A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

自分が思い描いた自分のための本当のドリームバンドとは・・・・

2012-05-26 | MY FAVORITE ALBUM
Conrad Silvert Presents Jazz At The Opera House

ドリームバンドにも色々あるが、自分の思い描いたメンバーが目の前に現れたら、それも自分のために演奏してくれたら、それは間違いなく一生の思い出になるであろう。

コンラッドシルバートという若手のジャズ評論家がいた。彼はジャズの本場ニューヨークではなく、サンフランシスコを拠点として活躍していた。もちろん、サンフランシスコにはジャズの大物プレーヤーが演奏に訪れることは多い。しかし、「ダウンタウンで大きなジャズフェスティバル行われることも無くシスコに大挙して大物が一同に集まるということはなかった。
ところが今回は各地から三々五々大物が集まった。集まった場所は、サンフランシスコのダウンタウンにあるOpera House。地元のクラシックの拠点でジャズが演奏されるということも珍しかったようだ。1982年2月22日、今から30年前のことであった。

実は、この時シルバートは若くして白血病を患い、余命も幾ばくかとの宣告を受けていた。死を宣告されたら何をするかは人によって様々だと思う。ジャズの世界で仕事をしてきた人間は、演奏する方にしても聴く方にしても、きっと残された時間に生涯最高のジャズをたっぷり楽しみたいと思うであろう。
シルバートもきっと同じ想いを持ったと思う。その夢を実現すべくこのコンラッドのシルバートために彼自信の企画したコンサートが開かれることになり、賛同したミュージシャンがこのオペラハウスに集まってきたのだ。

ジャズフェスティバルのようなお祭り騒ぎでもなく、個人に捧げるコンサートといってもバースデーや周年記念でもなければ、亡くなった後のメモリアルコンサートでもない。表向きは本人を励まし夢を与えるコンサートであっても、実際は死期を宣告された本人を目の前にしてサヨナラを言うお別れ演奏会だ。演奏する方は誰もが否が応でも全知全能を傾けて、彼に捧げる最後の演奏に臨むことになる。

コンサートは全部で3時間半に及んだそうだ。集まったミュージシャンは、このアルバムに収められている以外にも、ロリンズ、サンタナ、パットメセニー・・・など一流のミュージシャンが、この日、このステージに一同に介した。
それぞれは過去に一緒に演奏をしたこと、あるいは同じグループにいたこともあるメンバーが多かったとは思う。しかし、特にこの日のためにグループが編成された訳ではなかった。
ジャズの世界ではこのようなシチュエーションだと、多くの場合JATPのように一同に介してのジャムセッションが開かれる。そして、誰かのソロを順にフィーチャーしたステージになるのが常だ。しかし、この日は違った。

なぜかこのステージの演奏にはデュオが多い。
マルサリスがリードするコンボでの演奏もあるが、中身は皆でのアンサンブルは無い。基本はデュオの組み合わせによるメンバー間でのコラボレーションだ。
色々なメンバーの組み合わせの中で唯一普段から一緒にやっているのはトシコとタバキンのコンビだ。この頃はビッグバンドで2人の共演は多かったが、2人のデュオの演奏は普段聴けるようで聴けなかった。
あの暴れん坊のトニーウイリアムスのドラムも往年のマイルス時代を思い出させるようなプレーぶりだ。
普段であればコラボの相手と一体になれれば一つのゴールは達成できる。この日は2人でさらにシルバートに向けてのメッセージを何か共同で生み出さなければならない状況だった。
それ故、どの演奏からも何か魂のこもったメッセージが聞えてくるようだ。
このコンサートの直前にはセロニアスモンクが亡くなった。モンクヘの追悼の意味も込めてステージではラウンドミッドナイトも演奏された。演奏する者の色々な想いが加わる。

世の中、追悼コンサートはよく行われるが、このような生前のお別れ会というものはなかなか行いたくてもできないものだ。葬式も亡くなってから多くの弔問客が訪れるのが常だが、本人は死んでから来てもらってもそれを知る術は無い。本人にしてみれば生きているうちに会える人とは会い、友人とのお別れをし、新たな思い出をたくさん残してあの世に旅立った方がさぞかし嬉しいことか。

シルバートにとっては、これこそ演奏者の心の篭った本当のドリームバンドだった。残念ながらこのアルバムではステージの半分しか分からない。このようなライブはいつの日かその全貌がそのままの形で世に出て欲しいものだ。すべてを聴くと他のプレーヤーの新たなメッセージ、そしてそれを聴くことができた感慨をシルバートと共有できるような気がする。

Disc-1
1. Free From / Straight, No Chaser
2. The Village
3. Falling Petal
4. Maiden Voyage
5. Sister Sheryl

Disc-2
6. Dedication To Conrad Silvert
7. Hesitation
8. Dedication To Conrad Silvert
9. Silence
10. Footprints
11. Round Midnight

Wynton Marsalis (tp) (5/7/9/10)
Wayne Shorter (ts,ss) (5/7/9/10/11)
Lew Tabackin (fl) (3)
Bobby Hutcherson (vib) (4/10)
Herbie Hancock (p) (1/4/5/6/9/10/11)
Denny Zeitlin (p) (1)
Toshiko Akiyoshi (p) (2/3)
Charlie Haden (b) (5/7/9/10)
Jaco Pastorius (b) (10)
Tony Williams (ds) (5/7/9/10)

Recorded Live on February 22,1982,at The San Francisco War Memorial Opera House, San Francisco

ジャズ・アット・オペラ・ハウス
Conrad Silvert
ソニーレコード
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