死にぎわののぞみ
せめてもう 罪を犯さずに 死にたいと思う
しかし やがてその死ぬ時に
罪を犯せなかった人生を
きっと悔いるだろうとも 思うのだ
せめてもう よいことは出来なくても
悪いことはせずに 死にたいと思う
しかし やがてその死ぬ時に
悪いことが出来なかった人生を
きっと 死ぬほど悔いるとも 思うのだ
つくづく 人は 危ういところに居るものだ
老人になって やっと そのことに気付く
あっちに転ぶか こっちに転ぶか
その危ういところを 毎日毎日 やり過ごして来た
今あることが とてつもない幸いの
積み重ねだったような 気がする
そして 次の瞬間には
とんでもない災いが 待っているような気がする
それは 大いに自分の心がけに 関わっている
よいことは出来なくても
せめて 悪いことをしないで死にたい
しかし 死ぬまで
悪いことをしないでいられる自信がない
死ぬ時になって
その時 神が目の前に顕われ
何か 心残りがあるかと問われ
それを かなえてくれると言ったら
僕は 復讐とあらゆる悪事を
思い浮かべるだろう