A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

日本発のアルバムが世界中のファンの元へ・・・

2015-12-13 | CONCORD
Overseas Special / Monty Alexsander・Ray Brown・Herb Ellis

70年代から80年代の日本は活力がみなぎっていた。ちょうど自分が社会人になったが、まだ見習いで忙しく仕事を学んでいた時である。この成長に伴い世の中も経済的に豊かになり、個人的にも懐が豊かになった。欲しいレコードもすぐに買えたし、行きたいコンサートにも行けるようになったが、反対にそれを楽しむ時間が無くなった。学生時代は隅から隅まで読んだスイングジャーナルも、パラパラとめくって積んどく状態になったものだ。

この日本の経済力がジャズ界にも活気をもたらしていた。幻の名盤といわれた古いアルバムが次々に発掘され、次から次へと大物ミュージシャンが来日し、日本中で大きなコンサートが催され、日本のプロデューサーが企画するアルバムも数多く作られた。
60年代の初頭は、ジャズを理解してくれるのはヨーロッパというのがジャズ界の常識で、アメリカで思う存分演奏する機会に恵まれないミュージシャン達の多くはヨーロッパに渡ったものだが。時代が変れば所も変る。

80年代の日本のジャズフィーバーをアメリカの関係者は驚きの目で見ていた。秋吉敏子がアメリカに渡り、日本人でもジャズを演奏するミュージシャンがいるのだという事を知り、大物ミュージシャンが大挙して日本に行くようになって、日本にもジャズを聴くファンがたくさんいるというのが分かった。それから、このフィーバー状態になるまであまり時間はかからなかった。

多くの来日ミュージシャンの公演を手配していたのはプロモーターといわれる人々。アメリカ側で大物ミュージシャンや大きなフェスティバルを仕切っていたのはジョージウェインのような有名なプロデューサー。日本側も個人のプロダクションから、大手の音楽事務所、さらには大手メディアの文化事業部のようなところまでが次々と公演を企画した。もちろん成功する公演もあれば、お客が集まらずガラガラという公演もあった。その中で、プロモーターとミュージシャンの信頼関係も生まれてきたと思う。

少し前に、モンティーアレキサンダーのトリオが来日した。その時にも記事にしたが、その公演を段取りしたのはプロモーターとしては老舗のオールアートプロモーション。モンティーアレキサンダーがまだコンコルドに所属していた時からの付き合いになる。

富士通コンコルドジャズフェスティバルが日本で始まったのは‘86年だが、それに先立って’82年にモンティーアレキサンダートリオの単独公演が行われた。ビッグスリーとタイトルされたそのトリオのメンバーは、レイブラウン、ハーブエリスの豪華版。3月初めから一ケ月近くかけて日本ツアーが行われた。ほぼ同じ時期に、オスカーピーターソン、カウントベイシー、グレンミラー、ジョンルイス、チコフリーマン、ボブジェイムスなどのコンサートツアーも行われていたので、当時の活況ぶりを窺い知ることができる。

この日本ツアーの最後にアレキサンダーのトリオの面々は六本木のサテンドールに出演した。この頃有名ミュージシャンが来日した時に、東京でジャズクラブへの出演というのは珍しかった。レコーディングのためのスペシャルセッションかどうかは定かではないが、このようなトリオの演奏はホールとは違ったクラブ独特の雰囲気にピッタリだ。



この録音を聴いた感想を、コンコルドレーベルの地元紙サンフランシスコエグザミナーの記者がライナーノーツに書いている。トリオの演奏が素晴らしいのはいうに及ばす、日本のジャズクラブの雰囲気が実に素晴らしいこと、そしてライブレコーディングが上出来な事を褒めちぎっている。特に日本のジャズファンがこんなに演奏に溶け込んでいる事、そしてレイブラウンのベースの音の良さに。個人的には、日本のファンを見くびっているとも思えるコメントだし、レイブラウンのベースの音も弦の音が目立ち、いつもの図太い音がかえって消されてしまっているような気もするが。いずれにしても日本が見直されていたのは事実だ。

タイトルとジャケットデザインは、3人から世界中のファンへの贈り物といった感じだが、その陰には日本のプロデューサー、ファン、クラブ、そしてエンジニアがいたことも間違いない。
このトリオでの演奏は、ツアーの最中に大阪でスタジオ録音されたアルバムもあるので聴き較べてみるのも面白い。いずれにしても、日本が元気な時代であったからこそ実現できたアルバムだ。その陰にはプロモーターであるアートプロモーションの石塚氏の努力と活躍があったからだと思う。

それにしても、今の世の中金儲け以外何かをやろうと気が起こらない社会になってしまったのは困ったものだ。きっと今の時代ではこのようなアルバムは自主制作以外生まれないであろう。

1. But Not for Me             George Gershwin / Ira Gershwin 9:17
2. A Time for Love          Johnny Mandel / Paul Francis Webster5:47
3. Orange in Pain                       Herb Ellis 6:02
4. F.S.R. (For Sonny Rollins)                  Ray Brown 5:57
5. For All We Know               J. Fred Coots / Sam M. Lewis 7:26
6. C.C. Rider                     Ma Rainey / Traditional 8:22

Monty Alexander (p)
Ray Brown (b)
Herb Ellis (g)

Produced by Yoichiro Kikuchi
Engineer : Yoshihisa Watanabe
Recorded live at the Satin Doll Club, Tokyo, March 15 1982

Concord CJ-253

Overseas Special
クリエーター情報なし
Concord Records
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