〈また〉 里の雨は、山の雪。南アルプスや中央アルプスの山々が錦繍に包まれる中で、主稜線に連なる峰々はすでに冬の姿を見せ始めている。
❖ 木曽山脈(中央アルプス)
長野県の木曽谷と伊那谷を眼下に南北に連なる山脈で、「飛驒山脈(北アルプス)」「赤石山脈(南アルプス)」とともに日本アルプスと呼ばれる。最高峰は「木曽駒ヶ岳」(標高2,956メートル)で、2020(令和2)年3月27日「中央アルプス国定公園」に指定されたが、「飛驒山脈(北アルプス)」は1934年(昭和9年)12月4日「中部山岳国立公園」に、「赤石山脈」は1964年(昭和39年)6月1日「南アルプス国立公園」に指定されている。
❖ 木曽駒ヶ岳
深田久弥「日本百名山」、岩崎元郎「新日本百名山」、田中澄江「花の百名山」に選定されている「木曽山脈(中央アルプス)」の最高峰(標高2,956メートル)で、「木曽前岳」(標高2,826メートル)「中岳」(標高2,925メートル)「伊那前岳」(標高2,883メートル)「宝剣岳」(標高2,931メートル) を含めて「木曽駒ヶ岳」と総称する場合もある。伊那谷側では「駒」「島田娘」「種蒔き爺」などいくつかの雪形が見られ、農事暦として農耕の目安に用いられて来たという。高山植物の花畑が広がる「千畳敷カール」(標高2,650m)へは、「駒ヶ岳ロープウェイ」で簡単に登ることができる。
❖ 空木岳
「空木岳(うつぎだけ)」(標高2,864メートル)山頂一帯は花崗岩の岩場とその砂礫地だが、「木曽山脈(中央アルプス)」では「木曽駒ヶ岳」(標高2,883メートル)に次いで標高の高い山で、深田久弥「日本百名山」に選定されている。伊那谷側から春の残雪を眺めると、頂上だけが満開の「卯木(ウツギ)」の花のように美しく残って見えることから、山名になったと言われている。
❖ 南駒ヶ岳
岩場の山として人気があるという「南駒ヶ岳(みなみこまがたけ)」(標高2,841メートル)は、木曽山脈の主稜線にあって、北の「空木岳(うつぎだけ)」から南の「越百山(こすもやま)」(標高2,614メートル)へ続く南北の縦走ルートになっているが、雪形「五人坊主」は、古くから農事暦として農耕の目安に用いられて来たという。また、稜線下に広がる「摺鉢窪カール」縁で、現在も山肌が大きく崩れ落ちる「百間ナギ」と呼ばれる大規模崩落地を抱えている。南に仙涯嶺(せんがいれい)」(標高2,734メートル)が連なり、「摺鉢窪カール」北には「赤椰岳(あかなぎだけ)」(標高2,798メートル)と、さらに「田切岳(たぎりだけ)」(標高2,730メートル)が連なる。
❖ 赤石山脈(南アルプス)
「長野県」「山梨県」「静岡県」に連なる山脈で、我が国第2位の高峰「北岳」(標高3,193メートル)や山脈名来由の「赤石岳」(標高3,121メートル)など9つの3,000メートル超峰があって、10の山が「日本百名山」に選定されている。「赤石山脈(南アルプス)」の山容は、険峻な「飛驒山脈(北アルプス)」に対し、なだらかな山が多いとされるが、比較的新しい隆起で浸食が進んでいないためだと考えられているという。現在も世界有数の年間4ミリメートルほどの隆起速度で隆起が続いているという。
❖ 赤石岳
深田久弥「日本百名山」、岩崎元郎「新日本百名山」に選定されている長野県と静岡県にまたがる標高3,121メートルの山で、山名は山体を構成する「ラジオラリア板岩(赤色チャート)」に由来すると言われるが、南アルプスの山脈名「赤石山脈」来由の山でもある。南アルプスでは、「富士山(ふじさん)」(標高3,776メートル)に次ぐ高峰「北岳(きただけ)」(標高3,193メートル)や「間ノ岳(あいのだけ)」(標高3,190メートル)「悪沢岳(わるさわだけ)」(標高3,141メートル)に次ぐ標高だが、国内では氷河の痕跡がある最南端の山で、北の「小赤石岳(こあかいしだけ)」(標高3.081メートル)から「赤石岳(あかいしだけ)」(標高3,120メートル)の山頂にかけて森林限界のハイマツ帯で、高山植物のお花畑が広がり、ライチョウの生息地としても知られている。
❖ 荒川岳
「荒川岳(あらかわだけ)」は、深田久弥が「日本百名山」に数える「悪沢岳(わるさわだけ)/東岳(ひがしだけ)」(標高3,141メートル)と南に連なる「中岳(なかだけ)」(標高3,083メートル)「前岳(まえだけ)」(標高3,068メートル)の「荒川三山」とも呼ばれる三つの山の総称で、一帯は氷河によって削られた地形であるカール(圏谷)が数多く見られるが、山頂にかけて森林限界のハイマツ帯で、高山植物のお花畑が広がり、ライチョウの生息地としても知られている。