A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

有名になることがいつも幸せとは限らない・・・・・

2012-05-06 | CONCORD
Cross Country / Cal Collins

古めかしい蒸気機関車をバックに、ギターを片手のカルコリンズ。彼にはお似合いの絵柄だ。

シンシナティーでローカルな活動をしていたコリンズがベニーグッドマンに見出されたのが’76年。翌年にはジェファーソンの目(耳)に留まりConcordへ登場して4年目になっていた。デビュー作を含めて、最初はコリンズのギターを生かすトリオの演奏であったが、いつのまにかコンコルドのオールスターズに加わり世界を股に駆けて活動するようになっていた。ギター一本に賭けて長年ローカルで生活をしていたコリンズにとって、オールスターズでの活動はきっと嬉しくもあり反対にストレスの溜まるものであったのかもしれない。

それを察してかどうかは定かではないが、お祭り好きのジェファーソン親分とは別に、コンコルドのもう一人のプロデューサーであるフランクドリティーはコリンズのギターを存分に味わえるソロアルバム、”By Myself”を制作した。ジェファーソンのあっと驚く組み合わせにこだわるプロデュースと異なり、ドリティーのプロデュースはこれまでの他のアルバムでも、そのミュージシャンの本質により迫るアプローチをしていたように思う。ドリティーは今回はソロアルバムを選択した。
自己のプレーをある程度犠牲にしてでもジェファーソンのコンセプトに従わざるを得なかったミュージシャンにとっては、ドリティーの存在は救いだっただろう。

ミュージシャンにとって究極の自己のプレゼンテーションをする場はソロだ。リズムの良し悪しも、相方の良し悪しも、あるいはアレンジの良し悪しも関係ない、ソロはすべて自己責任の場である。
聴く方にとってもソロというのは、どんどん引き込まれてしまうものと、反対にすぐに飽きが来て眠くなってしまうものの両極端が多い。コリンズのギターは、最初のソロアルバムを聴いた時も惹き込まれてしまったが、このアルバムも同じである。ソロプレーになると彼のギターの素晴らしさがより浮き彫りになるがコリンズのスタイルというと・・・。

彼の音楽への取り組みは、最初はブルーグラスのマンドリンで始まった。その後いつのまにかアートテイタムやナットキングコールのピアノをギターでコピーするようになったそうだ。カントリーの盛んな中西部で生まれ育ったコリンズのギタースタイルは、知らず知らずのうちにジャズとカントリーのハイブリッドスタイルになっていったのだろう。コンコルドのモダンスイングの響きにそのギターはうまくマッチした。しかし、オールスターズの中では、彼のギターの良さがだんだん影が薄くなっていったのも事実だ。
小さい店を任されていた料理人が、たまたま大きなレストランの料理長を任され、それぞれはそれで嬉しいが、自分の本当の腕を試す機会が減ったと嘆くのと同じ心境かもしれない。

このコンコルドに残された2枚のソロアルバムは何故かCD化されていない。本人の意思であったのか、レコード会社の意思なのかは分からないが、今の時代に伝えられていないのは残念に思う。
ギターの演奏を知らない自分もこのコリンズのソロは絶品と思うので、気になって少しネットを調べてみた。このアルバムに収められている、オータムインニューヨークの演奏は多くのミュージシャンやギタリストにとっての宝物だとのコメントがあった。皆の想いは同じようだ。

一時はアメリカ大陸を、そして世界を飛行機で飛び回ったカルコリンズ、彼にとって気が休まるCross Countryとは蒸気機関車に乗ってのんびり出かけられる範囲だったのかもしれない。

1. On The Atchison, Topeka, and The Santa Fe
2. Poor Butterfly
3. Corina,Corina
4. But Beautiful
5. My Gal Sal
6. I Can’t Help It (if I’m Still In Love With You)
7. Suzie Q
8. When Sunny Gets Blue
9. Among My Souvenirs
10. Autumn In New York

Cal Collin (g)

Produced By Frank Dorritie
Engineer : Phil Edwars
Recorded at Coast Recorders, San Francisco, California, April 1981

Originally Released on Concord CJ-166


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