A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ジャケットだけでなく内容もどれをとっても合格点以上。やはり名盤・・・

2014-07-07 | Thad Jones & Mel Lewis & VJO
The Broadway Bit / The Modern Touch of Marty Paich

メルルイスはペッパーアダムスと同じ時期にスタンケントンオーケストラに在籍したが、1956年に一緒にケントンオーケストラを辞めて、2人揃ってロスアンジェルスで活動を始めた。まさにウェストコーストジャズが活況を呈していた時期、様々なバンドに加わって演奏をした。
スタンケントンオーケストラでの経験に加え、このロスでの他流試合の日々は、育ちざかりの2人にとってはその後何でもこなせるオールラウンドプレーヤーになるためには大事な経験だったと思う。
メルルイスの初リーダーアルバムGot’chaには、盟友ペッパーアダムスも加わっていたが、2人にとってまさにこのウェストコーストでの仕事始めといってもよいアルバムであった。

ペッパーアダムスがニューヨークに戻ったのは翌1957年の8月、一年足らずのロスでの生活であったが、この間ロス在住の名だたるミュージシャンの多くとの共演を果たし、レコーディングにも数多く参加した。
一方の、メルルイスはロスでの活動をさらに2年、1960年にジェリーマリガンのコンサートジャズバンドに参加するまで続けた。しっかり西海岸を代表するドラマーとしての地位を獲得し、この間のレコーディングの数は膨大だ。多分、ウェストコーストの第一人者であるシェリーマンのその数を上回るであろう。

メルルイスはスタンケントンでビッグバンドドラマーを務めたせいか、その後も大きな編成への参加も多く自らサドメルオーケストラの編成に繋がる。この期間はウェストコーストのアレンジャーの作品への参加が多いが、その一人がマティーペイチだ。ビルホルマンと並ぶ西海岸のアレンジャーの代表格だが、このペイチのアレンジにメルルイスが起用されることが多かった。

このペイチの作品の中で人気ナンバー1アルバムといえば、この「踊り子」が一番であろう。
まずはジャケットも興味を惹く。ジャケ買の対象になるデザインだ。
さらに、中身は曲良し、メンバー良し、アレンジ良し、ソロ良しの4拍子が揃っていて、さらには録音良しとくれば非の打ちどころがない、人気が出るのも当然だ。

この「踊り子」は「お風呂」とセットで語られることが多いが、実はアートペッパーのプラスイレブンも同じ時期の、同じような編成のアルバム。もちろんアレンジはペイチ、ドラムもメルルイスである。
アートペッパーのソロが主役になるが、アルバムのコンセプトとしては10人編成程度の通常のビッグバンドよりは少し小ぶりの編成で、ソロとアンサンブルのバランスが実に絶妙という同じ系列の姉妹アルバムといってもいいだろう。

ソロが短いと何となく物足りなく感じることはよくあるが、話の長い人が饒舌とは限らない。本当の話し上手は、言いたいことをきちんと整理して無駄な話が無いのが本当の饒舌の様な気がする。どの曲も、曲のイメージにアレンジがピッタリはまり、ソロが絶妙の味付けとなっている。曲によってはソロがメインで、アンサンブルが脇役になることも。

いつもB級グルメの大盛りばかりを食べ慣れているとちょっと物足りなく感じるものでも、このような手の込んだ懐石料理の美味しさに嵌ると、自然と量より質に食の好みも変わってくる。
また、このような料理は隠し味もポイントだが、このアルバムもスコットラファロのベースが素晴らしい。さらにヴァイブやホルン、クラリネットなど普段主役にならない楽器の使われ方も絶妙だ。マニアックな味付けに拘る食通だと、「この味付けだけでも食べてみる価値はある」というかもしれない。
メルルイスも表には出ないが、このように派手さは無いが隠れ名盤と云われるようなアルバムに良く顔を出している。プレースタイルに合わせて人柄もあるのかもしれない。

このアルバムを聴いてビッグバンドファンになったという人も多いと聞く。50年以上たっても、まだ色褪せない大編成ジャズの入門アルバムの一枚だと思う。



1. It's All Right With Me               (Cole Porter) - 3:35
2. I've Grown Accustomed To Her Face  (Alan Jay Lerner, Frederick Loewe) - 3:47
3. I've Never Been In Love Before      (Frank Loesser) - 4:20
4. I Love Paris                 (Cole Porter) - 6:16
5. Too Close For Comfort   (J. Bock, L. Holofcener, G. David Weiss) - 3:53
6. Younger Than Springtime / The Surrey with the Fringe
      (Richard Rodgers, Oscar Hammerstein II) - 4:07
7, If I Were A Bell - 3:42              (Frank Loesser) - 3:39
8. Lazy Afternoon - 3:31      (Jerome Moross, John Latouche) - 3:29
9. Just In Time - 3:14   (Jule Styne, Betty Comden, Adolph Green) - 3:12


Jimmy Giuffre (cl, bs)
Art Pepper (as)
Bob Enevoldsen (ts, vtb)
Bill Perkins (ts)
Frank Beach (tp)
Stu Williamson (tp, vtb)
Vincent De Rosa (frh)
George Roberts (btb)
Victor Feldman (vib, per)
Marty Paich (p)
Scott LaFaro (b)
Mel Lewis (d)

arr: Marty Paich

Recorded in Los Angeles, CA on January 1959

ブロードウェイ・ビット
Marty Paich
ワーナーミュージック・ジャパン
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