建築・環境計画研究室 (山田あすか)

東京電機大学未来科学部建築学科

細川俊子,他:異年齢保育における保育室の空間構成と室内構成と室内遊びでの異年齢交流での実態の研究

2011-02-21 23:06:32 | 書架(こども関係)

「異年齢保育における保育室の空間構成と室内構成と室内遊びでの異年齢交流での実態の研究」                    

日本建築学会計画論文集 第73回第634
2526~2527 2008年12月
細川俊子 積田洋  青木健三



1.研究目的・背景

 近年子どもを取り巻く社会的変化から、社会性を獲得していく為の子ども同士がお互いに心を育てる場が失われつつある。子ども達が年齢の枠を超え自発的な活動できる保育環境として、「異年齢保育」が注目されている。本研究では、異年齢保育がおこなわれている保育園での行動や実態を把握し、プランタイプが異なる保育園を対象としている。そして空間や設えの関係性を一緒に観察し、異年齢の交流を誘発する空間的な要因となるものを抽出し、異年齢保育を行う保育園の施設計画となる指標となる知見を得ようとするものである。

2. 研究方法

 2‐1調査対象
 幼児の保育室が3クラスで構成されたプランタイプで、年齢別クラス編集成と、異年齢クラス編成の園で事前調査を行い、保育形態の違いによる部屋の使われ方の違いを分析した。
 2−2調査方法
 聞き取り調査と行動観察調査の2つで行う。

 聞き取り調査では、施設長又は主任保育士に対し�既存校舎の成り立ち、�保育園の運営、�異年齢を始めた動機、�保育形態、�異年齢をはじめた事による園児の精神面での成長、�異年齢保育にあたり園舎の改修状況など、移行に伴う環境づくり、�生活習慣に係わる部屋や備品の使われ方、�実際の使われ方など。



3.研究結果・考察

 3‐1聞き取り調査
 各園で共通して移行理由としてあげているのが、子供を取り巻く社会環境の変化である。子ども達の社会性を養う為に異年齢保育へと移行している。また、障害をもつ子どもが自然に溶け込める環境作りを目指して移行した例もある。
 3−2異年齢で構成された行為の割合
 時間帯に関係なく交流が行われており、時間帯による特色は見られなかった。また園児は3~4人程度の、まとまった人数で6人掛けのテーブルを利用している。
 3−3室内遊びの場
 共有スペースは交流や絵本読むなどの共有スペースを利用している。またビオトープを備えた中庭は通路として利用されている率が高く、視覚的な安らぎを与える空間ではあるが園児の利用は少ない。そして壇上や床、違う高さを利用したふれあいや遊びの行為を行われている。
 3‐4コーナーの設置
 コーナーの役割として、遊びを設定する為のものでは無く、3~4人、5~6人で構成された異年齢の遊びの集団のための場を構成している。またコーナーの周辺や内部には高さの違う一人掛けや二人掛けの机が配置され、異年齢が年齢にあった難度で同じ作業を行っている。
3−5什器・家具
園児の遊びの場を形成する場として、壁・棚・収納壁・衝立が挙げられる。衝立の高さは約60�で、棚の高さが各園平均で約50�~70�である。保育園の中で、誰がどのような事をして遊んでいるか情報を収集できるので、年少者が年長者の遊びを観察したり、年長者が年少者に手を貸したりと、異年齢交流を促せる要素として考えられる。また、保育士の立場からも、園児の一人一人を見守ることが大切な異年齢保育においては、部屋全体の様子が把握できることは重要な要素である。

4.まとめ
子どもが遊びも自由に選択できる時間の室内あそびにおいて、全体を平均すると約50%の割り合いで異年齢間の交流がみられる。最低3~4人が遊べるスペースがあると異年齢の交流も行われやすい。共有スペースでは、遊びの種類の棲み分けを行うことで遊びの場が広がり選択肢が増し、異年齢の交流を促せる。隣接する遊戯室や共有スペースでの活動多くは見られなかった。そして、保育士が遊びに関与しない事例が全体の80%をしめ、園児の自主的な遊びが行われている事が実証された。室内遊びにおいては、自由な異年齢の交流が行われる事が分かった。また、クラス間の壁面をなるべく作らない計画が、クラス間の交流には有効な手段である事が分かった。

5. 感想
 異年齢で交流する事で、年長者・年少者それぞれに影響を及ぼす事が分かった。また園児はほとんど自主的に活動をしている。その活動を促す為にも、遊びの場所や家具などを設置してあげる事が大事という事が分かった。




(千葉 紗央里)


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