児たちは、環境を把握することで、社会性を獲得していることがわかった。
他者との関係を構築することで、物理的環境との関係が進展し、その中でさらなる新しい行為が生まれていた。そして、遊び場面は、周りで行われているものと相互比較・競争することで、展開・多様化していた。そのような、遊びの流れの中で、無意識に園全体を把握しているのである。
全体像を把握することは、自分以外の存在を認識することであり、他の遊びを自分たちの遊びの一部として
取り入れたり、他の遊びを活性化させたりすることにつながるのである。そして時には呼びかけ合うことで、自他の存在を確認することが、意識の中での関係構築となると同時に、遊びを展開していく上での環境の選択肢となる可能性を保有するようになるのである。
4) 感想
集合同士の関係の観察から、園児にとって、全体を把握することが、遊び選択の要素になり、新しい遊びの創造につながるという考察が面白いと思いました。
黒巣光太郎
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