障がい者福祉施設の災害対応に関する調査
―福祉避難所としての対応と平常時における災害への準備の観点から―
外間 正浩
日本建築学会大会学術講演梗概集(東北) 2009年8月
1 研究の目的
本研究では、水害の被災市町村における障がい者福祉施設に勤務する職員(支援者)に対する調査の結果から、福祉避難所としての対応および平常時の災害対応活動や意識についてまとめ、報告するものである。
2 概要
平成19~20年に発生した水害で避難情報が発令された市町村のうち、対象世帯数が400世帯以上、浸水棟数が100棟以上、あるいは死者が発表されている市町村に所在する、福祉施設などに勤務する人たちである。2008年9月~2009年2月下旬までで、35の市町村から110人から回答を得た。
3 調査方法
WEBもしくは紙によりアンケート調査を行った。
4 結果
1)福祉避難所の対応状況
「福祉避難所として活動している」と回答した人は21.1%で「検討中」が8.3%、「知らない・していない・検討したが見送っている」を合わせると7割にも及んだ。
2)平常時の取り組み
「緊急連絡先の確認」が最も多く55.5%「避難訓練」が50%となった。その一方「ハザードマップの確認」が5.5%と非常に低い。
3)マニュアルなどの整備状況
「直近の水害前から策定していた」が42.7%と一番多い。しかし「水害後も策定していない」は21.8%であり、「水害後に策定・検討中」と合わせた23.6%とほぼ同数となっている。
4)災害対応に関するなんらかのネットワークへの参加
「参加していない」が46.4%と一番多い。
5 まとめ
今回回答した施設は水害を中心とした災害の非難情報発令対象地域に所属するか、その近隣地域に所在するもののいずれかであったにもかかわらず、福祉避難所としての活動対応への意識は高いとは言えない。また、避難訓練の有無、災害時対応マニュアルに関しての設問で、「分からない」との回答もあった。こういった結果の背景にはマンパワーの不足、ノウハウの不足等が理由としてあげられると推測する。非常時の特別な体制整備は、福祉施設に過大な負担を課すことになり、実効性のある要援護者支援体制の構築を阻害する要因にもなりかねない。災害対応体制の構築にあたって改めて工夫が求められている。
6 感想
実際に災害が起こっているのにもかかわらず、対策をしないという人々の意識に疑問を感じている。数年たった今の日本で、こういった意識がどう変化しているか、興味を持った。
(副島 眸)
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