A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

マルチリードの達人ディックジョンソンは、地元に帰るとマルチタレントのスパーマンだった

2012-05-10 | CONCORD
Swing Shift / Dick Johnson

名義貸しというのは合法であろうと違法であろうと色々な世界で行われている。先日のバス事故での「名義貸し」は問答無用だが、最近大手のスーパーに行くとPBの商品が溢れている。PBとは結局、流通の「名義貸し」だ。
昔は同じ商品でもどこのメーカーの物にするか悩んだし、それを選ぶ楽しみもあった。選んでもらうためにはメーカーも自ら広告費をかけてブランドの浸透に力を入れていたが、このPBが広まるとメーカーは作り手に徹し、生活者からは遠い存在になってしまう。作り手と流通の役割分担といえばそれまでだが、流通が強い社会はある意味で便利ではあるが、何か選択の自由が無くなって寂しい感じがする。
その反対に、ネット社会の到来で地方の超マイナーブランドが一躍グローバルに打って出ることも可能になった。利用者側も選択眼を養うことが益々重要になってきた。自分で努力すれば良い物が手に入るが、楽をすると当たり前の物しか接触できない時代だ。

コンコルドレーベルも、設立当初はローカルのマイナーレーベルであったが、カタログ枚数が200枚近くになるともはやマイナーレーベルとはいえない中堅レーベルに育っていた。オーナーのカールジェファーソンの個性もあり、ブランドイメージも確立してきた。コンコルドレーベルということで、「あるジャンルのファン」は中身を聴かなくとも安心して新譜を買うことができたのだ。
一方で、毎月のように多くのアルバムを出すようになると、ジェファーソンだけでのプロデュースでは量、質とも限界に達していた。そこで、次なる策はNo.2のプロデューサーを起用すること。Frank Dorritieがその任を果たすようになった。ジェファーソンとは少し違ったアプローチで、主役の意向をかなり重視するアルバムが作られるようになってきた。結果的に幅が広がったことで、コンコルドレーベルとしてのステータスはより確固たる物になっていった。

マルチリードプレーヤーのディックジョンソンも、そのコンコルドレーベルに参加したミュージシャンだ。ジェファーソンのプロデュースの元、何枚かのアルバムに登場して、マルチで楽器を操る器用な腕達者振りを披露してくれた。
しかし、「彼の本質は今まで聴いたアルバムでの演奏なのか?」というとひょっとしたら違うかもしれない。あくまでもジェファーソンの眼鏡にかなった演奏であり、彼の本質は自分の納得がいく別の演奏にあるのでは?と思った。

今度のアルバムは誰との共演か?と思ったら、今回のアルバムはディックジョンソンのグループSwing Shiftの登場だ。
プロデューサーは?というとディックジョンソン自らが加わっている。
録音場所も、地元ボストンのお隣のロードアイランドだ。
完全にディックジョンソンの自主制作アルバムでコンコルドレーベルは「名義貸し」のようなものだ。これまでの、過去に自主制作したアルバムをコンコルドから世に出した例はあったが、今回は新録音。これが、初めてだったかもしれない。

ジョンソンが自らプロデュースしただけあって、このアルバムは色々なことが考えら、盛り込まれている。
地元に戻って地元のメンバーと一緒の演奏、それだけで生き生きしている。
編成は管を5本入れたオクテット。ウェストコーストジャズの全盛期はよくあったがその頃は珍しい。
アレンジは基本的にジョンソンが自ら行っているが、2曲だけ別のアレンジャーを起用。その2曲が、最初と最後に配置され、どちらもリズミックでご機嫌。
一方で、ジョンソンのアレンジは自分だけでなく管全員に持ち替えをさせる懲りよう。単にスインギーなだけでなく、オープンハーモニーなモダンなアプローチも取り入れている。
実際に、エリントンナンバーのサテンドールでは、演奏を終えてプレーバックを聴いて7人のハーモニーが14人のアンサンブルのように聞えるとご満悦だったとか。
さらには、バリトンとテナーで参加しているJimmy Derbaのラストレコーディン。
というより、他にもう一枚しかレコーディングが無い程無名だったDerbeが、実は地元の名士ハーブポメロイに、ボストンが生んだ偉大なバリトン奏者3人と言えば、ハーリーカーネイ、サージシャロフ、そしてこのJimmy Derbaだと言わしめる名手であったとか・・
おまけに、自分が好きなサドジョーンズのチャイルドイズボーンも入っているし。
話題に事欠かないアルバムである。

ディックジョンソンはマルチリードの達人ではなく、実はプロデュース、アレンジにも長けたマルチタレントであったということが分かるアルバムだ。
このアルバムが世に出たのも、ジョンソンにジェファーソンが余計なことを言わないでコンコルドが名義貸しを始めたからかも?
であれば、カルコリンズのシンシナティーに戻ってからのアルバムも出せばよかったのに・・・・。

1. Jones
2. It Never Entered My Mind
3. The Night Has A Thousand Eyes
4. Perdido
5. Satin Doll
6. A Child Is Born
7. How Are Things In Arborea

Dick Johnson (as,ts,ss,cl,fl)
Jimmy Derba (bs,ts,,cl,fl)
Rick Hammett (tp,flh)
Ken Wenzel (tb,flh)
John DeMasi (tb)
Paul Schmeling (p)
Paul Del Nero (b)
Gary Johnson (ds)

Arranged by Dick Johnson & Hal Crook
Produced by Dick Johnson & Ron Gamache
Recorded at Normandy Sound, Warren, Rhode Island, march 1981
Engineer ; Bob Winsor

Originally released on Concord CJ-167

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