子どもの行為からみた商業施設の利用特性に関する研究
深澤千賀子,仙田満,中山豊,井上寿,山崎純
日本建築学会大会学術講演梗概集 (近畿)2005年9月
1.背景と目的
商業施設は,成長段階における子どもにとって,遊びを通じた社会体験(消費活動)の場である。商業施設における子どもの行為の類型化により,形態の異なる商業空間の利用特性を明らかにし,子どもの視点からみた商業空間のあり方を考察する.
2.研究の調査方法
全国から抽出した41小学校の4~6年生(計3537名)にワークショップ形式の調査を行った。①遊び場として利用する商業施設を地図上に指摘してもらう.②そこでの遊びの内容について回答もらう.
全国調査をもとに,首都圏の商業施設4ヶ所において,観察およびインタビュー調査を行い,行為グループ人数と時間,施設の魅力等に関する回答を得た。
商業施設における子どもの行為を意識パターンと行動パターンから7つに類型化した .意識パターンからみると,消費系・利用系が94%,多目的系が6%であった.すなわち,ほとんどの行為が商品を意識したものとなっている.男女別にみると消費系の割合は男子より女子に多く,利用系の割合は男子に多い.また滞留系の行為は男子に多く,直帰系の行為は女子に多く,その大部分が買い物型である.
3.遊び場としての商業施設
「遊びとして商業施設をあげた子ども」と「商業施設が遊び場の中で一番好きだと回答した子ども」は男女ともに高学年ほど高い,また,全学年通して,女子の方が多い.
4.商業施設におけるあそび人数,時間
平均グループ人数は,1.5人~2.5人で,時間については,滞留系の行為より,回遊系の行為に要する時間が長い.また,消費系より,利用系・多目的系に要する時間が長い.特にウインドウショッピング型の行為は平均65分と突出している。また滞在時間は施設規模との関係が認められ,滞留時間は施設における行為の種類に関連があると考えられる.
5.インタビューを通しての子どもが感じる商業施設の魅力
Sセンターは商品と店員の魅力が高い。それは多様な商品とゲーム,希薄な管理意識により,子どもが自由に行動しやすいためである.Yショップではすべての指標が低い.商品の専門性が高く,買い物が目的化しているためと考えられる.A駄菓子店は店員と友人といった人的な魅力が高い.交流が魅力の一つとなっているからである.M商店街は,居心地や店員の魅力が少ないが,商品と多様性の魅力が高い.これは多様な商店が集まり,回遊系の行為を楽しめるからである.
6.まとめ
回遊系,滞留系の行為パターンや多様な意識パターン,また店員やその他の利用者との適度な交流が子どもにとっての商業空間の魅力であると指摘できる.
7.感想
子どもたちにとって商業施設が魅力的な場所ならば,そこをこれからどんどん社会性を形成していける場として環境改善していける余地があるのではないだろうかと思った.
横井 玲伊
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