小さな旅を愉しむための情報PLUS

生活圏での小さな旅を愉しむために、暮らしの歴史に目を向けた情報発信を目指します。

オーバーツーリズムは世を覆う

2024-12-01 22:00:00 | 海外旅行


雑然と観光客で埋め尽くされたベネチア
「サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂」
オーバーツーリズムは世を覆い、地域の人々の暮らしを妨げ、かつては旅人がこころを委ねた旅愁を奪い取っている。私たちは、旅情を打ち捨てたあたらしい旅のかたちに、ハマっていくことになるのだろうか。

観光客で溢れかえるローマ「スペイン広場」

足の踏み場もないローマ「トレビの泉」


「諏訪大社上社本宮」と「諏訪大社下社秋宮」の「阿像(獅子)」と「吽像(狛犬)」

2024-11-17 19:00:00 | 神社仏閣
▶「諏訪大社上社本宮」北参道「大鳥居」脇には、「諏訪郡永明村」(現在の「茅野市」)に生まれた彫刻家「矢崎虎夫(やざきとらお)」(1904/明治37年7月25日~1988/昭和63年9月24日)の制作による「阿像(獅子)」と「吽像(狛犬)」が置かれている。氏は、「高村光雲(たかむらこううん)」門下「平櫛田中(ひらくしでんちゅう)」に師事、渡欧してキュビスムや黒人彫刻の影響を受け独自のスタイルを生んだといわれる「オシップ・ザッキン」(1890~1967)に師事して、仏典や歴史に取材した作品を多く手がけたという。

1985(昭和60)年に奉献された「空想上の守護獣像」は、向かって右の口を開いているのが「阿(あ)像」の「獅子(しし)」、左の口を閉じているのが「吽(うん)像」の「狛犬(こまいぬ)」だが、現在は「獅子と狛犬」という呼称が消えて、両者合わせて単に魔除けのために置かれる像「拒魔犬(こまいぬ)」から「狛犬」(空想上の動物で「犬」ではない)という言い方が定着して来ているという。
起源は古代オリエントの「スフィンクス」まで遡るといわれるが、ガンダーラを経由して中国に入り、遣唐使が我国に持ち帰って、対の獅子像が寺院山門の仁王像の影響を受け、平安時代までに「獅子と狛犬」という独自の「阿吽」形式に変わったのではないかと言われているそうだ。


▶「諏訪大社下社秋宮」の「神楽殿」正面両脇に従う「獅子と狛犬の像」は、諏訪郡原村出身で「日本芸術院会員」「文化功労者」だった「清水多嘉示(しみず たかし)」(1897/明治30年7月27日~1981/昭和56年5月5日)による1960(昭和35)年制作の作品だ。氏は、近代彫刻の父といわれる「François-Auguste-René Rodin(フランソワ オーギュスト ルネ ロダン)」(1840年11月12日~1917年11月17日)の助手をつとめて後継者と目されたフランスの彫刻家「Antoine Bourdelle(アントワーヌ ブールデル)」(1861年10月30日~1929年10月1日)に師事して、我が国戦後の具象彫刻をリードした一人だといわれている。
形式を追うに過ぎず皮相の見と言われても仕方のない「獅子と狛犬」が世に多く溢れる中で、氏がここ「諏訪大社下社秋宮」に奉献した「獅子と狛犬の像」は、動と静の「阿像」「吽像」に生命の気迫をみなぎらせて、まったく別次元に仕上げた作品として置かれる。






霧ヶ峰湿原植物群落(七島八島)🙂😐😐早くも晩秋の冷気につつまれている

2022-10-22 18:00:00 | 四季




「この道や 行くひとなしに 秋の暮れ」 松尾芭蕉
標高約1,600メートルの高層湿原「八島湿原」(諏訪郡下諏訪町東俣)は、早くも晩秋の冷気につつまれている。立ち枯れてひろがる湿原植物や亜高山植物は、立ち枯れてなお、繊細な花を咲かせて酷暑での暮らしを癒してくれた夏の時間を、思い起こさせてくれる。


 ❖ 八島湿原   再掲(写真は更新)  
「八島湿原」(諏訪郡下諏訪町東俣)は、標高約1,600メートルに位置する高層湿原で、国内高層湿原の南限にあたる。
◇ ◇ ◇
約12,000年前に誕生したという面積約3,000ヘクタールの同湿原は、1939(昭和14)年に国の「天然記念物」に指定されているが、寒冷地のため植物の腐敗と分解がしにくく、約8メートルの厚さとなった泥炭層が堆積しているという。
◇ ◇ ◇
周辺の森林化や降雨量減少による乾燥化、水生植物繁茂や土砂の流入などによって、湖沼は面積の後退が続いているが、一帯は繊細な花を咲かせる湿原植物や亜高山植物、過酷な環境の中でいのちを繋ぐ昆虫などに接することが出来る癒しの環境が広がっている。
◇ ◇ ◇
周辺からは「富士山」「八ヶ岳」「中央アルプス」「南アルプス」などへの眺望が開けている。
◇ ◇ ◇
高原中央部の「御射山遺跡(みさやまいせき)」は、鎌倉幕府が全国の武将を「諏訪大社下社」の「御射山祭」に参加させて祭事を執行し、一帯で武芸を競わせたりした場所で、階段状の地形は桟敷だったと考えられるという。





 ❖ 松尾芭蕉 
江戸時代前期の俳諧師「松尾芭蕉(まつお ばしょう)」(1644/正保元年~1694/元禄7年)は、伊賀国上野(現在の三重県上野市) 出身、俳号ははじめ「宗房」のち「桃青」、「芭蕉」「はせを」の号ははじめ庵号に由来する戯号で、改まった場合には「桃青」「芭蕉桃青」「武陵芭蕉散人桃青」と署名したという。
◇ ◇ ◇
句は「佐久間柳居/長利(さくま りゅうきょ/ながとし)」(1686/貞享3年~1748/延享5年)編集の俳諧連句撰集「俳諧七部集(はいかいしちぶしゅう)」(「冬の日」「春の日」「曠野(あらの)」「ひさご」「猿蓑(さるみの)」「続猿蓑」「炭俵」)に収められ、ほかに紀行文「笈の小文(おいのこぶみ)」「野晒紀行(のざらしきこう)/甲子吟行(かっしぎんこう)」「奥の細道(おくのほそみち)」などを残した。
◇ ◇ ◇
我が国俳諧史上最高の俳諧師の一人と評価されている。

霧ヶ峰湿原植物群落(七島八島)🙂😐😐すでに「秋」がはじまっている

2022-08-28 18:00:00 | 四季




「処暑」を過ぎても厳しい暑さの毎日だが、標高約1600mの「八島湿原」は、すでに「秋」がはじまっている
◇ ◇ ◇
「匂宮」が「藤袴(ふじばかま)」「吾亦紅(われもこう)」など秋の花に関心を寄せる「源氏物語 巻42『匂宮』」の記述「御前の前栽にも、春は梅の花園をながめたまひ、秋は世のめづる女郎花、小牡鹿の妻にすめる萩の露にもをさをさ御心移したまはず、老いを忘るる菊に、おとろへゆく藤袴、ものげなきわれもかうなどは、いとすさまじき霜枯れのころほひまで思し棄てずなどわざとめきて、香にめづる思ひをなん立てて好ましうおはしける。」 を思い出しながら、枯れ色の秋へと移り行く時間の中で、命の終わりを静かに待つチョウたちの舞う姿を眺めた。






 ❖ 八島湿原   再掲(写真は更新)  
「八島湿原」(諏訪郡下諏訪町東俣)は、標高約1,600メートルに位置する高層湿原で、国内高層湿原の南限にあたる。
◇ ◇ ◇
約12,000年前に誕生したという面積約3,000ヘクタールの同湿原は、1939(昭和14)年に国の「天然記念物」に指定されているが、寒冷地のため植物の腐敗と分解がしにくく、約8メートルの厚さとなった泥炭層が堆積しているという。
◇ ◇ ◇
周辺の森林化や降雨量減少による乾燥化、水生植物繁茂や土砂の流入などによって、湖沼は面積の後退が続いているが、一帯は繊細な花を咲かせる湿原植物や亜高山植物、過酷な環境の中でいのちを繋ぐ昆虫などに接することが出来る癒しの環境が広がっている。
◇ ◇ ◇
周辺からは「富士山」「八ヶ岳」「中央アルプス」「南アルプス」などへの眺望が開けている。
◇ ◇ ◇
高原中央部の「御射山遺跡(みさやまいせき)」は、鎌倉幕府が全国の武将を「諏訪大社下社」の「御射山祭」に参加させて祭事を執行し、一帯で武芸を競わせたりした場所で、階段状の地形は桟敷だったと考えられるという。




 ❖ 霧ヶ峰   再掲(写真は更新)
「八ヶ岳中信高原国定公園」に指定されている火山で、主峰「車山」から噴出したという溶岩により広がった大規模な高原をいう。火山活動は「八ヶ岳連峰」とほぼ同時期の約140万年前からで、現在のような地形になったのは約30万年前と言われている。
◇ ◇ ◇
「亜高山帯針葉樹林」境界付近の存在で、例年5月下旬「コバイケイソウ/小梅蕙草」、6月中旬「レンゲツツジ/蓮華躑躅」、7月中旬「ニッコウキスゲ/日光黄菅」(ゼンテイカ/禅庭花)、8月には「マツムシソウ/松虫草」などが見ごろを迎える。

 ❖ 源氏物語 
平安時代中期に成立した全五十四帖からなる長編物語で、日本古典文学の最高峰と評価されている。
◇ ◇ ◇
作者は、「一条(いちじょう)天皇」の中宮「彰子(しょうし)」(「藤原道長(みちなが)」長女)に女房として仕えた「紫式部(むらさきしきぶ)」というのが通説で、夫「藤原宣孝(のぶたか)」に死別した1001年(長保3)から、中宮「彰子」のもとに出仕した1005あるいは1006(寛弘2あるいは3)年までの間に起筆し、「藤原道長」の支援の下で物語を書き続けたと推定されている。
◇ ◇ ◇
王朝文化最盛期の宮廷貴族の生活を克明に描きながら、時の「桐壺帝(きりつぼのみかど)」を父とし「桐壺更衣(きりつぼのこうい)」を母として生まれた主人公の「光源氏(ひかるげんじ)」が、「葵上(あおいのうえ)」「夕顔(ゆうがお)」「紫上(むらさきのうえ)」などの女性たちと交渉をもち、また父帝の中宮藤壺(ふじつぼ)」との恋に苦悩しながらも、運命に導かれて栄華をきわめる姿を、約70年にわたって構成している。最後の「宇治十帖」と称される10巻は、「薫大将(かおるだいしょう)」(「光源氏」の二男とされるが実は「光源氏」の妻「女三の宮/おんなさんのみや」と「柏木右衛門督/かしわぎ うえもんのかみ」との不義の子)と宇治の「浮舟(うきふね)」の恋愛を描いている。
◇ ◇ ◇
源氏物語」五十四帖の巻名のひとつ「巻42『匂宮』」は、「光源氏」の子孫とその縁者の後日談を描く。登場人物「匂兵部卿宮(におうひょうぶきょうのみや)」の通称(におうのみや)」は、今上帝「冷泉院(れいぜいいん )」の第三皇子、母は「明石中宮(あかしのちゅうぐう)」(「光源氏」の娘)で、光源氏の孫にあたる。容色、才能ともにすぐれた情熱的な貴公子で、「薫大将」とともに「宇治十帖」の中心人物として描かれている。

霧ヶ峰湿原植物群落(七島八島)🙂😐😐心地よい風の渡る夏がはじまっている

2022-07-17 18:00:00 | 国内旅行

史上最短での「梅雨明け」で、夏の水不足は心配されるが、ここ標高約1600mの高層湿原では、「シシウド/猪独活」「ヤナギラン/柳蘭」が開花しはじめるなど、夏の「八島湿原」がはじまっている。


 ❖ 八島湿原 
「八島湿原」(諏訪郡下諏訪町東俣)は、標高約1,600メートルに位置する高層湿原で、国内高層湿原の南限にあたる。
◇ ◇ ◇
約12,000年前に誕生したという同湿原は、1939(昭和14)年に国の「天然記念物」に指定されているが、面積は約3,000ヘクタールで、寒冷地のため植物の腐敗と分解がしにくく、約8メートルの厚さとなった泥炭層が堆積しているという。
◇ ◇ ◇
周辺の森林化や降雨量減少による乾燥化、水生植物繁茂や土砂の流入などによって、湖沼は面積の後退が続いているが、一帯は繊細な花を咲かせる湿原植物や亜高山植物、過酷な環境の中でいのちを繋ぐ昆虫などに接することが出来る癒しの環境が広がっている。
◇ ◇ ◇
周辺からは「富士山」「八ヶ岳」「中央アルプス」「南アルプス」などへの眺望が開けている。
◇ ◇ ◇
高原中央部の「御射山遺跡(みさやまいせき)」は、鎌倉幕府が全国の武将を「諏訪大社下社」の「御射山祭」に参加させて祭事を執行し、一帯で武芸を競わせたりした場所で、階段状の地形は桟敷だったと考えられるという。


 ❖ 霧ヶ峰   再掲(写真は更新)
「八ヶ岳中信高原国定公園」に指定されている火山で、主峰「車山」から噴出したという溶岩により広がった大規模な高原をいう。火山活動は「八ヶ岳連峰」とほぼ同時期の約140万年前からで、現在のような地形になったのは約30万年前と言われている。
◇ ◇ ◇
「亜高山帯針葉樹林」境界付近の存在で、例年5月下旬「コバイケイソウ/小梅蕙草」、6月中旬「レンゲツツジ/蓮華躑躅」、7月中旬「ニッコウキスゲ/日光黄菅」(ゼンテイカ/禅庭花)、8月には「マツムシソウ/松虫草」などが見ごろを迎える。


 ❖ シシウド/猪独活 
本州や九州などの高地の草原に生えるセリ科の多年草で、茎は高さ1~2メートルになる。根は「ドッカツ/独活」と呼ばれ、掘り起こした根を洗浄し陰干して、頭痛薬や薬酒として用いるが、「シシウド属」は、古くからヨーロッパを中心に薬用・食用のハーブとして用いられているという。

 ❖ コバイケイソウ/小梅蕙草 
本州中部地方以北から北海道の亜高山帯の湿地などに分布し、ユリ科シュロソウ属に属する多年草で、高さは1mほどになる。和名は、花が「ウメ/梅」葉が「ケイラン/恵蘭」に似ていることに由来するという。
◇ ◇ ◇
アルカロイド系の有毒成分を持ち、誤食すると嘔吐や痙攣を起こし、血管拡張・血圧降下から重篤な場合死に至るという。

 ❖ ヤナギラン/柳蘭 
本州中部以北の亜高山帯などの草地や礫地に広く分布し、7~9月に4弁の赤桃色の花を開花する多年草で、田中澄江は著書「花の百名山」で霧ヶ峰を代表する花のひとつとしている。和名は葉が「ヤナギ/柳」に似ていて、花を「ラン/蘭」にたとえたことに由来するというが、海外種も含めて山野草として、流通している。

 ❖ ノアザミ/野薊 
本州から九州の山野や河川敷などの日当たりのよいところに自生するキク科アザミ属の多年草で、5~8月に赤紫色や淡紅色などの花を咲かせる。若い茎は山菜として食用になり、油炒めや煮物に調理して食べられるという。

 ❖ ノリウツギ/糊空木 
北海道から九州の山野に自生する樹高2~3メートルのアジサイ科の落葉広葉樹で、和紙を漉く際の糊に樹液を利用したことからこの和名がついたという。7~8月に開花するが、多くの人が花と思う白または淡紅色の花弁4枚は装飾花の萼片で、枝先に白色の小さな両性花が円錐状に多数つく。
◇ ◇ ◇
「ノリウツギ/糊空木」の園芸種として流通する「ミナヅキ/水無月」「ライムライト/ピラミッド紫陽花 」はほとんどの部分が装飾花で、原種の「ノリウツギ」が「ガクアジサイ/額紫陽花」に似て素朴な雰囲気であるのに対して、園芸種の「ノリウツギ」は華やかに見える。